天使と女神シリーズ8 流星セレナーデ

クレイエールで四百年ぶりにコンビを組んだユッキーとコトリ。そこに襲い来る神の母星の脅威。否応なしに巻き込まれる二人の運命は。スケールだけは壮大な規模で贈るSFミステリです。

流星セレナーデ:あとがき

一昨年のお盆から書き始めた連作ですが、これで実に十一作目です。処女作は苦心惨憺して十月までかかり、第二作も十二月までかかっています。でも書き慣れって怖いもので、以後はおおよそ一ヶ月に一作ぐらいのペースになっており今年に入って九作目になって…

流星セレナーデ:ミサキの決心

神戸空港での二回目の宇宙船騒ぎから七年が過ぎました。あの時のエラン人も次々と亡くなってしまいました。どうも感染症管理が極度に進んでいたエラン人に、地球の病原菌は厳し過ぎたのではないかとされています。 エラン人からの聞き取り調査は難航しました…

流星セレナーデ:宇宙船みたび

地球に向かってくる小惑星が突然現れたニュースが報道されたのは八年後のことでした。さすがのNASAも早い段階で、 『惑星エランからの宇宙船の可能性が高い』 こうしています。コースが十一年前の彗星、八年前の宇宙船とほぼ同じですから否定するだけ無…

流星セレナーデ:セレナーデ

アラの葬儀が終わりしばらくしてから、 『カランカラン』 いつものバーに誘われました。 「コトリ副社長、アラはエラン人にとって英雄だったのですか」 コトリ副社長はスコッチの入ったロック・グラスをゆっくりと弄ぶように、 「英雄だよ。千年の戦乱を鎮め…

流星セレナーデ:アラとコトリ

宇宙船団が帰ってからミサキが耳にした個人的な大ニュースは、コトリ副社長がアラとまた引っ付いちゃったのです。一時はアラを殺しかけ、その後も社史編纂室に監禁状態、お茶室会談の後でさえ軟禁状態だったアラとですよ。ビックリしてユッキー社長のところ…

流星セレナーデ:歴史は繰り返す

「ミサキちゃん、晩御飯食べて帰らへん」 「コトリ副社長、どこに行くのですか」 「久しぶりに出前取ろうって、ユッキーと言うとってん」 お鮨は三十二階の龍すし支店から。この店は通常は出前をしないのですが、クレイエール本社ビル内だけ、いや事実上は三…

流星セレナーデ:女神の享楽欲

あれから何回かユッキー全権代表とエラン代表との会談が行われ、エラン船は日本の放射性廃棄物をゴッソリ積み込んで砂漠の砂の採取に飛び立っていきました。他のエラン船も諸国の放射性廃棄物をゴッソリ積み込んだ上で砂漠で砂採取です。これも短期間で終了…

流星セレナーデ:推理は巡る

「最後の反乱の真相は」 「アラの言葉を信じれば人類破滅兵器が使用されたことが周知されてしまったことかな」 「コトリもそう思う。エランでも変な宗教団体はおったんやと思う」 ミサキの頭の中には地下鉄サリン事件が思い出されています。 「たぶんやけど…

流星セレナーデ:偉大なるアラ

アラは社史編纂室に戻り三人は仮眠室のリビングルームに、 「コトリ、間違いないね」 「そやな、意識分離技術は不老不死とは関係なく広がったでエエと思う」 「これで十万人の説明が出来るわ」 「どういうことですか」 「ビール飲む」 コトリ副社長は缶ビー…

流星セレナーデ:お茶室会談

クレイエールでは大阪支社に本社機能をある程度移し、シノブ専務と佐竹本部長が代行として経営の実質的な指揮を執られています。そのために社長も、副社長も、ミサキもエランの宇宙船対策に専念できる体制になっています。まあ、うちうちではそういう体制に…

流星セレナーデ:第二回会談

なんだかんだで二週間ぐらいかかりましたが、第二回会談が空港ビルで行われました。どんなことが話合われるのか興味津々でしたが、ユッキー社長がいきなり冒頭に持ちだしたのが、 『宇宙船の移動』 宇宙船のサイズは長さが千五百メートル、幅が二百メートル…

流星セレナーデ:会談後

エランの代表団が宇宙船に帰った後がそりゃ大変。誰だってユッキー社長と、エラン代表団がなにを話していたか知りたくて仕方がないからです。ユッキー社長は、 『相手はエランという名の惑星政府である』 『目的は彗星騒ぎの時の宇宙船で地球に来た国家的重…

流星セレナーデ:会談

ミサキは社長と副社長の話を聞かされて、まんじりと出来ないまま朝を迎えました。一方でお二人は健やかな寝息を立てられて熟睡です。朝食はコーヒーとサンドイッチでしたが、ミサキはコーヒーすら飲めなくなっています。それでもスーツに着替えて待機です。 …

流星セレナーデ:着陸前夜

空港での夕食も終り夜になりましたが、とにかく部屋から出ることもできません。部屋の前には婦人警官が貼り付いているからです。御手洗に行くのも御手洗の中まで付いてくる状態ですから、監禁状態みたいなものです。ミサキは緊張と部屋から出られないストレ…

