ツーリング日和19(第35話)帰り道

「今日はどうするの」 とりあえず天橋立ビューランドに行こう。「こっちはケーブルカーじゃなくてモノレールなのか」 こっちにも股のぞき台があるぞ。「コウキはやっぱり体が硬いよ」 面目ない。傘松公園は天橋立を北西側から見下ろしているけど、ビューラン…

ツーリング日和19(第34話)翌朝

長距離ツーリングの疲れもあったから後は眠りに落ちてた。目を覚ますと朝の光が部屋に差し込んできてる。ふと傍らを見るとチサの寝顔だ。なんてあどけない顔なんだよ。たまらくなってキスしたら。「コウキのキスで目覚められるなんて最高の朝だ。おはよう」 …

ツーリング日和19(第33話)二人の初夜

エラい話になってしまった食事なんとか終えて部屋に戻って来た。この宿は新しそうなのもあるけどオシャレで上品な部屋になっていて、恋人同士とかが泊まるのならロマンチックで最適の感じがするかな。 そういう宿と部屋を期待して選んだのだけど、やっぱり空…

ツーリング日和19(第32話)ミサの影

それにしても、そこまで堕ちていたのにホテトル嬢とは言え良く戻れたものだ。とくに男狂いの淫乱に狂わされてしまった体なんか、どうやって克服したんだよ。「あれは不思議だったというかある種の運命かもしれない。捕まった時にやっと思い出したのよ。チサ…

ツーリング日和19(第31話)そして今に至る

チサを恨む女たちからはなんとか逃れたようだけど、初犯だから執行猶予が付いたものの実刑になったのか。「そういうこと。執行猶予は終わったけど前科者になっちゃった」 明るく言うな。「でもさぁ、さすがにこの時は反省した。こんな事をいつまでやってるん…

ツーリング日和19(第30話)負の連鎖

警察が踏み込んできて突然みたいに解放されたらしいけど、「あのね、性奴隷から解放されたって、狂わされたチサの体が元に戻るわけないじゃないの。男を求めて街に出たんだよ」 それって、「個人売春というか立ちん坊やってた。体を売って男に満たしてもらい…

ツーリング日和19(第29話)チサの過去

直球勝負では無理か。これで決まって欲しかったな。チサの過去には秘密があり、その過去がチサに翳を落としている。けどさぁ、それを知ることに何の意味があるかは疑問なんだ。ボクは再会してからのチサを見てプロポーズした。 ボクが結婚したいのは今のチサ…

ツーリング日和19(第28話)宿に

傘松公園から北上して伊根に。「ここなのか」 ここだけなら海辺の田舎町だけど、「舟屋って海に向かって作られてるから陸からじゃわかりにくんだよ。でもほら、あの辺なんか舟屋っぽくない」 たしかにあれがそうかも。「あそこから見えるのじゃない」 バイク…

ツーリング日和19(第27話)出発

チサさんの思わぬ言葉を聞いてボクも覚悟を決めた。チサさんには人に言えない秘密、いや黒歴史があって苦しんでいるはず。さらにボクに救いさえ求めてる。それぐらいはボクだってわかる。 だったらどうするかなんて決まってるじゃないか。必ずチサさんを救い…

ツーリング日和19(第26話)須磨浦山上遊園

前回のツーリングが気まずい別れ方をしたから、もう連絡はしてくれないかと思ってたのだけど連絡があってホッとした。ツーリングのお誘いだったけどエラい近いな。チサさんの希望だから嫌も応もないけど。「待った?」 いつものコンビニ駐車場で待ち合わせだ…

ツーリング日和19(第25話)天ぷら談義

帰り道の話だけど、「お昼のうどんは美味しかったけど、天ぷらとうどんの組み合わせも良かったじゃない」 ああそうだった。釜玉うどんだったから天ぷらうどんになるかどうか微妙だけど、今日のうどん屋はアタリだった。「混みすぎてるのが玉に瑕だけど、行け…

ツーリング日和19(第24話)加西ツーリング

加西の道は他所から来た人には手強いんだよ。この辺は加西がとくにって訳じゃないけど、なんとなく苦手なんだよな。「ちゃんと整備されてるところもあるのだけど・・・」 整備ねぇ。地方都市でよくパターンだけど、旧市街の周りに新市街的なものが広がって、そ…

ツーリング日和19(第23話)五百羅漢

まだ肌寒いけど春になってきたからツーリング再開だ。いつものコンビニ駐車場で待っていると、「だいじょうぶ?」 正直なところ自信がないんだよ。とにもくかくにも行ってみるか。とりあえず山麓バイパスから西神中央まで行き、さらに国道百七十五号バイパス…

ツーリング日和19(第22話)キープ君疑念

夜の会食のたびに頑張る会話が過激になるチサさんだけど、たまんないよ。毎回それだったらの気持ちを抑えるのがどれだけ大変なことか。あれこそ人の気も知らないでの典型みたいなものだ。 とはいえボクもチサさんと再会した瞬間に天まで舞い上がってるし、逢…

ツーリング日和19(第21話)冬のバー

冬は当たり前だけど寒い。冬でも通勤にバイクを使ってるけど、たった十五分程度の通勤時間でとくに足は感覚がなくなりそうになるぐらい冷え上がってしまう。この辺は大腸癌の術後ケモの後遺症である末梢神経麻痺もあってとにかく辛い。 そんな冬でもツーリン…

