ツーリング日和19
ツーリング日和シリーズではありますが、今までとはガラッと路線を変えています。ですからコトリもユッキーも出てきません。登場人物も絞りに絞って主役のコウキとヒロインのチサだけです。 話自体はシンプルでバツイチ同士の再婚話です。こういう時には二人…
小豆島へのフェリーは三宮のフェリーターミナルから出るのだけど、これが八時半出航だから八時までに到着する必要がある。「行くぞチサ」 「アイアイアサー」 女がすべてそうだなんて言う気は毛頭ないけど元嫁のお出かけ支度は長かったんだよな。女の方が身…
チサは本当のミサも、ミサとボクとの関係も知らない。それは仕方ないと思ってる。それを知っているのはこの世でボクとミサしかいないし、これは二人の永遠の秘密だ。こればっかりはチサにいくら頼まれても話す気はない。 ミサに人の運命と未来が見えるのは本…
「コウキを見つけたミサは小躍りして喜んだのじゃないのかな。自分を不幸から救い出して幸せにしてくれるし、そんなコウキを幸せに出来るのは自分しかいないから」 あのぉ、ミサしかボクを幸せに出来ない能力はチートも度が過ぎて害しかないぞ。「だからミサ…
チサはしばらく考え込んでいたけど、「やっとわかった気がする。ミサはコウキを恋人として選んだ。いや恋人どころか結婚相手として選んだはず」 そんなことがあるものか。ボクだってミサを恋人とするのはご遠慮したかったけど、ミサだってガリ勉陰キャでブサ…
ミサとは手を繋ぐどころか、肌にさえ触れたことはない。チサは忘れたのか、「そう言えばミサはフォークダンスに参加していなかったような・・・それどころか体育の授業はすべて見学だったよね」 ああそうだ。ミサは体操服にさえ着替えたことがないんだよ。それ…
「ところでさぁ、ミサが誰かの不幸を防ぐ術ってなにをやらされてたの」 あんなもの話したくない。「聞かせてよ。チサのお願い」 卑怯だぞ。そんな上目遣いで頼まれたら断れないじゃないか。あれはまさにトンデモだった、簡単なやつなら安来節だ。「それって…
チサの性奴隷時代の話は悲惨なんだけど、あそこまでになると現実感にかえって乏しいところがある。とくに奴隷屋敷。現実に存在したのはチサが経験者だし、ボクもドリームクラブ事件の報道で知ってはいるけど、なんか出来の悪いエロ三文小説に思ってしまうと…
「それはそうと、またツーリングに行こうよ。引っ越しとかあって、ご無沙汰じゃない。夜も楽しいけど、昼も楽しまなくっちゃ」 それは言えてる、さてどこに行くかだけど、「温泉、温泉♪」 ホテルニュー淡路か?「あそこも行ってみたいけど秘湯の旅」 秘湯の…
当面の二人の焦点は結婚式をどうするかなんだ。まずチサの家族も友人知人も呼びにくいと言うより呼べたものじゃないから、そういうタイプの結婚式だとか披露宴はしないことにした。「再婚同士だものね。フォトウェディングで十分よ」 口ではそう言ってるけど…
神戸に帰ると、まずチサが引っ越してきた。玄関で開口一番で言われたのが、「今日からここで居候させて頂きます」 形としてはボクが養っていることになるだろうけど、居候なんかじゃない。チサに来てもらって一緒に暮らして頂くだ。そこを勘違いするな。そう…
「今日はどうするの」 とりあえず天橋立ビューランドに行こう。「こっちはケーブルカーじゃなくてモノレールなのか」 こっちにも股のぞき台があるぞ。「コウキはやっぱり体が硬いよ」 面目ない。傘松公園は天橋立を北西側から見下ろしているけど、ビューラン…
長距離ツーリングの疲れもあったから後は眠りに落ちてた。目を覚ますと朝の光が部屋に差し込んできてる。ふと傍らを見るとチサの寝顔だ。なんてあどけない顔なんだよ。たまらくなってキスしたら。「コウキのキスで目覚められるなんて最高の朝だ。おはよう」 …
エラい話になってしまった食事なんとか終えて部屋に戻って来た。この宿は新しそうなのもあるけどオシャレで上品な部屋になっていて、恋人同士とかが泊まるのならロマンチックで最適の感じがするかな。 そういう宿と部屋を期待して選んだのだけど、やっぱり空…
それにしても、そこまで堕ちていたのにホテトル嬢とは言え良く戻れたものだ。とくに男狂いの淫乱に狂わされてしまった体なんか、どうやって克服したんだよ。「あれは不思議だったというかある種の運命かもしれない。捕まった時にやっと思い出したのよ。チサ…
