天使と女神シリーズ外伝11

 薄幸の少女ヒロコが高校で巡り合ったのが競技カルタ。弱小部であったが故に入部するやすぐに団体戦に駆り出されるも、一枚も取れずに惨敗します。

 そんな弱小競技カルタ部に新顧問が就任します。顧問はカルタのイロハからヒロコたちに教え、3年の全国大会県予選に挑みます。最後の全国切符を争う一戦はヒロコを除いて2勝2敗。ヒロコは渾身の囲い手破りで逆転を狙ったものの無念のお手付きで敗退します。

 大学に進学したヒロコは県予選で戦った早瀬や片岡に誘われて大学カルタ会に入ります。ここも潰れかけで、会員は三年の梅園と二年の雛野の二人だけ。ヒロコたちが入ってようやく団体戦が出場できるようになったと喜ばれるぐらいです。

 このカルタ会は梅園が入会した頃は20人を超える会員がいたのですが、内紛のために梅園1人になり、翌年に入会した雛野と二人で守ってきたのです。梅園のカルタへの熱い思いを知ったヒロコは、必ずこの5人で復活させると誓います。

 カルタにかけた青春、そこに生まれる恋、その恋の行方はどうなるか。

純情ラプソディ:あとがき

書き始めたころは漠然とシンデレラ・ストーリーにしようと考えていました。ですからヒロコにはステレオ・タイプの生い立ちを設定しています。不遇時代の救世主がいて、徐々に花開いていくヒロイン像を書き連ねています。 カルタは舞台背景ぐらいのつもりです…

純情ラプソディ:第67話 純情ラプソディ

早瀬の鬼嫁を考えてたのだけど、普通の鬼嫁とはまず意味が違う。一般的なものなら夫に鬼の様に恐れられる嫁の事だし、セットで恐妻家があるぐらい。夫だけでなく家族にも怖がられる意味も含むかな。 しかし早瀬の鬼嫁は夫にも家族にも怖がられないで良いと思…

純情ラプソディ:第66話 覚醒

ヒロコの達也との婚約発表も予定通り卒業二年目に行われたけど、そこに現れたのが社長代行のカスミン。まさに威風堂々として、並み居る政財界人を睥睨して怖いぐらいだった。達也も、「ヒロコ、如月社長代行って如月さんだよな」 気持ちはわかる。でもヒロコ…

純情ラプソディ:第65話 あれから

あれからって事になるけど、まず梅園先輩。クイーン戦は稀にみる激闘だった。先手を取ったのは城ケ崎クイーンで。先に二勝を挙げて四連覇に王手を懸けたのだけど、第三戦は大接戦になり運命戦にまでもつれこんだんだ。 これを制した梅園先輩は続く第四戦も劣…

純情ラプソディ:第64話 早瀬の嫁

さすがカスミン、頼りになると思ったけど、どうにも話に違和感があるのよね。カスミンがヒロコを騙してるわけじゃないだろうけど伏せようとしてるものがある。達也との結婚で本当に求められてるのはもしかして、「だからヒロコは才能があり過ぎるのよ。夫婦…

純情ラプソディ:第63話 カスミンへの相談

達也の甘さにあきれ返ったヒロコは、カスミンにすべてを打ち明けて相談したんだ。カスミンなら信用できるし、理由はわからないけど一番良いアドバイスをしてくれそうな気がしたから。「梅園先輩は良く見てたね」 「なにがですか」 「早瀬君の本質を」 うっ、…

純情ラプソディ:第62話 怒ったぞ

達也をお母ちゃんに紹介して二人の関係はまた深まったんだけど、達也から相談が、「二年ちょっとしたら卒業するけど、そうなれば早瀬グループに就職する」 えらい気が早い話だな。まだ二年生だぞ。そこはともかく、達也はお父様のところで後継者修行に入るの…

純情ラプソディ:第61話 女神の密談

『カランカラン』 コトリったらなんの用事だって言うのよ。学生の間は宿主代わり期の休暇期間でしょ。「悪い、悪い、ほんまに野暮用やから悪いと思てる」 まあイイけど。「早瀬のとこの問題でどうしてもユッキーと相談したくてな」 なるほどそういう相談か。…

