天使と女神シリーズ外伝2 アングマール戦記

古代エレギオンに残された大叙事詩解明に挑むユウタ。そのすべてを知るのはコトリ。舞台はコトリの記憶の故郷。様々な苦労の末にエレギオンに平和と繁栄をもたらしたコトリとユッキーの前に現れた魔王。数々の悲しみを経て、魔王との対決に臨むコトリ。コトリはユウタに叙事詩ではなくアングマール戦そのものを話すのでした。

アングマール戦記:あとがき

今回はスピンオフです。女神伝説シリーズで何度もエレギオンを取り上げたので、そのエピソードを一つにまとめてみようというのが狙いです。とりあえず余談なのですが、アングマール戦記はなんとか三百ページ程度なのですが、文字数にすれば十三万五千字を越…

アングマール戦記:コトリの男

「・・・とりあえず、これぐらいにしとうこうか」 コトリの話に茫然とするボクがいました。アングマールの魔王、エレギオン包囲戦、そして数々の決戦。戦記物語みたいなものですが、そんな格好の良いものじゃなくて、実際にこれを指揮して、戦い、苦い敗北を味…

アングマール戦記:一撃必殺(2)

翌日には仕事に戻ったの。ユッキーは心配してたけど、それどころじゃないじゃない。その日もアングマール王は城門前に来てたけど、ユッキーとのやり取りを聞いていてある秘策が浮かんだの。 「ユッキー、和平交渉に持ち込むべきよ」 「そういうけど、エロ魔…

アングマール戦記:一撃必殺(1)

コトリが部屋から出られない状態の時に魔王は動いたの。セラの戦いの結果を受けて三度目のエレギオン包囲に出てきやがった。でもコトリは寝込んだままだったの。ユッキーは、包囲戦下の忙しい中だったけど、出来るだけ時間を作って来てくれた。ユッキーはこ…

アングマール戦記:セラの戦い

第二次包囲戦はエレギオン側の準備がアングマール側を上回った結果で良さそう。被害も少なくて済み、メイスも健在。 「次もあるかなぁ」 「あると考えて準備する必要があるわ」 さてやけど動く塔は三十メートル級の塔を作られたのは魂消たけど、デカすぎて動…

アングマール戦記:第二次包囲戦(2)

「ユッキー、あれなんやろ」 「ううん、前回やらなかったから妙と思ってたけど、今回はやる気ね」 アングマール軍は穴を掘り始めたの。つまり城壁の下を潜る穴を掘って城内に乱入しようって作戦。城攻めではポピュラーな戦術やけど、とにかく人手がいるのと…

アングマール戦記:第二次包囲戦(1)

魔王は秋にシャウスの道を下ってきた。ハマに入ったんだけど、リューオン、ベラテをパスしてキボン川をいきなり渡り、セラの野を横切ってエレギオンに迫って来たんだ。どうも魔王はリューオンやベラテには街を守る程度の戦力はあっても、ハマを襲うほどの力…

アングマール戦記:ドーベル将軍(2)

エレギオンに戻ってから、 「ユッキー、やっぱりドーベル将軍は手強いよ。まともにやったら勝てそうな気がせえへん」 「あら知恵の女神が弱気ねぇ。でも、今回のコトリの判断は支持するわ。ドーベル将軍と決戦するならエレギオン全軍が動員できる体制でやる…

アングマール戦記:ドーベル将軍(1)

エレギオンはユッキーの言う通り、やることはヤマほどあったの。アングマール軍は退却してくれたけど、アングマールは滅んだわけじゃないし、魔王だってピンピンしてるのよ。ごく簡単にはまたエレギオンが包囲されるのは予想されちゃうわけ。次の包囲戦に備…

アングマール戦記:コトリの休日

メイスも最初は緊張してた。相手は女神だし、メイスは童貞みたいだったから、果たしてコトリを満足させるか不安もあったんだと思うわ。そのうえ裸のコトリを抱いて三日間もお預けにしちゃったから、最初はアッと言う間だったの。それこそ先っぽが入っただけ…

アングマール戦記:女神の男(2)

ほうほうの態でユッキーの前から退出してコトリの家に、 「メイス、寛いでね。メイスの家でもあるからね」 エレギオンで女神の男になるのはエレギオンの男にとって最高の栄誉になってるねんけど、ほんじゃ女神の夫であるかといえば少し違うんよ。位置づけと…

アングマール戦記:女神の男(1)

偵察部隊の報告は次々に入ってきた。まずアングマール軍の退却は本当で、魔王はシャウスの道を越えてしまったみたい。さすがにアングマールまで帰ってしまったかどうかの確認は現時点では無理やったけど、城門の再開通作業と付け替え修理には着手させた。 リ…

アングマール戦記:エレギオン包囲戦(2)

エレギオン包囲戦が始まってから一年。ついに来たの。エレギオンをすべて包み込むような巨大な力が押し寄せてきたの。それはまさに圧倒的な力だった。人の心から希望が消えていき、ひたすら虚しさと、絶望感に満たされるあの心理攻撃が。 「コトリ、これね」…

アングマール戦記:エレギオン包囲戦(1)

アングマール軍の布陣が完了したところで城門の前に真っ黒の大きな馬に乗り、黒づくめの魔王が側近を連れて現われた。そこから大音声で、 「慈悲深きアングマール王より、エレギオン国民に告げる。王の目標はエレギオンにあらず、五女神なり。素直に差し出せ…

