天使と女神シリーズ35 ツーリング日和15
ツーリング中のコトリとユッキーが日向湖の民宿で出会ったカップル。どうにも訳がありそうで翳もあり、気になった二人はマスツーに。東尋坊まで行った時に見つけたのが神の糸。この技を駆使する神がいることになり、二人に緊張が走ります。 さらに話を聞くうちにユッキーの過去の神のシノギに関係する人物とわかり、嫌でも深く関わらざるを得なくなります。ですが事情を知るにつれユッキーの表情は曇りがちになります。 過去との因縁に決着を付けざるを得なくなったユッキーの判断はどうなるのか。またカップルの翳の原因は何なのか。さらにユッキーの遥か昔の秘めたる恋話まで絡んできます。日本海に沈む夕日を見てユッキーは何を思うのでしょう。 |
ツーリング先にとことん煮詰まってます。あれこれ探し回るのですが、未知の絶景コースなんて、そう簡単には見つけけられないってところです。どこをどう走っても今までに走ったところの焼き直しになってしまっています。 せめても新味として、能登半島から、…
無事フェリーに乗り込んだけど、新日本海フェリーも何度目になるんやろ。「お風呂に行こ」 汗を流してスッキリして、デッキで夕日を眺めとった。日本海側にはやたらと夕日の名所が多いねんけど、夕日の名所で夕日なんかそうは見れるもんやない。そりゃ、夕方…
朝風呂浴びてから朝食や。温泉粥とは嬉しいな。しょっぱい温泉やから塩加減も不要やろ。朝からイカのお造りがあって、こっちの鮭の味噌漬けは嬉しいな。このおぼろ豆腐は自家製なんか。「ヨーグルトも自家製だって」 朝から茶碗蒸しも不意打ちみたいで嬉しい…
今回は不甲斐ないけどバタバタやったな。「仕方ないよ。あんなもの快刀乱麻にどうにか出来る話じゃなかったし」 純粋に対神戦やったらシンプルやったのにな。そやけど神である天白助右ヱ門をようあれだけ丸め込めたな。「怖いもの知らずだけだったけど・・・」 …
余計なゴタゴタでツーリングが一日伸びてもたから、これを利用せん手はない。「コトリだって春日山城に行ったものね」 あれは最初から・・・スケジュール的に微妙やったもんな。それでも林泉寺まで回れて満足しとる。道はまず国道八号に戻って東に向かう。海岸…
「謙信は戦術家だったけど戦略家としては落ちるよね」 そういう説もあるけど、そんな事はあらへん気がする。まず謙信は家督を継いでからまず越後平定戦をやったはずや。その結果として越後の覇者となったんも間違いあらへん。覇者となった謙信が次にやる事は…
愛子と健太郎は天白に任せて、「いざ春日山城へ」 これって丸投げかよ。「人聞きの悪いことを言わないの。人の問題は人に解決させるだけの話だよ」 まあな、いくらユッキーでもあの場で全部解決とはいかんよな。恵みの教えと極楽教の合流問題は、どうしたっ…
あっちも気づきよった。ギョッとした顔になっとるわ。ユッキーも絶対に呼びつける気マンマンで、エレギオンHD副社長の肩書まで持ち出しよったからな。それもあれだけ高圧的な態度でやらかしたら飛んで来るやろ。「エレギオンHDの如月副社長とお見受けし…
「コトリ、悪いわね」 かまへん、かまへん。ミサキちゃんも、シノブちゃんも、ちゃんと言いくるめとくさかい。さすがに今日中には無理や。そうとなったら、「そうでなくてもでしょ」 まあそうや。このホテルに泊まったんは親不知コミュニティロードの起点で…
ところでやけど木村家ってそんなに極悪人の巣窟みたいな家やったんか。「そんなことないよ。あれはね、貧乏人が持ちなれない大金を持ってしまっただけ」 ユッキーは兵庫津でコトリろ喧嘩別れした後に大聖歓喜天院家に入ったんは聞いとったけど。「お寺の方の…
部屋に戻ってんけど、どうも最後のとこがようわからんが、「コトリもサボりすぎだよ」 そういうけどシノブちゃんに調査を頼んだんやろが、「さすがに自力じゃ無理だもの。でもさぁ、なんてことをしてくれたんだと思った」 なになに、健太郎の兄って、健太郎…
今夜のユッキーは気合が入っとるな。今回の件はユッキーの昔のシノギの後始末みたいなもんやけど、正直なところ気が乗らん。ユッキーもそうなんはわかるけど、厄介なことに神が絡んでしもうてる。 神が絡むとガチになる。そやけどユッキーのあんにゃろめ、そ…
山がかなり海に迫って来てトンネルが増えたな。境川を渡るとついに新潟だ。そろそろ親不知のはずだけど、どこからがそうなるの。「道の駅に入るで」この道の駅は越後市振の関となってるけど、「ホンマの関所はもうちょい東側やねんけど、その関所を越えたら…
ここで健太郎が口を挟んできた。「ここからですが・・・」 わたしたちは東に進むよ。「そや。悪いけど富山は通り抜けて新潟まで行くで。ほんであんたらどうするんや」 一瞬だけ間を置いて、「御一緒に」 ついて来ない訳ないか、あの二人の悲願は日向湖でも、千…
