エラい話になってしまった食事なんとか終えて部屋に戻って来た。この宿は新しそうなのもあるけどオシャレで上品な部屋になっていて、恋人同士とかが泊まるのならロマンチックで最適の感じがするかな。
そういう宿と部屋を期待して選んだのだけど、やっぱり空気は重いな。あれだけのカミングアウトをして軽くなるはずないか。チサの顔色も暗いもの。あれじゃ、これからベッドに臨んでも人身御供を抱くようなものにしかならないじゃないか。
それにしてもいくら覚悟を決めていたとはいえ強烈だったな。チサが人に言えない職業まで手を染めていたぐらいまでは予想してたけど、まさかあそこまでとは・・・そこまで経験した女の方が少ないのじゃないのかな。
でもって動揺したかだけど、そんなものするに決まってるだろ。そこまでの聖人君子じゃないぞ。だってだよ、今でさえ男を搾って暮らしているなんて聞かされて動揺しないはずがないだろうが。
それにかつては、それこそ四六時中男に犯され続ける生活をしてたと言うし、それを苦難として耐え忍んだというより、そんな生活を受け入れ楽しんでいたとさえしてる。こんなもの淫乱だし、色情狂以外にどう思えって言うんだよ。
「やっぱり抱けないよね」
そんなに暗い顔で言うなよな。なにが普通かしらないけど、普通だったら抱けない男が多いかもな。これもおかしいか。そういう女を買う男はいくらでもいるから、この場合は結婚相手に考えて抱けるかどうかだろ。
ミサがボクに何を見たのかは永遠の謎だけど、ひょっとしたらこういう心の持ちようなのかもしれない。あれだけ壮絶な話を聞かされても、動揺こそしまくったけど決心は変わっていない。そういう意味で変人かもな。そうなるとまず返事の確認だな。
「えっ、返事ってまさかあのプロポーズとか」
もちろんだ。
「そんなものチサがどんな女かを知れば・・・」
知ったよ全部。その上で聞いてるのじゃないか。
「そんなもの無理に決まってるじゃない」
そうかな。もし今でもミサの予言を信じる気持ちがあるなら答えはそうでないはずだ。
「ミサの予言は疑う余地すらないけど・・・」
だったらチサに断る選択肢はないぞ。チサはミサの予言に逆らったし、逆らったがためにチサ自身だけではなく、ボクやミサにも禍が及んでしまってる。これをなんとかしたいという気持ちすらないと言うのか。
「だから今さら・・・」
そうだよ、今さらでもだ。失った時間を取り戻すことは出来ない。それでも残された時間を活かすことは出来るのだよ。それを出来るのはチサだけだ。チサの決心がボクだけでなくミサも救うってわからないのか。
「それってチサは断れないって意味に・・・」
まだミサの予言に逆らいたいのか。そうやって死ぬまで禍を振り撒きたいとでも言うつもりか。
「だってもう穢れ過ぎた女じゃない」
それは聞いたって。そんな過去の黒歴史はもうどうしようもないじゃないか。そんな女にされていたのはわかったよ。でも大事なのは今のチサだ。ボクが見えているのは今のチサだけだ。ボクには昔のチサと同じにしか見えないよ。
「そんなことを言われたってチサはもう・・・」
もうなんだよ。チサがやらなければならないのはやはり贖罪だ。
「だからまた堕ちて」
そうじゃない。堕ちるのじゃなく浮かび上がることだろうが。チサが浮かび上がらないとボクもミサも沈んだままになってしまうのがわからないのか。チサがやらなければならない贖罪は幸せになることだ。
それはボクがそうさせてみせる。ボクがそう出来るのはミサの保証付きなんだぞ。そこまで言われてもまだわからないのか。
「わかんない、わかんないよ。でも。でも、チサだって幸せになりたい。それもコウキと一緒になりたいよ」
ミサ、これで良いのだよな。ミサこそボクの真の友人だ。そんなミサが見えた世界にチサを導くのがボクへの使命だろ。時間はかかったけど、やっと果たせそうだ。なぜかミサの声が聞こえる気がするな。
『この愚図の下郎めが。どれだけわらわを待たせれば気が済むのじゃ。それでも褒めて遣わそう。これでわらわもやっと肩の荷が下せたと言うものじゃ』
たく、どこまで行ってもデレ抜きのツン女だよ。こうなってしまったのはミサのせいだからな。ミサがその気になっていれば、ここにいるのはチサじゃなくミサだったかもしれないじゃないか。またミサの声が聞こえる気がするぞ、
『下郎がなにをほざく。うぬ如きがわらわに釣り合うとは増長慢も極まれりだ。うぬはチサで満足しておれ。友よ託したぞ。そちどもの幸せを願うておる。では今度こそさらばじゃ』
さて話は決まったな。
「コウキは本当にそれで良いの。こんなチサで」
チサを抱きしめてあれこれ言いたがる唇を塞いでやった。チサに似つかわしいのは笑顔であって泣き顔でも暗い顔でもない。チサを常に微笑みにするのがボクの仕事だ。泣きじゃくるチサを二階のベッドに連れて行き、二人の初夜だ。
