ツーリング日和22(第23話)入れられる話

 飲みに行った夜にボクが抱いていたモヤモヤはすべて晴れたとして良いと思う。ボクも覚悟は決めた。これだけ素晴らしい相手が出来てくれたんだ。それに応えなければ男と言えないだろ。

 ところでだけど、これはモヤモヤとかじゃなくて、前から思っていた疑問だけど、女が男に入れられるってどんな感覚なんだろ。こればっかりは男である限りわかりたくても経験できないものだからね。

「女は入れる感覚を経験しようがありませんが、剛紀は惜しいことに入れられる経験を逃しています」

 はて、そんな経験をする機会なんてあったかな。

「男は入れられる経験も可能です」

 高校の時か。あれは経験するチャンスを逃したのじゃなく、あんなところを経験する危機を回避できたんだ。

「それを食わず嫌いと言います」

 違うだろ。あれはあくまでも異常な環境に置かれたために起こった、気の迷いみたいなものだ。今考えてもゾッとする。

「そうは言いますが、男ならすんなり入って、最初から真実の愛を見つけられて溺れ込めるじゃないですか」

 どこ情報なんだよそれ。

「BLです」

 あの世界ではな。本当に入れられた奴の経験談を横で聞いてたことはあるけど、その感じからすると、そうだな、女がロストヴァージンするぐらいの辛さで良いと思うぞ。どう考えたってあんなところに入れられたらそうなると思う。

 でも聞きながら奇妙だったのは、そんな辛いはずの経験を語っているのに、どこか自慢気と言うか、誇らしげに聞こえるんだよな。あんなもの一度入れられたら懲りるとしか思えないのだけど、

「そうなるはずですよ。それは女でもわかります。とくに最初なんかはこれでもかの覚悟を決めて臨みますからね」

 そうじゃなきゃ、受け入れるのは無理だと思うけど、

「わかりませんかね。すべて愛なんですよ。心から愛する人に望まれたら、それを叶え、満足させるのが喜びであり、最高の愛の形なのです」

 わかったような、わからないような。

「男を愛せば、愛した男がどんな愛の行為を望んでいるか知っているじゃないですか。愛を受け入れると言うのは、愛の行為も受け入れるのと同じ意味になります」

 言い切ればそうなるか。レイプじゃないのだから、愛の行為が嫌ならばそもそも付き合わなければ済む話だ。付き合ったからには即OKじゃないにしろ、愛が深まれば求められるのは了解事項になっていると言えない事もない。

 愛とは色んな言い方、考え方があるにしろ、愛する相手を喜ばせるのは基本だ。そして相手が男なら望まれるのは愛の行為だ。これを受け入れることが男を一番喜ばせるのを誰もが知ってるんだよな。

「とくに最初の時はどれだけ辛いかも知っています」

女はそうだけど男はどうだろ。

「剛紀だってもし逃れようのない立場になってしまったら、痛くて辛いものだと覚悟するでしょう」

 逃れようのない立場ってレイプかよ。なんちゅう状況設定だよ。どうしようもない姿勢に完全に抑え込まれ、もう入れられるのは逃れようがないとわかれば、まず思い浮かぶのは絶望感だろうけどそれだけじゃないはずだ。

 男だって知ってるよ。どんなに入れられまいと最後の抵抗をしても、激しい痛みで引き裂かれ、力づくで強引に捻じ込まれてしまう。もちろんそれで済むわけがない。満足してくれるまで延々と続く辛すぎる時間が訪れる。最後なんて・・・これは言いたくない。とにかく耐え忍ぶしか頭にないはず。

「愛のために覚悟を決めても痛みはあります」

 レイプされるより何百倍も何千倍もマシだとは思うけど、だからと言って最初は辛いものだとわかってるつもりだ。これでも処女相手の経験者だからな。そこまで辛い思いで愛の行為を受け止めるのは良いとして、次も望まれたら受け入れる心理ってどうなんだ。