八時の朝食で二人と顔合わせたけど、やってない。あの状況でロストヴァージン出来たら逆に尊敬できるもの。食事が終わって八時半に出発。評価が微妙な宿だけど、「値段がな」 高いと思うか、そんなものだと思うか、安いと思うかの差は大き過ぎる宿だと思う。…
あの二人の態度は違和感の塊でしかないのよね。違和感の中に東尋坊の後であそこまでの事情を赤の他人であるわたしたちに、どうして打ち明けてしまったのかもある。あんな事情は話さなければわからないし、誤魔化しようはいくらでもある。こっちだって神絡み…
わたしの案件だから、今日のツーリング中もそれとなく探りを入れてたけどコトリにはどう見えた?「あれってホンマに恋仲なんか」 そうなのよね。大学からの交際ならば、やることはすべてやっているはずだけど、あの距離感は、「やってへんと思う。それも愛子…
食事時になっても不愛想な宿だな。だって料理を運んできても並べるだけで、料理の説明も聞かれない限り答えないんだもの。普通は料理を並べる時に世間話の一つぐらいするじゃないの。 どこから来たかとか、どこを見て来たとかさ。そこからどこを見るべきかと…
今日の宿だけどコトリと少しもめたとこなのよね。能登半島はその気になれば一日で回れないこともない。この点は自動車専用道が走れないネックがあるにしろ、千里浜スタートなら和倉温泉ぐらいまでは走るのは可能のはず。 もっともこれはひたすら走るツーリン…
平家ロマンを堪能してから目指したのは禄剛崎。能登半島の北の端にあるところで灯台もあるのだけど・・・なんて可愛らしい。なにか灯台の先っぽだけあるみたい。「狼煙の灯台とも呼ばれとる」 この辺は海難事故の多発地帯だったらしくて、それを防ぐために狼煙…
輪島からはまずは白米千枚田、続いてコトリが絶対外せない上時国家。ここは壇ノ浦で敗れ能登に配流された平時忠の子孫の家。ちなみに時忠は、『平家にあらずんば人にあらず』 この言葉を残したことで歴史に名を残した人だ。「あれもそれまでは藤原氏、それも…
泊った民宿は千里浜なぎさドライブウェイの入り口のすぐそばなんだよね。朝食が終わったら出発。のと里山道路を潜れば、「左やな」 六百メートルか。突き当りになってるけど右折しかないよ。道路に砂が増えて来たけど、ついに海が見えて来た。話には聞いてい…
恵みの教えはわたしが明治に作った教団だ。あの頃は記憶の継承が中断してたから青かったかな。色んな夢や理想を盛り込んだのだけど、「しょせんは神のシノギや」 ぶっちゃけね。わたしが運営したのだから記憶を受け継いでいなくても成功した。「そんなもん神…
まさになんてこったの世界じゃないの。「こりゃ、ユッキーの案件やな」 そうなるね。愛子の苗字は大聖歓喜天院になるけど、わたしが教祖をしていた時の長女の末裔になる。さすがに面影と言われても困るけど、わたしが産んだ娘の子孫であるのは間違いない。そ…
健太郎と愛子は布団を敷いて寝てもらった。わたしはコトリと温泉だ。宿から程近いけど、「外湯風ぐらいにしたらエエんかな」 銭湯風やましてやスーパー銭湯風じゃないし、健康ランド風にも遠いものね。それでも浴室は綺麗で好感は持てる。温泉は海に近いせい…
健太郎と愛子の回復時間を待つために東尋坊の遊覧船に。「ちゃうやろ、乗りたかっただけやろが」 バレたか。でもさぁ、待ってるだけじゃ退屈じゃない。それに千五百円なら乗るべきよ。「遊覧船に乗せて、どこが回復時間や」 違うって、回復度合いのテストだ…
呼鳥門から一時間ぐらいでそろそろ東尋坊のはずだけど、あれ?「ちょっとストップ」 コンクリート製のアーチに『歓 東尋坊 迎』としてる道と、ポールとポールの間に吊るしてある『歓 東尋坊 迎』の看板の道が並んであるじゃない。吊るし看板の方は駐車場・岩…
朝食を済ませて出発だ。あれっ、インカムは合わせないのか。コトリも何か察したか。インカムは合わせたら話も出来て楽しいけど、その代わりにこっちの会話も筒抜けになるからね。 あの二人の情報を得るにはインカムを合わせた方が良いけど、それよりわたしと…
カップルだけどツーリングだったのに少し驚いた。てっきりドライブだと思ってたもの。もっともさすがに小型じゃなくて中型だ。京都から来たみたいで、定番の周山街道で来たんだって。「一泊か?」 京都からならレインボーラインを走っても日帰り可能だけど、…
えっと、この道ってレインボーラインに向かう道だよね。「ああそうや。そやけど今日はレインボーラインに入らんで直進する」 ここだ、ここだ、左に曲がればレインボーラインの料金所だけど今日は直進だ。とは言うもののすぐに突き当りで、「右に行くで」 日…