天使と女神シリーズ外伝3 アングマール戦記2
三次に渡る包囲戦を辛うじて凌いだエレギオン。反攻に移るも戦況は消耗戦の様相を呈します。アングマールとの間に和睦は無く、どちらかが勝つまでの永遠とも思える戦い。これをあえてユウタに話すコトリにも覚悟がありました。 |
いうまでもなくアングマール戦記の続編ですが、続けて書いたのではありません。アングマール戦記はあれで終るつもりでした。アングマール戦記の後には氷姫の恋、流星セレナーデと書いたのですが、流星セレナーデでは設定の都合上、コトリとユウタの恋は終っ…
アングマール戦が勝ちこそしたものの救いようのない結末で終ったのを知ることが出来ましたが、コトリが去って行った使者の時の話を確認しないと、 「コトリは自分の本性を・・・」 この質問に小山さんは違う話を始めました。 「あの時の戦争の殆どの指揮を執っ…
「ユウタ、ごめん。もう話せないよ」 コトリは本当に辛そうでした。 「まだまだ続くの?」 「そうね、後百五十年ぐらいかな。シャラックも、パリフも、エルルもみんなこれから死んじゃうの。バドもそうだし、その次の男も、その次も、みんな、みんな・・・」 コ…
エレギオン軍の前線はザラスに進み、ここに四個軍団を置きシャラックに指揮させた。またシャウスにも一個軍団をおき後詰にした。シャウスは常識的にはザラスを落とさないと進めないんだけど、レッサウ方面からキボン川の渡河攻撃の危険があるからね。アング…
打ち合わせ通り、シャラックはザラスにコトリはマウサルムに渡るメッサ橋を目指した。出来得ればマウサルムからの援軍が来る前にメッサ橋にいると見られる一個軍団を少しでも叩き潰しておきたかったの。 メッサ橋に向かいながら、アングマール軍の動きを考え…
準備が整っていよいよ作戦開始。まず先行したのがクラナリス奇襲部隊。危険な夜間登攀を成功させて高原に潜入。パルルの芸は細かくて流浪人のような格好をさせていた。高原都市では厳しい都市生活に耐えかねて流浪人になるものもおり、これに化けさせていた…
ハムノン高原は東北から南西にかけて北側にキボン川、南側にペラト川が流れ、マウサルムのあたりで合流してシャウスに向かいラウスの大瀑布に至るってなってる。シャウスはキボン川の北岸にあるんだけど、ここを起点に女神街道が伸びてる。 女神街道は通商同…
マシュダ将軍の死はショックだったけど、あの時に、 「私はエレギオンが勝つと信じて疑っておりません。エレギオンには微笑む女神様がおられ、知恵の女神様がおられます。今や歌にしか残されていない、平和な時代のエレギオンをが必ず戻ってくると信じており…
シャウスはエルグ平原から攻め上ると難攻不落の要塞みたいなものだけど、ハムノン高原側から攻めたら普通の都市並みの防御力しかもってないの。普通と言っても、ユッキーが大改修したエルグ平原都市に較べたらお笑いレベルで、アングマール戦以前の規模。 だ…
十年かけてシャウスを奪還したんだけど、兵力としてマシュダ将軍の三個軍団と合わせて五個軍団としたの。これはせっかく奪い取ったシャウスを手放したくないのと、シャウスの防衛力強化に人手が必要だったから。 それでだけど指揮官はマシュダ将軍にしといた…
「コトリ、留守番お願い。今回は自分で見てくる」 「かまへんけど、珍しいね」 「気分転換よ」 ユッキーはまずイスヘデ砦に行き、ここの整備を命じとった。高原都市争奪戦となると後方支援拠点として重要になるぐらいかな。本当はハマにしたいんやけど、気色…
「ユッキー、エルルが面白いもの見つけて来たよ」 「な~に」 コトリは皮袋に入っているものをテーブルにサラサラと、 「これはなに?」 「舐めてみいな」 舐めたユッキーは顔色を変えるぐらいビックリしてた。 「これって、塩じゃない」 「そうよ、坑道を掘…
シャウスへの乗り込み作戦は軍団の交代期合わせて行われたの。シャウスの道も当初は二個軍団配置してたけど、土嚢作戦が始まってから一個軍団に減らしてた。あんな狭いところに何千人も投入したって無駄だものね。 シャラックの率いた軍勢は特別編成だったの…
坑道の完成が半年に迫った報告を受けてユッキーが、 「シャウスへの乗り込みはシャラックに担当させる」 「パリフやないの?」 「パリフは陽動作戦で忙しいでしょ」 呼び出したシャラックに、 「シャウスの坑道の完成が近づいている。そちがシャウスへの乗り…
