天使と女神シリーズ25 ツーリング日和5
鹿児島へのロングツーリングに出かけたコトリとユッキーは、フェリーで出会ったカケルに興味を持ちマスツーに持ち込む事に成功。カケルから聞いた話は、女の夢であるスウィートを冒涜するものと判断した二人が繰り広げた作戦とは。 |
ツーリング日和シリーズも五作目になり、さすがに行き先のネタが尽きてしまいした。最後まで残しておいた鹿児島に行かせたのですが、ここでツーリング話を作るのに難儀させられました。 鹿児島には子どもの頃に一度だけ行ったことがあるのですが、さすがに大…
淡路のツーリングは、明石までの往復がウンザリさせられるけど、淡路島の中のツーリング自体は快適なのよね。九割ぐらいは余裕でシーサイド・ツーリングになるし、信号も少ない。ついでに交通量もクルマは高速走ってくれるから多くないもの。ジェノバ・ライ…
「それよりユッキー、あれで良かったんか」 良かったよ。「見栄張るな」 そう張ってる。張ってるけど後悔していない。ミチルはイイ女だし、カケルに足りないものをすべて補える女だ。だから選んだ。選んだ時点でああなるのは織り込み済み。コトリにもそう見…
「コトリ、今日のお昼はラーメンよ」 「お土産のやつか」 焼豚も鹿児島のにしたかったけど、今日のは和記の焼き豚。「あってるんちゃう」 「甘いものね」 鹿児島ラーメンは有名だけど、特徴をあえて挙げれば甘いことかな。他はストレート麺で、柔らかめぐら…
やって来ましたリッツ・カールトン。ケーキは従業員に運び込ませて、ミチルと二人でクラブラウンジに。これは三十四階にあり、受付で名前を言うと案内されました。こりゃ、リッチだよ。 広々としたところに見るからに品が良さそうなソファや椅子、さらにテー…
「ミチル、このなんたら公爵へのケーキ提供依頼ってなんなんだ」 「なに言ってるのよ、カケルは経営センスが無能すぎる」 ミチルには地獄の経営講義を受けたのですが、「あれだけやったのに右から左じゃない。やりながら馬の耳に念仏って言葉しか思い浮かば…
「結果は大成功ね。加藤さんまで動員してたのね」 「ああ、甘いものは大好きやそうや」 それでわざわざ愛媛から大阪までツーリングしてきたのか。ま、『カトちゃんと行く、スウィート聖地巡りツーリング』 てな企画で番組作ってたから、ちゃっかりしてるよ。…
ドゥーブル・フロマージュには喫茶部もあります。そこで亜衣と知り合ったのも今となっては懐かしい思い出です。いつものように厨房で忙しく働いていると、事務職員がやって来て。「シェフ、・・・テレビの取材の許可なんですが」 そんな小さな声じゃ厨房じゃ聞…
さてお茶の時間だけど、今日の紅茶はダージリンにしよう。グラグラに沸騰したお湯をまずポットとカップに入れて温めておく。ポットのお湯を捨て茶葉を入れて、そこに熱湯を注ぎ、さらにティーコジーで醒めないようにする。このひと手間だけでもお茶の味が変…
佐伯さんはしばらく物思いに耽ってるようでしたが、「副社長は帰って来ても良いとまで言ってくれた」 与えられた使命を果たしたらそうなるはず。「でもね、副社長にはお世話になったけど、辞めようと思ってる」 どうして、戻るのはあのエレギオンHDではあ…
「今日は飲みに行きます」 ああまたか、地獄の講義宣言だ。ここのところなかったから油断していました。前の講義内容は・・・やばい、ウロ覚えになってるじゃないか。こりゃ、煉獄の一夜になりそうだ。「シェフ、ご愁傷様」 「生きて帰って来ると信じてます」 …
店が軌道に乗り始めた頃から佐伯さんに飲みに誘われるようになっています。まさかデートの誘いかとビビった部分はありましたが、行ったらエライ目に遭いました。形としては夕食を頂きながらお酒を飲むなのですが、実態は甘いものではありません。「経営とは・…
天敵佐伯さんですが背は高い方で、いつも髪をしっかり結い上げて、金縁の細い眼鏡をしています。来客があれば業務用の愛想笑いこそしますが、いつも厳しい顔をしています。冗談を言っても笑わないどころか、そもそも無反応です。 それと無駄口というものあり…
ツーリングが終わってしばらくした頃にスマホに電話。今さら、こんなところから電話って冗談だろうと思いながら出ました。だって追い出された元の職場からです。電話の内容は、「シェフとして戻って来て欲しい」 悪い冗談としか思えません。今さらも良いとこ…