流星セレナーデ:着陸前日昼間

ポートアイランドの混雑はますますひどくなり、本社ビルから眺めても、人、人、人です。それに対応してユッキー社長は、本社機能を一時的に大阪支社に移すことにしました。これだけ人の山になってしまうと、通勤するのさえ一苦労だからです。シノブ専務と佐…

流星セレナーデ:総理との会談

クレイエール本社はポートアイランドにあるのですが、宇宙船の着陸日が迫るにつれてエライことになってます。それこそ世界中のジャーナリストが神戸に押し寄せて来てる感じです。ジャーナリストだけではなく宇宙船見物のために数えきれない人々が押し寄せて…

流星セレナーデ:船団からのコンタクト

フィルことアラは社史編纂室に配置換え、いわゆる窓際の極致ですが、 「なにか意味があるのですか」 「社史を編纂してもらうためよ」 「えっ」 「冗談よ、逃げ出せないようにしてるだけ」 「でも、出入り自由ですし」 「アラは呼吸以外に出来ることはないわ…

流星セレナーデ:エランの戦乱

料亭での審問会の後にコトリ副社長にバーに誘われました。 「社長、怖かったです。あれが氷の女神なんですか」 「そうよ、でもエレギオン時代よりかなり温和になってるよ」 ひぇぇぇ、もっと怖かったんだ。 「ミサキちゃんも聞きたいでしょう」 「もちろんで…

流星セレナーデ:氷の女神

今日は例の料亭での密談です。行く前にコトリ副社長から、 「ミサキちゃん、今日は覚悟しときや。いつもと違うものが見れるよ」 今日呼ばれたのは四女神と佐竹本部長、さらにフィルも呼ばれています。話は冒頭から宇宙船団対策になりました。ここまでの展開…

流星セレナーデ:船団、周回軌道に

NASAがあらゆる天文台の反論を押し潰して、 『あれは小惑星群である』 こう頑張っていたのを撤回し、 『他星系からの宇宙船である』 こう認めた瞬間に世界中がパニックになったとしても良いと思います。さっそく宇宙船饅頭、宇宙船煎餅、宇宙船チップス…

流星セレナーデ:戦略と戦術

ユッキー社長が、 「意見は一致したで良いかしら。フィルはどう」 「同意する」 ミサキはちょっと不安で、 「ホントにイイの」 「前に社長やコトリが四千六百年にわたってエレギオン人を統治した話を聞いた。その間に外寇こそあったが、内乱やクーデター騒ぎ…

流星セレナーデ:小惑星群接近

彗星騒ぎの記憶も生々しいのに新たに飛び込んできたのが、 『小惑星群が地球に接近する』 地球から観測される小惑星はかなりの精度で観測されているはずですが、突如という感じで出現したと報じられています。それも出現位置も地球接近コースも前回の彗星と…

流星セレナーデ:フィル

料亭の後のフィルは母星のフィルになってます。どうやら、フィルに乗り移ってから表に出てきたのは、あの料亭の時が初めてだったようで、一旦表に出てしまうと引っ込めなくなったのはウソでないみたい。オーストラリアの御両親に会いに行くときに困ると思う…

流星セレナーデ:瀕死の母星

『カランカラン』 いつものバーだけど、今日はフィルと一緒。聞きたいことがあるって、そりゃそうでしょうねぇ。 「ミサキ、社長はどういう人なんだ」 今から五千年前にエレギオン王国を起し、コトリ副社長と共に延々と統治を続けていたことを教えました。 …

流星セレナーデ:母星の神との対決

「まさか生き残っているとは驚いた。記録にはあったが、こうやって実際に会えるとは奇跡だな」 「大変だったわよ。まあ、そんな話は今度でも出来るから、目的はなんだったの」 「新天地への移住だ」 フィルの話では、母星の状態はある種の末期状態としていま…

流星セレナーデ:料亭密談

今日は例の料亭での密談です。彗星騒ぎのドサクサで手に入れた資産の活用方針が中心で、とくに今後の海外事業部のあり方について話合っていました。その辺が一段落したあたりでシノブ専務が、 「フィリップ・スミスとカバーキ村とは直接の関係はありません」…

流星セレナーデ:支社強化

彗星騒ぎでクレイエールはクール・ド・キュヴェやジュエリーが飛ぶように売れたり、六甲山の保養所が売れたりしましたが、ミサキはトータルとしては損失の方が多いと思っていました。ところが蓋を開けてみるとアングリするような状況になっています。 株式証…

流星セレナーデ:宇宙船情報

衝突後にユッキー社長から連絡があり、クレイエール本社の無事と仕事の再開の相談があるから明日から出社して欲しいとありました。会社着くと、シノブ専務も来られており、ユッキー社長から、 「これから山から海に人の大移動が起るのと、機能麻痺している機…

流星セレナーデ:衝突の日

彗星衝突が避けられないものになり、ついに衝突予想日が発表されました。世界中が大混乱になり、平和そうな日本だってもう仕事になりません。クレイエールも無断欠勤者がうなぎ上りに増えユッキー社長は、 「彗星衝突日までお休み」 これは英断と言うより現…

流星セレナーデ:彗星接近

いよいよ彗星は接近し、地球への衝突は不可避との予測が濃くなっています。国会でも連日彗星問題が審議され、政府も担当大臣を任命したり、特別対策室を作ったりしていますが、事実上のお手上げ。先日の国会審議でも総理が、 「後は日本から遠くの海に衝突し…