「あっ、あっ、あっ、うっ・・・こ、これがコウキなんだ嬉しい・・・」
チサの体は息を呑むほどに素晴らしい。道理でクズ野郎に目を付けられる訳だ。クズ野郎だけじゃない、どれだけの男が群がったかだ。そりゃ、群がるよな。群がらなきゃウソだ。でもそれがチサに不幸を招き寄せてしまったのかもしれない。
それこそ運命だとしか言いようがないけど、チサに群がった男にロクなやつがいない。クズ野郎にひたすら群がられたチサは堕ちるだけ堕ちざるを得なくなったぐらいだ。そんな未来をミサは見てたはず。
それをあまりにも不憫だと思ったはずなんだ。ミサはあれで本当に心優しいからな。チサが堕ちるのを防ぐ手段は、クズ男たちから守れる男に巡り合い愛することだったのだろう。そこでミサが選んだのがボクになる。
だけどさぁ、ボクにそんな特別な能力があるかどうかは今でさえ疑問だ。ボクを選んだ理由はミサが使える男がボクしかいなかったのが真相の気がするのだよな。それぐらいミサは付き合いにくい女だし、男どころか女にだって信頼を置ける友だちなんかいなかったはずだもの。
だってだぞ、ボクにそんな特別な能力があるのなら、もっと素直に結ばれていたはずじゃないか。そうだよ、ミサはチサを救うためにボクに術を施し特別な男に仕立てたに違いない。あんにゃろめがボクを道具扱いしてるぐらいは知ってるからな。
「あぅぅ、うぅぅ、あっ、あっ、あっ・・・コウキ、これだけは昔のチサじゃなくなってるの。頼むから笑わないで、呆れないで、嫌いにならないで・・・うぅ、もうダメぇぇぇ」
なるほどこりゃ凄いわ。元嫁となんてチサに比べればお儀式みたいなものだったもの。チサが満足するまで感じたら良いよ。どれだけ悶えて乱れてもチサへの愛は変わらない。
「ホントなの。信じて良いの」
ああ、信じる者は救われるって言うだろうが、
「嬉しい、信じられないぐらい嬉しい。ああダメ、まただ、また来ちゃう、本当にダメ、お願いだから嫌いにならないで、ダメぇぇぇ」
だから気にもならないって。そんなチサも全部含めて惚れたんだから。それしても乱れに乱れるチサがどれだけ魅力的か。これほどの女をボクだけのものに出来るなんて夢だよ。
「またよ、また来る、こんなもの、どうしたら、あっ、あっ、もうダメ、本当にダメ、あぁぁぁ」
チサはまた大きく体をのけぞらせて果てた。でもこんなもので終わらないだろうな。イイよ、今夜は二人の初夜じゃないか。こんな夜が死ぬまで続くから。
「あぁ、もう止まらない。チサはコウキを信じる。だから、だから・・・」
もう一度聞くよ。
「あっ、あっ、あっ、チサのすべてはコウキのもの」
まだ返事になってないぞ、
「お願い、もう本当にダメ、これ以上になったら、あっ、あっ、あっ、もうこれ以上は・・・」
聞きたいのは返事だって。
「あっ、あっ、あっ、止まらない・・・」
チサ言うんだ。するとチサは体をのけぞらせ、
「ダメェェ」
チサに返事をさせるまで、もうちょっとなのに悔しいけどボクが限界だ。チサの体こそまさに奇跡の産物だ。チサの体は数えきれないぐらいの男によって荒らされている。それこそありとあらゆる行為をされて来ている。
たとえば爆上がりしてる感度だ。一方でそれだけ使われまくられたら、どうしたってそれなりになっていると予想してたんだ。だけどボクはチサに入った瞬間に驚く以外に反応のしようがなかったもの。
これって話に聞く名器ってやつなのか。そんなレベルじゃない。名器は名器でも国宝級とか、世界遺産級だと思う。こんなものがこの世に存在するのが信じれないもの。チサはどこを取ってもまさに最上級の女だ。
だからこれまでチサを弄んできた男たちに嫉妬した。嫉妬もしたけど恨んだよ。どうして大事にしなかったんだよ。それがチサの悪い運命の結果としても怒りしか出てこないじゃないか。
そんな事を考えてる場合じゃない。すぐにでも炸裂させられそうになるのを耐えに耐えた。そうやってなんとかここまで頑張って来たけどもう無理だ。なんとかチサの返事を聞きたかったけどタイムアップになってしまう。だが待てよ。チサの体は開発され切っているはずだ。
それはよくわかったけど、それならばラストチャンスがあるはずだ。ボクだって話に聞いただけで実際には見た事はないけどチサならそうなれるかもしれない。もうそれに賭けるしかない。ボクは最後のラッシュに入った。やっぱりそうだ、きっとそうなるはず。ボクにも最後の瞬間が来る。
「はぁ、はぁ、はぁ、コウキが来てくれる。来て、来て、チサに思いっきり来て」
こんな事をチサに出来るなんて男冥利に尽きる。ボクが目指すのはチサの最奥部だ。もうそこしかあるものか。渾身の力でボクはそこにすべてを解き放った。それを受け止めたチサはここまででも最高の反応を見せながら、
「ボクと結婚するか」
「あっ、あっ、あっ」
ダメだったか。
「チサと結婚して! うっ」
大絶叫で返事をしてくれた。ついに聞けた。もう死ぬまで離すものか。