恵梨香の幸せ:札幌の夜

 そう言えば、プロポーズの時に不倫の過去はさすがの康太も考えこんだけど、恵梨香がビッチにされてることへの反応は薄かったのよね。恵梨香にしたら大きな負い目だったんだよ。

 やっぱり男は処女が好きじゃない。まだ誰も手を付けてない女を自分の物にしたいのが理想のところがあるもの。女だって、そういう面はあって、一人の男に捧げたいってのもあるのはある。あくまでも理想だけど。

 処女は一回限りでなくなるから、男も女もこだわって拒否するところまでいかないにしても、とくに女は人数の経験を重ねすぎると確実に評価が下がる。そこは男より厳しいかも。不平等だと思うけど、誰彼無しに股を広げて回る女は恵梨香でもあんまりよく思わないところはある。

『恵梨香はたった二人じゃないか。綺麗なものだよ』

 二人しかいなかったとも言えるけど、最初のクソ元夫はともかく、二人目の不倫上司との関係は明らかな黒歴史。女は処女は尊ばれるけど、熟女ももてはやされる。バツイチならそれが武器になる。要は男を喜ばせるだけの経験を積んでる点かな。

 ただなんにでも限度がある。恵梨香がやられたのは、女の極限へのチャレンジ。ぶっちゃけ変態行為。変態行為を好むのは男も女も忌避される。もちろん、そっちの需要もあるけど、多数派はノーマルだし、ノーマルの男は変態行為をされた女と言うだけで汚れた存在と見下すもの。

『それだけ恵梨香が経験があるってだけじゃないか』
『でも・・・』
『じゃあ、一つだけ聞く。恵梨香はアレが好きか、嫌いか』

 ストレート過ぎて返答に困ったけど、

『好きだけど・・・』
『じゃあ、問題はない』

 嬉しかったな。その言葉がウソでないのもわかったし。

「お~い、恵梨香。最近、考えごとが多いぞ」
「ゴメン、ゴメン。今夜の事を考えたらドキドキしちゃって」
「恵梨香は可愛いよ」

 そこに突然だったけど、

「おい、神保じゃないか!」
「坂崎か」

 話を聞くと康太の同級生。麻酔科らしいけど、学会があって来てるんだって。坂崎先生は恵梨香の顔を見て、

「神保はやっぱり結婚したのか」

 なんかおかしい。康太は結婚はしたけど離婚して今は再婚だよ。それよりに何より恵梨香とは初対面じゃないの。

「坂崎、それは違うよ。妻の恵梨香だ」

 坂崎先生は、ポカンって表情になり、

「恵梨香って、まさかお姉さんとか」
「だから違うって。ぼくの奥さんの浜崎恵梨香だよ」

 恵梨香がお姉さんってなによ。そこからしばらく話が弾んだのだけど

「坂崎、お前が来てるってことは」
「そうや、迫田も石神井も一緒や」

 久しぶりだから、もう一軒飲みに行こうって話になったんだ。康太は迫田先生と石神井先生のテーブルに挨拶に行ったから隣に座った坂崎先生と話をしてたのだけど、

「いやぁ、悪かった。あんまり似てたんで間違ってもた」

 坂崎先生が知ってるのなら、康太の最後の恋人よね。

「よく知ってられるのですか」
「一回会っただけや」

 聞くと医学生ではなかったらしい。それと康太の下宿は大学からかなり離れていたらしく、友だちもそれほど遊びに来たわけじゃなさそう。それと最後の恋人は恵梨香がお姉さんと間違われるぐらいだから、かなり年下みたい。

 ここから先が難しいな。あんまり根掘り葉掘り聞いたらヤキモチ妬いてるみたいに思われちゃうし。どうしようかな、少し遠回しに聞いてみようか、

「夫の同級生と言えば、先日上浦先生に神戸でお会いしました」
「へぇ、上浦さんに会ったのか。ここだけの話やけど・・・」

 やっぱり康太と理恵先生の仲は深い物なんてものじゃなさそう。坂崎先生も康太がそのまま理恵先生と結婚すると思ってたぐらいみたい。だろうな、今だって美人だけど学生時代ならなおさらだろうし。

「上浦さんは美人やけど冷たい感じもあってんよ。それが神保と付き合い始めて温かいと言うか、女らしいと言うか・・・・・・」

 やっぱりやったんだ。そらやるよね。やってない方がおかしいよ。理恵先生を見てやりたくない男なんていないだろ。康太は無暗やたらに女に手を出すタイプじゃないけど、彼女にまでなったら、やるしかないだろ。手を出さない方が逆におかしいよ。

「ホンマにいつも二人でベッタリで、彼女がおらんかったオレなんか、羨ましくて、羨ましくて」

 坂崎先生もマフラーは覚えてて、赤い毛糸で編んだ一・五メートル以上あったものだって。手編みじゃないかとも言ってたよ。でも別れたんだよね、

「そうやねんよ。男と女の仲やから出会いもあれば別れもあるとは言うけど、神保と上浦さんが別れるとは夢にも思わんかった」
「その次の恋人って素敵な人だったのでしょうね」

 坂崎先生も一度しか会ってないからとしてたけど、どちらが美人かと言われると、考える余地もなく理恵先生だって。それは、なんとなくわかる。理恵先生より綺麗な人なんてそうそうはいないと思うもの。

「でもな、神保とピタッと呼吸が合ってたわ。あの呼吸と言うか、空気は恋人同士というより夫婦みたいに感じたものな」

 同棲してたかと聞いたら、たぶんそうだとしてた。康太の部屋に女物としか思えないものが、当たり前のように転がっていたそう。ぶっちゃけ、並んで下着が干してあったのも見えたそう。

