天使と女神シリーズ外伝5 目指せ! 写真甲子園
摩耶学園高校2年生になった小林エミは同級生の野川から写真部に誘われます。入ってみると3年生もおらず、エミも含めて5人の小さな部活です。ド素人のエミも楽しみながら活動していましたが写真部は大きな問題を抱えている事を知ります。 長年の成績不振が祟り部活からサークルへの降格を迫られていたのです。それを逃れる条件は写真甲子園の初戦審査会突破です。写真甲子園とは3人でチームを組み8枚の組み写真で勝負を競う団体戦です。 しかし部長の野川はあきらめムードで写真甲子園の参加さえ考えていません。悔しいエミは副部長の藤堂、1年のミサトから事情を聞くと写真甲子園に出場するには校内予選を突破する必要があるのを知ります。写真甲子園は写真部だけに出場資格があるのではなく、高校生なら誰でも3人でチームを組めば出場可能なのです。しかし学校を代表できるのは1チームのみ。 摩耶学園には宗像が率いるチームがおり去年は一蹴されているのです。宗像の率いるチームは高校生ならドリーム・チームとも言える実力。一方の写真部は部長の野川と経験者のミサトはともかく、残りの3人は素人同然。やる前から勝負がわかっているようなものです。 野川と宗像には小学校から続く因縁があり、常に野川が悔しい思いを強いられていた事も知ります。藤堂もミサトもなんとか野川の力になりたい思いがあるものの実力差に歯噛みするばかりです。 エミは野川にコーチを招聘する提案をします。エミが伝手伝手を頼んで来てくれたコーチを見て野川は絶句します。プロの中のプロであり、世界一のフォトグラファーであるオフィス加納の麻吹つばさだったのです。 ツバサは宗像とエミたちの写真を見て大した差でないと言い切り、オフィス加納のプロであるマドカやアカネまで動員してエミたちを鍛え上げます。宗像もツバサが写真部のコーチに就任したのを知り、オフィス加納とライバル関係である西川流の支援を受けます。 エミたちは夏休みの合宿、二学期の組み写真のトレーニングを重ねた末に宗像との校内予選に挑みます。ただエミたちには懸念がありました。去年の校内予選もそうですが、どうも宗像たちはなんらかのインチキをしているようなのです。 ツバサはそれを笑い飛ばし、エミたちを決戦の場に送り込みます。果たしてエミたちは宗像に勝ち初戦審査会への切符を手に入れるのか、波乱万丈のイブの決戦の火蓋が切って落とされます。 |
いうまでもなくエミの青春の続編です。舞台はシンプルに写真甲子園で、話としては高校青春もの。前に高校野球を書いたので、今度は文化部にしてみたぐらいです。主役はエミのつもりで、当初は野川に対する恋心を伏線にする予定でしたが、さすがに一冊は長か…
閉会式の夜にえらいもの見せられちゃった。ちょっと外の空気を吸いたいと思って歩いていたら部長がいたんだ。例の約束を果たしてやろうと思ったのだけど、そこにエミ先輩が現れたから思わず植え込みに隠れちゃった。どうも部長が呼び出したみたいで、 「これ…
ファイナルの撮影会場は予想通り東川町。テーマは、 『営み』 カラー・モノクロの指定なし。さらにこの日は競技開始時刻が朝四時から。北海道は緯度が高いから日の出が四時半ぐらいだから、その前から撮りはじめることになるのよ。競技時間も長くて十二時ま…
ファースト審査会は農園風景だったから、セカンド審査会は街の風景になると思ってたら、やはり旭川だった。テーマは、 『瞬間』 さらにモノクロ限定で、撮影場所は旭山動物園。そのうえ天気は生憎の曇り空。今にも降りだしそう。それとファースト審査会では…
