天使と女神シリーズ20 ツバル戦記

 エレギオン・グループは社会還元事業の一環として、南太平洋のたった人口1万人の小国ツバルへの援助を長年行っています。その事業の完成祝典に呼ばれたコトリですが、突如中国が潜水艦で攻め寄せてきます。軍隊どころか警察も三十人程度しかいないツバルの首都フナイフティは無血占領されてしまいます。

 驚くシノブとミサキですが、第三国人であるコトリは早期に開放されるはずだと期待します。ところが中国軍は首都フナフティの占領こそスムーズに行いましたが、総督や首相以下、政府要人は根こそぎヴァイツプ島に逃げられ、そこで臨時政府樹立を宣言してしまいます。この事態にユッキーは大学院を休学して社長代行として復活。

 コトリはヴァイツプ島政府に協力し、ユッキーたちは国際社会を飛び回り侵略者である中国を追放するのに動きます。大国の面子にかけてツバル占領にこだわる中国と、コトリやユッキーの対抗策が火花を散らすツバル戦争が展開することになります。

 コトリとユッキーはツバルを取り戻せるのか。

ツバル戦記:あとがき

久しぶりにユッキーとコトリを軸にした作品にしてみました。シリーズの中でユッキーとコトリは成長しすぎて、どうにも扱いにくいジョーカーになってしまっています。これは遺憾とするところですが、なってしまったものは仕方がないので、開き直ってジョーカ…

ツバル戦記:急転直下で一件落着

有志連合艦隊のエスコート作戦は派手に行われています。現場の映像は世界中に中継され、強襲揚陸用潜水艦がシュノーケルによる充電に入ると夜でもサーチライトで煌々と照らし出します。 それだけなく強襲揚陸用潜水艦の位置もリアルタイムでプロットされ、ス…

ツバル戦記:殖産振興

中国の強襲揚陸用潜水艦の脅威が迫るツバルですが、コトリ社長に様子を聞いてみました。相変わらずのグルメ三昧もしていうようですが、「仕事もしてるで」 「潜水艦の訓練ですか」 「貿易収支の改善のための殖産振興や」 ツバルの歳出入は、ほぼ均衡が取れて…

ツバル戦記:集団的自衛権の活用

安保理でのバトルの末にヴァイツプ島政府は国連から集団的自衛権の行使を公式に認められたのですが、それだけでは空手形です。だってツバルと攻守同盟とか、安全保障条約を結んでいる国なんてないからです。「ツバルは絶海の孤島の小国だけど、あそこにポン…

ツバル戦記:北京の夜

ツバル奪還作戦の状況報告書を読む張主席ですが、「拙い、極めて拙い。そこまで有志連合艦隊が動くのは計算外だった」 中国の報告は指導者の機嫌を忖度したものばかりですが、それではさすがに国の舵取りは出来ないため、主席直属の調査室があります。そこに…

ツバル戦記:安保理バトル

いくら国連が禁じても戦争は起こるのですが、起こった戦争の正当性を判断する機関の代表格が国連の安全保障理事会になるとして良いはずです、「本当の意味で機能したのは朝鮮戦争ぐらいかな。とにもかくにも国連軍が出来たからね。あれでさえ曖昧なところは…

ツバル戦記:政治将校

人民解放軍の特徴として政治将校が必ず同行する。お目付け役で良いと思うが、この野郎の存在はひたすら鬱陶しい。指揮系統から言えば艦長である私のアドバイザー役で参謀ぐらいであると思えば良いかもしれない。 参謀と言うかアドバイザー役であるから水兵に…

ツバル戦記:エスコート

突然艦内に響く、『ピコーン、ピコーン』 あれは艦内の音じゃない。話に聞くアクティブ・ソナーのピンガー音に違いない。ついに捕捉されたのかもしれない。これに反応するように、第一種警戒態勢が発動された。これは部屋の表示ランプが知らせてくれる。 こ…

ツバル戦記:暗い予想

連日続けれていた乗り込み訓練もついに中止となった。この訓練は一日の中で唯一体を動かせる時間であったので楽しみでもあったのだが残念だ。これが中止になるという事は、いよいよアメリカが中心となった有志連合艦隊の哨戒海域に突入する事になる。汪上等…

ツバル戦記:潜水艦ライフ

「周上等兵、あれが例の船か」 「大きいな」 人民解放軍海兵隊は、かつては海軍陸戦隊として始まり現在は海兵隊に発展したそうだ。海兵隊と陸軍の違いは幾つかあるが、海外戦争の先兵としての役割は大きく、わかりやすく言えば渡海しての敵前上陸があるとこ…

ツバル戦記:リー将軍

普段はペンタゴン勤務であり立派な執務室を与えてられている。今は統合参謀本部の参謀であるが、これも特例でなっておる。と言うのも本来の正規メンバーは議長、副議長、陸海空及び海兵隊の長、さらに州兵総局長であるからだ。 これもまた怪鳥退治の功績だ。…

ツバル戦記:テ・アツア

ポリネシア、メラネシア、ミクロネシアに広がるのものにマナがあります。おそらくキリスト教以前の土着宗教の概念で良いと思われますが、今でも息づいています。ある種の超自然的な力、影響みたいに解釈され、人間の力、自然現象を超越するものともされます…

ツバル戦記:ツバル神話

「ユッキー副社長。ツバルで遊ぶのと中国軍の撃退になんの関係があるのですか」 「戦いは緊張しっ放しじゃ神経が持たないからだよ。寝る時に寝て、食べる時に食べて、休める時には休むのが戦場の習いだよ」 それはそうかもしれませんが、お鮨や天ぷら作った…