 坂崎先生が言うには、康太は幸せそうだったって。理恵先生と付き合いってる時よりも、なにかリラックスしてるというか、寛いでる雰囲気があったぐらいかな。だから、

「そうやねん。あのまま行くとしかオレも思えんかってんよ。それによく見ると奥さんとはちょっと違うけど、雰囲気はホンマにそっくりやってん。あれからもう二十年ぐらいになるから、これぐらいは変わってもおかしないやんか」

 そこに康太が加わって来て、

「坂崎、あの頃の話はそれぐらいにしてくれよ」
「そやけど、キーコは・・・・・・」
「頼むわ、坂崎」

 康太の顔が今まで見たことがないぐらい悲しい顔になってる。

「坂崎、誰にだって語りたくない過去はあるんや。理恵さんのこともそうや」

 とりあえず最後の恋人がキーコと呼ばれていたのはわかった。関係は同棲まで進んでる。そのキーコさんが恵梨香によく似ているのもわかった。ポッチャリ狸だったんだろうな。坂崎先生が見間違えたのは、十年以上の歳月はポッチャリ狸をビヤ樽狸に変えたと思ったんだろ。

 この夜はこの辺でお開き。坂崎先生も明日の午後に発表があるからってさ。ホテルに帰った恵梨香は康太にいつも以上にトロトロにされちゃった。やっぱり旅行になると普段より燃えちゃうのよね。


 翌日は予定通りにバスで市内観光。いつもの康太に戻っていて、恵梨香もはしゃいで楽しかったよ。お土産もいっぱい買えたし、昼は札幌ラーメン、夜はビール園のジンギスカンも堪能した。天気も良かったし最高だった。

「札幌時計台って、こんなところにあるんだね」
「そうなんや。写真で見るとポツンと建ってるように思うけど、実際はビルの谷間なんだよね」

 本当にビルの谷間で恵梨香も逆に驚いたぐらい。きっとかつては、このあたり一帯に札幌農学校の校舎が並んでたんだろうけど、時計台だけが取り残されたんだよね。出来た頃にはそうなってしまうなんて誰も思いもしなかったろうな。時計台はそれをずっと見てたんだろうね。

 時計台を見ている恵梨香も康太も、時計台から見ればほんの通りすがり。さっと見て通り過ぎていく時の旅人の一人かな。恵梨香は前世とかあまり信じないけど、康太と出会ってから、あるのかもしれない気がしてる。

 恵梨香の思い過ごしかもしれないけど、康太とは初めて会った気がしないところがあるんだよね。ずっとずっと昔にも会って、恋をして、結ばれてラブラブやってたんじゃないかって。

 いやラブラブじゃなかったかもしれない。もっと苦しい恋だったかもしれない。苦しい恋だったから、今は康太も恵梨香を幸せにしようとしてくれるし、恵梨香も康太を幸せにするのが生きがいになってるかも。

「生々流転かな」

 康太に教えてもらったけど、生々流転とは人間は生死を繰り返しなが六道世界を迷い苦しむことらしい。六道世界とは、

・地獄道・・・苦痛に溢れていること
・餓鬼道・・・欲が深いこと
・畜生道・・・幸福な人物を妬むこと
・修羅道・・・他人と競争すること
・人間道・・・辛さと楽しさがある人間界にいること
・天上道・・・苦しむこと

 この世界を巡りながら絶えず生まれ成長して、変化を続けるんだって。

「天上道でも苦しむの?」

 天上道に住むのは天人で人間より優れていて寿命も長くて、空を飛ぶのを享楽としながら生きるんだって。悩みも少ないそうだけど、最後は天人五衰ていうらしいけど、腐り落ちるように死ぬんだって。

「苦しむ事となってるのは、そこまで悩みの少なそうな天人でも、いつか訪れる死への苦しみから逃れられないぐらいだよ」

 ここは康太も苦笑いしていたけど、死も含めた苦しみから逃れる方法は一つで仏教と出会い解脱することになってるそうなの。天上道には仏教がなく、仏教があるのは人間道だけだって。ちなみに解脱してなるのは仏だそうだけど。

「なんか御都合主義ね」
「宗教も商売だから」

 仏教の到達点は悟りを開いて解脱することになってるけど、康太に言わせると、

「それもつまらん」

 悟りとか解脱の解釈も色々あるみたいだけど、悩みとか欲とか、仏教用語でいう煩悩から解き放たれるぐらいで良さそう。

「ボクは煩悩をまだまだ楽しみたいよ。人間道は苦しみも多い世界だけど、楽しみも多い世界になっている。だから楽しいと思わない」
「天上道に行って天人の楽しみをするのは」
「飛んで回るのが楽しいかな。それより恵梨香と暮らす方が楽しいとしか思えない」

 ありがとう康太。恵梨香もそう。悟りとか解脱もよくわからないけど、人を好きになって夢中になるのも捨て去った世界なら恵梨香も住みたくない。仏教に出会えなくとも恵梨香は康太に出会ってるんだ、

 札幌の最後の夜は恵梨香も大炎上した。あのヒイヒイ言わされながら追い込まれるのは、ムチャクチャ感じるけど苦しかったのよね。それがね、なんて言えば良いのだろう、感じ続けたいというか、楽しいというか、嬉しいというか、そうだね、そのまま受け入れたいに変わってるんだよ。

 朝の目覚めも強烈だった。なんと雄々しい康太に起こされたんだ。そう眠ってるまま始まってた。朝っぱらからフルコースを堪能させられちゃた。そこから大通公園に行ったり、札幌テレビ塔に登ったりして千歳から神戸に帰った。

