天使と女神シリーズ16 アカネ奮戦記

  一流プロを目指しオフィス加納の門を潜ったタケシ。師匠と仰ぐアカネへの秘めたる恋。この恋を実らすにはオフィス加納でプロになる事と精進を重ねる日々。タケシの恋を応援するツバサ、ユッキー、コトリ。しかしタケシはツバサに与えられた課題に苦悩し失踪。はたしてアカネはタケシの恋に気づくのか。波乱万丈の恋物語です。

アカネ奮戦記:あとがき

タイムリミットが迫っていたアカネの結婚話です。独身のままにしておくのもあったのですが、やはり結婚させてみたかったです。そうなるとラブ・ロマンスになりますが、どうにもアカネのキャラでは、微妙な心理描写で話を紡ぐには無理がありました。 それとラ…

アカネ奮戦記:華燭の典

式場はツバサ先生と同じで聖ルチア教会。ウェディング・プランはクレイエールの微笑む天使にした。動画はサキ先輩で、写真係はマドカさん。さすがにツバサ先生を来賓として外せないじゃない。だいたいツバサ先生に撮らせると、なにやらかすかわかんないじゃ…

アカネ奮戦記:タケシのデビュー

アカネは溜め込んでた仕事をヒィーヒィー言いながらこなすことになったんだ。 「ツバサ先生、なんとかしておくって話だったんじゃ」 「おう、延期交渉は大変だった。でもスタッフも頑張ってくれてキャンセルは出なかったぞ。ちょっと増えた分は御褒美と思え…

アカネ奮戦記:谷奥温泉

得体のしれないヌエみたいな女神どもだけど。イイこともちゃんとやってる。ユッキーさんはかなりの金額を村営の公衆浴場に寄付したんだよ。ありゃ、かなりどころでなくて、目を剥くぐらいで良さそう。 「あれか。コトリも寄付しといたし」 今までの公衆浴場…

アカネ奮戦記:女神の仕事

フォト・コンテストの審査の舞台裏は奇々怪々だったけど、そこまでやる必要があったのかな。とくにコトリさんが市長に脅しをかけたところ。 「あ、それ。市長がユッキーを怒らせてもたんよ」 「はぁ」 コトリさんたちは赤壁市に入る前に谷奥温泉に泊まってる…

アカネ奮戦記:勝負の綾

でも、あの審査結果がひっくり返ったのは辰巳が動いてくれたからだけど。あれはどういう事なんだろう。そしたらツバサ先生が、 「アカネ、辰巳は慌てたんだよ。辰巳の目的は自分がグランプリを正々堂々と勝ち取ること」 そのために辰巳は参加してるんだけど…

アカネ奮戦記:再審査

セッティングに少々時間がかかったけど再審査が始まった。ツバサ先生はスクリーンに二人の写真を並べて映すように要求した。会場からは、 「うぉぉ」 だろうね。ここまで審査発表はあったけど、写真は明日から展示と言うことで出されてなかったもの。やっぱ…

アカネ奮戦記:審査発表

「青島健です」 「はい、たしかに受け取りました」 タケシはついにやってくれた。アカネも文句の付けようのない出来だと思う。審査結果がどうであれ、タケシはプロだよ。このアカネが認めた正真正銘のプロ。ツバサ先生だって文句を言わせない。 作品の提出も…

アカネ奮戦記:温泉の二人

ほう、ここか。しかしまあ、谷奥温泉の名の通りで、ホンマに谷の奥にあるわ。 「ユッキー。ここの温泉の特徴は」 「ここは長寿の湯として知られてるの」 「なるほど! ユッキーも今年で七十九やもんな」 「コトリだって四十三よ」 あいたたた。寿命が短いの…

アカネ奮戦記:マイ・ラブ

タケシは精力的に撮って回ってる。イイ味出てるよ。タケシはオフィスを出てからカメラを置いてた時期があったけど、今となったら良かったかもしれない。オフィス時代の固さがほぐれた感じがする。どういうかな。弟子が一番苦労するのは、 『写真とはこう撮る…

アカネ奮戦記:知らなかった!

立木さんが教えてくれたんだけど、赤壁市にも天女伝説があるんだよ。良く聞いてみると以前にコトリさんに教えてもらったのと似てた。 だから天女が水浴びした羽衣の泉もあるし、長者屋敷の跡にも石碑が建ってる。天女が処刑されそうな男を天に連れて行ったと…

アカネ奮戦記:作戦会議

城下町フォト・コンテストの規定は大会の四週間前から撮影開始で、大会の前日の十時までに会場に提出となってる。その日に審査が行われて、夕方に発表・表彰で翌日から展示って段取り。 部門毎にエントリーが別れてて、小学生の部、中学生の部、一般の部、そ…

アカネ奮戦記:市長室にて

「市長、辰巳先生が御挨拶に参りました」 「うむ、通してくれ」 市長の観光利権政策に喰らいついて来た一人がシンエー・スタジオ。写真を利権化したいの提案に驚かされましたが、これを受け入れ、市内の観光写真だけではなく学校などの関連施設の撮影の独占…

アカネ奮戦記:辰巳雄一郎

辰巳雄一郎は写真家。その才能は小学生時代から神童と呼ばれ、高校卒業すると赤坂迎賓館スタジオに入門。わずか四年で師範まで取得しシンエー・スタジオに移っています。シンエー・スタジオに入ってからも西川流のプリンスとして注目され続け、三十歳になっ…