「愛の行為を叶えさせた満足感は、それはそれは大きなものなのです」

 俗にいう女になったって感覚かも。

「愛の試練を潜り抜けるのは成功体験につながります。つまりはあの試練に耐え抜き男が望む愛の行為を叶えさせることが出来る自信になります」

 これは受け入れる経験がないとわからない部分が多すぎるけど、

「愛の試練に耐えるのは苦痛ではなく喜びなのです。わかりませんか。男が望む愛の行為をその身で叶えることは最高の愛の形なのです。成功体験を得れば、次も叶えるのに躊躇などあろうはずもありません」

 処女であっても次を迎え入れるのは経験で知ってはいるけど、それっていつか良くなるのを知っているからでは、

「少し違うと思います。真実の愛が見たいがために愛の試練に挑むのでありません。最高の愛の形を高めた到達点として、真実の愛を見ることが出来るようになると考えております」

 愛の試練に挑むのは真実の愛を見たいがためのものじゃないのは、なんとなくだけどわかるような気だけする。そういうのもいるかもしれないけど、愛の試練に挑みたくなるほどの大きな愛があってこそだよな。

 もちろん全員がそうじゃないだろうし、経験を重ねれば変わるのもいるだろうけどな。ところでだけど、美玖は愛の行為の到達点である真実の愛を見たことがあるのかな。

「こればっかりはこれから剛紀の一穴にして頂けるのに申し訳ないのですが、トンずら野郎に見せられてしまっています。最初の愛の試練はまだしも、真実の愛まで見せられてしまったのは悔しくてなりません」

 この辺の感覚もわかりにくいと言うか、個人差はあるのだろうな。どうも美玖はまだ無垢だった体を許してしまったことより、真実の愛を見せられてしまった方に後悔は大きいようだ。

「女が真実の愛を見たいのは本当に愛する男のみです。それを選りもよってあんなトンずら野郎の偽りの愛を信じ、あまつさえ見せられてしまったのです。それも何度も、何度も。これがどれだけ口惜しいかはわかりますよね」

 ゴメン、最後のところは男のボクではわからん。むりやり例えれば憎い男にレイプされて感じてしまったようなものだろうか。ここでなんだけど、ボクが心配しているのは美玖に真実の愛を果たして見せることが出来るかなんだ。

 と言うのも、ボクはこれまで相手に真実の愛を見せたことが無いのだよ。学生の時の彼女も、逃げられた由衣にもだ。それだけ下手なんだろうけど、トラウマというかコンプレックスなんだよな。

「剛紀はカラスの行水なのですか」

 どちらかと言うとゆったり入りたい方だが、

「そうじゃなくて、三擦り半だとか」

 ああ、早漏かってことか。いや、そうじゃないはずだ。どれぐらい時間が必要かまで良く知らないけど、それなりには、

「五分ぐらいですか」

 いやいや、正確に測ったことはないけど十五分以上は・・・たぶんだけど。

「極端に小粒だとか」

 男子校だからわかるけど、どちらかと言うと大きい方のはず。

「それなら必ず真実の愛を見せてくれるはずです」

 でもテクニックが、

「技巧の効果は否定しませんが、あれはあくまでもプラスアルファです。基本はある程度以上の大きさと時間です。とくに時間は大切です」

 そんなものなのかな。

「男と違って女は真実の愛を見た事を伏せようとするものです。今までの女だって見ていたはずです」

 わからなかったけど、ホントにあったのかな。

「真実の愛にも大小はあります。小さいものなら気づくのも難しいでしょうし、かなり大きなものでもわからない時はわからないものです」

 そんなに女は巧妙に隠すのか。

「あれは見たいものではありますが、見た事を知られるのは、それはそれは恥ずかしいものなのです」

 そんなものなのか。そう言えば、エロビデオなんかでも本当に見たのかを女に確認するシーンはあったし、SMとかになると見たことを口にするのを強制させるシーンがあったはずだ。それぐらい隠したい恥ずかしいものなのだろうな。

「それと女が真実の愛を見るために必要不可欠な絶対条件があります」

 なんだそれ、

「どうしても相手の男に真実の愛を見せてもらいたい強い愛です。美玖の剛紀への愛は世界中の誰にも負けるつもりはありません」

 本当に良い女だ。これで準備は整った。後はなるようになるだけだ。

「剛紀の一穴になり、必ず真実の愛を見させてもらいます」

 だから一穴と言うな!