天使と女神シリーズ24 ツーリング日和4
奇妙な生い立ちを持つ大学生のユリは、これまた訳の分からないトラブルに出くわし突然の逃避行を余儀なくされます。途方に暮れるユリの前に現れたのが謎の二人組のコトリとユッキー。この二人とのマスツーは、さらなるトンデモ冒険にユリを導くのでした。 |
ツーリング日和シリーズは気に入っているのですが、さすがに四作目となるとツーリング先も、エピソードもタネ切れ状態になってました。そうそうアイデアも浮かばないと言ったところです。 ですから最初は路線変更でまたぞろシンデレラ。ストーリーを書こうと…
ユリの事情は、下呂温泉に向かう途中で追いかけて来たクルマからわかったんよ。「シノブちゃんもマークしてたみたいね」 あんな関係の薄い国から、マイナーな国際会議に摂政がわざわざ出席するから裏があると読んでたようや。まあ日本とは関係が薄いけど、タ…
「コトリ、丸く収まったみたいだね」 「あんなもんでエエやろ」 ああいうアクシデントは楽しいし、ツーリングの隠し味みたいなもんやけど、毎回毎回よう起こるわ。そのたびにお土産代が鰻上りになるのが玉に瑕や。「シノブちゃんも頑張ってくれたから仕方な…
それでも神戸のマンションにたどり着いてホッとした。二か月ぶりだよ。でも帰った途端に現実が待っていた。「ユリ、こんなのが来てたよ」 大学からだけど、長期欠席の代わりの進級条件として、ゴッソリのレポートの課題のヤマ、ヤマ、ヤマ。なにが国際親善へ…
晩餐会が始まったけど、まずあったのがウィーニスの政変の論功褒賞みたいなもの。これは空席になってしまっているデューゼンブルグ伯爵家の後継を決める意味もあるだろう。なんのかんのと言って、公爵家と二つの伯爵家はエッセンドルフの政治の要みたいなも…
ついにと言うか、やっとこさエッセンドルフに出発だ。一緒に行くのは宮内庁式部職からまず二名。礼儀作法の指導もあるけど、なんかユリの付き人みたいにされてて気の毒だ。後は外務省から三名。団長みたいな人と通訳かな。 ユリも含めて六名だから二台に分乗…
自慢じゃないけど東京にも初めて行った。外務省の柴田課長がマンションまで迎えに来て、ビッチリ監視されてるようなものだから逃げようがない。東京駅を下りたら、またまた黒塗りの大型車がお出迎え。どこに連れて行かれるのかと思ったら、「柴田課長、ここ…
今日の大学は午前中でおしまい。友だちとランチして、カラオケに誘われたけどレポートも溜まってるから帰ることにした。たく、なんちゅうレポートの多い大学なんだ。取る講座を失敗したかな。 マンションの前まで来た時にフラッシュバックが走った。黒塗りの…
家に帰るとお母ちゃんが開口一番。「やったよね。それにしては帰って来るのが早いけど」 言うと思った。幻聴まで聞こえたぐらいだもんね。やってない。まだ会ってから三日目だぞ。「三日でもやるよ。旅先のアバンチュールの乗りならそんなものじゃない」 ユ…
ロビーまで下りたから三宮にでも繰り出すのかと思ったら、連れてこられたのは、なんだ、これってバーじゃない。それもお触りじゃないやつ。「ホテルにお触りバーはありませんよ」 そうだよな。だいたい女が行く意味もないし。でもこういうバーも見たことがあ…
美山から神戸は高速が使えたから二時間ちょっとで帰って来れた。そうそうコウさんはハーレー。1800CCもある化物みたいな大型バイク。でもコウさんが乗ると格好イイんだ。あんなに大きいのに余裕で取り回すから、その姿だけでシビレた。 生田川ICを下…
改めてみるとやっぱりイケメンだ。背だってユリより高いもの。それに指が綺麗だ。ピアニストらしく長い指もシビレそう。見惚れてたら、「ユリ、ここでお別れね」 「後は頑張りや」 ちょっと、ちょっと、ユリを置いてく気。「ここから神戸は余裕で帰れるで」 …
歩きながら茅葺の里を見てまわっていたんだだけど、「ユリ、ここも見ておくよ」 コトリさんたちが入ったのは民俗資料館。正直なところユリは気乗りしなかった。だって民俗資料館って、昔の道具とか展示してあるけど、あれってガラクタの展示に見えちゃうのよ…
朝は珍しくゆっくりしてた。朝食は八時からだったし出発は九時だもの。「行くで」 棚橋川沿いを南に下り、今度は由良川沿いを東に走って行くと二十オ分ほどで到着。なるほど、ゆっくり宿を出るわけだ。川沿いの駐車場にバイクを駐めると。「歩きや」 バイク…
