天使と女神シリーズ外伝8 ミサトの不思議な冒険

 西宮学院大に入学したミサトは、写真を始めたいナオミに誘われ公認写真サークルの見学に行きます。そこで一昨年の写真甲子園で知り合った寺田と偶然出会い三人で喫茶北斗星に。

 三人が談笑中に現れたのがフォトサークル北斗星代表の加茂。熱心に勧誘されてナオミと寺田が乗り気になったのでミサトもお付き合いで入会を決めます。

 フォトサークル北斗星はケイコ、加茂、ヒサヨ、チサト、平田の五人の小さなサークルで喫茶北斗星を根城に活動しています。そんなサークル北斗星の当面の目標は夏休みに行われるツバサ杯。

 ところがここに公認写真サークルの横槍が入ります。公認写真サークルを主宰するのはミサトにも因縁のあの宗像。宗像の姑息な陰謀を加茂たちの巧みな計略で打ち破りミサトはツバサ杯を獲得します。

 ツバサ杯の主宰者は麻吹つばさ。麻吹は副賞の特典と称してミサトをオフィス加納の体験生に叩き込みます。麻吹の狙いはミサトに、写真界最高難度とされる加納アングルと光の写真のテクニックを教え込むこと。

 のたうち回るような苦行の末にマドカにテクニックを叩きこまれたミサトは、ツバサ杯の本当の副賞であるハワイ旅行に。ハワイで麻吹は三大メソド学生世界一決定戦の見学に赴き、そこでロイドたちから一昨年の写真甲子園のリベンジを申し込まれます。種目は三人一組の組み写真による団体戦。

 学生団体戦と言われても麻吹の下にいる学生はミサトだけ。勝負は来年の事だと思っていたミサトでしたが、麻吹は翌日の勝負を提案し呑ませてしまいます。心配するミサトでしたが、翌朝になり競技開始まで1時間を切ったところについに現れた二人にミサトは仰天します。

 この勝負に勝つために、麻吹が去年からどれだけの準備を重ねていたかを聞かされ、勇躍ミサトたちは決戦に臨みます。

ミサトの不思議な冒険:あとがき

この作品を書く時は小説を書き始めて初めてのスランプ状態に陥りました。どうにもアイデアが浮かばず、強引に書き始めてもちっとも話が広がらないぐらいです。才能の限界なんて言葉が頭を過りましたが、別に小説で食べてる訳ではないので、 「まあ、ええか」…

ミサトの不思議な冒険:ミサト、最大の冒険

『コ~ン』 鹿威しが響くクレイエール・ビル三十階。麻吹先生に連れられてついに来ちゃった。玄関を上がってリビングのドアが開かれるのが怖かった。 「いらっしゃい、待ってたよ」 キッチンからコトリさんの声がして、ちょっとホッとした。今のところ招かざ…

ミサトの不思議な冒険:会いたい・・・

大学生活の復活にはちょっと手間がかかった。とにかくテキストからノート、パソコンも全部焼けちゃったからね。北斗星の先輩や、その友達のツテツテに集めてもらったりしたし、大学側も事情を配慮してくれて、なんとか軌道に乗ってくれたぐらい。 親父は工場…

ミサトの不思議な冒険:今度こそ日常へ

事件が片付いて家に帰ったら、親父もお母ちゃんも急転直下の成り行きに驚くと言うより、茫然としてた感じ。 「ミサト、なにがあったんだ」 「詳しくは言えないけど、月夜野社長が動いてくれたら・・・」 親父もお袋もお礼に行くって言ったけど、コトリさんは、 …

ミサトの不思議な冒険:一件落着

コトリさんが動きだしたら、まさに見る見る問題は解決していった。絶望的だった裁判も、エレギオンHD弁護団がたったの二回の話し合いでケリを付けちゃったもの。二回と言っても、二回目は裁判所での和解交渉だし、それだってこちらが用意した書類にサイン…

ミサトの不思議な冒険:翌朝

朝早くにシノブさんがやって来て、 「にらんだ通りで良さそうです」 「ミサトさんの家にあれだけ大がかりな事を仕掛けるなら怨恨しかあらへんからな」 怨恨? 親父もお母ちゃんもクラシック・カーのレストアを道楽でやってるだけで、人に恨みを買うようなこ…

