天使と女神シリーズ27 ツーリング日和7

 ひょんな事からエッセンドルフの侯爵になってしまったユリですが、婚約者であるストリートピアニストのコウに誘われて東北ツーリングに出かけます。

 コウは毛越寺でピアノを弾いていた飛鳥井と言う男に異常な関心を示します。この飛鳥井は事件を起こして忘れられていた歌手だったのです。

 コウは旧知のユッキーやコトリに飛鳥井復活を頼み込むですが、この二人も難色を示しまくります。

 飛鳥井とは何者、犯した罪は償える物なのか。コトリとユッキーが下した判断の是非は。

ツーリング日和7 あとがき

このシリーズもついに七作目。正直なところ、ツーリングに行くところも、起こす事件もタネ切れです。ツーリング先については、結局のところ前回の焼き直しと言うか、リサイクルの東北ツーリング。南奥州を舞台にしてみました。 なにより困ったのがコトリとユ…

ツーリング日和7(第32話)白鳥の歌

コウも活躍してる。いや大車輪の活躍で良いと思う。谷村省吾を口説き落としてるし、他のゲストもそう。最後のオーケストラにはコウも参加してたけど、バイオリンに五藤穂乃果まで参加してたもの、「それだけやない。ユリにはわからんかったと思うけど、会場…

ツーリング日和7(第31話)策謀

想定外のことが起こったらしいのはわかるけど、それは例えばユリが突き飛ばされた事とか、「あれは不確実性の部分はあったけど、ああなる可能性は高いと思うとった」 「そうね、ありがたかった」 あのね、痛かったんだぞ。それにだぞ、あの後に殴られたり、…

ツーリング日和7(第30話)準備工作

今日はコトリさんたちとツーリング。コウも一緒だよ。天橋立は久しぶりだ。「コトリらは、このまま天橋立を渡るから、ユリとコウは傘松公園のケーブルカーの駅に回ってくれ」 ありゃと思ったけど、天橋立は原付なら走れるけど、ユリやコウのバイクは走れない…

ツーリング日和7(第29話)音楽の夕べ

ここがクレイエール・ホールか。初めて入るけど、こりゃ立派だよ。神戸でも最古のホールらしいけど、オンボロっちいところはどこにもないもの。よくこれだけのホールを建てたものだよ。日本のカーネギー・ホールとも呼ばれてるけど、そう言われても不思議無…

ツーリング日和7(第28話)祭に向かって

エッセンドルフの難行を終えたところでコウから連絡があった。やったぁ、デートのお誘いだ。夕食デートだからその後は、「勝負下着はどれにするの」 実の母親が娘に向かって言うセリフか。まあ、やる気で行くけど。「明日のお昼はいるの?」 朝を飛ばすな。…

ツーリング日和7(第27話)日本フェス

ユリは憤慨してる。ユリの本業は学生だ。勉強が本分だ。ガリ勉じゃないけどそれなりに勉強してる。そりゃ、コウと東北ツーリングも行ったけど、あれだって行けるように勉強して余裕を作った賜物だ。 四年になって余裕が出て来てるのはそうだけど、そうなった…

ツーリング日和7(第26話)谷村省吾

今日は音楽事務所の訪問や。ここは個人事務所みたいなとこで、サルバドールをプロデュースしてるねん。サルバドールは大御所と言うには若いが、日本のポップ界のトップグループや。ヒット曲も両手じゃ到底数えきれん。 そのボーカルが谷村省吾や。この事務所…

ツーリング日和7(第25話)仙台出張

どうでもこうでも飛鳥井瞬を口説き落とさんといかん。強引に仙台出張にしたった。出張の仕事の方は、そりゃ、もう気合でトットと終わらせたで。ユッキーなんかゴチャゴチャと会議が長引きそうになったら睨みまで使いよったもんな。「仙台からどれぐらい」 コ…

