偵察部隊の報告は次々に入ってきた。まずアングマール軍の退却は本当で、魔王はシャウスの道を越えてしまったみたい。さすがにアングマールまで帰ってしまったかどうかの確認は現時点では無理やったけど、城門の再開通作業と付け替え修理には着手させた。
リューオンもベラテも落ちてなかった。よく落ちなかったものだと感心したけど、アングマール軍も木材調達には苦労してたみたい。エレギオン包囲戦であれだけ消費したら、リューオンやベラテに回すほどの余裕はなかったぐらいで良さそう。だからアングマール軍も無理攻めをせず、包囲してただけみたい。それでも三年は長かったと言ってた。
エレギオン軍の損害は概算でほぼ一個軍団がまるまる消えるぐらいやった。あの大城壁と、あれだけの各種武器と対策を行っていても、ここまでの損害があったことに心が暗くなってた。もちろんエレギオンが落ちてたら、こんなものじゃ済まなかったんだけど、やっぱり戦争は嫌だ。
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「次座の女神様、調査結果の報告です」
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「どうしても概算になりますが、アングマール軍の損害は当方の四倍はあると見て良いかと思われます」
「じゃあ、四個軍団ぐらい消えちゃったってこと」
「いえ、損害の多くは高原都市からの徴発兵で、アングマール直属軍に限って言えば、軍団にして一個半ぐらいではないかと」
「やっぱり最後の梯子攻撃」
「最後の二回は凄まじかったですから、あれがアングマール軍の真の力であったと見ています」
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「残されていた武器はどうだった」
「敵ながら天晴れで、ほとんど何も残されていません」
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「それにしても、アングマールもよくあれだけ食糧が保ったね」
「それなんですが、どうも途中から足りなくなったようです」
「やっぱり、でどうしてたの」
「これもおそらくなのですが、食い扶持を減らしていたみたいなのです」
「それって・・・」
「そうしか考えられません」
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「ところで次座の女神様。そろそろお休みなられませんか」
「そうだね、首座の女神は起きてきた?」
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「起きてるわよ。トットとメイスとお休みに行ってらっしゃい」
「ユッキー、その前に報告を」
「もう聞いたわ。これから、やらなくちゃならない事がテンコモリあるけど、コトリの仕事はまず休むこと。メイスだってずっとお預けだったんだから、早く行ってあげなさい」
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「お預けとは・・・」
「だってそうじゃない。コトリはメイスを選んだけど、女神は魔王の心理攻撃への対応で目一杯で、寝る時間もなかったんだから。あのさなかに、やれるほど勇気はないでしょ」
「その勇気と次座の女神様に対する勇気は違います」
「ユッキー、からかうのはそれぐらいにしてあげて」
「ほんじゃコトリ、初夜を楽しんで来てね。それとメイス、コトリが燃えだしたらアングマール軍より手強いからね」
「ちょっとユッキー、それは言い過ぎよ」