天使と女神シリーズ外伝9 ミサトの旅
なんとか二年に進級したミサトは、新入会員を迎えます。その中に見知った顔の男が一人。二年前の写真甲子園で優勝を争った神藤高校のキャプテンの伊吹明です。思わぬ再会に喜びます。 さてフォト・サークルの当面の目標はツバサ杯です。これもミサトが出るなら話は簡単ですが、ツバサからツバサ杯への参加を差し止められます。 そこで加茂たちはミサトに伊吹の指導を頼みます。指導が好きでないミサトは渋りますが、最後はウンと言わされてしまい伊吹の指導に取り掛かります。 伊吹の才能はミサトの見込み通りでしたが、ミサトから見れば欠点があまりにも多く、その修正に取り組みます。しかしミサトには伊吹の写真への姿勢が余りにも甘く感じてなりません。 ツバサ杯に近づくのに伊吹は同じミスを繰り返します。ミサトからすれば、その程度はとっくの昔に出なくなって当然のものです。伊吹の写真をレベル・アップするには、写真に対する姿勢を変える必要を感じたミサトの指導は厳しさを増します。 ある日の指導の時に伊吹がまたもやイージーミスを起こしたことに苛立つミサトは、いつも以上に厳しい指導を行います。その時にミサトは気づきます。ミサトの指導を誰もが嫌がっていると。それが伊吹もだと感じたミサトは、サークル北斗星を去り、退会届を送り付けます。 驚いたのは伊吹や加茂たち。まさかあの程度の事でミサトが去って行くとは思いもしなかったのです。なんとかミサトに戻ってきてもらうために、ミサトのすべてを追いかける旅が始まります。 |
今回のお話は、劇中劇と現実が同時進行する形式に挑戦してみました。発想としては面白かったのですが、書いている方としては、二つの話を考えているようなもので、案外手間がかかりました。 それと劇中劇は映画を使いましたが、これまた撮影現場なんか見たこ…
喫茶北斗星にも久しぶりに顔を出したけど、思いっきり冷かされた。でもみんな嬉しそう。もっとも平田先輩には、 「ちょっとはセーブしてくれよな。彼女いない歴更新中のオレには目の毒や」 妬かない、妬かない、欲しけりゃ、自分で探してね。 「お~い、チサ…
あの映画だけどクランクアップされたじゃない。だから正月ぐらいに公開になるかと思ってたら、ゴールデン・ウィークに向けての公開だって。いわゆる編集ってやつ。これでも今では早い方らしくて、CGを多用した作品なら一年以上もザラらしい。 四月に入って…
映画のラストはドラマチックだったけど、ヒステリックになったのは前期試験。毎度毎度の事だけど、どうして試験前になると、ああなるのかな。追試が三つで済んで良かったよ。後期試験こそ、そうなりませんように。 今日のミサトは思いっきりおめかし。初めて…
「さすがはコトリちゃんだな。知恵の女神はダテじゃない」 「そうでもないで」 コトリちゃんには感謝している。わたしは尾崎の心の傷を癒すカギは高校時代にあると見ていたのだ。もちろん小学校時代に遭ったイジメが最大の原因だが、その傷を尾崎は時間をか…
滝川監督の口から聞こえたのはテイク2。つまりは撮り直しってことだけど、台本もらってないよ。それにミサトが教室にいる状態からテイク2って、どうするって言うの。 そうしたら、どういう仕組みになっているのか、わからないけど、教室のセットが見る見る…
固唾をのんで受け取った今日の台本。そうそう、昨日は初戦審査会で落ちた知らせで部員が嘆き悲しむのシーンで終わったけど、ちょっと切り方が不自然な気がしてたんだ。それを受けて部長役のミサトが何か言うはずじゃない。 そのシーンをあえて翌日に回してた…
映画のストーリーは部長役と副部長役の激突から、岩鉄顧問の収拾に進んだのだけど、そこで一件落着にならなかった。激突後に不協和音が生じる展開になったんだ。そうしないと話に深みが足りないのはわかるけど、滝川監督が使ったのはやっぱり恋だった。 写真…
映画の中の写真部は摩耶学園時代とは似てる部分と違う部分があるんだよね。一番違うのは、あの時はミサトがトレーニングすればするほど、部員の心が離れて行ったんだ。でも映画では、もっと部員が心を合わせてる感じかな。 似てるところは副部長役のコハクち…
撮影は序盤が終り中盤に。今日も『今日の訂正台本』をミサトは読んでる。ここまでくればハッキリするけど滝川監督が撮影前に話してた、 『写真小町と呼ばれる美少女が撮った写真を巡って、不思議な話が展開する』 これではなくなったと思う。だって舞台は高…
台本が届いて読んでたんだけど、ミサトの出るシーンは多くないのよね。中心は冒頭部の写真小町が写真を撮るシーンと、補足するような回想シーンぐらい。セリフも無くて共演もいないとしか読めない。 これだったら一ヶ月も必要ないどころか、一日で撮れそうじ…
映画出演なんてトンデモないけど、とりあえずサキ先生のところに相談に行くことにした。サキ先生はオフィス加納の動画部門のチーフ。とにかくゼロに近いところから立ちあげた叩き上げかな。 メインの仕事はCM、さらに企業や自治体のイメージ・ビデオ、ミュ…
