ミルは南村先輩との関係に決着をつけに行ったんだ。それなりの修羅場を覚悟してたみたいだけど。
「拍子抜けした」
ミルが別れ話を切り出したら南村先輩は、
『ミルがそれやったら、それでエエわ』
執着されるよりあっさり切れた方が良いとは言え、さすがに二人で過ごした時間はなんだったんだと思ったそうだ。
「ミノルもハズレ男だって経験したのが収穫かな」
南村先輩はイケメンだし、デートも楽しかったし、ベッドも良かったんだってさ。こっちがネンネなのを割り引いても、女の扱いは上手だったぐらい。だからミルも夢中にはなったけど、
「どっちかと言わなくても遊び人だろ」
学生にとって遊びも重要だと思うけど、そっちに傾き過ぎた人ぐらいで良さそうだ。
「ヒモ男の適性も余裕であったんじゃないかな」
女が男に求めるものは色々あるし、年齢によっても変わって来ると思う。中高ぐらいまでならとにかく見た目と力強さだ。だからあれだけスポーツマンに人気が集まるし、
「どこか不良っぽい空気がある男も熱狂的なファンがいたものね」
学生になっても見た目重視は続くけど、強さの評価が変わってくる気がする。
「能力評価というか、生活力ってやつかな」
将来性も濃くなると思う。先輩たちを見てるとそう思うし、カノンたちだって意識し始めてる。
「ぶっちゃけで言うと、女を養える力だろ」
本音ではそこになるかな。もっと言えば結婚も現実的な話として意識してくるぐらいだろ。夫婦になれば一家を誰が養うかの現実問題だ。共働きは当然としても、
「男を養いたい女はレアだよ」
少なくとも対等じゃないと困るぐらいかな。大学って何をするところの話もやりだせばキリがないかもしれないけど、
「社会人になるための最終準備の場所であるのは間違いないよね」
卒業したらそれしかないものね。学生の遊びも社会勉強だし、人生の経験だし、青春の思い出として大事だけど、
「ミノルはキリギリスだった」
ミルも辛らつだけど当たってるかも。大学時代にそれなりに遊ぶのは誰だってやるよ。カノンがツーリングに熱中してるのもそうだ。だけど何にだって程度がある。遊ぶのは学業を疎かにしない程度が鉄則だ。
どの程度疎かにしないかもピンキリがあるにせよ、成績が可山優三にも届かないのは遊びも度が過ぎてるよ。彼氏として遊ぶ分には楽しいだろうけど、就活とか卒業が出て来ると化けの皮が剥がれてしまうぐらいかも。
「要領が良いのはホントみたいだけど、あれって苦労を避けてるだけだもの」
無駄な苦労をやる必要はないと思うけど、とにかく遊びたいから逃げ回った印象しかないな。遊び過ぎた結果が就活を直撃してるけど、
「これからツケを払うんじゃないかな。だって次を逃げたら、ミノルは終わりだろ」
今の状態だったら、ブラックでも危ないかもだ。下手すれば就職浪人だ。そうなっても大学入試じゃないから、今年より就活条件が悪くなるだけだ。新卒で就活に失敗した人なんて問題児の烙印しか増えないものね。
「キリギリスもわかっただろ」
現実の厳しさってやつか。わかったから、
「キリギリスの本領発揮だ」
ミルを捨てて元カノのニンジンに食らいついたってことか。これで元カノとの結婚は決まりだね。良い方に考えれば三星物産に就職できるし、役員である義父の引き立ても期待できるコースだけど、
「キリギリス人間が変わるとは思えないな」
コネ入社であっても、評価は個人の能力と残した実績になるはず。コネで昇進したって、どこかでメッキが剥がれるはずだものね。
「ツケの支払時期は必ず来るはずだ」
それとさ、打算の愛じゃない。
「贅沢女もコレクションぐらいに思ってる気もする」
見た目は良いものね。そりゃ、結婚するならイケメンの夫が欲しいもの。その点では南村先輩は申し分がないけど、
「そのうち両方とも嫌になりそう」
贅沢女からしたら飽きて来るのはありそうだし、
「そんな贅沢女に頭が上がらない関係だものね」
他人の事だから、こんな陰口は良くないとは思うけど、ミルを捨てやがった男だから、これぐらいは良いだろ。でもさ、男を選ぶって難しいと思ったよ。カノンだってミルと南村先輩はお似合いだと思ったし、上手くいくと思ってたものね。それぐらい憧れの先輩だったもの。
「ミルもそう思ったから付き合ったけど、良く見えてた部分がメッキの虚飾だったなんてわかんなかった。まだまだネンネだったな」
しょうがないよ。お互い、田舎出のポッと出だもの。都会の風の厳しさを覚えたぐらいとしか言いようが無いじゃない。それでも出来なくて良かったよ。
「そこなんだけど・・・」
げげっ、どうして、
「そのうちカノンも経験するよ。どうしたって女は受け身になるじゃない。それにさ、ドッキングしてる時の心理状態って普通じゃなくなるんだよ。そこで求められたら断れるものじゃないし、それよりぶっ放されたらどうしようもないじゃないの」
ゴムは、
「これも知っておいた方が良いよ。男ってとにかく生が大好きなんだ」
ゴムを付けるか付けないかも男次第になってしまうのか。避妊は、
「怪しすぎるオギノ式」
一番アテにならないやつじゃないの。それもギリギリまで生を求められたって危なすぎるよそれ。
「マジでやばかったのは何発もあったもの」
不幸中の幸いにはなるのだけど・・・えっとえっと、南村先輩ってすっごく激しかったはずだよね、
「だからミルも検査に行ったんだ」
それって南村先輩はもしかして。
「それも最後の割り切りに入れてたよ。今はいらないけど、やっぱり欲しいじゃない」
ミルは問題なしだったみたいだけど、南村先輩はどうなんだろ。それより出来てたら、
「堕ろすことになったかな」
子どもと女をなんて思ってるんだになるのはなるけど、産めば産んだらで話はひたすらややこしくなるのも現実だものね。そうなったらミルが大学を続けるのは難しくなるだろうし、たとえ結婚したって南村先輩はキリギリスだ。
「産むって頑張っても捨てられてたかもね」
シングルマザーに一直線か。だからこそ避妊に励むものだろうが。
「そこもキリギリスだったってこと」
ドッキング中にどんな心理状態になるかはやった事がないからわかんないけど、それでもの話じゃない。
「不良債権を横からしゃしゃり出て引き取ってくれたと感謝してるぐらい」
なんて強い女なんだよ。
「強くないよ。なんかさ、醒めて来ると現実的になっちゃって」
それを強いって言うんだって。普通は泣き寝入りするはずだもの。
「もう泣くだけ泣いたって」
ミルに相応しい次の男が待ってるよ。
「それよりカノンの玉の輿はどうなのよ」
玉の輿じゃなくてまだ幼馴染だって。