恵梨香の幸せ:旅行

 康太の主義として遊びに出かけるのは、とにかく気軽にがあるのよね。思い立ったらさっと出かける感じかな。前に出石に出かけた時の感じがそうと思ってもらえれば良いと思う。

 でも旅行となるとさすがにそうは行かないのよね。これも康太はやった事があるそうだけど、まだネット時代の前だったから、とにかく大変だったそう。だいたいのコースは決めて出かけたそうだけど、

「お昼過ぎたら、ひたすらどこに泊るか観光ガイドとニラメッコしてたよ」

 学生時代だったそうだけど、予算に限りがあるし、その中でちょっとでもマシなところに泊りたいし、宿だって部屋だって、観光ガイドの写真とは大違いみたいで大変だったみたい。だからちゃんと宿の予約も取って旅行に行ってる。

 恵梨香は国内旅行も好きだけど海外旅行も好きなんだよね。もっとも独身時代のお給料じゃ、そうは何度も行ってないけどね。でも康太は海外旅行は苦手そう。海外旅行と言えば時差ボケだけどかなり強いらしい。恵梨香だってあるけどかなり辛いみたいんだ。

 もちろん一切お断りって程じゃないけど、結婚してからはまだ行ってない。焦らなくとも、これだけはまだまだ時間があるものね。だから行ったのは国内旅行だけ。康太も恵梨香が海外旅行に行きたいのは良く知っていて、

「行く時は新婚旅行にしよう」

 康太は約束を必ず守ってくれる。恵梨香もその日まで新婚気分を失ってなるものか。そこまで気合を入れなくても良いけど、今度の旅行は結婚してから最長の旅行。最長と言っても距離だけど北海道。

 旅行の準備も康太のお手軽主義が出てるのよね。バッグに三泊ぐらいのセットを常に組んでるのよ。それ以上になれば足す感じ。恵梨香は康太ほどお手軽に出来ないけど、ある程度は組んで置いてる。

 康太の旅行は他にも特徴があって、行先にもよるけど、とくに初めて行った場所なら市内観光的なものをよく利用するかな。そうバスとか、タクシーでよくあるやつ。それでまずメジャーなところを制覇しておいて、それからその他を回って行く感じ。

 ただ今回は康太のお手軽主義でも無理があった。夕食の話題がなんとなく北海道になったのよね。恵梨香も国内は割と行ってる方だけど、北海道はなぜかまだだったのよ。計画はしてたんだけど、一緒に行く子の都合が悪くなったり、逆に恵梨香の都合が悪くなったり、台風で飛行機が欠航してアウトもあったんだよ。

 そしたら康太もそんなところがあったのよね。康太の場合は白川郷みたいで、何回チャレンジしても行けてないってしてた。北海道はって聞いたら、

「小学校の時に家族旅行で行った」

 札幌でも学会が開かれるそうだけど、

「札幌の学会は人気があって、いつも留守番だったよ」

 そしたら二人で無性に北海道に行きたくなったぐらいかな。ただしばらく週末は、あれやこれやと用事があったんだよ。康太の急病診療所の出務や恵梨香の休日出勤、それと恵梨香の祖母の法事。そしたら康太は、

「だったら今週末に行こう」

 たしかに週末は日月連休だけど、今からだし無理と思ってた。それにだよ恵梨香は三連休だけど、康太は土曜日の午前中は診察があるのよね。期待せずに待っててくれって言われたら金曜の夜に、

「行けるぞ」

 康太が言うには、それなりのハイ・シーズンでも直近になるとキャンセルが出ることが多いんだって。それは恵梨香も聞いたことがあるけど、康太はギリギリまで粘ってチケットをゲットしたらしい。

「でも北海道に二泊三日って無理があるじゃない」
「だから札幌に絞る」

 診察が終わると急いで帰って来た康太と神戸空港へ。神戸空港からは千歳に結構飛んでるので助かった。十五時半のスカイマークで二時間足らずで千歳に到着。そこから札幌にどうやって向かうかと思ってたら、空港の地下までJRが来てた。千歳からは十分おきに出る快速エアポートに乗るのだけど、うわぁ結構並んでるよ。

「札幌までどれぐらい」
「三十七分ってなってるけど」

 それでもなんとか座れて六時半にはホテルにチェックイン。ホテルは気持ちリッチ目のビジネスでダブルベッドだった。

「夕食は」
「札幌に来たから、すすき野に行こう」

 すすき野もたくさんお店があるのだけど、康太は医者仲間に連絡を取って予約しておいてくれた。と言っても居酒屋だけどね。でも店に入ると予約席以外は満席だったから助かった。店は上品とは言えないけど活気があるし、メニューを見てもリーズナブルというより安い。

「毛ガニ食べなきゃ」
「ウニもイクラも」
「カキもイイけど、ジャガイモも」
「イカよイカ、エビも食べたい」

 二人であれこれ注文して、サッポロビールで、

「カンパ~イ」

 康太は旅行の時に、どひゃんと高級旅館に泊まることもあるけど、ある程度の都会ならビジネスホテル利用で外に食べに行くパターンも多いのよね。今回はそもそも定山渓温泉とかは時間的に無理もあったから、まともに来てもこのパターンだったかも。

