天使と女神シリーズ30 ツーリング日和10
バイク乗りなら誰でも憧れる北の聖地北海道。オロロンラインから稚内、白い道から宗谷丘陵を走り抜け、日本の北の端っこである宗谷岬に。そこからオホーツクラインを南下し、エヌサカ線、サロマ湖、そして知床へ。 日本の東の端の納沙布岬に到着した時に出会ったのが旧知の杉田と加藤。そこからマスツーで釧路湿原から摩周湖、屈斜路湖。ですがこれにつきまとう一人の女。 加藤から杉田が企画している鈴鹿四耐挑戦と、その女と杉田との因縁話を聞いたコトリは動き出す。 |
念願の北海道ツーリングをさせてみました。北海道はバイク乗りの憧れの地であるのは、情報として知っていましたが、書くにあたりあれこれ調べてみると、北海道の人が言う内地とは別世界なのが良くわかりました。 とにかく広いですし、広大な平野が広がってい…
「御期待に副えずに申し訳ありませんでした」 「なに言うてるねん。あれで十分でお釣りが出るわ」 ライダーズ・ウェアは大ヒットは言い過ぎだけど、スマッシュ・ヒットぐらいにはなってくれたから、余裕でモトは取れたものね。あの分野は今まで専業メーカー…
もう師走だ。紅葉の季節も過ぎ、木々にはしがみつくような枯れ葉が残るのみ。それでも永遠の旅人を宿命付けられた者に休息はない。今日も愛車と当てもなく走る。「あそこにすると言うたんはユッキーやろが」 漂泊の旅人がひと時の安らぎを得るところ。「神戸…
これがレースが動くって意味か。レースに転倒やコースアウトは付き物だけど、その時間帯を上手く活用できるかどうかも駆け引きのうちなんだ。その後もバタバタとライダー交代があり、しばらくすると、「六花は八位に上がっとるで」 周回遅れも増えてきて、誰…
マシンがセットされてコースの反対側に第一ラーダーが並んだよ。いわゆるル・マン式のスタートだね。杉田さんところは六花が先に走るのか。そうなるとゴールを切るのは杉田さんか、「そうはならん。順当に行ったら六花や」 えっ、だいたい一時間ごとの給油で…
今日は四耐の決勝。コトリと初めて鈴鹿に来たよ。ミサキちゃんの奮闘でライディング・スーツもスタッフのユニフォーム完成。なかなかオシャレじゃない。「ウインド・ミルがロゴマークやねんて」 そういうブランド戦略か。「スタジャンやパーカーもあるで。着…
なに怒ってるの。ウンコならしてきて良いよ。「ウンコ我慢するのになんで怒らんとあかんねん。今朝もすっきり快便や」 じゃあ、オシッコなの?「なんでそれしか考えへんのや。コトリが怒ってるのは、なんであんなホンダ優遇があるってこっちゃ」 四耐のスケ…
八耐と四耐は扱いが全然違うのよね。レースと言えばピットだけど、常設ピットは八耐チームが使うから四耐組は、「ダンロップブリッジとシケインの間にあるN駐車場がパドックや」 少しピットとパドックの違いを説明しておくと、まずメインストレートのとこに…
ツーリングから戻るとコトリはクレイエールの社長を呼び出し、「時間があらへんから霜鳥に仕切らせる」 そこまで必要の判断ね。今年は八月の第一日曜日が八耐の決勝で、その前日の土曜日が四耐決勝なんだよね。もうちょっと具体的なスケジュールを挙げておく…
やっぱり北海道は広いよ。神威岬から小樽まで加藤さんの取材もあったとはいえ、二時間だよ。着いたのはフェリーターミナル。来てるかな。「あれちゃうか」 あちゃ、あんなに来なくても良いのに。なんだと思われるじゃない。加藤さんがわたしたちに頼んだのは…
道東と道央の境目は襟裳岬。行政区画的にはサンタタウンの広尾町が道東で、えりも町に入ると道央。ちなみに道北と道東の境目は浜頓別町の次の枝幸町までが道北で、その次から道東になる。「オロロンラインやったら厚田までは道央で、そこから北が道北ぐらい…
「まずやけど杉田さんはレースに来るし、六花にはまず勝てん」 そう言ってたけど。「あそこまで未練タラタラやねんで、来んわけないやろ。レースやって負けたらまた一緒になれる条件を受けんはずないやろが」 それはそうだけど、だったらわざと負けたの。「…
ビジホから十五分ぐらい歩いて着いたのが焼肉屋。焼肉は嫌いじゃないけど、わざわざ北海道で食べなくとも、「悪い悪い。昼は平取のステーキハウスにする予定やってんけど、食い損ねたから肉の気分が残ってもてん」 コトリの策略か。でも美味しいよ。話題はど…
浦河町のかつめし屋から北に上がって道道一〇二五号を東に。いきなりあったよお馬さんがいる牧場。日本の競走馬は年間七千五百頭ぐらい生まれるのだけど、そのうち八割が日高地方だから六千頭。その六千頭の内の千八百頭が浦河町だって。「あのシンザンが生…