ツーリング日和7(第24話)ドラマの思い出

ミサキちゃんから、「また厄介な問題を持って帰って来て・・・」 コウたちとマスツーしたんは失敗やった。「でもコウからの頼みだから断り切れなかったのですよね」 そうなってもた。杉谷温泉でコトリとユッキーが説き伏せそこなったのは相手がコウやったからな…

ツーリング日和7(第23話)フェリーの二人

新潟からのフェリーで明日には敦賀や。「コトリ、コウにあんなこと言っちゃってどうする気なの」 「ああでもせんと、あの場は収まらへんやんか。それともあれ以上、説得できる材料があったか」 「まあ、そうなんだけど」 あないにコウが頑なやったんは驚かさ…

ツーリング日和7(第22話)杉谷温泉の夜

喜多方から国道四三九号を走って、「新潟県だ♪」 さらに国道四九号を走って、さらに国道二九〇号に、「こんなところに自衛隊の演習場があるんだ」 ホントだ。「杉村温泉って書いてある方に行くで」 「らじゃだけど、これ細いね」 バイクでも前からクルマは来…

ツーリング日和7(第21話)さざえ堂から喜多方ラーメン

鶴ヶ城を見終わったら、もう一か所行くって。着いてみたら三階建てのお堂。六角形なのが目を引くけど、「特徴は二重螺旋階段になっとるとこや。つまりは登りと下りで階段がちゃうねん。コトリも日本の伝統建築物で二重螺旋階段どころか螺旋階段も見たことあ…

ツーリング日和7(第20話)鶴ヶ城とアームストロング砲

東山温泉から道すがら会津武家屋敷に寄って、「ここも完全再現なのね」 さらっと見て鶴ヶ城へ。どっちも近いのよね。ここも再建天守だけどさすがに立派なもの。「あそこが小田山ね・・・」 鶴ヶ城の泣き所だって。あそこから鶴ヶ城までわずか一・五キロぐらいし…

ツーリング日和7(第19話)向瀧

日新館から会津市内を南下して向かったのは東山温泉。そうだね神戸に対する有馬温泉みたいなとこかもしれない。鶴ヶ城からも近いけど、「山の中ね」 東山の名の通り、鶴ヶ城の東側の山の中にあるで良さそう。湯川沿いに広がる温泉地だけど、会津藩時代は湯治…

ツーリング日和7(第18話)日新館

吾妻小富士は十分ぐらいで噴火口に着いて、あとは噴火口をぐるっと回る。噴火口も凄いけど、とにかく遮るものがないから景色が最高。とくに山頂部から見渡せる景色はまさに雄大としか言いようがない。浄土平を一望に見下ろすものね。 下りてきたらレークライ…

ツーリング日和7(第17話)磐梯吾妻スカイライン

「おはようございます」 朝風呂浴びて、コトリさんたちの部屋で朝食。湯豆腐が付いてるのがおもしろかった。荷物をまとめて朝の温泉街を眺めながらクルマで駐車場まで送ってもらって出発。今日の目的地は会津だ。 昨日北上した道をまずは戻る。尾花沢から、…

ツーリング日和7(第16話)二度目の経験

二人の朝の二回目。感想はやっぱり痛かったけどだいぶマシ。初回との差はあれこれらるけど、一番の差は経験だな。ユリだって知識はあるし、知識に基づいてあれこれ妄想してた。とくにコウが恋人になってからは、コウを妄想しながらセルフで慰めてた。 ヴァー…

ツーリング日和7(第15話)大正ロマンの宿

立石寺からは今日の宿に向かうみたい。「コトリ、ワガママ言ってゴメンネ」 「エエんよ、コトリも行きたかったし」 あれっ、北上するんだ。「芭蕉やけど尾花沢から立石寺に南下したけど、おそらく似たような道を尾花沢まで北上しとるはずや。さすがに芭蕉の…