「明日は」
「豪華一日バスツアー」

 でたぁ、と思ったけど、

「昼はすすき野のラーメン横丁で、夜はビール園でジンギスカン」
「やったぁ」

 どっちも札幌に来たからには行きたかったところ。

「クラーク博士の像は」
「羊ヶ丘展望台も入ってるよ」

 他にも最初に中央卸売場外市場に行くそうだから、

「お土産買おうね」
「もちろん」

 二人でテンション上げながら食べてた。これがなかなか新鮮で美味しいのよ。

「このホタテはイケるよ」
「つぶ貝もなかなか」

 羊も食べたかったけど明日がビール園でジンギスカンだからお預けにした。それにしても北海道って来るだけなら思ったよりお手軽なのにちょっとビックリした。札幌だったら神戸から三時間ぐらいで着いちゃうのよね。

 そうなのよ東京に新幹線で行くのと変わらないぐらい。交通費だけだったら安いぐらいじゃない。こんなに簡単に来れるのなら、もっと早くに来たら良かった。

「また来ようね」
「まだ着いたばっかりなののに気が早いね」

 言うまでもないけど北海道は広い。札幌に行ったぐらいで北海道を語るのは烏滸がましいかもしれないけど、これだったらまた来れるものね。

「知床もいつか行ってみたいよな」
「それって花咲ガニ」
「それもあるけど世界遺産」

 明日と明後日で札幌をそれなりに回ったら、やっぱり次は小樽かな。小樽と言えば、

「やっぱり鮨よね」
「北一硝子と思った」

 硝子工芸品も魅力だものね。康太は函館にも行きたいみたいだけど、

「イカ飯に函館ラーメンよね」
「それも食べたいけど五稜郭に行ってみたい」

 函館の夜景も綺麗なんだって。他となるとやはり旭川か、

「旭川ラーメン有名だものね」
「動物園も見どころだよ」

 明日は焼きトウモロコシも食べたいな。明後日でもイイけど、アイスクリームも美味しいところがあるはず。そりゃ、牛乳の本場だものね。生キャラメルもお土産にしなくちゃ。

「康太、何見てるの」
「幸せそうな恵梨香の顔だよ」

 食い意地が張ってるのは自覚があるけど、康太は恵梨香が美味しい物を食べてる顔が大好きなんだよね。恵梨香の顔を見てるだけで、料理の味がアップするっていつも言ってくれてるぐらい。

「この顔に康太は惚れたとか」
「ああ、ベタベタに惚れてる」

 これはお世辞じゃない。康太は本気でそう思って恵梨香に言ってくれてる。本当を言うと心のどこかで、どうしてこんなビヤ樽狸のビッチの恵梨香をこんなにも愛してくれるのか不思議な部分は残ってるけど、食事が終われば体で証明してくれる。恥しいけど恵梨香の体はスタンバイ状態になってるもの。

 今日はラブホじゃないけどホテル。それも旅行先のホテルだから恵梨香を次の段階に康太は連れて行ってくれるかもしれない。どうなってしまうのか怖い部分はあるけど、ワクワクしてる恵梨香もいる。

恵梨香の幸せ:マッハ婚の謎

 恵梨香は康太の妻。もちろん戸籍でも正式の妻だし、妻として文句の付けようのないぐらい愛してもらってる。これ以上は望むものはないはずだけど、夫である康太のすべてを知りたいと思ってしまう。

 そうそう恵梨香が再婚相手として選ばれる時に最後の障壁になったのは恵梨香の不倫の過去。もちろん結婚する前日にあらいざらい話してる。それも許してくれて結婚したんだけど、恵梨香の不倫の過去を知った時の康太の反応を良く覚えてる。

 まさに天を仰ぐとは、あの事かと思ったぐらい。康太が元嫁と離婚したのは元嫁の不倫だから、恵梨香は絶対にダメとしか思えなかったのよね。康太はかなり長い時間考えてたけど、あれはなにを考えてたんだろう。

 シンプルには恵梨香の不倫の過去を許すか許さないかだろうし、許してくれたから結婚できたんだけど、その後も異様だった。あの夜に結ばれたのは流れとして順当。あそこまでになれば他にやることないものね。

 異様なのは結ばれた翌日。あまりの事で恵梨香も驚くしかなかったのだけど、赤い紙に震える手でサインして区役所に届けてるのよ。それも午前中だよ。そりゃ、もう、夢見心地で幸せではち切れそうだったけど変じゃない。

 そりゃ、プロポーズして、結ばれて、次が入籍になるのは順番と言えば順番だけど、いくらなんでも早すぎるよ。ありゃ、スピード婚というよりマッハ婚だもの。それに恵梨香は不満がある訳じゃないけど、普通なら結婚までのステップをもうちょっと踏むはずなんだ。

 そうなんだ、抜けてるステップがあるんだ。あの時の恵梨香は舞い上がり過ぎて、恵梨香への愛の深さとしか感じなかったけど、あの場ならまず愛の告白だろ。せいぜい進んで結婚を前提としての交際の申し込みになるはず。

 そこから結ばれて、恵梨香と康太の場合なら同棲に進むのが順当なステップだよ。同棲生活でお互いに一生を託せる相手と認め合ったら、そこでプロポーズになる。期間はいくらアラフォーでも短くて三か月、一年でも長いとは言えないもの。

 恵梨香もそうだけど、康太なんてなおさらで再婚を急ぐ理由がないのよね。康太がその気なら、初恋人の由佳、初恋の智子、憧れのリサリサを順番に味見するのも可能だったもの。ついで恵梨香もね。

 味見したら、したらで厄介事になったかもしれないけど、これまたその気なら、全部断ってもOKなのが康太の立ち位置なんだよ。地位も名誉もある男のアラフォーと、バツイチ女のアラフォーではそれぐらい差がある。

 そうなるとあれだけのマッハ婚を恵梨香と挙げたのは、信じられないけど恵梨香とマッハ婚をしたかったからにしか考えられないことになるのよね。そう、一分一秒でも早く恵梨香を正式の妻に康太はしたかったってことになる。

