天使と女神シリーズ2 天使のコトリ
天使の微笑みとまで呼ばれるコトリの微笑み。この微笑みには謎があり、会社の命運さえ左右するものとして怖れられています。コトリの微笑みが引き起こす騒動に巻き込まれていくシノブ。シノブが追いかけた謎の行き着く先にあったものは。 |
スピンオフも外伝の一種ではありますが、今回の外伝はサイド・ストーリー的な色合いを濃くしています。というか、もともとは「天使と女神」を書いている時に、コトリちゃんの人物像を厚くするために書きかけてボツにした部分だからです。 冒頭から歴女のエピ…
特命課まで作って心配されていたコトリ先輩の恋の行方ですが、加納さんとの争いはやはり熾烈だったようです。先手を取ったのはコトリ先輩です。少しだけ聞かせてくれましたが、そりゃ、もう物凄い勢いで迫られたみたいで、ついに山本先生から、 『ボクはコト…
ボクは特命課から営業一課に戻った時に、特命課の仕事の評価もあって課長補佐をスキップして課長代理に昇進しています。もっともシノブは課長から次長をスキップして部長に昇進しているので、当分追いつきそうにありません。 「・・・営業の若いの連れて飲みに…
ハワイで過ごして二週間が過ぎた頃に綾瀬専務からミツルに連絡がありました。ほとんど片付いたから、そろそろ帰ってきてくれです。もっとも、 「この際だから、もうちょっと居ても良いぞ」 明るい声で言われたそうですが、そうそう遊んでばかりでは申し訳な…
翌朝は出勤前に綾瀬専務から電話があり、会社に行く前に是非会いたいと言われました。かなり切迫した様子が電話越しでもわかりましから、急いで指定された喫茶店に向かいました。そこにはミツルも先に到着していました。 「結崎君。急で悪いが、今から佐竹君…
社長への報告も済み、特命課の仕事も終ったようなものです。それでも最終報告書を仕上げるのと、かき集めた資料の整理・返還が必要です。どちらも大変でしたが、一週間ぐらいでなんとか終えました。 「終わったね」 「なんとかね」 午後も遅くになってようや…
コトリ先輩の謎の一つにあれだけ優秀なのに、なぜにうちの会社に入社されたかです。そんなことを考えたこともなかったのですが、出身大学が三明大学であったからと考えても良さそうです。コトリ先輩が卒業された頃の三明大学はイマイチで、社長も言っていま…
うわぁ、立派な教会だ。この教会も震災の時に大きな被害を受けたはずだけど、見事に修復されています。受付を探して名前と要件を伝えると事務室みたいなところに案内されました。 「いらっしゃい、今日は学校の話を聞きたいんだってね」 「はい、お忙しいと…
これまでにうちの会社に天使は四人いたのは確実です。そのうち三人は判明し、さらにその中の二人は能力者家系の大聖歓喜天院家の女性であるのもわかっています。問題はコトリ先輩と非常によく似たもう一人の天使です。 これが杳として不明です。業務成績の分…
とりあえず特命課の次の課題はコトリ先輩がなぜに天使になれたか、二代目天使となぜコトリ先輩があれだけ似てられるかです。ミツルと二人で作戦会議です。とびついてキスしちゃいたいのですが、これは仕事だから我慢、我慢。今日は先代天使とユッキーさんの…
ミツルと夕食に行ったのはイタリアン。ハンター坂のもう一本西側の坂を上がったところにある、ちょっと隠れ家的なレストランです。ここは完全予約制なんだけど、行く気マンマンで既に取ってたの。これぐらいさせてもらってもイイぐらいの経過報告したもんね…
ミツルと特命課で昼間もゆっくり過ごせると喜んでたら、社長たちへの経過報告をする日だったのをウッカリしてました。もうどうして、そうなっちゃうのと地団太踏んでましたが、本来の仕事ですから文句も言えません。 会議室には社長、綾瀬専務、高野常務、そ…
今日は特命課でミツルと一日過ごせるとルンルンで出勤したら、机の上に書置きが、 『結崎課長。申し訳ありませんが、もう少し確認したいことがあり、今日も調査に出かけさせて頂きます。それと今日は帰れないかもしれませんから夕食は御一緒できませんので、…
京都まではちょっとリッチだけど新幹線を使いました。ミツルも初めの頃はJRとか、阪急を使ってたんですが、綾瀬専務から、 「時間の無駄」 こう言われたそうです。さすがに早くて新神戸から三十分で京都駅に到着です。さらに、そこからもリッチにタクシー…
「課長」 「課長はやめてよミツル」 「でも、ここは社内ですから我慢してください。それと佐竹とお呼びください」 綾瀬専務の言葉通り、特命課への辞令が出て、私とミツルが配属されました。それにしても綾瀬専務にあそこまで白状させられたのは参りました。…