一夜明けて杉田さんはスタッフと共に帯広空港から松山へ。あれっ、加藤さんは残るの。「こっちも仕事でっから」 広尾町まで南下してから国道三三六号をひたすら南に。広尾町って聞いたことがあるな。「サンタランドやろ」 そうだった、そうだったノルウェー…
「ウィナー、アオイ・シノハラ」 六花が勝った。それにしても面白いものを見せてくれた。まさに白熱の好勝負だった。たった二台だけど六花がウィナーズ・ランをやってるよ。「行くで、表彰式や」 表彰って、表彰状でも渡すとか。「ああクレイエール杯や」 な…
練習走行に杉田さんも六花も入ってるけど、走りながらセッティングとかするのよね。「チイとはするやろ。あのYZFは鈴鹿スペシャルみたいなセッティングやろうからな」 加えて、たぶんだけどあの二人は十勝を走った事はないはずなんだ。いくらレーサーでも…
頭文字Dの主人公である藤原拓海のあだ名は、『秋名のハチロク』 これは秋名山のダウンヒルで無敵の強さを発揮したから。だけど頭文字Dで出てくる峠道で架空の地名は秋名だけなんだよね。「架空言うけど春から秋に変えただけやけどな」 秋名山のモデルは榛…
帯広の豚丼屋から四十分ほどで十勝スピードウェイに到着。「メインゲートやのうてサウスゲートから入るで」 メインゲートは入場客用で、サウスゲートは走行車両用みたい。えっと、あのサーキットを走らないんですけど。「関係者用のゲートや」 ゲートを通る…
朝食は和洋バイキング。野菜料理が多くて、「パンも焼き立てなんが嬉しいな」 糠平の菩提樹の蜂蜜とかミルクジャムは他で食べられないかも。八時過ぎには出発。まず向かうのは、「ナイタイ牧場です」 これもアイヌ語でナイ・エタィエ・ペッから来てるそうで…
杉田さんの四耐参戦プロジェクトが始まったのは、四耐も含めた八耐の特集番組を杉田さんが放映したからか。コメント欄で盛り上がって、「最初は軽い企画やったんです」 八耐は無謀だから四耐にしたのだけど、費用の問題もあるから参加する事に意義がある程度…
白樺並木の撮影、士幌線の橋梁の跡の撮影を重ねながら・・・あれ、ここは橋梁跡の展望台となってるけど見えないじゃない。「ここも鉄オタには有名でな。夏は湖に沈んどって冬になると姿を現すタウシュベツ川橋梁や」 冬に歩いて近くまで行く人もいるそうだけど…
六花のフルネームは佐野六花。コトリが何かを思い出したのだけど、「佐野六花って、もしかして白兎住建の社長の娘さんか?」 「名前だけで良くわかりましたね」 言われて見れば聞いたことがある。六花って名前は多いとは言えないから、なんか気になってたん…
朝は七時半から朝食バイキング。これも和食なんだ。切り干し大根に煮ひじき、こっちは山菜か。味噌汁もなかなかだよ。昨夜も思ったけどダシが良いのだと思う。準備も整って出発だけど。「ここまで来るとストーカーやで」 YZFの六花がいるじゃない。でも杉…
コトリも言ってたけど屈斜路湖畔には温泉もあってホテルや旅館も点在するけど、あるのは畑ばっかり。摩周湖や阿寒湖と合わせて大観光地になるだけの要素は十分にあるはずなのに、いわゆる温泉街がないのよね。「ここや」 へぇ、妙にオシャレじゃない。なんと…
根室からまず目指すのは道東最大の街である釧路。国道四十四号を西に、西に。北海道の広さがよくわかるよ。とにかく百四十キロぐらいあるんだもの。厚岸湖も横目で見ながら通過して十一時を回る頃にようやく釧路市内に。コトリ、「腹減ったやろ」 コトリもだ…
最東端の碑から帰りかけた時に、「コトリさんとユッキーさんじゃありませんか」 はて、こんなところに知り合い、それも、コトリとユッキーと呼ぶ人がいるとは、「杉田さんやんか」 これは懐かしい。杉田さんは有名なモト・ブロガー。今や有名というよりカリ…
根室に入るには温根沼大橋を渡るのだけど、「あちゃ、こんなところに高速とはね」 根室道路ってのがあって、無料高速なんだけど当然のように小型バイクは走れないから下道に。まあ、北海道の場合は下道も快適だからそれほどショックはないけどね。やがて根室…
朝は四時起き。ホテルから知床五湖フィールドハウスに。あの人みたい。へぇ、わたしたちだけじゃなく十人ぐらい居るじゃない。みんな早起きだねぇ。そこからこれから歩くコースのレクチャーと言うより、クマと遭遇したときのレクチャーを聞いて出発。 知床五…
能取湖と網走湖の間を抜けると網走市だ。網走刑務所ってどこにあるのかな。「あの辺のはずや」 あら、市街地に近いのね。「今のはな。昔のやつもついでやから見とこか」 網走刑務所は明治二十三年に出来て、昭和五十九年に移転したんだそう。だからわたしや…