 その意志は恵梨香の不倫の過去さえ吹き飛ばすほど強固なものだったとしか言いようがないじゃない。そりゃ、恵梨香は嬉しかったし、今だって夢じゃないかと頬をつねる時があるぐらい。

 それとだけど、康太は恵梨香とマッハ婚をしたかっただけでなく、恵梨香に妻としての幸せを、いかに満喫させるかに懸命の気さえしてる。恵梨香の嬉しそうな顔、幸せそうな顔を見るためならなんでもしてくれる感じ。

 どうして、そこまで知ってるのって思うほど、恵梨香のそういうツボみたいなところを押しまくってくれるんだよ。ただね、いくら夫婦でも康太はツボを知り過ぎてる気がするんだ。下手すれば、恵梨香さえ気づいていないツボを押されちゃうんだもの。それも言ったことあるけど、

「恵梨香ならきっと喜ぶはずと思ったから」

 結果はそうなんだけど、ある時に思ったんだ。康太はかつてやった事があるんじゃないかって。そうあの最後の恋人相手に。恵梨香にやってもらってることは、かつて康太が最後の恋人に対してやったこと、やろうとしたかった事をやってるんじゃないかって。

 恵梨香が最後の恋人にどこか似てるのは理恵先生の話で間違いない。それだけじゃない、康太は最後の恋人と結婚を決めていたはずなんだよ。康太がプロポーズの時に恵梨香の不倫の過去に苦悩はしたけど、それでも許し受け入れたのは、最後の恋人と結婚できなかった事の後悔がある気さえする。

 康太はなんらかの理由で最後の恋人との結婚のタイミングを逃したんじゃないかな。あれこれステップを踏んで時間を過ごしているうちに関係が醒めちゃったとか。今の時点では理由はわからないけど、この事を康太はすっごく後悔したのが恵梨香とのマッハ婚になったぐらい。

「お~い、恵梨香。なに考えてる」
「康太と結婚できて幸せだなって」

 こんな夜は康太が欲しいけど、一昨夜も昨夜も蕩けてるのよね。というか、日が経つにつれて頻度が多くなってる。普通は新婚当初は燃え盛っても、段々とそれなりのペースになってくるはずだよね。

 それが激しくなってる気がする。あのラブホの時から、康太は必ずあそこまで恵梨香を追い込むんだよ。追い込まれると満たされるんだけど、翌日の午後には欲しくなる。あの狂乱の時間を体が求めてるとして良い。自分の体が怖くなってる。

「たまには休まないと、康太も辛いでしょ」
「おかしいな。恵梨香はそうじゃなくってるはずだよ」

 バレてる。一緒に暮らしてるからバレても不思議ないけど。そしたら康太は恵梨香を後ろから抱きしめるんだよ。ギュッと力強く。そして恵梨香を振り向かせて熱い口づけまでしてくれる。いや、口づけなんてもんじゃない、むさぼり合うような激しいもの。

 康太は左腕で抱きしめてくれるのだけど、熱い口づけを続けたまま右手の指は恵梨香を愛してくれる。恵梨香のすべてを知り尽くしている指に反応せずにはいられない。恵梨香は康太に身を委ねるだけ。最後に指は恵梨香の反応を優しく確かめる。

「恵梨香、素直に欲しい物を言ってごらん」

 こんなもの我慢できるわけないじゃない。これだけは、はっきりわかる。康太は恵梨香を目的をもって導いてる。そうしたいのが康太の願いなら、そうなるのが恵梨香の喜び。

「今夜もお願い」

 とりあえずわかるのは、近いうちに毎晩になる。いや、もう殆どそうなってる。そう求めるように恵梨香の体は完全になってる。それと康太にも変化を感じてる。恵梨香の体がそうなるのを見極めて、次に進もうとしてるのを。

 この次はある。間違いなくある。とにかく康太は慎重に丹念に恵梨香を開発してる。もう開発の余地なんて無いと思ってた恵梨香が確実に開発されているのはわかる。次のステップに必要な開発は十分すぎるほどの時間をかけて行われる。

 今晩行くのかもしれない、明日かもしれない。また前のようにラブホを使うのかもしれない。それは、まだわからないけど、今から狂乱の時間で恵梨香を満たしてくれるのだけは確実。

 愛してる。そうなって欲しいのなら必ず恵梨香はなる。それこそが恵梨香が選ばれた理由のはず。康太に行きたい世界があるのなら恵梨香はついて行く。なにがあっても離れない。どこまでも二人は一緒。

恵梨香の幸せ:理恵先生への疑惑

 康太とのベッドは素晴らしいし、恵梨香以上の経験を持ってるとして良さそう。それはそれで良いのだけど、気になるのは別の点なんだよ。そう、康太は誰を相手にそこまで極めたかなんだ。

 これの答えもほぼ出てる。由佳でも智子でもないし、ましてやリサリサでもない。康太は高校生ではまだ童貞のままであったはず。元嫁も違う。元嫁と結婚する前にも看護師あたりの恋人なり、セフレがいた可能性もあるけど、あの段階に達するまでには時間がかかる。

 消去法で残るのは最後の恋人のみ。五年ぐらいの交際期間があるものね。それだけじゃない、康太が童貞を捨てたのも最後の恋人であった事になる。これが一番妥当なんだけど、そうでない可能性の女が残るのよ。

 康太の初めての相手が理恵先生じゃないかって。理恵先生とも長くて、少なくとも二年以上だし、それだけあれば極めるのだって可能ってこと。そう考え始めるとあの夜の会話が不自然に思えてくるんだ。