小浜から宿まではさすがにきつかった。事故せずに良かったと思うもの。コトリさんが入って行くから今日の宿はここか。昨日もそうだったけど、今日も古民家民宿か。嫌いじゃないよ、むしろ好き、と言うより憧れかな。 なかなか学生じゃ、こういうところに泊ま…
夜はこれからどうするかで悩みまくったユリだけど、疲れたんだね。途中から爆睡してた。この宿の朝食も素朴だけど美味しかったし、朝風呂も気持ちよかった。今日はどうするかだけど、「そんなもんツーリングしかあらへんやん」 「今日は西に走るよ」 やっぱ…
話が脱線したけど、本線はクソ親父の跡取り息子が亡くなり、エッセンドルフ公爵家の跡取りがいなくなったところになる。その後は子どもが出来ていないんだよな。「やり過ぎたんちゃうか」 「若いころからあまりにやり過ぎるとインポになるって言うんじゃない…
それはともかく国際問題は、「心配せんでもエエ、ここは日本や」 「そういうこと」 外交官には外交官特権があり、刑事裁判権、民事裁判権、行政裁判権が免除されるそうだけど、「逮捕はされへんけど、犯罪者が大手を振って歩けるわけやない。そりゃ、国の同…
ユリたちが連れて行かれたのは長崎温泉。長崎と言っても九州じゃないからね。高山から二時間以上かかってようやく到着。これも庄川峡を延々と走り、最後は橋を渡って、こんなところにそもそも家があるのかと思うところに宿があったんだ。「民宿みたいね」 そ…
ユリたちの出番はコウさんの演奏の最後の曲に乱入して強引にセッションにしてしまうらしい。ホントにそんな事をやっても大丈夫かと念を押したんだけど。「国際親善のためや」 どこがだ。やがてユッキーさんがワゴン車から先にホテルに向かい、「ユリ、そろそ…
朝風呂浴びて、朝食だよ。さすが飛騨で朴葉味噌が付いてる。「鮎の一夜干しをこうやって炙って食べるのは演出ね」 朝から鮎なんて贅沢だけど、美味しい。朝からテンシュン上がる感じかな。朝の清々しい空気を吸い込んで出発。コウさんも一緒だけど、「小坂ま…
「エライ目に遭ったな」 「ホントに」 ビールを片手に言うな。でも不思議なんだよ。あれだけの騒ぎがあったのにニュースにもなってないらしい。「これはニュースになってないのを不思議がるんやのうて、ニュースになってない意味を考えるんよ」 「そういうこ…
食事中もコウさんとの会話は大盛り上がり。コトリさんたちはコウさんと単なる知り合いというより旧知の仲みたいで、完全にタメ口。逆にコウさんの方が慇懃になってる。「コウ、そんなに固くならんでも」 「そうよ、世界のコウなんだから」 コウさんが飛騨に…
ここから宿に向かうはずだけど、温泉街をこのまま抜けて国道四十一号に戻り、二十分ぐらい走ったら、「エッソのスタンドのとこの信号を左に入るで」 「らじゃ、やっと歓迎って出て来たよ」 小坂川を渡って突き当りには、「まだ三十八キロもあるんだ」 という…
犬山から国道四十一号線に行って、これからいよいよ飛騨だ。コトリさんたちのバイクは高速走れないからね。国道四十一号線は飛騨川と高山本線と並行する道だけど、クルマこそ多いけど信号が少ないから快適だ。 飛騨に向かうだけあって両側に山がある谷間みた…
翌朝は朝風呂から始まり、お食事処で朝食を七時半から取って八時過ぎには出発。飛騨に向かうのなら関が原からだよね。まずは国道三六五号で関が原を目指す。インカムも調整したから、「あそこじゃない。伊吹山ドライブウェイって書いてある」 伊吹山に寄り道…
ユリはツーリングで前に来たことがあるから、多賀大社の駐車場は知ってたんだ。ここを目指した理由は他にもあるけど、周囲が森になっているのと、平日のこの時間帯なら殆ど止まっていないはずだから。そう、とにかく人の目に付きにくいところに停めたかった…
彦根城は初めてやなかったけど久しぶりで楽しめた。下御殿を再現した彦根城博物館とか、復元された表門は興味深かったもんな。「西の丸三重櫓も初めて行ったよ」 佐和口多聞櫓もな。昔は天守閣しか入れへんかったけど、最近では他の櫓とかにも入れるのは嬉し…
「ウィーニスと直弼って似てない」 「シチュエーションやったら吉宗の方が似てるやろ」 吉宗は紀州藩主光貞の四男として生まれとるけど、次男が夭折しとるから実質は三男や。庶子やけど正室に子がおらへんかったから、そこだけはマシぐらいかもな。もっとも…
佐和口まで中濠を回ってお散歩。まず橋まで続いているのがいろは松。かつては松並木が四十七本あったから、そう名付けられたそうや。「江戸時代の彦根城と言うか、彦根の街は今とは随分違うのよね」 これはまず三成が佐和山になぜ城を築いたかになる。佐和山…