天使と女神シリーズ31 ツーリング日和11
子どもの時から妹が溺愛され、母親と確執を続けて来たエル。それでも社会人になり恋人が出来て、結婚までカウントダウン状態でした。ところが妹が婚約者を寝取り妊娠までしてしまい破談。 傷心のエルは会社も辞めてSRを買い、当てもないツーリングに出かけます。草津で昼食後にマシントラブル。途方に暮れていたエルを助けてくれたのはモトブロガーをしているという加藤。 エルはこのままま別れてしまうのが惜しいと感じ、加藤がやっている中山道六十九次の取材に同行することになります。関が原、妻籠と泊りを重ね加藤にドンドン魅かれていくエル。 加藤から塩尻で取材は終りで信州ツーリングを提案されて飛びつきます。憧れのヴィーナスラインをラブラブツーリング気分で走っていましたが、そこに現れたのが二人組の美女。加藤と旧知みたいで、また奪われてしまうのかと気持ちが暗くなってしまいます。 エルと加藤の恋の行方はどうなるのか。 |
今回は信州ツーリングでしたが、ここまで残されただけあってコースを組むのに難儀しました。どう頑張っても下道で神戸から行くのに無理があるからです。それでもあれこれ無理算段をしている時に思いついたのが中山道です。 これをたどらせながら信州に行かせ…
「今回のツーリングはおかし過ぎるよ」 いやそこまでお菓子のお土産は買い込んでへんで。土産物屋のお菓子はどこに行っても似たようなもんやし、そこの特産とかなったら生菓子が多いから、どうしたって日持ちに無理が出てくるさかいな。「そういう意味じゃな…
親父と丈太郎さんとの顔合わせが終わり、また結婚へのステップを一つ上がった気分。ルンルンでエルのマンションに戻った。でもさぁ、丈太郎さんだけど、明日帰らなくても良いじゃないの。 エルはプータローだし、丈太郎さんだって時間に融通が利くモトブロガ…
北陸道から名神と走るのだけど、早朝だけあって快適だ。どれぐらいで帰れるの、「そうでんな。休憩なしで順調に行って二時間半ってとこでっかな」 だったら九時半には大阪だね。だけど思いの外に順調だ。草津JCTでまだ七時半だもの。ここも忘れらないとこ…
朝はさすがに眠かった。エルも燃えちゃって三回戦までやったもの。三回戦目なんかどうなってしまうのかと思うほど悶えまくった。女ってあんなに感じれるものだと我ながら感心したぐらい。 それとこれは当たり前だけど、回戦を重ねるほどに時間が長くなる。早…
「はぁ、はぁ・・・」 強烈だった。これ以上はないってぐらい喜ばされた。さすがにグッタリ。昨夜だって最高としか思えなかったけど、今夜はもっと最高。コスプレでも処女ってこんなに効果があるのかな。 丈太郎さんなんて感動までしてくれたし、エルだってなん…
他にも妥協した点は多々ある。エルが演じたのは薄幸の遊女だけど、水揚げされるぐらいだから未通女、つまりは初体験なのよ。男を知らない女が初めて男を迎え入れるコスプレが必要だったけど、「そない言うけど、怖さと緊張でプルプル震える様子なんか処女そ…
「エル、エル、わてが誰かわかるか」 エルを女にしてくれた愛しの丈太郎さん。「そやのうて、ここがどこかはわかるか」 ここは遊廓の一室。「ちゃうで、元遊廓やけどタダの旅館やし、ツーリング中やで」 そういうことか。わかってるって、エルはどう見えた?…
ここは遊女たちが明日をも見えない日々を過ごした部屋。遊女たちは自分を買った男どもに組み伏せられ、血の涙を流しながら男の欲望を満たしていたところだ。遊女は男たちに弄ばれながら、幾度あの天井を見上げていたのだろう。どんな思いで男を受け入れたの…
両津なんだけど昨夜と違う宿。「明日のフェリーが早いから、なるべくフェリーターミナルに近いとこにした」 昨日だって五分ぐらいだったじゃない。「基準はそれだけだからね」 「そや、それ以外になんも選考要素に入れてへんからな」 明日は九時十五分発だか…
初めて迎えた二人の朝。朝日がこんなに眩しいのを初めて知ったかな。そこから恥しかったけど貸し切り露天風呂に行ったんだ。露天風呂は加納湖に向かって開けていて、まるで二人を祝福するような晴天で綺麗だ。「エルほど完璧なスタイルはおらへんな」 恥しい…
二時間半のフェリーの旅は・・・正直なところ長かった。フェリーってやることがないんだもの。展望ラウンジ行って、売店のぞいたら、後はゲームコーナーぐらいしかない。さすがにこの歳でゲームに熱中できないし。 外のデッキにも出れるところあるけど、見える…
翌朝にお食事処で顔を合わせたのだけど、あの二人、早朝から外湯巡りをしてやがった。まあ、それは良いとして開口一番、「まだなんかいな」 「中学生じゃないんだから」 どうして見ただけでわかるのよ、「わからんかったら社長は出来ん」 「副社長もよ」 関…