 映画のエピソードが不自然過ぎる。映画のデートが理恵先生の両親にバレたとなってるけど、どうやったらバレるかはまず疑問。その辺はタマタマもあったかもしれないけど、バレた後がおかしすぎるんだ。

 デートがバレたから両親に交際が発覚したまではまだ良いとして、交際するなら婿養子を康太に要求したのは不自然だ。あれは康太に要求しても無理があり過ぎる気がする。まだ十代だよ。

 あの年代でも付き合って別れるなんて日常茶飯事みたいなもの。結婚まで五年以上は待つ必要があるから、お互いに冷めちゃうことなんて珍しくもなんともないじゃない。別れた後に理恵さんに残るのはキズモノの評価だけじゃない。

 別にやったからって女の評価が下がるわけじゃないけど、そこはそれ恵梨香の想像もできないセレブの世界だから避けたいはずじゃない。だから婿養子の話は康太だけに承諾させても意味ないと思う。

 そうなれば婿養子の約束は家と家の約束にしないといけない。婚約でもまだ甘い気がする。それこそ学生結婚までさせて、上浦康太に正式にして初めて許すぐらい。そう、康太が理恵先生を抱く前にすべての逃げ道を塞いでしまうはず。

 ここまでは極端かもしれないけど、これに近い状態に康太を追い込んでこそ認められる交際になると思うのよね。そうじゃなければ映画のデートが発覚した瞬間に、

『うちの娘に手を出すな』

 これだろ。だから理恵先生は、神戸の夜の話ほど窮屈な異性関係を強いられていなかったとするのが真相の気がする。そりゃ娘ばかりだから跡継ぎに婿養子が必要としても、見合いでなくても恋愛でも相手が医者ならOKだったと見るべきじゃないかって。


 あの夜は恵梨香もいたから二人の関係を清い物にしたんじゃないかと思い出してる。それもだよ、打ち合わせなしの阿吽の呼吸でやったとしか思えないんだ。それもだよ、十五年ぶりぐらいに突然出会って出来たことになる。

 そこまで出来るのは半端な関係で出来ないはず。お互いのすべてを知り尽くし、些細な仕草、表情、反応から相手の意図を読み取れるとこまで進んでないと無理としか思えないもの。そう考えるとマフラーのエピソードも不自然に思えるものね。

 理恵先生は康太と付き合うまでは折り紙付きの処女に違いない。それもガチガチの箱入り娘。そんな女が男を触ったりしたら、あわてて引っ込めるしかないじゃない。触って大きくなるのまで確かめられるのは、康太を受け入れていたからこそとしか考えられない。

 女が男のあれを愛しく思えるようになるのは、あれを受け入れた経験を潜らないと無理だと思う。それだけでも無理かもしれない。あれで女の喜びを教えられてこそ、愛しい物にやっと変わるぐらい。そうじゃなきゃ、ただグロテスクなだけ。

 そうなるとマフラーのエピソードは、理恵先生が康太をベッドに誘うサインだったとしか思えなくなってくるのよね。そこまで二人の関係が進んでたとするのが自然だよ。もしそうなら相当な関係だよ。恵梨香だって康太を誘う時にそこまでしないもの。


 ここまで考えると婿養子の話さえ怪しくなってきた。理恵先生は長女だけど三姉妹。順当なら長女が婿養子を取って上浦病院を継ぐだろうけど、見方によったら三姉妹の誰でも良いともいえる。そりゃ、康太が婿養子になれば話は一番簡単だろうけど、康太の嫁になるのも不可能じゃなかったはず。

 だから婿養子の話は理恵先生の両親が康太に話したものじゃなくて、理恵先生が康太に提案した気がしてきた。そっちの方が自然だし、ありえそうな話だもの。理恵先生は恋愛は許されていたけど、結婚するななら出来れば婿養子が望ましいぐらいは吹き込まれていてもおかしくないもの。

 理恵先生の気持ち的には康太と結婚したいまでは行っていて、結婚するなら出来れば婿養子なってくれたらスムーズに話が進むぐらいの感じかな。もっとも康太も一人息子だから、その条件はさすがにすんなりウンと言えなかったぐらいだよ。


 うん、うん、うん、そうなれば理恵先生の不妊症の話も怪しいじゃない。理恵先生が見合いで婿養子を迎えたのは本当だと思うし、子どもが出来なくて離婚に至ったのも本当だと思う。

 でも不妊症の検査をするなら夫婦そろってじゃない。ましてや夫婦とも医者だから必ずそうするはず。百歩譲っても普通はまず女だろ。婿養子が種なしだったとしても、理恵先生が再婚しなかったのは自分が不妊症だとわかったからとするべきよ。

 これだけの話を十五年ぶりに突然出会って、恵梨香を気遣いながら即席であの夜にデッチあげたのなら驚くよ。お互いの言葉から阿吽の呼吸で清い関係にすることにし、話の辻褄を巧みに結び合わせてるんだもの。そこまで出来るのは二人の関係は、体も心も深く繋がっていたとしか思えない。


 だったらだよ、理恵先生が康太と別れたのはフェード・アウト的なものじゃなく、最後の恋人に奪われたかもしれないじゃない。そうだよ、康太と理恵先生の関係が冷めた後に最後の恋人が登場して入れ替わったみたいな平穏なものじゃなかったはず。

 康太を奪われまいとする理恵先生と、康太を奪いたい最後の恋人との間で壮絶な争奪戦が行われた気がするよ。その争奪戦の過程でアレの相性の話まで飛び出したとか。いや、どっちがベッドで康太を満足させるかで火花を散らしていたとしてもおかしくない。

