天使と女神シリーズ5 女神伝説第3部
エレギオン発掘に執念を燃やす港都大考古学部。協力依頼を受けたクレイエールはコトリの提案により全面支援を決断。二千年の時を越え次座の女神はエレギオンで何を見るのか。 |
正直なところを白状すると、第三部は無理がありました。第二部で風呂敷を広げすぎて話を作るのに悪戦苦闘ってところです。やっぱり第二部で終りにしておけば良かったと途中でどれだけ後悔したかです。 その辺は前半部分にありまして、第二部の焼き直しシーン…
「カランカラン」 いつものバー、飲まないとやってられない気分。 「マスター、マッカランをロックで」 「シェリー樽にしますか」 「いやファインオークの三十年にして」 いちおう祝杯かな。なんの祝杯かわかんないけど祝杯でエエやろ。ユダの話は面白かった…
この聖堂も前は通りがかったことはあったけど、入るのは学生の時以来かな。なんとなく避けてた部分はあるの。中はあんまり変わってないなぁ。震災の時の被害もしっかり修復されてる。そうそうミサも久しぶり。大学の時はルチアの天使やらされたから皆勤賞み…
今日は重役会議。コトリも腹を決めなきゃね。 「次の議題だが聖ルチア教会が復活したのは諸君も知っておると思う。当社と聖ルチア教会の関係は昔から深いものであり、ブライダル事業に是非利用したい」 「社長、利用は可能と思いますが、それだけじゃないで…
「小島君、明後日の日曜だが、森岡先生の政経文化パーティに出てくれ」 「あれは社長と副社長が出席される予定でしたが」 「そうだったんだが、高野君の御親戚に不幸があって出席出来なくなってしまったんだ」 森岡先生とは地元選出の衆議院議員。与党なんで…
寺田先生に旧聖ルチア女学院の資料をとりあえずクレイエールの倉庫に引き取る話を持っていくと大変喜んでくれました。ただ申し訳なさそうに、 「こんなことを頼めた義理じゃないんですが、資料を運ぶ人手も費用もないのです」 これについては小島専務がポケ…
「・・・寺田先生か。懐かしいな。もう還暦も越えちゃってるはずよ。お世話になったのよ」 「私もお世話になりました」 「コトリも卒業生でないものの、聖ルチア出身みたいなものだから、なんとかしてあげたいけど」 「コトリ先輩はルチアの天使でもありますし…
今日はシノブ常務と外にランチしようとなって玄関から出ようとしてたのですが、なにやら受付の方でちょっとした騒ぎが。受付業務も総務の管轄ですから気になって見に行きました。 「・・・だから小島知江さんに取り次いで欲しいの」 「何度も申し上げましたよう…
コトリ専務に連れられて来たのは龍すし。グルメ雑誌とかでは見たことがありますが、予約を取るのも困難とされている名店です。 「コトリ専務は来たことがあるのですか」 「うんにゃ、コトリも初めて」 格子戸を開けると女将さんが出迎えてくれたのですが、 …
エレギオンの特番から始まったエレギオン・ブームは続いています。天城教授も相本准教授もお忙しそうで、テレビや講演会に引っ張り凧状態のようです。とくに相本准教授は今やアイドル扱いみたいになっていて『ファン』もたくさんおられます。 コトリ専務のエ…
コトリ専務のエレギオン発掘プロジェクトは大成功に終わりました。クレイエール提供の特番は大反響で、あれだけで発掘プロジェクトにかけた予算は十分にお釣りがくると綾瀬社長は仰られていましたが、ミサキも同感です。もちろん当初の狙い通り、それだけの…
持ち帰った出土品の整理や分析に取りかかりたいところですが、まず取り組まされたのは番組の収録です。番組は前後編構成になっており、 『幻のエレギオン文明の秘宝』 こういうタイトルになってました。前編はエレギオン文明の概略の紹介と発掘準備、エレギ…
本神殿の床がすべて現れました。おそらく滑らかに磨き上げられた石であったと見て良さそうで。神殿の床は破壊された時に落下した石柱や壁石で傷んだ部分こそありましたが、ほぼ原形を保っていると見て良さそうです。 原型を保っているのは考古学者として嬉し…
翌朝早くに小島専務はボクたちと一緒に丘に登りました。 「ここもかつてはすべて石畳で舗装されていました。今でも掘れば残っている部分はあるかと思います」 丘の上は平らになっていましたが、小島専務は一直線に歩いて行かれます。大きな岩があったのです…
結団式と壮行会を済ませエレギオンに向かいますがとにかく遠い。飛行機を乗り継ぎ、乗り継ぎし、さらに空港からバスを乗り継ぎ、最後は先遣部隊からの迎えのクルマでやっと村に設けている支援拠点に到着。日本を出てから四十時間は越えてるはずです。小島専…