純情ラプソディ:第60話 シンデレラは甘くない

そうそうヒロコの誕生日の時に達也を家に連れて帰ったんだ。お母ちゃんに会わせるため。まだ早いと言えば早いのだけど、達也の誕生日の時に向こうのお父様に会ってるからバランスみたいなもの。 お母ちゃんも達也は気に入ってくれたけど、達也の家のことを聞…

純情ラプソディ:第59話 梅園先輩の異常な愛情

梅園先輩は、なんとだよ、クイーン戦の予選を勝ち抜いちゃったんだよ。正月には城ケ崎クイーンとの対決が待ってるんだ。負けても準クイーンだから六段になるし、勝とうものなら二階級上がって七段だよ。「誰が玲香ごときに負けるものか。クイーンになって七…

純情ラプソディ:第58話 女同士の盛り上がるお話

今日は忘年会。いつもの通り達也が手配した店で、「カンパ~イ」 今日は中華だよ。ヒロコは大学に入るまで中華と言えば、焼飯とか、餃子とか、天津飯ぐらいだと思い込んでたのよね。後は御馳走として酢豚とか。言ってみれば餃子の王将の世界。豚まんもあるか…

純情ラプソディ:第57話 快進撃

今年は港都大カルタ会の快進撃の年として良いと思うよ。札幌杯でも優勝したけど、西日本王冠戦も一部優勝。一月の末には東西王冠戦に出場するんだもの。これに勝てば、「ビール一年分がまたもらえる」 札幌杯と合わせて二年分になるから闘志が湧いてくる。団…

純情ラプソディ:第56話 ポチの真相

札幌杯後はヒロコと達也、雛野先輩と片岡君がラブラブ・カップルになったのだけど、心配なのはポチやってた藤原君と柳瀬君。まず藤原君の方は、「恋は実る時も実らない事もあります。愛する人が立ち直れるのに手を貸せただけで満足しています」 「それでイイ…

純情ラプソディ:第55話 ピロー・トーク

あれで良かったと思ってる。昨夜は、ああなる夜だったと思ってる。もう達也に決めたし、決めたからああなったんだ。ヒロコには後悔はない。来るべき時が来て、それを迎え入れたんだから。感動の朝を迎えた後だけど、「達也、もう少し、このままでいたい」 「…

純情ラプソディ:第54話 札幌の夜

試合場に雛野先輩と片岡君は来てくれた。上手くいったと顔見た瞬間に確信した。どこか翳があった片岡君の表情が吹っ切れてたし、雛野先輩のあんな嬉しそうな顔を見たことがないもの。 京大との決戦は意外な展開になった。だって三連勝で勝っちゃったのよ。な…

純情ラプソディ:第53話 無償の愛

試合場には決勝らしくチームごとの控室まで用意されてるんだ。ちょうど試合場の隣ぐらい。五回戦も戦うから、試合の合間に休憩を取ったり、作戦タイムを取るためで良いと思う。さすがにリッチな大会だ。 試合開始時刻までに試合場に着席すればOK.京大は既…

純情ラプソディ:第52話 ひたむきな想い

ここでカスミンが、「片岡君、雛野先輩の返事だけど、そのまま受け取るつもり? はい、そうですかって終わりにするの?」 カスミン、それを片岡君にこの場で言わせるの。こんなもの突然聞かされて答えられないじゃない。そしたら片岡君は憤然として、「藤原…

純情ラプソディ:第51話 雛野先輩の過去

「片岡君ありがとう。とっても嬉しかった」 雛野先輩は絞り出すようにそう言ってから、ポツリとポツリと話し出したんだ。「ヒナはね、男が怖いのよ・・・」 これこそ衝撃的だった。雛野先輩にはレイプ体験があったと言うのよ。高校の時に大阪に遊びに行った時に…

純情ラプソディ:第50話 片岡君の苦悩

もう一つの王者決定戦進出チームは、城ケ崎クイーン擁する京大が慶応を破って上がってきた。梅園先輩の見るところ、「京大は、玲香と朝比奈真澄、波多野瞳の三本柱のチームだよ」 東大と似た感じか。「まあそうだけど、さすがにこのレベルで五枚そろえられる…