ミサトの不思議な冒険:エレギオンの女神

コトリさんも帰って来て、夕食は誰が作るかと思っていたらなんとコトリさん。そう言えば食料品を買い込んでいたけど。 「ここは自炊やねん」 出てきたのは素人離れした料理の数々。なるほどお昼はあり合わせって言ってたのがやっとわかった。 「コトリちゃん…

ミサトの不思議な冒険:クレイエール・ビル三十階

ミサトは決心した。この状況を覆せるとしたらエレギオンの女神を頼るしかないって。ここまでになっちゃうと、エレギオンの女神だって無理かもしれないけど、頼れるものはなんでも頼らいないと。 クレイエール・ビルはポートアイランドにあるんだけど、ミサト…

ミサトの不思議な冒険:ベンツSSK

「親父、このクルマは」 「SSKや」 レアすぎるクルマで、1920年代から十年ぐらいで三十台しか作られてないのよね。六気筒七リットルでスパーチャージャー付。二百キロは出たとされる当時のモンスター・カー。オークションなら数億円はするってされて…

ミサトの不思議な冒険:日常へ

西宮学院の前期試験はなぜか夏休み明けにある。おかげで前期はノンビリできるけど、夏休みの後半は試験対策に追われるぐらいの感じ。その重要な後半にあったのがハワイ。もう試験は綱渡りの一夜漬けの連続。追試を喰らわなかったのが奇跡のよう。 試験ウィー…

ミサトの不思議な冒険:御褒美タイム

団体戦で勝った後に記者会見があり、それが済むと連れて行かれたのがロイヤル・ハワイアン・ショッピングセンター。 「その格好じゃ拙いな」 ドヒャッて感じのドレスとかを上から下までサッサと見繕い。 「ハレクラニもウルサイところだから、これぐらいは必…

ミサトの不思議な冒険:ツバサの思惑

あいつらよくやってくれた。わたしの予定を遥かに上回る成長が嬉しいぞ。とくに野川と尾崎。エミさんが伸び過ぎたからそろえたのだが、よく頑張ってくれた。このレベルになりエミさんが写真を組めば世界最強だ。 「あの作品はツバサ先生とマドカにアカネ先生…

ミサトの不思議な冒険:団体戦

八時からホールで開会式。三大メソドに加えて麻吹先生のチームまで加わっての対決が、噂を噂を呼んでテンコモリの観客と取材陣。テレビ中継まで入ってるもの。ロイド先生から順番に挨拶したのだけど、どこも気合が入っていてピリピリしてた。 「このアメリカ…

ミサトの不思議な冒険:三枚そろった

「こういう勝負はどこかで危ない橋を渡らないと勝てない事が多い。これで有利になったぞ」 よく言うよ。ただミサトに一つ懸念が、エミ先輩と野川部長の技量。とにかくこの夏休みにミサトはトンデモなく伸ばされたから、 「それは心配ない。ちゃんと考えてあ…

ミサトの不思議な冒険:チーム結成

朝起きたら二人の選手が現れるかと思ったけどそれもなく、 「行くぞ尾崎」 競技スケジュールは八時に開会セレモニーとルールの最終確認、使用機材のチェックがあって、九時に撮影開始。三時間の撮影時間で、十二時にメモリー・カード提出。一時間の昼休憩を…

ミサトの不思議な冒険:これがお楽しみとか

ハワイに着いて六日目の朝にオフィスのスタッフは帰国。残されたのはミサトたち三人だけになったけど、 「出かけるぞ」 これもハワイに着いた時から気になってたのだけど、写真技術の世界三大メソドとされる西川流、ロイド流、ミュラー流の学生親善交流大会…

ミサトの不思議な冒険:麻吹アングルの秘密

翌日も夜明け前から仕事。麻吹先生の言う通りハワイの名所巡りをやり写真を撮ってるけどガチのお仕事。これってさぁ、オフィスの体験コースの費用をハワイでアシスタントやることで払っているように見えてしかたないんだけど、 「そうじゃない。これがオフィ…

ミサトの不思議な冒険:ハワイへ

オフォス加納に行くと、 「来たか尾崎。荷物はこっちに積みこんどけ」 あれロケバスじゃない。それも二台。スタッフも既に乗り込んでいて、 「見送りですか」 「あん、仕事に行く」 「はぁ」 関空に向かう道すがらに聞いたのだけど。ツバサ杯の副賞のハワイ…