アカネ奮戦記:まさかの邂逅

築田先生相手の準備を進めていたのですが、そこに大変なニュースが飛び込んできたのです。 「タケシ、辰巳先生が出場されるだに」 「まさか、ウソでしょう。こんなコンテストに辰巳先生が出場されるなんてありえません」 「そうなんだが、シンエー・スタジオ…

アカネ奮戦記:シンエー・スタジオ

ここは東京のシンエー・スタジオの会議室。 「・・・次の議題は赤壁市の城下町フォト・コンテストです」 「今年も築田君が出るのかね」 「もう若いのにやらせようと考えています」 社長の辰巳はさして興味はなさそうに、 「そうだな。どうせ内輪のコンテストみ…

アカネ奮戦記:市長

「そろそろ市長も飽きたな・・・」 七選を目指した前市長に、 『停滞打破』 『市政改革』 これを掲げて挑戦し、三十歳の異例の若さで当選しています。それから十五年、四期目に突入しています。市長になって二年目に転機が訪れます。映画のロケ地になり、その映…

アカネ奮戦記:城下町フォト・コンテスト

立木写真館のある赤壁市はこの地方の中心都市で、江戸時代から続く城下町です。旧制中学からの伝統校もあり、さらに県立大学の教育学部もあり、文教都市としても知られています。 「立木さん、学校の写真とかの仕事はないのですか」 「昔はやってたが・・・」 …

アカネ奮戦記:再始動

「タケシはずくあるね~」 ここは谷奥温泉の民宿福寿荘。かつては旅館もあって栄えていたそうですが、今は村営の共同浴場と民宿が一軒だけの鄙びた温泉です。それでも長寿の湯として知られていて、入浴客がそれなりに来るところです。 福寿荘は一階に雑貨屋…

アカネ奮戦記:傷心

「その後はどうなの」 「それが・・・」 あの衝撃の夜の次の朝、アカネは休むと思ってたのだ。あれだけのショックを受けて仕事なんか出来るものじゃないからね。ところがアカネは出てきた。仕事もキッチリやった。さすがに心配だったからチェックもしたが、いつ…

アカネ奮戦記:衝撃の夜

夕方にオフィスに帰るとタケシは、 「ちょっとお手洗に行ってきます。先に見といて下さい」 メモリー・カードを渡されたけど、やっぱり一緒に見たいじゃない。とりあえずアカネのを見ておこう。どれどれ。だいたい思った通りに仕上がってる。そこにツバサ先…

アカネ奮戦記:大会当日

『甲陵倶楽部附属馬術会長杯障害馬術大会』 長ったらしい名前だな。 「ここですねアカネ先生」 「そうだよ」 ここも久しぶり。最後に来たのはツバサ先生の乗馬を見に来た時だっけ。タケシを馬場に案内しながら、 「アカネ先生、噂には聞いていましたが立派で…

アカネ奮戦記:なんか変な感じ

大会は近づいてくると言うのにタケシは迷走中。なんかマドカさんの時のことを思い出す。あの時は端正で上品すぎるマドカさんの写真に力強さを加える課題を出してみたんだ。 最初は順調だったんだ。質はともかく、男が力任せに撮ったような荒々しい写真が出て…

アカネ奮戦記:女神たちの心配

『コ~ン』 ここは鹿威しが鳴り響く、女神たちの棲家であるクレイエール・ビル三十階仮眠室。今日は女神の集まる日、アカネは逃げて来なかったが、今日に限って言えば、かえって都合が良い。 「・・・シオリも見えてたのね」 「あんなもの誰だってわかる。オフ…

アカネ奮戦記:アカネへの課題

タケシが完全に行き詰ってる。すんなり行くわけがないけど、苦しいだろうな。北六甲乗馬クラブで撮ってくる写真にも迷いが出まくっている。四股を踏むじゃなかった、試験監督じゃなかった、えっと、えっと、なんだっけ、そうだ! 思い出した。試行錯誤と言え…

アカネ奮戦記:また一人・・・

馬と馬術の勉強は進めています。初心者体験コースもやってみました。シノブさんをモデルにとにかく撮りまくってます。ただ撮っても、撮っても、アカネ先生からは、 『これじゃダメ。おもしろくない。タケシの世界を撮らなきゃダメ。タケシを縛ってるものから…

アカネ奮戦記:シノブさんのお友だち

シノブさんが北六甲乗馬クラブに来る時は、午後から来られて夕方まで練習されます。お一人のこともありますが、三人連れの時もあります。三人連れの時にはレストランで晩御飯も食べて帰られます。三人連れの時に紹介してもらったのですが、 「木村由紀恵です…

アカネ奮戦記:マドカ先生の話

ボクの師匠はアカネ先生ですが、オフィスでは他の三人の先生も時間があれば相談に乗ってくれますし、あれこれアドバイスしてくれます。師匠間の対立とか、それに巻き込まれる弟子同士の意地の張合いとも無縁の世界です。 これはどうも、ツバサ先生の力のよう…

アカネ奮戦記:大仕事

「タケシです。入ります」 ここはアカネ先生の部屋。プロとして専属契約を結ぶと専用の部屋が与えらます。何回もこの部屋には来てますが、それにしてもの物の山。 「どうもアカネは整理整頓が苦手でね」 アカネ先生にも欠点はあって、とにかく写真以外につい…

アカネ奮戦記:ツバサ先生

バーで飲んでる時に女神どもが来て、突然タケシに大仕事をさせる話が出ちゃったんだけど、 「ツバサ先生、甲陵の競馬大会の仕事ですが」 「競馬じゃない障害馬術だ」 似たようなものなのに、こういう細かいところにツバサ先生はこだわるな。 「タケシにさせ…