ツーリング日和19(第20話)白滝さん

白滝さんとは懐かしい名前が出たものだ。幼稚園こそ違ったけど小学校から高校までずっと一緒だった。それだけじゃなく、あれも不思議だったけど殆ど同級生だったもの。たしか小学校の四年から高校二年まで同じだったものな。 それだけじゃなく席もなんかいつ…

ツーリング日和19(第19話)天使の階段

うずしおラインは福良の方からのもあるけど、北に向かうルートもあるからそっちに乗ってまずは北上。途中で県道二十五号に入り海岸線に出る。この県道二十五号を走って行くと淡路サンセットラインにつながってるはず。「慶野松原に寄ろうよ」 海水浴のシーズ…

ツーリング日和19(第18話)大鳴門橋でランチ

福良への峠道だけどこっちはバイクだからなんとか走り抜け、峠道を下りてくると、「見て見て、帆船みたいじゃない」 大阪にもあったけど帆船型の遊覧船で良さそうだ。そこから道の駅福良に立ち寄ったのだけど、「この道の駅ってさっき見た遊覧船の発着場にな…

ツーリング日和19(第17話)南部の峠越え

大浜海岸を過ぎると洲本温泉みたいだけど、「こんなに立派だったっけ?」 ボクも意外だった。洲本温泉は明石大橋が出来た後に苦戦していた記事を読んだことはある。それまでは淡路旅行は泊りが定番だっだけど、橋が出来たお蔭で日帰り旅行にシフトしたとかだ…

ツーリング日和19(第16話)アワイチスタート

フェリーに乗り込んだのだけど、こうやってバイクを固定するのか。船室に入ってしばしの船旅。「船がたくさんいるよ。漁船かな」 今日は休日で市場も閉まってるから釣り船かな。それにしても多いな。「モーターボートも走ってるよ」 こういう景色はフェリー…

ツーリング日和19(第15話)明石に

バイクツーリングはフルオープンでするものだから気候の影響は直撃する。夏はオーブンで照り焼きになりそうなぐらい暑いし、冬は冷凍食品になりそうなぐらい寒いってこと。それでも夏でも冬でもツーリングを敢行するバイク乗りはいるけどヘタレのボクには無…

ツーリング日和19(第14話)翠明湖

「おはよう」 赤のダックスの到着だ。今日は西へのツーリング。そう山麓バイパスを使って西に走る。国道百七十五号をひたすら北上して西脇まで行くのだけど、あったあった、「馬事公苑の方ね」 バイパスを下りて最初の橋を渡りしばらく走ると、「あそこみた…

ツーリング日和19(第13話)意外な話

リストランテでの食事も終わったのだけど、問題はこの次だ。綺麗に終わるのならこれでお別れだけど、「あのね、高校生じゃないのだから」 もう少し飲みたいか。どこに行くかだけどスナックは論外だよな。カラオケも好きじゃない。音痴までいかないけど聞かせ…

ツーリング日和19(第12話)デートなんだろうか

チサさんから誘われたのは夕食を食べに行こうだったんだ。これ自体は不自然とは言い切れない。高校の同級生が偶然に再会して、そこから気が合ってマスツーを重ねてるから、次は夕食を一緒にする流れ自体は良くあるパターンのはず。 でもさぁ、でもさぁ、昼間…

ツーリング日和19(第11話)奥丹波蕎麦街道

名前呼びの件は結局押し切られてしまった。こんなもの御坂さんと呼ぶだけでも緊張ものなのに名前で呼べと言われても困るのだけど御坂さんは、「だから御坂さんじゃなくてチサって呼んでくれるって言ったでしょ。ほら練習よ」 いやいや、そう言われたって、「…

ツーリング日和19(第10話)名前呼び

なんだかんだで四回目のツーリングだ。いつものコンビニ駐車場で待ち合わせて、「新神戸トンネル経由でね」 まずは三田でモーニングだ。「あれ、アロハカフェじゃないの」 あそこでも良かったのだけど、「上高地あずさ珈琲?」 こっちも気になってたんだ。外…

ツーリング日和19(第9話)多田銀山

今日は三回目のツーリング。コンビニで待ち合わせをして、「遠回りにならない?」 御坂さんの希望なんだけど、やっぱり六甲山トンネルを超えるのはキツイって。たしかにそうだから今日は迂回するルートで走ってみる。まずは新神戸トンネル五十円也だ。箕谷料…

ツーリング日和19(第8話)法華口駅

さすがにラーメン食べただけで帰るのももったいないから、紫川ラーメンの前をさらに進み、中国道を潜り、あの信号を右だ。「フラワーセンターの方ね」 これは国道三七二号になりフラワーセンターにも行けるのか。そっちの方が御坂さんには良かったかもしれな…

ツーリング日和19(第7話)播州ラーメン

あれからも御坂さんと連絡を取り合って、今日は二回目のマスツーだ。待ち合わせは前の時に別れたコンビニの駐車場。待つことしばしで赤いダックスが駐車場に入ってきた。「お待たせ」 あかん。どうしたってドキドキするのを止めようがない。インカムを調整し…

ツーリング日和19(第6話)暗黒時代

家に帰って今日のツーリングを思い返していたのだけど、あれが現実にあった話と信じるのが難しいぐらいだ。高校二年か。あの頃がボクの人生の一つの転機であったよな。あんまり思い出したくない話だけど、今日は思い出してしまうな。 ボクは開業医をしてる。…