ボクは遠山翔。ショウではなくカケルと読みます。住んでいるのも今にも壊れそうなボロ・アパートです。これもさらにがありまして、いくらボロ・アパートにしてもさらに破格のタダ同然です。 理由は事故物件。そう、人が殺されたり、自殺している曰く付きの部…
「フェリーは何時なの」 「十七時発やから十六時やな」 今日はお待ちかねの霧島ツーリング。まずは湧水町に出て、そこから国道二六八号を北上して、みやま霧島ロードに入るはずだけど、「本当にこんなところを曲がるの」 これって裏道?「そこのとこ右に入る…
ここは秘湯の一軒宿ではあるけど鄙びた小さな宿じゃないな。立派な庭もあるし、正面にあるちょっと古めなのは本館かな。さらに左の奥に新館らしい建物まである。泊まるなら本館だよね、「本館は日帰り休憩用やそうや」 なるほど日帰り入浴客も多そうだ。これ…
山頂に着いたからお楽しみのお弁当。「ミサキちゃんもシンプルにしたね」 お握りと焼きおにぎりに漬物の取り合わせだよ。でも高千穂峰に合ってる気がする。「龍馬が登った時もこれぐらいやったかもしれへんな」 お握りをパクつきながら、高千穂峰から広がる…
高千穂峰は標高一五七四メートル。登り口は高千穂河原にしたからここで標高五〇〇メートル、標高差は千メートルちょっとだね。だけどカケルは嫌がってたな。「山登りですか!」 カケルの歳ならそういう反応になるはわかるよ。カケルはツーリングをするぐらい…
「天逆鉾やけど刃の部分は付け足しちゃうやろか」 そんなはずないじゃないの。刃があってこその逆鉾じゃない。「そうやねんけど柄にしたらやっぱり不自然や」 柄にも装飾が施されることがあるけど、コトリはあの顔面像がまず不自然だって。「龍馬は天狗やと…
有名な割には記録の乏しい天逆鉾だけど、具体的かつ詳細で信用の置ける記録が一つある。これがなんと坂本龍馬の手紙。「寺田屋事件の後に、おりょうとやった日本初の新婚旅行の時のやっちゃな」 寺田屋事件で瀕死の重傷を負った龍馬は薩摩藩邸に匿われ、さら…
「コトリ、明日の準備は」 「バッチリや」 「カケルの分は?」 「用意してくれたんはミサキちゃんやで。抜かりあるかいな」 カケルの靴が心配だったけど、ミサキちゃんに任せておけばバッチリのはず。明日は今回のツーリングの最大の歩きである高千穂登山。…
国道四五〇号は酷道じゃなかったし、県道五十号も険道じゃなかった。ラッキーよ。県道四五五号が険道かどうかはわかんないけど、快適、快適、快走ツーリング。今日は池田湖、西大山駅、枕崎、知覧、加世田と寄り道が多かったし、あれはあれで楽しかったけど…
「コトリ、知覧の武家屋敷を見ながらお昼にするの」 「見たいとこやけど、二つも欲張れん。加世田に行く」 知覧の武家屋敷群も立派だそうだけど、「加世田は日本遺産やからな」 知覧の武家屋敷群はバイクで通り抜ける程度にして、三十分もかからず加世田の竹…
無事最高級の鰹節がゲット出来たから宅急便で送っといた。鰹節削り器がなかったら自分で調達してね。ここからだけど、「このままシーサイド・ツーリングも魅力的やけど、知覧は外せんからパスや」 「コトリ、知覧はやめとこうよ」 コトリが行こうとしてるの…
今日はまず池田湖よね。九州最大のカルデラ湖を見なきゃ始まらない。まずはハイビスカス通りから、その次はなのはな通りって言うのか。昨日も思ったけど薩摩半島ってかなり平べったい感じがする。それとやたらと畑が多いよな。「地理で習ったシラス台地って…
ナガトの先祖話で脱線したけど、今の話の焦点はナガトのパティシエとしての腕だよ。これを一番よく知っているのはカケルのはずだけど、「ナガトですか? 腕以前の素人です」 やっぱりね。じゃあ、今はコンペから精進して、「さすがに気になって昔の仲間に聞…
カケルとナガトの関係が始まったのは高校時代からだったのには驚いた。そんなに前からだったんだ。ただクラスの立ち位置はかなり違って、カケルはパティシエを目指すぐらいのスウィート・オタクで、「ナガトは陽キャのリーダーです」 陽キャとオタクだったら…
食事は懐石か。「イタリアンもあるみたいやったけど、薩摩に来たら」 「焼酎だものね」 イタリアンだって焼酎は合うかもしれないけど、一番合うのは地元の食材で作った料理のはず。薩摩料理の特徴はいくつかあるけど、米があんまり取れないから、サツマイモ…
この旅館には浮世風呂に、石榴風呂、蒸風呂もあるんだよ。「日本の銭湯は蒸風呂が元祖でエエ気がする」 日本の福祉施設の元祖は光明皇后が建てた悲田院とされてる。その中に入浴施設もあって、「垢すり伝説やろ」 光明皇后の夢の中に仏が現れて、千人の垢す…