 康太が理恵先生と最後の恋人の話を恵梨香に伏せていた原因もこれならわかる。康太は二股、三股をかけるような女たらしじゃないのは知ってるつもり。でも学生時代には結果的にそうなってしまったに違いない。

 だから由佳や智子の時のように、懐かしい思い出として恵梨香に話したくないに違いないと思う。それぐらいドロドロの関係になってた時期があったはず。康太への信頼は揺らぎもしないけど、康太にとって最後の恋人はどんな位置づけだったんだろう。

 だってだよ泥沼の関係になるってことは、理恵先生との関係が続いたままで最後の恋人が強引に割り込んだことになるじゃない。結果だけで言えば強引に割り込んだ末に理恵先生を追い払ってしまう略奪愛を展開したことになる。

 恵梨香が知ってる康太は元嫁と離婚した後で浮気は忌避していたけど、学生時代の康太は違ったんだろうか。ここになるとわかんないけど、康太のキャラ的には違うようにしか思えないよ。康太が学生の時に何が起こったんだろう。

 一番わからないのが最後の恋人と恵梨香はどこか似てる部分があって、康太の再婚の決め手になってるらしいのよ。これも実はおかしすぎるのよ。恵梨香との結婚の時は、先になぜか恵梨香を気に入ってくれたけど、最後の恋人との時に先にいたのはあの理恵先生だよ。

恵梨香の幸せ:雄々しい康太

 康太が結婚するにあたって夜の生活も重視してるのは知ってた。恵梨香もこれだけはライバルよりベッド・テクだけは自信があった。不安なのは恵梨香のビヤ樽ボディだけ。ついでに狸顔。

 入籍前夜に結ばれた時もこれだけは最後まで不安だった。恵梨香のすべてを見た瞬間に康太が萎えちゃうんじゃないかってね。

 あの夜はまず康太がシャワーを浴びに行って、入れ替わるように恵梨香がシャワーに行ったんだ。シャワーを浴びるには服を脱がなきゃいけないけど震えてた。この恵梨香ビッチ様が生娘のように震えてた。

 シャワーが済んで、バスタオルを巻いて出てきたら康太が待っててくれて、がっちり抱きしめてくれたんだ。そして恵梨香の唇を優しく塞いでくれた。これが康太とのファースト・キスだったものね。

 康太に抱きしめられた時に恵梨香に康太の雄々しさが触れたんだ。キスされてる時にバスタオルは取られたから、ダイレクトに感じたもの。それでもまだ恵梨香は不安だった、これから恵梨香のすべてがベッドでさらされるんだもの。その時に萎えないかって。

 ベッドに移り、ついに見られた。恵梨香のすべてを見られた。恵梨香は目を瞑ってた。開けられるものじゃなかったもの。もう神様にお願いしまくってたもの。こんな恵梨香を愛して下さいってね。

 康太の指先が優しく触れてくれた。その指先から、唇から、そして全身から恵梨香に康太の愛が伝わってきた。時間が経つほどビンビン伝わってきた。恵梨香の体は一〇〇%反応して声も抑えようがなかったもの。

 でもまだ不安だった。反応してるのは恵梨香だけ、恵梨香だけ感じて、反応しても結ばれないのよ。結ばれるためには、この恵梨香の体を康太が喜んでくれないといけないの。でもそんな恵梨香の不安をよそに恵梨香の体は燃え上がっていった。

 康太の指は恵梨香の体がどれだけ燃え盛っているかを知っている。この時に恵梨香は初めて体を開くの意味を知ったと思う。今までだって開いてきた。初婚のクソ元夫は強引に開いたし、不倫上司は開いたまま縛り上げもした。

 でも康太とは違う。外から見たら同じかもしれないけど、心が開いてるの。いや、開きたくて、開きたくて、開ききってるんだ。心が開き、恵梨香が花開き、心の底から迎え入れたいしか頭になかった。

 そして雄々しい康太が恵梨香に触れるのがわかった。本当に雄々しかった、経験したことがないほど雄々しかった。ビッチのはずの恵梨香が身悶えするほど雄々しかった。声なんて止められるものでなかったんだ。

 雄々しい康太をすべて受け入れられたのは誇らしかった。そう、康太は疑いようもなく恵梨香の体に反応してくれたんだ。後は女に生まれた喜びを心行くまで堪能させてくれた。ビッチの恵梨香が、まるで初めて女の喜びを知った小娘ように興奮しまくってた。そして受け止めて朝が来た。

 初めて結ばれた夜はシチュエーションがシチュエーションだから、あそこまで感じられたと思ってた部分もあったけど、冗談抜きで康太と結ばれる度に繰り返されるし、この恵梨香ビッチ様の感度は間違いなく上がってるんだよ。

 今では、今晩と思うだけで恵梨香の体は燃え上がるし、ベッドに入った時点でウエルカム状態にまでなってる。恥しいけど康太に隠しようもないもの。それを康太に軽蔑されないか心配だったけど、

「恵梨香の体は素晴らしい」

 ひたすら褒めてくれた。あんまり褒められるものだから、ますます恵梨香の体は燃え上がり安くなってる気がする。これって、あの不倫の禁断の蜜を啜っている時に似てる気がする。それを夫婦なのに味合わされてるとしか思えない。

 今のところ康太は変態行為をしないし、要求する素振りもない。なのに恵梨香は確実にビッチになってる。それも恵梨香でさえ恥ずかしいほどのビッチになってる。それでも康太は、