ツーリング日和7(第14話)立石寺

仙台からのツーリングだけど、予想通りというか、そうなるというかで、「マスツーにしようや」 反対するほどの理由もないし、コウも今回のツーリングで仕事は遠野と仙台だけ。これはユリとの旅行の比重を重くしてくれたから。ストリート・ピアノを弾くのは別…

ツーリング日和7(第13話)ジョイント・コンサート

ユリたちは仙台のウエスティンに直行。今日はバイオリンとのコンサートだ。二人でやるからジョイント・コンサートと銘打ってある。コウのお相手のバイオリニストだけど五藤穂乃果。若手ナンバー・ワンとも呼ばれる新進気鋭の実力者。さらに美人だから人気も…

ツーリング日和7(第12話)お寺のピアノ

毛越寺まで来たのは観光のためでもあるけどピアノのためでもある。毛越寺の貫主、まあ住職さんのことだけど音楽が大好きみたいで、本堂の前に期間限定だけどピアノを置いてるんだよ。浄土寺庭園を回ってる間も時々ピアノの音がしてたものね。「これだけのお…

ツーリング日和7(第11話)中尊寺から毛越寺

月見坂から中尊寺拝観。やっぱり見どころは金色堂。もちろん初めて見るけど、こりゃ、本当にキンキラキンだ。でも藤原氏時代から残っているのはこれだけ。これだけでも残ったのは凄いけど、やっぱり頼朝に焼き討ちされたんだろうな。「いやそうじゃない。泰…

ツーリング日和7(第10話)平泉幻想

朝は露天風呂の桂の湯に入ってきた。ここは男女別にあるから他の男に裸を見られる心配はない。朝食も頂いて八時過ぎには出発だ。来た道を戻って花巻南ICから平泉前沢ICまで南下。九時には中尊寺の駐車場に到着。 それにしてもコウがあんなに歴史に詳しい…

ツーリング日和7(第9話)鉛温泉の夜

遠野でのリサイタルが終わると花巻に引き返し、宮沢賢治記念館と宮沢賢治童話村を巡ったのだけど、さすがにくたびれた。二日続きの超早起きも応えた感じ。ここまでの走行距離は二百二十キロぐらいだし、高速利用も多かったけど、それでもね。「それは悪かっ…

ツーリング日和7(第8話)コウのピアノ

コウが演奏を依頼されたのは伝承館。南部の曲がり家の中にピアノが置いてあって、庭で聴く感じかな。それにしてもコウも遠野物語に詳しかったな。「まあね。演奏する場所に合わせて曲を選ぶのも重要だから」 へぇ、そんなことを考えてたんだ。単にその日に思…

ツーリング日和7(第7話)遠野物語

翌朝は眠ったと思ったらコウに起こされた。一緒にシャワーを浴びて着替えと荷造りだ。つうのも秋田到着が五時五分なんだ。秋田ではフェリー到着と共に下船が始まるから、それまでにスタンバイしておかないとならないんだよね。 ボーディング・ブリッジから下…

ツーリング日和7(第6話)初体験

コウとの待望のツーリングだけど五時出発ってなによ。フェリーは九時半出航じゃない。「出航は九時半だけど、その一時間前には乗船手続きを済ませなくちゃいけなんだよ。神戸から敦賀まで走り続けて二時間半はかかるからね」 九時半出航なら八時半までに乗船…

ツーリング日和7(第5話)コウ

ユリにも恋人がいる。お母ちゃんとの話に出て来たコウだよ。コウはね、そりゃもうの美男子なんだよ。髪は銀色に染めてる。もちろん若白髪じゃないよ。顔は絵に描いたように端正。でもね、男性アイドルの甘いマスクと言うより、クールでキリッとした感じかな…

ツーリング日和7(第4話)小説家デビュー秘話

お母ちゃんはエロだけど人気小説家だ。ユリが生まれた頃にはすでに売れっ子になってたはず。つうかお母ちゃんはエロ小説家として自立していたからシングル・マザーを選べたんだよな。「ユリは絶対産む気だったよ」 さすがはエロ小説家でも母親だ。「だって、…