今週末にもボクたちはエレギオンに出発します。今日は相本君を我が家に招いて晩御飯を食べてます。 「教授、クレイエールというか小島専務は本当によくやってくれたと思います」 「うん、ここまで本格的というか大がかりなものになるなんて夢みたいだ」 小島…
相本君が小島専務から聞いてくるエレギオン情報は興味深過ぎるものがあります。ボクもゆっくり聞きたいのですが、外で会食するにもおカネがありません。そりゃ、外食するぐらいのおカネはありますが、クレイエールの専務を接待するだけのおカネがないという…
ボクは港都大考古学部古橋教室の天城茂です。この古橋教室なのですが、前教授が桐山先生、前助教授が曽我先生でした。だからどうしたと言われそうですが、キリヤマ、ソガ、フルハシ、そしてボクのアマギといたものでウルトラ警備隊と呼ばれた時期もありまし…
港都大学のエレギオン発掘調査への協賛問題はコトリ専務の手によって重役会議にかけられましたが、社長の関心を大いに引くことになりました。まずは学術的に価値が高い事業であるとしたいですが、会議では本音で語られますから、学術的価値が高いのは単なる…
クレイエールの業績は好調です。綾瀬時代は順調な滑り出しと行ったところです。社長の方針は、しばらくは体制固めに専念し、新規事業の展開はそれからぐらいの腹積もりのようです。その代わりといってはなんですが、文化事業に力を入れる方針を示されていま…
上に立つほど誰かを少しでも贔屓にすると小うるさいのよね。男同士でもそうだけど、女同士の方がうるさい気がする。ま、これが男と女となるとすぐに愛人関係って話も出てくるのが世の常やものね。あれは男が年上の上司で、女が若いってのがスタンダードやけ…
ここは専務室。 「シノブちゃんどうだった」 「ざっとぐらいしかわかんなかったけど」 結崎経営戦略本部長が依頼されていた調査はヴァチカン銀行こと宗教事業協会についてです。 「ヴァチカンとナチスの結びつきは有名だよね」 「そうみたいね。ナチスの戦犯…
「ところで使徒の祓魔師って神なのですか」 「そうよ。ある能力に特化した神の理解で良いわ」 「でも、イエスの時代に武神なんてそんなに生き残っていたのでしょうか」 記憶を受け継がない神、とくに武神は出産から乳幼児期の死亡でイエスの時代でさえ、ほと…
今日はコトリ専務がうちに遊びに来ました。色んな話を聞きたかったのですが、その前にサラとケイと遊ぶ遊ぶ。二時間ぐらい遊び回ってから、ようやくティー・タイムになりました。 「コトリ専務はやはり・・・」 「そんな湿っぽい顔で見ないの。そりゃ、コトリだ…
使徒の祓魔師というか、その式神の武神による脅威はあるのですが、コトリ専務は、 「とりあえず、来てから考えよ。予防も対策も相手がおらへんかったら出来へんし」 その通りと言えば、その通りなのですが、ミサキはちょっとモヤモヤ。でも悩んだって何も変…
そうそうミサキもクリスチャンになってます。マルコとイタリアで結婚式を挙げた時に入信したぐらいです。その方が波風立たないとも思ったのは白状しておきます。日本人にとって仏教からキリスト教に改宗したからと言って『あ、そう』ぐらいの反応しかなく、…
コトリ専務が名残惜しそうでしたが、ようやくボイスレコーダーをしまってくれました。放っておいたらデイオタルスとの一日分のアレの声を聞かされそうでしたから、ホッとしました。 「ところでコトリ専務。教皇との会見の時に、最初から教皇の意図がわかって…
教皇を見送った後は応接室の片づけの指揮を執りました。コトリ専務の話を聞きたいのですが、子どもを置いて飲みに行くわけにもいきません。シノブ常務も同じなので、週末にミサキの家にお招きしました。マルコの料理の脅威はあったのですが、かなり自制して…
綾瀬社長からも教皇の接待の話がありました。予定は新神戸駅に九時半頃に到着し、そこからクレイエール本社まで来られ、十一時半の新幹線で広島に向かわれるとの事です。 「そうなると我が社に来るのは十時ぐらいで。十一時までには新神戸駅に向かわれるぐら…
総務部長の仕事もだいぶ馴染んで来ました。名部長というか名物部長のコトリ専務の後任ですから、どうしたって比較されるのですが、総務部の雰囲気はだいぶ変わっています。コトリ専務時代はとにかく微笑みの総務部だったのですが、ミサキが部長になってから…