「夫婦じゃないか。奥様を満たすのも夫の仕事です」

 とにかく康太は雄々しい。恵梨香がナマで知ってるのはクソ元夫と不倫上司だけど、比べるのもアホらしいぐらい違う。恵梨香だって雄々しい男が存在するのは知ってるよ。女だってエロ写真やエロ動画を見てるんだよ。

 とくに不倫時代の独りの夜には、ひたすらセルフで慰めまくっていたからオカズにしてた時期があるものね。でもね、あんなに雄々しいのはある種の奇形だと信じ込んでたよ。なにか絵に細工して雄々しく見せてるだけとも思ってたぐらい。

 それぐらいナマで知ってるクソ元夫も不倫上司も貧相だったもの、というか、現実ではあれが標準だと思ってた。そうじゃなければ、女が壊れちゃいそうだもの。いや壊れるとしか思えなかった。

 康太の雄々しさは、そんな恵梨香の知識さえはるかに超えていた。不倫上司にはおもちゃを使われたけど、それさえ、しょせんはおもちゃだとしか思えなかった。初めての夜に康太が入って来た時に、今までと全然違うのに驚くしかなかったもの。

 恐ろしいほど雄々しい物だったけど、満開の恵梨香は喜んで迎え入れてた。あんなのに喜ばされちゃうと、もう他に考えようがなくなるとして良いと思う。いやもうなってる。完全に康太の雄々しさに蕩けさせられてる。


 もうコンプレックスは振り払って良いと思う。康太は恵梨香の体に疑いもなく喜んでくれている。恵梨香の体に康太は雄々しく反応し満たしてくれる。嬉しくて、嬉しくて、たまらない。

 だからじゃないけど、軽い追加プレイをお願いした。そのためにラブホを使う事にした。それも朝から夕までのロング・プレイ。いつもの恵梨香は受け止めて意識がなくなり朝までグッスリなんだけど二回戦のお願い。

 夜にする時は眠っちゃうけど、昼間にラブホを使う時は、さすがにしばらくしたら目覚めるんだよね。これまでは、そこから帰ってたんだけど、二回戦が出来ないかって頼んでみた。

 男って女と違って一回果てると賢者タイムが来るのよね。そこからエンジンを再始動しないといけないけど、ちょうど恵梨香が眠ってる時間を使えば上手く回るんじゃないかと思ったんだ。

 再始動だって若い時は早いだろうけど、康太もアラフォーだから時間も必要じゃない。一方の恵梨香は目覚めると二回戦が待ってるぐらい。それと康太に二回戦が出来るかどうかも知りたいのもあったんだ。

 恵梨香の計算通りになったら、意識の有る間は常に康太に挑まれてる感じになるはずじゃない。ちょっとハードだけど、そんなのも欲しくなってた。康太は恵梨香のプランを聞くと、

「恵梨香が望むなら」

 そして始まった。いつものように途轍もない喜びと満足感を味わった後に恵梨香は眠りについたんだ。眠りに就く寸前に、目覚めた時にスタンバイした康太が待ってくれてるとワクワクしたのを覚えてる。

 ところが凄まじい衝撃に恵梨香は襲われて意識が戻ったんだよ。恵梨香は雄々しい康太に叩き起こされたんだ。体の芯がおかしくなりそうなほど感じたよ。それが何度も、何度も。極限まで追い込まれるのをどうしようもなかった。さすがの恵梨香も、

「康太、もう許して」

 いつもなら恵梨香のお願いは優しく聞いてくれるのに、

「恵梨香、何も考えずに感じてごらん。恵梨香なら出来るし、気に入るはずだよ」

 言葉も出なくなる狂乱状態がどれぐらい続いたかわからないぐらい。たぶん意識のある時は叫びまくり、意識が飛んでもすぐに康太に呼び戻されるを果てしなく繰り返していたんだと思ってる。やっとまともに意識を取り戻した恵梨香に。

「やはり恵梨香は最高だよ。だからボクは恵梨香を選んだ。これからもっと楽しもうね」

 その時には頭がボゥとして何も考えられなかったけど、翌日になってハッと気付いた。康太はあのプレイを知ってるんだって。そう、今までの恋人の誰かをあの状態にまで開発し、あそこまで追い込んでたはず。

 それに康太は恵梨香の反応を楽しみながら、余裕をあきらかに持ってた。つまりあの段階の次さえ知ってるとしか思えない。昨日は『まずはここまで』感が確実にあったよ。恵梨香だって、あそこまでの経験はあるけど康太の手腕に舌を巻くしかない。

 そりゃ、不倫上司の時にあそこまで経験したけど、あれは後ろを開発された挙句、身動き出来ないように拘束されて、両方はもちろん、全身をおもちゃで責め立てられてようやく達したもの。言ったら悪いけど、不倫上司の粗末なものじゃ到底無理。

 それに対して康太はあくまでもノーマル。行為自体は普通の夫婦がやってるのとまったく同じ。そうなのよ、あの雄々しさ、逞しさだけで恵梨香をあそこまで導いてしまってる。それとノーマルであるがために逆に恵梨香の逃げる余地もなくなってる。

 恵梨香が追い込まれる時は、康太はガッチリ覆いかぶさってるのよね。もちろんしっかり結ばれてる。それだけでも逃げるのは困難だけど、逃げる気自体が起こらないようにされてるとしか思えない。いや、完全にそうされた。

 怖いってか。そりゃ、怖いよ。このまま死んじゃうんかないかとまで思ったもの。それに康太の余裕から、恵梨香でさえ経験したことのない世界に連れ込もうとしてるんだよ。でも恵梨香は康太を信じてついて行く。それを望まれて選ばれたんだ。康太の望むビッチになってやる。女のプライドを懸けてもなってやる。それが恵梨香の喜び、康太への愛。