ツーリング日和20(第24話)旧友の問題

 今日は高校時代の友だちのイズミの店に来てる。ここも懐かしいな。高校の近くにあるのだけど、良く食べに行ってたんだ。いわゆる町中華だけど、ラーメンとかチャーハンとか良く食べてたもの。ギョウザもなかなかなんだ。

 花の女子高生に中華はちょっとミスマッチのところもある。これは田舎だから他に店が無かったんだろうと言われそうだけど、そんなことはないのよ。高校の近くに県道があるけど、そこにはロードサイドの店が当時から建ち並んでたんだよ。

 ファミレスもあったし、マクドもあったし、カラオケもあった。パチンコ屋は高校生には関係なけどカフェというより喫茶店も何軒かあったんだ。この辺も変わったところもあるし、店だって当時より増えてる感じもするな。潰れてなくなってる店もあるけどね。

「久しぶり」
「ホント、久しぶりだね」

 イズミは卒業してから実家の中華の店を継いでるんだ。

「子どもさんは」
「部活だよ」

 結婚して子どももいる。イズミの結婚は早かったな。成人式の翌年ぐらいだったじゃないかな。だからもう中学生だ。すぐに昔話に花が咲いたのだけど、

「あのクソ校長には参ったね」
「ホント、ホント。こっちは中坊じゃないっちゅうの」

 通ってたのは田舎の三番手校だったから、ノンビリしてたんだよ。しょっちゅう遅刻するのはいたしエスケープするのもいた。そんなに多くなかったけど、こっちからすると、

「いつものことだったものね」

 そりゃ、高校生だから遅刻やましてやエスケープは良くはないだろうけど、高卒就職組がとにかく多かったから、高校なんて卒業すれば十分ぐらいって感じだったもの。それに荒れた学校じゃなかったし、

「ヤンキーがブイブイ言わせる学校でもなかったものね」

 そんな高校に新しい校長が赴任してきたのだけど、理由は良くわからないけど風紀に異常に熱心だったんだよ。

「毎朝校門のとこに先公が立ちやがるし、エスケープする連中を追い回すんだもの」

 他に服装チェックも異常に厳しかった。だってだよ、リボンの結び方までケチ付けるんだもの。

「だよね、ブラウスのボタンなんて開けてたら、生徒指導室まで連行されちゃったよ」

 他にも靴とか、靴下とか、

「髪留めのゴムまで口出ししやがった」

 パーマや髪を染めてた連中なんて悲鳴をあげてたもの。トドメは、

「下校時の外食禁止」

 ファミレスとかマクドに寄るのを禁止されちゃったんだ。行きたくても先生たちが始終回って来るからシャットアウト状態になったもの。だからイズミの店に屯するようになったんだ。イズミのお父さんも学校から協力を要請されたみたいだけど、

「親父は怒っちゃってあんな張り紙を張り出したもの」

 あれは笑ったな。だって張り紙には、

『犬と高校の教職員は立ち入るべからず』

 思いっきり喧嘩売ってた。あれでイズミがよく退学にならなかったものだ。あそこまでやらかしたのは建前上では学校を良くするためだけど、

「点数稼ぎだよ。でもさぁ、うちらの高校でやるのは無理があり過ぎだよ」

 これは卒業してから聞いた話だけど、ある校長がいわゆる荒れた高校を建て直しただけでなく、進学実績もあげたらしいんだ。それが高い評価を受けたらしいけど、

「あれはド田舎の高校だから出来ただけよ」

 マナミの高校だって田舎だけど、うちの県って広いから、高校に進学するにも地域で実質的に一つってとこもあるんだ。そういう高校って地元の中学からゴソって感じでその高校に入学するじゃない。

「うちらの高校とは生徒の質が違うよ」

 これじゃあ、わかりにくいか。身も蓋もないような話だけど、勉強が出来るやつって持ってるものが違うと実感してる。もっとあからさまに言うと出来る奴の割合は決まってると思うんだ。

 地域に一つしか高校がなければ、そこには高卒で精いっぱいの者から、それこそ国公立だって狙えるのも混じるじゃない。中学なんてそうだもの。だけどさ、こっちは田舎と言っても三番手校だ。

 出来る奴は一番手校にまず入り、中学でサボっていて可能性があるのだって二番手校に入ってしまう。マナミたちの三番手校なんて、

「残りカス。ドラゴン桜の見過ぎだよ」

 実感としてそうだった。もちろん可能性を言い出せばキリがないけど、

「あれって成績と言うか、頭の良し悪しもあるけど、それより何よりやる気がない」

 少しでもやる気があれば三番手校なんかに入って来るか! あれって思うのだけど、

「そうよそうよ、ああいうのって滅多に起こらないから褒められる代物。ホント、エエ迷惑だった」

 風紀をギチギチに締め上げられて勉強にラッパを吹きまくられたけど、

「夏休みの補習だって、何人出たのやら」

 夏休みだよ、夏休み。進学校の連中は補習をやってるぐらい知ってるけど、就職組の連中にとってはどこの話だってことだ。頭の中は遊ぶことしかあるものか。ところで今はどうなってるの。

「学校はあるけど、名前が変わってる」

 どういうこと?

「この辺も子どもが減ったから四番手校と合併よ」

 あの底辺校と合併だって! あそここそ、田舎なりのヤンキーの巣窟みたいな高校だったんだけどな。歳も取ったし、時代の流れを感じるな。そうそう、今日はイズミから呼び出されて来たようなものだけど、

「ゴメンね。それにしてもマナミがバイクで来たのにビックリした。この歳から暴走族になるなんて意外だった」

 アホか。バイクを見ただろうが。乗ってるのはモンキーだぞ。あれって一二五CCの小型バイクだ。あんなものでどうやって暴走するって言うんだよ。

「バイクに変わりはないじゃない」

 なわけがないだろうが。マナミがやってるのはツーリングであって断じて暴走族じゃない。

「まあ、信じとく」

 信じろよな。

「でさぁ、今日来てもらったのはマナミと見込んでの相談なんだ」

 何を見込んだって言うのよ、

「マナミって頭が良いじゃない」

 どこがだ。同じ高校に行ってただろうが。もう忘れたのか、

「だって、大学に入ってるし、神戸の大きい会社にだって勤めてるじゃない」

 それは都合の良い誤解の塊だぞ。大学って言うけど、たかが三明大だ。あんなところの卒業生だなんていう方が恥ずかしいぐらいじゃないか。勤めてる会社が大きいって言うけど、あれはサヤカの口利きでなんとか入れただけ。あんなところにまともに就職できるわけがないだろうが。

「それはマナミがそれだけ良く出来るって事じゃない。だってだよ、イズミの友だちで大学に入れたのはマナミだけだもの」

 うぅぅぅ、それはそうだけど、そんなもの見込まれたってそれこそお門違いも良いところだ。ここまで来てるから話だけは聞くけど。