オフィスのバイトも終わって、無事、無事だよ、バイト代をもらえた。ちゃんと銀行に預金できたから、あれは子ども銀行券でも、どこぞの外国の紙幣でも、偽札でも、木の葉でもない。次は振り込みにしてもらう。バイトが終了して家に帰る時に、六階の七号室の…
「コトリちゃん、悪いな」 「水臭いで、ミサトさんもここの仲間やないか」 尾崎と写真サークルの伊吹の間に何かが起こったのはわかった。それが尾崎の伊吹への指導が原因なのもわかった。だから二人を再会させる段取りをしたのだが、尾崎の反応は意外という…
大学に戻りツバサ杯の応募作品を撮り上げました。オフィスで教えられたことを一〇〇%活かしたつもりです。喫茶北斗星で先輩達に見てもらいましたが、 「こ、これは・・・」 「なんという・・・」 「ここまで・・・」 ボクの目から見ても格段に変わっています。ここま…
出口の見えない地獄の底でもだえ苦しむ日々を過ごしました。とっくの昔に日付の感覚はなくなっています。そんな時に星野先生に家に再び招かれました。麻吹先生は、 「わかったか伊吹。ここではこれぐらいは当たり前だ。その当たり前を尾崎はお前に求め、お前…
どこぞの世界にオフィス加納のプロの仕事のバイトがあるっていうのよね。次々に渡される仕事って、ガチの本業じゃない。どこも名前の通った一流企業の、それもどう見たって本気の仕事。あれ一本でいくらするんだろうって代物だよ。ホンマにミサトでエエんか…
麻吹先生に指定された時刻にオフィス加納に行くと。 「よく来たぞ伊吹。今からだが・・・」 「待って下さい。その前に聞きたい事があります」 すると麻吹先生は、 「それは後だ。聞きたければサトルの合格をもらってこい。話はそれからだ」 首根っこを引きづら…
関学から帰って、そのまま加茂先輩の下宿に。なにか当たり前のようにケイコ先輩がいて夕食の準備が整っています。 「みんな誤解していたのね」 「はい、あれだけ快活ですから、悩みなんてなさそうに見えますものね。でも・・・」 そこで三井先輩の話をすると、 …
「加茂先輩、その南亜希子さんって誰なのですか」 加茂先輩とケイコ先輩、さらにヒサヨ先輩や平田先輩はツテツテをたどってミサトさんの高校時代のことを調べてられます。あの尾崎さんの態度の裏に、きっと何か理由があるはずだと見ています。そこで浮かび上…
言われたホテルに行って見るとミサトの荷物が運び込んであった。ビジネス・ホテルだけど機能的で使いやすそう。シャワーを浴びてベッドで寝てたら、また思い出しちゃった。サークル北斗星での伊吹君の指導。 あれって前科があるのよね。ミサトが部長の時にや…
ミサトも学生だからバイトやってる。生活費を入れるほど殊勝じゃないけど、自分の小遣いぐらいは稼ぎたいし、三年になれば下宿したいのもあるから、そのための貯金のためにもやってる。 バイトでも雇う方は来るのを期待してるから、そうは安易に休めないのだ…
「麻吹先生、お見せして良いかどうか判断に迷ったのですが・・・」 十津川高校の封筒ってなんだ。そんなところから何故紹介状だ。こういうものは誰からの紹介であるかがポイントだが・・・テルじゃないか。三年前の写真甲子園で神藤高校の写真部の監督をしていたの…
「加茂先輩はオフィス加納に行ったことはあるのですか」 「あるはずないよ」 オフィス加納への嘆願は代表のボクだけでする気だったのですが、伊吹君がそれこそ決死の勢いで同行を求めて来ました。断れば一人でも行きそうだったので一緒です。 「ここですね。…
ミサトの友だちのナオミ、島原尚美。今日も喫茶北斗星にサークルのメンバーが集まってるけど、みんな表情が暗い。ミサトがあの日からサークルに来ないんだよ。そりゃ、部活じゃなくてサークルだから、休んだらダメってものじゃないけど、喫茶北斗星にすら来…
ボクは伊吹明。大学は一浪こそ覚悟していましたが二浪目は辛かった。原因もはっきりしていてボクの努力不足しかないのですか、どこかで、 『なんとかなる』 この甘い期待を粉々に砕かれた感じです。とにかく浪人生は辛い、楽しかったと言う人もいますがボク…
しぶしぶ始めてみたけど、受験勉強中のブランクこそあるものの、錆が落ちると見る見る良くなるのはわかった。なにが良いかって、写真の考え方が自由なのよね。自由過ぎて暴走する部分もあるけど、あれは無理に矯正したらいけない部分のはず。 矯正するんじゃ…
写真サークルの前期の目標は夏休みに行われるツバサ杯。とにかく副賞にハワイでオフィス加納のプロの指導を受けられるってことで、夢のコンクールにされてるぐらいかな。この辺はオフィスのプロの指導がどれほどトンデモないものか知らないだろうから、しょ…
伊吹君は二浪でミサトの一歳上になる。 「国際写真フェスティバルの時が最後でしたっけ」 「そうなりますね」 伊吹君は和歌山県立神藤高校出身。どうしてそこまで知っているかといえば、写真甲子園の時の近畿ブロック代表で、決勝大会で準優勝だったから。そ…
ミサトもそうだったけど、文化会系のサークルに新入会員が入って来るのは学祭の後が多いのよね。だからサークルにもよるけど、学祭を新入会員勧誘のアピールに使っているところも少なくないかな。 「うちはどうするのですか」 「待つしかないだろ」 学内にポ…