ツバル戦記:観光開発

コトリ社長からの報告はノンビリしたもので、「獲れたてのピンクダイヤモンドはたまらんで。醤油を使ったら、大うけしてくれた」 あのサイズのエビの踊りとは羨ましい。「ついでに鮨にしたら大人気」 画像を見たら、本当にあの大きいのを握ってました。「天…

ツバル戦記:抑止力閑談

ツバル政府がフナフティに戻りましたが、その最大のメリットはやはり物資の輸送でしょうか。新明和の巨鯨がいくら頑張ってもコストも量も輸送船には敵いません。しかし強襲揚陸用潜水艦がツバルに向かっているのなら、「そろそろ到着するのじゃないですか」 …

ツバル戦記:強襲揚陸用潜水艦

フナフティへの凱旋は衛星中継で華やかに行われました。もっともあれを実現させるために、どれほどの物資を運び込んだことか。フィジーで陣頭指揮を執られているシノブ専務も御苦労様です。「潜水艦がよく手に入りましたね」 「ああ、コトリも急いでたから二…

ツバル戦記:荒れる会議

ここは中南海。共産党中央軍事委員会が開かれている会議室です。「フナフィティ政府が解散し、ツバル派遣軍が降伏したのだな」 「それも映像付きで全世界に放映されているじゃないですか」 会議室の大型ディスプレイにフナフティでの勝利祝典の様子が流され…

ツバル戦記:ヴァイツプ島攻防戦

ヴァイツプ島政府から発表があり、『中国侵略軍が上陸を試みるもこれを撃退』 本当にやったんだと思ったのが正直な感想です。これに対する中国政府の発表は数日後になり、『ヴァイツプ島の反乱分子に対する大規模威力偵察は成功裡に終了せり』 あれっ、上陸…

ツバル戦記:宣戦布告雑談

ツバル問題は戦争のはずですが、「そりゃそうよ、潜水艦は出てくるし、上陸戦はあったし、軍隊はフナフティを占領してたじゃない」 「でも戦争って、宣戦布告してからのものでは?」 ユッキー副社長は笑いながら、「今の戦争はルールがあるのよ。まあ西洋流…

ツバル戦記:戦機の兆候

ツバルで動きがありそうの情報が入って来ています。とにかく現地情報が乏しいので困りますが、フナフティの中国軍が動くのじゃないかと。「撤退でしょうか」 「それはないと思うけど」 「ではヴァイツプ島攻略ですか」 ユッキー副社長はしばらく考えてから、…

ツバル戦記:リッチモンド

「リー将軍、休暇中ところお邪魔して申し訳ありません」 私はロジャー・リー、休暇でリッチモンドの自宅にいる。そこに昔の部下が訪ねてきた。「将軍も良くご存じでしょうが、ツバルで中国が暴挙を行っています」 ツバル紛争は複雑な展開になってしまってい…

ツバル戦記:お電話

巨鯨による人道支援でようやくコトリ社長と連絡が取れました。開口一番言われたのが、「そろそろビール送ってくれるか」 飲んじゃって残ってないそうです。上陸の日の事を聞いたのですが、「グアムぐらいからエライ熱になってもて、フィジーでやめとこかと思…

ツバル戦記:中南海

ここは中南海。中国共産党の本部があり、政府要人の居住するまさに中国の心臓部です。その一室で中央軍事委員会が行われています。「あの不手際の原因はなにかね」 不手際とはツバル作戦でツバルの要人を誰も確保できなかった事です。フナフティに上陸した日…

ツバル戦記:小田原作戦

ユッキー副社長は副社長復帰と同時にシノブ専務をオーストラリアからフィジーに派遣して工作を行わせています。「こっちもプロパガンダよ」 中国のツバル侵略は国際的な大非難を受けています。そりゃ人口一万人の小国とは言え国連加盟国を宣戦布告もなしにい…

ツバル戦記:ツバルは遠い

ユッキー副社長が指揮を執ってくれるのは有難いのですが、ユッキー副社長でも副社長就任の挨拶回り、ツバル事件のエレギオン・グループの動揺対策にとりあえず忙殺されます。挨拶回りと言っても国内だけではなく海外もあります。「何かしたくても足元をまず…

ツバル戦記:情報分析

ツバル事件で困っているのは情報収集です。「電話局は押さえられてるね」 「ラジオ局も定石どおりです」 ツバルのマスコミはラジオ局と新聞だけでテレビ局はありません。それでも国際電話は通じます。システム的にはツバルの地上局から衛星回線につないでい…

ツバル戦記:ユッキー副社長の復帰

そうこうしている時にリビングのドアが開きひょこり顔を出したのが、「シノブちゃん、どうなってる?」 「ユッキー副社長!」 手短に現時点でわかっている事を話すと、「コトリならだいじょうぶだよ。たとえ海兵隊一個師団が上陸してきても撃退できるからね…

ツバル戦記:緊急事態

今日はシノブ専務が子どもを連れてミサキの家に遊びに来てくれました。「ミサキちゃん、やっぱり白人の血が入ると可愛いね」 ディスカルはエラン人ですから厳密には白人とは言えませんが、「次はそうしますか」 「やっぱり国産がイイかな」 そんな他愛ない話…

ツバル戦記:建艦競争

「それとだけどツバルみたいな小国も最近ではキナ臭くなってるのよね」 「みたいですね」 世界の覇権争いは二十世紀と言うか、第二次大戦後は米ソでしたが今は米中です。中国の躍進は二十一世紀に入ってから目覚ましかったのですが、「あの国は独裁国だから…

ツバル戦記:コトリ社長の呪縛

ツバルのかさ上げ工事ですが、既に一~二階部分の貯水槽及び上下水道は完成し、建物の官公庁から住宅部分の一部が完成しています。まあ官公庁と言ってもビル一つですけど。それでも長年の問題であった水不足解消の切り札として感謝されています。 そこで官公…