エルグ平原に侵入したアングマール軍がどう動くかは、あれこれシミュレーション考えてた。まずはハマからリューオン、さらにベラテと順番に落としてエレギオンに襲いかかるパターン。そうなれば文字通りエレギオンが最後の砦になっちゃうんだけど、
-
「コトリ、時間がかなりかかると思うの」
「そうよねぇ、エレギオンが健在なら包囲網の背後を攻撃されるリスクもあるし」
-
「やっぱり背後が危なくない。補給路をさらしてるようなものだし」
「そうよねぇ、そうなった時の打ち合わせはしてるけど、エレギオン単独包囲はないと思う」
-
「だったらエレギオンを攻めるのは二個軍団ね。魔王が指揮してなかったら叩き潰してやる」
-
「ハマは落ちて欲しくないけど、五個軍団に攻められると苦しいかもね」
「なんとか援護したいけど、五個軍団が総出で囲まれると厳しいよね」
「じゃあ、そうなったら例の作戦やる?」
-
「準備はしてるけど、効果はどうだろ。そりゃ、ある程度は混乱してくれると思うけど、アングマール全軍を崩すのは無理だと思うの」
そしたらアングマール軍にも知恵者がいたの。コトリもユッキーもシャウスの道を使って運び込んで来ると思っていたら、キボン川に木を流したのよ。ラウスの瀑布があるからロスも少なからず出たとは思ってるけど、やられたと思ったわ。
騎馬隊襲撃もやらせたけど、最初は効果があったと思う。とくに初回の時は兵糧部隊の襲撃に成功して存分な成果と言えるものだったけど。後は警戒がドンドン厳重になって、思わしい戦果があがらず、むしろ損害が気になるようになっていったの。とにかく騎馬隊は貴重だから、無理できないのよね。
でもハマは三ヶ月経っても落ちなかった。激戦は展開されているらしいの情報は入って来たけど落ちなかった。ここで動いたの。コトリは二個軍団を率いてハマに向かったの。ここまでの情報で『どうやら』ハマを囲んでいるのはアングマールの前衛部隊で、魔王の主力軍はまだ来ていないと読んだのよ。
でもコトリの動きは読まれてた。ドーベル将軍にリューオンの郊外で迎え撃たれ、負けはしなかったけど痛み分けでエレギオンに戻らざるを得なくなちゃったの。やはりアングマール軍は強いわ。痛み分けと言ったけど、客観的に見るとエレギオン軍は劣勢やった。大敗しなかったのは、ドーベル将軍が深追いしなかっただけだった。
-
「ユッキー、あかんかった」
「ドーベル将軍って、そんなに強いの?」
リューオン郊外でエレギオン軍が撃退され戦局は動くことになったわ。ついに魔王の主力軍がハマに進出して一ヶ月でついに落城しちゃったの。そこから魔王がどう動くかに注目していたんだけど、リューオンもベラテも囲んだだけで積極的には攻めようとせず、エレギオンを目指して来るのがわかった。
-
「ところでコトリ、使わなかったの」
「うん、ドーベルってなかなか男前やったし。もちろん最後は使って逃げ延びたけど」
「それは今回限りにしてね。これは試合じゃなくて戦争だから」
「わかった」
-
「コトリが言ってた、エロ魔王の力ってこんな感じなんだ。これは手強いわ」
「そうでしょ」
「二人が組んでも厳しいかもしれない」
「でも、負けるもんか」
「あたりまえよ、あんな歩くチンポコ変質者なんか・・・」
-
「海の藻屑に変えてやる」
-
「ユッキー、どんだけおるねん」
「う~ん、たぶんだけどあれって高原都市の兵よ。根こそぎぐらい連れて来てる気がする」