アングマール戦記:アングマール軍襲来

エルグ平原に侵入したアングマール軍がどう動くかは、あれこれシミュレーション考えてた。まずはハマからリューオン、さらにベラテと順番に落としてエレギオンに襲いかかるパターン。そうなれば文字通りエレギオンが最後の砦になっちゃうんだけど、 「コトリ…

アングマール戦記:ホウキとチリ取り(4)

クソ魔王のやり方は女がエクスタシーに達した瞬間を狙うのやけど、ひょっとしたら、そこにカギがあるんやないかと最初は考えてん。そやから、毎日必死こいてマスターベーションに励んだ時期もあったぐらい。もちろんこれは、あくまでも軍事研究のためだよ。 …

アングマール戦記:ホウキとチリ取り(3)

ヒマがあったら練習しとってんけど、ホウキはだいぶ上手くなった。もっともホウキだけで二十本ぐらい折ってもたから、侍女の嫌味はしっかりあった。 「次座の女神様。今は戦時体制で、モノは普段以上に大事にしないといけません。これが民のお手本である次座…

アングマール戦記:ホウキとチリ取り(2)

あれこれ考えたけど、ユッキーが言ってた小技は便利そうやからちょっと使ってみようかな。とりあえずホウキとチリ取りやってみよか。力の使い方はこんなもので、えっと、えっと、あれっ、アカンて、そんなんしたら、 『ボキッ』 しもた、力加減が難しいなぁ…

アングマール戦記:ホウキとチリ取り(1)

アングマール戦は人同士の戦争でもあるけど、神同士の戦争でもあるのよね。究極的には魔王を殺さないと決着が付かないってところなの。でもって神を殺せるのは神だけだから、コトリかユッキーが対決しなきゃならないんだけど、魔王は強い。ゲラスで見た魔王…

アングマール戦記:籠城最終準備(2)

「ユッキーさぁ、ちょっと思うんだけどさぁ」 「どうしたのコトリ」 「これって全面戦争の総力戦やんか」 「そうよ」 「そやけど、最後は魔王を倒さんとアカンやんか。人相手の戦争とちょっと違うところがあると思うんよ」 「そうねぇ、たぶん人じゃ魔王を倒…

アングマール戦記:籠城最終準備(1)

籠城準備は最終段階やった。農園からもすべて引き上げさせてる。家もすべて解体して城内に運び込んだの。もちろん牛や、馬や、羊もすべて。狙いは包囲するアングマール軍に現地調達をさせないためだった。エルグ平原から何も手に入れられなかったら、ハムノ…

アングマール戦記:シャウス攻防戦(2)

この報告でコトリは試作段階だった大型兵器の量産を急がせたわ。当時の武器で案外強力なものの一つに投石があったの。これも手で投げたら効果は限定的だけど、ある道具を使うのよ。道具は真ん中に石を包むところがあって、そこ両方に紐が付いてるんだけど、…

アングマール戦記:シャウス攻防戦(1)

エルグ平原都市はアングマール戦が始まる前から城壁の強化に取り組んでたけど、ハムノン高原都市はそうじゃなかったの。せめてシャウスぐらいは強化したかったんだけど、予算が足りへんかった。だから防備の強化と言っても泥縄式の応急措置的なものになって…

アングマール戦記:魔王の侵攻

魔王はついにズダン峠を越えてきた。高原のエレギオン側都市はエレギオンの庇護がなくなり、住民の三分の一ぐらいが抜けても決死の覚悟で防備を固めていた。イートスやクラナリスもそうだけど、ラウレリアの悲惨な状況は十分すぎるほど伝わっていたからなの…

アングマール戦記:宿主代わりと孤児対策

ハムノン高原都市を放棄したのはまだアングマール軍を駆逐するほどの戦力がなかったのも理由だけど、コトリの宿主の寿命も迫っとったんもあってん。宿主代わりも何十回もやってるうちにわかってきた点も多いんやけど、まず死期がわかるようになるねん。だい…

アングマール戦記:籠城対策

「おかえり、コトリ。お疲れ様」 「なんとか勝てたわ」 「どうだった」 「通用したわ」 わかりにくい会話やと思うけど、女神の戦術が使えたかどうかのお話。 「いくら魔王でもアングマールからハムノン高原まで力を及ぼさすのは無理やったみたい」 「そうだ…

アングマール戦記:ベッサスの戦い

アングマールの駐留軍でわかっているのは、クラナリアにドーベル将軍が一個軍団、ラウレリアにバルド将軍が一個軍団。バルド将軍の方は最近になって強化されて一個軍団規模になったぐらいの情報になってる。昇進したのかもしれへん。 ユッキーの指示は、一個…

アングマール戦記:戦略打ち合わせ

「昨夜はユッキーは何か見えたの?」 「見えかけたと思ったけど、わかんなくなっちゃった。どうも最近は見えにくいのよ」 「魔王の力の影響?」 「さすがに遠いと思うんだけど・・・」 朝の祭祀の後の朝食を食べた後のティータイムです。とはいうもののこの頃に…

アングマール戦記:対騎馬戦術(2)

ここまで五年間で漕ぎ着けたけど、いつ休戦状態を破るかが問題ってところになってる。これについてはユッキーと相談を重ねてる。まず一番の問題はアングマール軍が全体でどれだけいるかの推測やってん。 「コトリ、とりあえずクラナリスに一個軍団はいると見…

アングマール戦記:対騎馬戦術(1)

アングマールの代替わりの混乱のためか休戦期間は五年に及んでくれた。この間に不本意やったけどエレギオンも軍事国家にかなり変貌していったわ。そうしないとアングマールに勝てる見込みはないと思ったの。コトリの導入したレジョン戦術はエレギオンだけで…