純情ラプソディ:第49話 プレイオフ

今日も朝から衣装合わせとメイク。さすがに三回目だから少し慣れたけど、なんか集まってる人数が少ないような。「昨日で負けた連中は遊びに行くらしいよ」 うぅ、それも楽しそう。せっかく札幌まで来てるのだから観光したいよ。今日もプレイオフで負けたらと…

純情ラプソディ:第48話 ドタバタのリーグ戦

札幌杯が始まったのだけど、慣れない映画撮影とセットだものだから、どのチームも浮足立ってる気がする。気がするんじゃなくて完全に浮足立ってる。でもそうなるよね。こんなリッチなホテルに招待だし、衣装と言いながらあの豪華なドレスとプロのメイクだよ…

純情ラプソディ:第47話 監督の要請

試合の日は朝からテンションを高めていくのだけど、それでころじゃないのがこの大会。そりゃ、朝一番にやらされるのが衣装合わせととメイク。用意されていたのが着物に袴の謝恩会スタイル。 これはカルタの正装みたいなみたいなもので、クイーン戦とか小倉山…

純情ラプソディ:第46話 札幌だ

伊丹から千歳に、そこからJRでついに札幌。「着いたぞ北海道」 「北海道はもう着いてるよ。ここは札幌」 「ああここは北の大地だ」 完全にお上りさん気分のヒロコたちに梅園先輩は、「浮かれてるんじゃないよ。ムイムイたちは遊びに来てるんじゃなく、カル…

純情ラプソディ:第45話 夢は広がる

梅園先輩がサークル室に踊り込んで来たのだけど、「来たよ、来たよ」 雛野先輩が手を取り合って、「良かったね、ムイムイ」 「ホント、つい盛り上がってさ、だから心配だったのよ」 へぇ、そりゃ良かった。妊娠の心配してたんだ。「あの夜は夢中になっちゃっ…

純情ラプソディ:第44話 かるた道

大学選手権でジャイアント斎藤になにがあったかを達也にゆっくり聞いてみた。試合中は集中してるから余所見なんて殆どできないもの。「あの席割って如月さんの希望だったんだよね」 たいした希望じゃなかったけど、新星学園戦の時に左端にして欲しいだった。…

純情ラプソディ:第43話 北海道へのキップ

ヒロコもカスミンに、「怪我したらアホらしいから、絶対に無理しないでね」 「そうね。そうするわ」 ただ会場の視線はちょっとだけ厳しかった。だってカスミンはE級無段以前の素人。ヒソヒソと、『ここまで来たから、出たいのはわかるけど・・・』 『そりゃ、…

純情ラプソディ:第42話 大学選手権

この大会の特徴は学生が企画・運営するところかな。それと参加チームが多い。とくに今年は札幌杯の予選も兼ねてるから盛況で、なんとなんと参加チームは百二十八もあるんだよ。北海道を狙っているところも多いし、ひょっとしたら映画出演もあるかもしれない…

純情ラプソディ:第41話 カルタの聖地

大学選手権は近江神宮である。ここはカルタの聖地とも呼ばれてるけど、近江神宮自体はそれほど古い神社じゃないのよね。神社って言えば、奈良時代や平安時代からとか、遅くとも江戸時代からってイメージがあるけど、近江神宮はなんと昭和の創建。 出来たのは…

純情ラプソディ:第40話 定期戦

今日は西宮学院との定期戦。通称県内ナンバーワン決定戦。というか県内にカルタ会があるのが港都大と西宮学院だけだから、勝った方が一番ってだけのお話。うちの県には職域学生大会にも参加するような社会人カルタ会はないものね。 通算成績は西宮学院の方が…

純情ラプソディ:第39話 司法試験予備試験

五月にカスミンは司法試験予備試験を受けたのだけど、「これで合否が決まるのね」 「まだだよ。今回は短答式」 司法試験予備試験は三回もあって、 五月・・・短答式試験 七月・・・論述式試験 十月・・・口述試験 こんなスケジュールだって。「短答式って?」 「要す…