エルル指揮の工作部隊が現地に入って頑張ってくれてるんだけど、坑道作戦は大変なのよ。まずは落盤対策が必要なの。少し掘ったら木材で天井を補強して、また掘ってく感じ。それと懸念されてた水も出た。 幸い量はそれほどでなかったのと、上に向かって掘り進…
パリフも苦戦してた。コトリが編み出した焼き討ち戦術も使ってたけど、アングマールもあれこれ防火対策やってたみたい。火炎弾はコトリがハマの時に導入したんだけど、今やアングマール軍も当たり前のように駆使するから、シャウスの道のような狭い所の攻防…
シャラックがシャウスの道の第五広場を、巨大投石機による火炎弾で落としたのは鮮やかやった。そうよ戦いに手間ヒマを惜しんではいけないの。シャラックは第四広場も小型破城槌を使って占領したわ。 しかし快進撃もここまで、第三広場では苦戦してる。予定通…
ボクはシャラック、将軍にして三座の女神の男。シャウスの道の攻略を任されてます。この道に関しては情報作戦本部長時代にあれこれ研究したから良く知っていますが、とにかく攻めるとなると大変な道です。そうそう、ボクがシャウスの道攻略担当の将軍として…
シャウスの道はハムノン高原とエルグ平原を結ぶ唯一に近い連絡路。とはいえ甘い道じゃないのよこれが。もとは、たぶんだけど、セトロンの断崖が崩れたところとも言われてる。コトリは崩れたというよりヒビが入ってるぐらいにも思ってる。 イスヘテから狭い谷…
ハマ奪還戦の最後の後味こそ悪かったけど、成果としては十分なものやと思ってる。十年以上に渡ってエルグ平原の脅威だったマハム将軍率いるアングマール軍は完全に消滅させたし、前線をシャウスの道に押し戻すことが出来た。最後のイスヘテの戦いでアングマ…
開城の日が来たの。ハマのアングマール軍は叩き潰す予定だけど、エレギオンがそうしたがってるのもアングマールは知ってると考えておく必要があるの。エレギオンもアングマールを信用してないけど、アングマールだってエレギオンを信用してないってこと。 ハ…
ハマのマシュダ将軍は堅実に務めを果たしてくれていた。いや、予想以上の成果かもしれない。一年半以上も囲んでいるうちに土塁の高さは十五メートにもなってたんよ。コトリも見てビックリした。これも驚いたんだけど、マシュダ将軍は陣営を土塁に沿って作ら…
ハマの土塁も急ピッチで出来上がっていた。とにかく攻撃を考えなくて良いから、ドンドン土を運び込んで土塁を高くしていった。もっともエレギオン軍も無傷かといえばそうではなく、城内から巨大投石機でブンブン石を投げつけてきた。それぐらいはやるよね。…
軍団は速やかにハマを目指していった。もちろん偵察は怠りなくやっていた。もしマハム将軍が動くとしたら囲まれる前だけだから、コトリもその心づもりを十分にしながらの進軍になったわ。 ただコトリが率いる本隊の四個軍団と言っても一遍に展開できないのよ…
偽りの平和状態が続く中で軍制も整備していったの。将軍は主席にマシュダ将軍、以下イルクウ将軍、シャラック将軍の三人制。近いうちにパリフ上席士官も将軍にする予定。軍団も七個軍団への編成が着々と進んでる。コトリが整備したかったのは、大きくなった…
平和条約による膠着状態は思いの外に長引いてくれたの。ユッキーも復帰してくれたし、四座の女神も帰ってきてくれた。ユッキーが復帰したらさっそく、 「シャラックを三座の女神の男と宣言する」 戦時体制下だけど、五女神そろっての祝宴を挙げてあげたよ。…
コトリは朝まで対策をずっと考えてた。結論は断固たる処置を取るべきだと。そこは決まってたけど、問題はアングマール軍の動き。軍団内部まで工作が進行しているのなら、連動してアングマール軍も動く計画を立てているのは間違いないからなの。シンプルには…
むちゃくちゃ忙しいねんけど、無理やりでも時間を作ってユッキーのところにもお見舞いに行ってる。そりゃ、宿主代わりの不安定期はコトリにもあるし、コトリの方が長いから、いつもユッキーに負担かけてるもの。でも行っても何もしないの。ただ、黙って座っ…
膠着状態のアングマール戦だけどエレギオンでも大きな動きがあったの。まず四座の女神が宿主代わりに入ってもたんよ。簡単にいうと一年ぐらいは使い物にならなくなるってこと。お蔭で軍団編成の仕事が倍になってもた。これだけでもヒーヒー言ってたんだけど…
軍団造設や農園復旧も急務やってんけど、産業復興も大変。職人たちはそれなりに生き残っていて商品はなんとか作れるんだけど、売る相手が大変。これまでエレギオンは高原都市や山岳都市相手がメインで、海路を使っての交易はサブやってんよ。ところがアング…