ミサトの不思議な冒険:これでサッパリ

ハワイに行く前日に喫茶北斗星に挨拶に。あれからどうなったかも気になったし。加茂先輩はあの日の翌日には高知に帰ったそうだけど、 「でもすっごく嬉しかった」 「それで、それで」 「シゲルが来てくれて」 「それでそれで」 「何が聞きたいの!」 そんな…

ミサトの不思議な冒険:喫茶北斗星にて

オフィス加納での二週間が終り、久しぶりに喫茶北斗星に。とりあえずサークルは夏休みだからお休み。ケイコ先輩がいてくれたら嬉しいけど。いたいた、 「尾崎美里、オフィス加納から命からがら生還しました」 「それはお勤め御苦労であった」 大笑いになった…

ミサトの不思議な冒険:サキ先生

十一日目からはアシスタントから解放になって、ちょっとノンビリした気分。だって昨日までは、とにかく夜が明ける前から日が沈みきってしまうまでアシスタントやらされて、ビルから出るのはロケに出る時と、夕食に出る時だけ。仕事が済んだらメシ食って寝る…

ミサトの不思議な冒険:アシスタント段階クリア

「尾崎、今日は寿司食いに行くぞ」 オフォスに来てから朝はサンドイッチとコーヒー、昼はロケ弁だったけど、夜は必ず麻吹先生と新田先生が外食に連れて行ってくれた。もっとも食べ放題の焼肉屋とか、串カツ屋、居酒屋、定食屋ばかりだったからお寿司も回るの…

ミサトの不思議な冒険:オフィス加納

ここがオフィス加納か。とにかく賑やかで活気のある商店街の一角にあるのだけど、どれどれ、一階と二階は吹き抜けでホールになってる。わぉ、プチ・エンジェルに、ドライスデール、つくも屋まであるじゃない。三階はホールになってるみたい。 四階に上がるに…

ミサトの不思議な冒険:祝勝会

未公認写真サークルのメンバーが居酒屋タイガー堂に集まり、 「阪神の勝利を祈ってカンパイ!」 今日はミサトのツバサ杯獲得を祝っての祝勝会。七十人ぐらい集まってるから、二階の座敷もパンパン。もっと参加希望者もいたそうだけど、スペースの問題でこの…

ミサトの不思議な冒険:懇親会

入賞者以上は、他の関係者や来賓と一緒にバスで近くのホテルのパーティ会場に。これだったらもうちょっとイイ服にしとけば良かった。懇親会の主役はグランプリのミサトと言いたいところだけど、やっぱり麻吹先生だよね。そしたらミサトに、 「尾崎さん、おめ…

ミサトの不思議な冒険:審査発表

「麻吹先生、ご苦労様です。審査室はこちらになります」 「うむ、ありがとう」 ツバサ杯のスケジュールは、午前中から昼食を挟んで十五時までに審査を終わらせる事になっている。要は十六時から表彰式ということだ。その後に会場を移して入賞者や関係者の懇…

ミサトの不思議な冒険:極星真理会

「シオリちゃん、いらっしゃい」 今日は三十階の女神の集まる日だ。ユッキーが怪鳥事件で宿主代わりに入ったから、コトリちゃんが今はトップになっている。 「ちゃうで、トップは主女神のシオリちゃんや」 「君臨すれども統治せずだがな」 エレギオンの五女…

ミサトの不思議な冒険:ツバサ杯エントリー

「宗像主席、大変です」 「どうした」 「尾崎美里がツバサ杯にエントリーしています」 「なんだって!」 宗像はフォト・サークル・北斗星の加茂代表を探し出し連れて来るように命じます。 「バカなことを。尾崎の出場資格などあるわけない」 かなり時間が経…

ミサトの不思議な冒険:予備予選

夏休みに入ってすぐに行われたけど、結果は予想以上に露骨。宗像の野郎、いきなりやりやがった。予備予選の結果発表前に、 「未公認サークルからの出場は公認写真サークルの代表を上回った者のみを認める。それが審査基準だ」 加茂先輩たちは突然の決定に抗…

ミサトの不思議な冒険:公認写真サークル

ここは公認写真サークル主席室。公認写真サークルは長年の成績不振により大学からの活動費無しの宗像の呼ぶところの平公認への降格問題を抱えています。そんな写真サークルに西川流B2級を持つ宗像は三顧の礼をもって迎え入れられています。 宗像には政治力…