海外代表のサプライズ参加はビッグ・ニュースとして扱われた。写真甲子園もかつてはマイナーな大会だったけど、写真人気の高まりとともに注目を集めてるんだよ。そこに海外代表、それもビッグ・ネームのロイド先生やミュラー先生がチームを引き連れての参加…
開会式なんだけど、これも大会特製のTシャツが配られてるの。これも以前は何色かの中から選べたそうだけど、今は白のみ。左胸に大会ロゴとその上に高校名がプリントされてるシンプルなもの。それでも高校写真部にとって憧れの白Tシャツとも呼ばれてるらし…
終業式が終わって、後は決勝大会を待つばかりだけど、 「ところで野川君、どうやって東川町まで行くの?」 野川君は大会からの招待状を見ながら、 「大会は八月四日の夕方に開会式から始まるのだけど、ボクたちは三日に伊丹から旭川に向かうことになる。搭乗…
「マドカ、手間取らせて悪かった。どうだった」 「噂は本当でした」 写真甲子園の決勝大会出場枠は十八なんだが、ここに来て今年はもう二つ増やす噂があるのだよ。それも特別枠を増やすのでなく、完全に別枠で増やすって言うのだよな。だからマドカに聞いて…
ブロック審査会で全国への切符をつかんでから麻吹先生は雨や曇りの日の撮影に重点を置きだしたのよね。それも天気の悪い日ほど明るいテーマの課題を与えられるから大変。だって、 「おぉ、雷も鳴ってるな。これならテーマは『明るい笑顔』だ。それだけじゃ、…
初戦審査会の次の関門はブロック審査会。近畿ブロックで初戦審査会を突破したのは予想通り十五校。つまりは決勝大会の出場切符は三枚になるの。ブロック審査会は六月十三日にあるけど、 「会場は大阪なのね」 「大阪駅から十分ぐらいだけど、東西線の北新地…
審査が行われるのは五月二十四日。とはいうものの、非公開だからどうなってるのかわりようがないのよね。 「野川君、結果はいつわかるの」 「二十五日の午後から順次学校に連絡が入るとなってるけど」 月曜の授業はまさに上の空。昼休みになんとなく部室に集…
南さんと藤堂君嬉しそうだった。あんな恋の結ばれ方もあるんだね。南さんも頑張ってたもの。ずっと居残りで個人レッスンして、 「これじゃあ、ダメ。これでは・・・」 本番の時には見事なダンスだったし、告白も立派だった。今ではホント、幸せそうなカップルだ…
なぜか麻吹先生が出したトンデモ計画の責任者はミサト。 「ボクがやったら藤堂に勘付かれちゃうだろうし」 「エミもよ。それにこれは南さんの恋の仲立ちをするのを引き受けたミサトさんのお仕事だと思うよ」 うぇ~ん。あの時はちゃんと引き受けるって言って…
野川部長も、エミ先輩も、もちろんミサトだって頑張ってる。三人で受持ちの分担を決めて、麻吹先生の指示通りに密着取材中ってところかな。やはりというか、当然というか、一番喜ばれたのが、エミ先輩が受け持った部。もっともエミ先輩に言わせると、 「もう…
ミサトさんは頑張ってくれた。エミの障害飛越の練習が長引いちゃって一発勝負になっちゃったけど野川君は、 「こりゃ、凄い。予想したより何倍も良いよ」 エミもそう思う。これは、ちょっとやそっとで撮れるものじゃないもの。問題は次の展開だけど、 「オー…
エミ先輩の家に泊るのもこれで五度目。五度目と言っても金土日の二泊三日だから、すっかり親しくなっちゃって、可愛がってもらってる。こうやって泊らせてもらうとわかるのだけど、本当に働き者一家ってしみじみわかっちゃった。 とにかく朝が早いのよね。馬…
学年末試験が写真甲子園のエントリー開始日に始まったのは笑ったけど、なんとか終わって部室に集合。もちろん作戦会議だけど、エミ先輩のところに泊らせてもらってまで練習したから、ミサトの構想はだいぶ固まって来てるんだ。 「やはり朝日の中で撮るのが良…