チサを恨む女たちからはなんとか逃れたようだけど、初犯だから執行猶予が付いたものの実刑になったのか。「そういうこと。執行猶予は終わったけど前科者になっちゃった」 明るく言うな。「でもさぁ、さすがにこの時は反省した。こんな事をいつまでやってるん…
警察が踏み込んできて突然みたいに解放されたらしいけど、「あのね、性奴隷から解放されたって、狂わされたチサの体が元に戻るわけないじゃないの。男を求めて街に出たんだよ」 それって、「個人売春というか立ちん坊やってた。体を売って男に満たしてもらい…
直球勝負では無理か。これで決まって欲しかったな。チサの過去には秘密があり、その過去がチサに翳を落としている。けどさぁ、それを知ることに何の意味があるかは疑問なんだ。ボクは再会してからのチサを見てプロポーズした。 ボクが結婚したいのは今のチサ…
傘松公園から北上して伊根に。「ここなのか」 ここだけなら海辺の田舎町だけど、「舟屋って海に向かって作られてるから陸からじゃわかりにくんだよ。でもほら、あの辺なんか舟屋っぽくない」 たしかにあれがそうかも。「あそこから見えるのじゃない」 バイク…
チサさんの思わぬ言葉を聞いてボクも覚悟を決めた。チサさんには人に言えない秘密、いや黒歴史があって苦しんでいるはず。さらにボクに救いさえ求めてる。それぐらいはボクだってわかる。 だったらどうするかなんて決まってるじゃないか。必ずチサさんを救い…
前回のツーリングが気まずい別れ方をしたから、もう連絡はしてくれないかと思ってたのだけど連絡があってホッとした。ツーリングのお誘いだったけどエラい近いな。チサさんの希望だから嫌も応もないけど。「待った?」 いつものコンビニ駐車場で待ち合わせだ…
帰り道の話だけど、「お昼のうどんは美味しかったけど、天ぷらとうどんの組み合わせも良かったじゃない」 ああそうだった。釜玉うどんだったから天ぷらうどんになるかどうか微妙だけど、今日のうどん屋はアタリだった。「混みすぎてるのが玉に瑕だけど、行け…
加西の道は他所から来た人には手強いんだよ。この辺は加西がとくにって訳じゃないけど、なんとなく苦手なんだよな。「ちゃんと整備されてるところもあるのだけど・・・」 整備ねぇ。地方都市でよくパターンだけど、旧市街の周りに新市街的なものが広がって、そ…
まだ肌寒いけど春になってきたからツーリング再開だ。いつものコンビニ駐車場で待っていると、「だいじょうぶ?」 正直なところ自信がないんだよ。とにもくかくにも行ってみるか。とりあえず山麓バイパスから西神中央まで行き、さらに国道百七十五号バイパス…
夜の会食のたびに頑張る会話が過激になるチサさんだけど、たまんないよ。毎回それだったらの気持ちを抑えるのがどれだけ大変なことか。あれこそ人の気も知らないでの典型みたいなものだ。 とはいえボクもチサさんと再会した瞬間に天まで舞い上がってるし、逢…
冬は当たり前だけど寒い。冬でも通勤にバイクを使ってるけど、たった十五分程度の通勤時間でとくに足は感覚がなくなりそうになるぐらい冷え上がってしまう。この辺は大腸癌の術後ケモの後遺症である末梢神経麻痺もあってとにかく辛い。 そんな冬でもツーリン…
白滝さんとは懐かしい名前が出たものだ。幼稚園こそ違ったけど小学校から高校までずっと一緒だった。それだけじゃなく、あれも不思議だったけど殆ど同級生だったもの。たしか小学校の四年から高校二年まで同じだったものな。 それだけじゃなく席もなんかいつ…
うずしおラインは福良の方からのもあるけど、北に向かうルートもあるからそっちに乗ってまずは北上。途中で県道二十五号に入り海岸線に出る。この県道二十五号を走って行くと淡路サンセットラインにつながってるはず。「慶野松原に寄ろうよ」 海水浴のシーズ…
福良への峠道だけどこっちはバイクだからなんとか走り抜け、峠道を下りてくると、「見て見て、帆船みたいじゃない」 大阪にもあったけど帆船型の遊覧船で良さそうだ。そこから道の駅福良に立ち寄ったのだけど、「この道の駅ってさっき見た遊覧船の発着場にな…
大浜海岸を過ぎると洲本温泉みたいだけど、「こんなに立派だったっけ?」 ボクも意外だった。洲本温泉は明石大橋が出来た後に苦戦していた記事を読んだことはある。それまでは淡路旅行は泊りが定番だっだけど、橋が出来たお蔭で日帰り旅行にシフトしたとかだ…