ハムノン高原は東北から南西にかけて北側にキボン川、南側にペラト川が流れ、マウサルムのあたりで合流してシャウスに向かいラウスの大瀑布に至るってなってる。シャウスはキボン川の北岸にあるんだけど、ここを起点に女神街道が伸びてる。
女神街道は通商同盟が繁栄していた時代に女神の行幸のために整備されたんだけど、同時に交通路であり、通商路でもあり軍用道路でもあるの。今でも女神街道を基本に高原都市間は動く感じで良いと思う。
シャウスからの女神街道はまずザラスに向かうの。そこで二つに分かれ、一つはキボン川の北岸をゼロンに進み、さらに北上してキボン川を渡りクラナリスに至るってところ。もう一本はザラスからキボン川を渡ってマウサルムに進む道。
マウサルムからも二つに分かれ、一つは真っ直ぐにクラナリスに進む道、ちなみにこの途中にゲラスの野あるの。もう一本はマウサルムからペラト川を渡り、ペラト川南岸をレッサウに向かう道。レッサウからパライアを経てラウレリアに至るの。ラウレリアでも道は分かれ、東に進めイートス、西に向かえばペラト川を渡ってクラナリスに至るってところ。
クラナリスからは山岳部に入るのだけど、カレムを経てモスランに着くわ。モスランからウノスに至る道が女神街道の終点だけど、女神街道とは別に北に向かえばズダン峠になるの。ウノスからイートスに抜けられる道もあるけどかなりの険路で、山岳都市と高原都市を結ぶ道はクラナリスとカレムをつなぐ女神街道だけとしてイイぐらい。
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「コトリ、シャウスから次に進むのはザラスになるんだけど、都市攻略戦は厄介ね」
「そうやねん。攻城兵器の製作が出来へんようになってるから、梯子をかけての力攻めをやらなあかん。それにザラスに手をかけたらマウサルムのアングマール軍は必ず動くだろうし」
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「メッサ橋は健在なの」
「そうなのよ」
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「マウサルムから援軍が来たら、ザラスのアングマール軍だって打って出るかもね」
「まあ大乱戦になるやろな」
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「レッサウに陽動部隊を展開するのは」
「難しいな、キボン川渡るだけでも大変やで」
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「情報作戦本部はどうなの」
「情勢分析だけしてお手上げ状態」
「たとえばさぁ、橋を先手を打って抑えてしまうとか無理かしら」
「もう読まれてるわ。シャウスの攻略を失敗した後は一個軍団ぐらい貼り付けてるみたいや」
「やっぱり」
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「コトリ、ザラスをキッチリ囲んで封じ込んでからマウサルムの敵軍と決戦ってのは」
「難しいわ。手早くキッチリ囲むのに木柵使われへんやんか。そうなると土塁やけど、あれは時間がかかるやん。ザラスの敵軍かって、マウサルムからすぐに援軍が駆けつけるってわかってるから、積極的に妨害作戦に出てくるで」
「そんなところにマウサルムからの援軍じゃ」
「そういうこと、工事中に挟み撃ち状態にされてまうんよ」
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「コトリ、知恵を絞って。こういう時に知恵の女神の力が必要なのよ」
「そんなもん、次から次に湧いてきたら苦労せえへんわ」
ここで仮にザラスを奪うと、ゼロンとマウサルムへの道が開けるだけの価値じゃないの。これはキボン川の流れの問題になるけど、ザラスから上流になるほど渡河点は増えるの。つまりザラスの代わりにゼロンに有力部隊を送り込んでも、キボン川を渡ってクラナリスを脅かされちゃうの。
アングマール本国とハムノン高原を結ぶのはズダン峠だけど、この道は実質的にクラナリスにしか通じてないの。アングマール側から見ると、クラナリスをエレギオンに抑えられるってのは、退路も補給路も断たれてしまう事になるのよ。
つまりエレギオンにザラスを取られると、クラナリスへの攻撃はいつでも可能になり、クラナリスに本拠を置いての作戦にならざるを得なくなるって感じかな。マウサルムも含めて高原南西部を放棄してもおかしくないぐらい。
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「全軍を呼び寄せての力攻めしかないの」
「う~ん、基本はそうせざるを得ないだろうけど、何か一捻りしないと損害だけ出て終ってまうで」
「でしょ、でしょ、だったら何か考えだしてよ」
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「ユッキー、一つだけあるのはある」
「さすが知恵の女神ね、で、どうするの」
「クラナリスを脅かす。そうすればマウサルムのアングマール軍の一部はクラナリスに向かわざるを得なくなり、ザラスでの決戦兵力が減る」
「そりゃ、クラナリスが脅かされたら、そうするだろうけど。どうやってクラナリスに軍勢を向かわせるの」
「セトロンの崖を攀じ登る」
そんな都市群だから、アングマールもクラナリスなどにさしたる兵力は置いていないと見て良いわ。その傍証がザラスとマウサルムのアングマール軍の兵力。あれは前方に目一杯展開している代わりに後ろがお留守の布陣。小兵力でも送り込めば、クラナリス占領だって夢じゃない。
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「でもコトリ、たとえ思惑通り進んでも、クラナリスにアングマール軍が来たら支えきれないよ」
「そこなんだけど、全滅するまで戦って、たとえ一日、二日でも持ちこたえてくれたらザラスの戦況は有利に展開するはず」
「ちょっとコトリ、それじゃ完全な捨て石じゃない」
「これは原案で、修正案はアングマール軍が北上してきたらトットと逃げる」
「それじゃ、マウサルムに戻って来るじゃない」
「いや戻らないと読みたい」
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「そっか、一度脅かしたら、アングマールは有力な常駐軍を置くはずって読みね」
「そういうこと、もし有力部隊を置かないようだったら、今度はイートスを脅かす」
「なるほど! イートスからウノス、さらにはモスランへのルートの可能性を見せる訳ね」
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「シャラック、相手も二個軍団だけど、守りに徹してね。ザラスの二個軍団をどんな手を使っても封じ込めるのがあなたの仕事よ」
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「パルル、とくにラウレリア、クラナリス方面の地理に詳しい者で選抜部隊を組んでちょうだい」
「はい、どの程度の規模ですか」
「二個大隊で良いわ」
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「完全な奇襲で落としたいから、夜明けの開門と共に乱入して。敵軍を制圧したら、資材の集積所があるはずだから燃やしちゃって。燃えたらすぐに撤収よ。もたもたしてたら、皆殺しにされると覚悟なさい」