「・・・綾瀬君、本当にそう思うのかね」 「その可能性は十分にあると考えています」 「ああなったからか」 「はい、小島君と同じことが起こったと判断して良いかと思います」 社長は椅子から立ち上がり、 「でもその調査を結崎君にやらせるのはどうなんだ」 「…
料亭の日から、私はコトリ先輩の件から手を引いています。わかった範囲だけでも報告するって約束したけど、なんか疲れちゃって、そうやって一度足が遠のくと、もともとあれだけ雲の上の人ですから、高野常務ですら会いに行くのに気が重くなっています。 そん…
佐竹さんって、あんなに誠実で情熱的な人とは思わなかった。だってさ、コトリ先輩に無理やりセッティングされたデートの時に、ちょっと言葉は飾ったけど、あれってお断りの返事だったんだ。あの状況では、それ以外に考えられなかったし。 でもね、全然くじけ…
「こっちだよ、こっち、佐竹君こっち」 店に入ると立ち上がって手を振る小島課長がおられます。今日は小島課長から結崎さんとのデートの話を聞かせて欲しいとの呼び出しです。ボクの仕事が少し長引いたので、小島課長は先に飲み始めています。 「シノブちゃ…
「いらっしゃいませ、結崎様。ご案内させて頂きます」 へぇ、一流の料亭って一見さんには厳しいけど、一度行けばお馴染みにさんになって、ずっと覚えてくれてるって本当だったんだ。ちょっとクビを傾げていたけど、あれは私程度の人が二度も来たからかもしれ…
ボクは佐竹満、営業部です。大学ではラグビーやってました。最近気になってる女性がいます。総務部の結崎さんです。最初に結崎さんのことを知ったのは、営業部に回されてきた経営分析のレポートです。営業部に取っても結構痛いところを書かれていて、 「これ…
総務部はなんでも屋とも呼ばれるぐらい多岐の業務があります。会社の方針や時代の変化により、元は総務部の仕事であったのが細分化されて独立することもありますが、うちの会社は、できるだけ細分化しない方針のようです。この辺は企業規模の問題もあります…
とにもかくにも大変な事態の真っ只中に私はいます。会社の行方を左右しかねないコトリ先輩の恋がまずあり、これを重視した重役会は、私をその恋の情報収集役に命じています。私は新しい情報が入るたびに、私の担当となった高野常務に報告に行っているのです…
今日は彼氏とデート。私だって恋人はいるのです。彼氏の名前はツトム。歳は三つ上で、やはり衣料関係のお仕事です。へへへ、合コンで知り合っています。もっともツトムは衣料関係と言っても小売りの方です。 「・・・ボクもクレイエールの天使の伝説は聞いたこ…
「結崎様ですね、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」 なんだ、なんだ、この重々しい店は。門があって広い日本庭園があって、ごっつい玄関。そこから長い廊下をスタコラ歩かされて、次の間みたいなところに案内され、 「お連れ様がお見えになりました」 …
鬼瓦部長から山本先生と会うのは『まだか、まだか』の目でにらまれ、社内ですれ違う重役たちからも『まだか、まだか』と目で訴えられてるようで弱っています。でもさぁ、山本先生だってお医者さんでお忙しいだろうし、加納さんだってあれだけ売れっ子のフォ…
「結崎君、ラクにしてそこにかけ給え」 そう言われたって、ここはいかめしい重役が集まってる会議室の中です。ずらりと並んだおエライさんに見つめられて、心臓がバクバク状態です。鬼瓦部長にたまたま行ったバーで、加納さんとカズ君さんに会ったこと、その…
私がコトリ先輩の恋の相手らしい人とバーでたまたま会って話をしたのを、コトリ先輩に話したら、ぜひその時の様子を知りたいと私は食事に誘われました。今回はカウンターだけの和食屋さんです。 「シオリちゃん、綺麗だったでしょ」 「はい、実際にお会いす…
今日は花金。サキちゃんと御飯を食べた後にバーに行こうという話になりました。ちょっと背伸びしてカクテルを楽しもうってところです。店は以前にコトリ先輩に連れて行ってもらったことがあります。 「カランカラン」 店に入るには木製の扉を開ける必要があ…
「予定していた議題は以上だが、今日はもう一つ重要な議題がある。天使の微笑み問題だ」 会議室に緊張が走ります。天使の微笑みが会社の浮沈に連動していることは、嫌と言うほど経験しています。 「微笑みの輝きが増している原因はやはり恋だった」 「順調な…