バイクも恋も若葉マーク(第32話)恋の予感なのかな?

 今夜はミルの家で野菜鍋だ。

「また実家から野菜を送ってくれたからね」

 篠山ツーリングは成功として良いはず。とにもかくにも無事に着いたし、無事に帰ってこれた。思ってたよりちゃんとした観光地だったね。

「お城の石垣も立派だったし、再建された御殿もそうだったし、街並みも、牡丹鍋も・・・」

 あれだけ篠山へのツーリング動画ある理由が良く分かった気がする。あそこもそのうち、

「インバウンド様が訪れるにはマイナー過ぎる気はするけど」

 たしかに。関西レベルで考えても、篠山より先に行くところは山ほどあるものね。それより篠山まで行けたから、

「今度は目指せ奥丹波だ」

 兵庫県の丹波は南が篠山で、北が丹波市になり、

「篠山から目指すは奥丹波だ」

 奥丹波もツーリングするにはメッカみたいなところの情報を掴んでるんだ。篠山ツーリングは大冒険だったけど、あれだってさらなる大冒険ツーリングへのためのステップだものね。先輩たちが言っていた鐘ヶ坂峠も確認できた。

「国道一七六号をデカンショ街道に曲がらずに直進すれば行けるよ」

 鐘ヶ坂峠を下ったところが柏原でここも城下町。ここの殿様って信長の子孫なんだよね。江戸時代にも生き残ってたのにビックリした。

「だからフィギュアスケート選手にもなれたんだろ」

 小型バイクは下道専科だけど、どこまで足を伸ばせるのかな。

「目指せ日本海だろ」

 あのね、日本海までどれだけあると思ってるんだよ。そりゃ、篠山より柏原の方が北だけど、柏原からだってどうやって行くつもりだ。

「それを切り開いていくのがツーリングじゃないの。もっとも日本海まで行くとなるとお泊りが必要かも」

 そっちの話はとりあえず置いとくとして、あれってナンパされたの?

「そうなのか、そうでないのか。それが問題だ」

 下手なシェークピアのもじりだ。面白くないぞ。まず相手にとって不足は、

「こっちがあり過ぎる」

 そうなのよね。北星先輩も、南村先輩もイケメンのモテ男だ。そもそも彼女だっていても不思議ないのよね。

「いるって話は聞かないし、あの時だって男二人ではあるけど・・・」

 だからと言っていないとは断言できないだろ。そうなると単に歴研の後輩として可愛がってくれただけの線は余裕で残るのもの。そこを勘違いすると、

「壮大な自爆を経験できる」

 そんな経験はしたくないよ。とは言え、なんか引っかかる。モンブランは先輩としての好意とまだ出来るけど、どうにもカノンが北星先輩担当で、ミルが南村先輩担当って感じにしてたよね。

「そうとしか受け取りようがないけど、あれに意図があったかどうかだろ」

 その意図だけど、あの食堂での出会いってどう考えても偶然だぞ。

「偶然のはずだけど、一緒に食事をしたのは踏み込んでるよ」

 後輩だから見かけて声をかけるのは無い方が不自然なぐらいだけど、同じテーブルを囲むのはたしかに踏み込んでる気がする。でもさぁ、バイク乗りの同志愛ってやつもあるよ。

「まさかのハンターカブだったものね」

 まさかは言い過ぎだろ。何台かいるじゃない。とは言えカノンたちがスクーターじゃないのを知ってたかもだ。だってカノンたちのバイクを見ても反応があんまりなかったじゃない。

「カノンも良く見てるね」

 どうしてもね。だったら担当を決めたのは、

「以前から目を付けられていて・・・」

 可能性はゼロじゃないけど、食堂から青山歴史村に行く途中ぐらいじゃないかな。

「なら決まりみたいなものじゃないの」

 とも受け取れない事もないけど、北星先輩と南村先輩だぞ。

「そこにどうしても戻ってしまうのが問題だ」

 そこしか問題はないだろうが。そりゃさ、彼氏は欲しいし、どうせなら北星先輩とか、南村先輩なら言うことないけど、

「現実になると、それが問題だ」

 そうなのよね。あれをナンパされたと信じ込んで自爆するのはやりたくないものね。とにかく期待する方に受け取ればいくらでも膨らむし、実はそうでなかったと考えればいくらでも理由は出て来るぐらい。こういう時には、

「どうすれば良いのかな」

 そんなもの待つしかないだろ。だってだぞ、形の上だけなら口説こうとしているのは先輩たちで、こっちは口説かれてる立場だ。それに口説かれてるとしても、まだ様子見のはずだよ。

「なるほど。篠山でのミルたちの反応を見て、次に進むか考えてる段階のはずよね。ちゃんと反応出来てたかなぁ」

 少なくとも素っ気ない態度や、失礼な態度を取ってないはずだよ。経験ないから最後のところはわからないけど、論外の不合格にはなっていないはず。だからその気があったら次のリアクションがあるはず。

「告白があったらOKだよ」

 いきなりそこまで飛ぶもんか! あるとしたらツーリングのお誘いじゃないかな。

「あったら決まり!」

 気が早いって。そりゃ、向こう次第だろうけど、次はお互いをより良く知ろうじゃないかな。

「今度の休みは阪急に行って勝負下着を買ってくる」

 だから気が早いって。もし次のツーリングがあっても、

「ダブルデートでダブルベッドはないはずよね」

 もっとも備えあれば憂いなしだから、やっぱり阪急には行っておこう。