高宮君が話したヤクザ世界だけど、これだってかなりクラシックだそう。暴対法が厳しくなって古典的なシノギが出来なくなってるとか。「そうでんねん。あれだけシノギが締めあげられたら苦しゅうなります。時代に対応できへん組はかなり潰れましたわ。そやか…
部屋に戻った。信じられないけど加藤さんのマドンナってエルだったんだ。そう考えると疑問はかなり解ける。そりゃ、加藤さんにしたらエルに夢中になるだろうし、大切にしてもおかしくない。でもそんなにモテてたのかな。「なんでウソ言わなあきまへんねん。…
外湯巡りは大変だったけど、やってみたら楽しかった。なにごともやってみないとわからないものだ。この旅館もお食事処なんだけど、ここも良い感じ。なんか贅沢って感じがする。盛り付けも高級懐石って感じで見ただけで美味しそう。「山の幸がテンコモリやな…
宿は外から見たら古びてる感じもあったけど、中に入ると、ひゃぁ、なんてゴージャス。ゴージャスもおかしいか。圧倒されそうなぐらい立派。あれは檜かな。ごっつい柱があって、床だってびっしり板張りして黒光りしてるもの。見ただけでわかる高級日本旅館じ…
草津温泉から国道二九二号だ。志賀草津道路とも呼ぶらしいけど、ナビには、「浅間・志賀・白根さわやか街道ってなってるけど、地元の人さえ呼ばないのじゃないのかな」 「道に名前つけすぎちゃうか」 愛称はあったほうが良い気がするけど、「ああいうもんは…
朝は野天風呂も考えたけど、内風呂にした。野天風呂は景色は良いけど、やっぱり恥しいもの。へぇ、温かい方が加熱してあって、ぬるくて乳白色の方が源泉なのか。これは檜風呂みたいだけど気持ちイイ。お食事処に加藤さんと行ったのだけど、あの二人が待ち構…
夕食が終わると部屋に戻るのだけど、「朝までごゆっくり」 「頑張ってな」 なにを頑張るのよ。たく、あの二人が煽りまくるから意識しちゃうじゃないの。意識だけはしてたよ。昨夜も一昨夜も。そりゃ、部屋は別だったけど、宿が宿じゃない。この旅館みたいに…
この二人はなんなんだ。エルの敵と言うか、加藤さんを巡るライバルではなさそうなのはわかった。応援してくれてそうなのも察することは出来るかもしれない。だけどまだ会ったばかりなのにそこまで踏み込むか。「風呂あがってメシ行こか」 「やっぱり山の幸よ…
「もうちょい先でんねん」 えっ、ここじゃないんだ。左の道に入って行ったけど、ちょっと待ってよダートじゃない。こんなとこを走るって言うの、「エエ宿でっせ。ユッキーさんなら行きまっしゃろ」 ユッキーさんはゴチゴチの秘湯趣味があるそうなんだ。しば…
さてここからだけど、「小諸まで行ってチェリーパークラインや」 「加藤さんよろしくね。コトリじゃ絶対に迷うから」 「聞こえとるで、絶対が余計じゃ」 チェリーパークラインって可愛い名前だな。それにしてもここから軽井沢は近いんだ。つうか、こんなとこ…
高原美術館から美ヶ原公園西内線を下り、県道六十二号を東に。随分下ったな。ビーナスラインは車山高原あたりで標高千六百メートルぐらいで、高原美術館あたりになると二千メートル近くになるんだよ。「街まで下りたら五百メートルぐらいになりまっせ」 とい…
コースは最高なんだけど、ビーナスラインに入った頃から天気が怪しそう。諏訪ICでは晴れてたんだけど雲行きがどうにも。こういう高原道路は晴れてたら絶景なんだけど、とにかく山の天気は変わりやすいのはホントだ。加藤さんが難しそうな顔で雨雲レーダー…
泊ったのは妻籠宿だったけど、馬籠宿からが中山道の木曽路になるのだそう。中山道にも難所があって、京都から見れば、 ・太田の渡 ・木曽の桟 ・碓氷峠 太田の渡しは美濃加茂にあったんだけど、京都から来ると木曽川を渡るところになるかな。今は橋でひょい…
馬籠宿を下ってバイクで陣馬上展望台に登って妻籠に。馬籠から妻籠は遊歩道と言うか昔の中山道を歩いて行けるそうだけど、今日は県道七号で行く、と言うかバイクじゃ走れないものね。「今日は妻籠で泊まるけどエエか?」 妻籠に泊まる♪ それって夢みたいなも…
夜は襲って来なかった。もっとも、もし襲われたら・・・さすがに会ったその日は無理だ。起きて着替えをしていたら、「おはよう」 早起きなんだと思ったら、早朝から関が原の取材をしてたみたい。さすがはモトブロガーだ。それから朝食を頂いて、「とうりゃ」 や…
飯も食べたし、「とうりゃ」 あれ、おかしいな。SRのキックが難しいと言っても、あれはコールドスタートの時。エンジンが暖まれば話が違うんだ。「とうりゃ」 堪忍してよ。まさかこんなところでキックがヒステリーを起こすなんて、「とうりゃ」 SRのキッ…
エルの復讐より親父の報復は、「もう済ませた」 がっぽり慰謝料でも取ったのかと思ったらそうでなく、「離婚して退職しただけで十分だ」 これはうちの親族事情が絡んでくる。エルの家は貧乏じゃない、それどころか親父は社長だ。それも一族経営の三代目なん…