メイルを開くのが怖い。一月から新田先生のマン・ツー・マン指導状態だけど、送った写真にビッシリってぐらい指導が入るのよね。なんか胃がキリキリ痛む感じがする。文面は上品だけど指導内容はまさに容赦無し。 ミサトが気づかない点にも指摘は入るけど、ミ…
「マドカ、どうだ」 「頑張ってますけど、動く課題は早かったのではないですか」 「いや、尾崎なら出来る」 ツバサ先生流を高校生にどうかと思いますが、尾崎さんが背景の弱点を克服しないとならないのはマドカにもわかります。 「アカネ先生を思い出されて…
「今日は尾崎さんが来てるからサービス」 なんとクラブハウス内の立派なレストランに。なんか緊張しながらメニューを見たら、ムチャクチャ庶民的。 「うちは名前こそレストランだけど、もともと大衆食堂だからね」 まさに早い、安い、美味いの三拍子。食事を…
私はミサト、尾崎美里。始業式が終わって、放課後に部室に。さすがに年末からはお休みだったのよね。みんながそろったところで、 「あけましておめでとうございます」 今年の写真部の始まりだよ。野川部長が、 「イブの校内予選をクリアし初戦審査会への応募…
今日は正月三日。ユッキーのところにお年始に来たのだけど、 「待っとったで。もう始めてるさかい」 みんな来てるな。アカネも、マドカも、シノブちゃんも、ミサキさんも。家族連れだから、さしものリビングも狭く感じるな。大人も子ども一緒になって遊ぶ、…
馬に乗るエミの写真を使う話になってむくれてるエミに野川君は、 「馬は北海道とか九州ならまだ見ることはあるけど、近畿では少ないんだよ」 まあそうだろうけど、 「近畿で馬術部がある学校は全部で六校しかない。そのうち写真甲子園の初戦審査会に参加して…
今年の写真甲子園の応募要領を読んでるんだけど、初戦審査会は三月二日から応募作品の受付が始まり、締切が五月十五日必着になってるのだけど、 「応募期間が長いんだね。それと応募は三月からだね」 「エントリー開始日は曜日の関係があるからね。期間につ…
「麻吹先生、前に野川君に聞いたのですが、西川流の師範って、赤坂迎賓館スタジオでA1級まで取得して、さらにその上の資格ですよね」 西川流は故西川大蔵先生が作り上げたものだけど、辰巳先生が大改革したのは野川君に教えてもらってる。とにかく師範は大…
部室でささやかだけど祝勝会になったんだけど、 「麻吹先生、なにがあったのですか」 「あれか、辰巳に貸しを作ってやっただけ」 麻吹先生は去年の宗像君の作品を見ただけで、校内予選会の当日に撮られたものじゃないのはわかったらしい。 「でも、どうやっ…
ステージ向かって右側に写真部、左側に宗像君グループが着席し、真ん中に審査員席が作ってあるのだけど、気になるのは審査員。豆狸が大会委員長兼審査委員長だけど、まさか一人でやるとか。野川君に気になって聞いたのだけど、 「それはないと思うよ。だって…
朝九時にエミたちは会場となる講堂に集合。大会委員長は去年に引き続いて豆狸こと小豆田先生。 「写真甲子園に我が校を代表して出場できるのは一組のみ。写真部も宗像君のグループも是非にとの希望で校内予選会を執り行うものとする。高校生らしいフェアな戦…
宗像君グループが西川流の特訓を受けてるらしいの話を麻吹先生にしたんだけど、 「おもしろいじゃないか。これでちょっとは勝負になるかもしれんぞ」 いつもながら凄い自信で、エミたちが負けるなんて微塵も思っていないみたい。麻吹先生も気合が入って来た…
麻吹先生も交えて、ちょっとした作戦会議。 「校内予選の方式は?」 「これから詳細を詰めますが、去年は写真甲子園の初戦審査会に準じたものでした」 「三人でチームを組んで八枚の組み写真だな」 去年の校内予選を知ってるのは野川君だけ。藤堂君も一年の…