天使と女神シリーズ15 シノブの恋
シノブがあのバーでホワイト・レディーを飲んでいると男が登場。これがなんと歴史オタクの医者。コトリと山本との失恋の過去が気になるものの、歴史ムックを重ねながら魅かれて行くシノブ。男は歴史ムックを終えてもアタックがなかったものの、今度は乗馬の世界にシノブを誘います。馬と聞いて興味を示すユッキーは渋るコトリを説き伏せて参加。順調に見えたシノブの恋でしたが、男に告げられたのは別離の言葉。そう、男にはライバルがいたのです。落ち込むシノブでしたが、会員になった乗馬クラブの因縁の勝負に臨みます。なんと相手はあの恋のライバル。馬術勝負の行方、シノブの恋の行方はどうなる。 |
今回の主人公は久しぶりにシノブ。いっつも留守番役させてたので、そろそろ出してやらないと忘れられそうですし。 この作品の当初構想は処女作のリベンジ。処女作は一番苦労した作品ですが、処女作だけあって不備がテンコモリで、シリーズからはあえて外して…
いまだに残念な気持ちは残ってるけど、今回のシノブの恋は失恋で終わっちゃった。逆転の可能性は最後まであると期待してたけど、高慢なお姫様と思い込んでいた愛梨が、あんな純情なツンデレ女とは参った、参った。コトリ先輩がユッキー社長のツンデレ愛と競…
愛梨と伊集院さんは結婚式を挙げたよ。シノブも呼ばれたけど、愛梨は綺麗だったな。それにホントに嬉しそうだった。新婚旅行から帰って来て、しばらくしてから愛梨に会ったんだ。せいぜい冷やかしてやるつもり。 愛梨で気になってたのは、本当に恋人すら作っ…
「メンドイやんか」 「だから競技じゃなく模範演技だけ」 「馬はどうするんや。甲陵にはクラブのレンタル馬なんておらへんやん」 「メイウインドを使います」 予想通りコトリ先輩は渋る渋る。愛梨の希望は会長杯と同じコースを走って欲しいだもんね。 「あん…
『カランカラン』 「ハルカお待たせ」 「遅いぞ愛梨」 シノブが待ち合わせしてた相手は神崎愛梨。会長杯で戦ってから、すっかり仲が良くなっちゃって、今はお友だち。そんな愛梨から伊集院さんとの本当の関係を聞きだしたんだ。 「中学の婚約話の時は完全に…
「コトリ、今さらコース変更ってなによ」 「そういうルールらしいわ」 でもこれで有利になったかもしれん。森のコースは結構な直線があるから、あそこでスピードに乗ればシノブちゃんは完全に目覚めるかもしれん。ほほう、ジャンプ・オフは先攻後攻が入れ替…
「コトリ、どう見る」 「エエ勝負やで。シノブちゃんも神崎愛梨もまだ余裕残しとるから、三十秒台の勝負は確実やな」 コトリも神崎愛梨とメイウインドには驚いてる。ユッキーと無理してテンペート買っといて良かったわ。あん時はルナを馬の話に引きずり込ん…
二回戦は先攻の八位の山科選手がバーを落としてくれたからラクな展開になり、ゆっくり目に回って軽く勝利。神崎愛梨も七位の本田選手を圧倒して三回戦に進出。この会長杯のトーナメント方式は、予選に当たる一回戦こそ時間をかけて行うものの、二回戦からは…
まずは予選みたいな一回戦。八人の中に残らないと話にならないのだけど、さすがにレベル高いわ。それに馬も立派。コースが短くなった関係で規定時間は五十八秒になってるけど、団体戦にも出場していた松本さん、栗岡さん、白田さんは次々と減点無しでクリア…
会場は甲陵倶楽部。シノブは初めて来るけど、こりゃ立派。広大な森の中にあるようなものだものね。案内された厩舎も北六甲クラブとは大違い。馬は小林社長に頼んでシノブはコースの下見。 障害馬術と言うよりクロスカントリーに近いぐらいの距離がある。そう…
北六甲クラブの一角に障害コースが設定され練習開始。 「やはり大障害ですよね」 「いや、甲陵の会長杯はグランプリ仕様や」 オクサー障害は二メートルにもなり、高さも一七〇センチになることもあるとか。プライベートの大会にしたら高すぎるのだけど、それ…
吹っ切れた感じはするのだけど、当面はどうしようもないのよね。さすがに押しかけ女房をやるのもどうかと思うし。なにかアクションが起こすにはキッカケが必要だけど、見当たらないから馬に熱中してる。 それとだけど、シノブは伊集院さんに天秤にかけられた…
ここは甲陵倶楽部の会議室。今日は臨時の理事会です。 「黒田君、今回の失態の責任をどう取るつもりかね」 尋ねているのは跡部大吉。跡部家は政治家の一族として知られ、跡部大吉も衆議院議員を十期勤め、与党総務会長、政調会長から文科相、総務相を歴任し…
最終組は甲陵倶楽部が先攻。松本さんだけど、これは鮮やか。まさに危なげないって、こんな感じかも。あのオクサー障害も難なくクリア。一六〇センチの垂直障害もあっさりと。 「さすがはアジア代表ね。レベルが違うわ。減点無しでクリアしちゃったよ」 松本…
当日は社長のクルマで野路菊クラブに。とは言うものの年季の入った軽ワゴン。車中で、 「コトリ先輩、作戦は」 「そやな、まずユッキーはアテにしてへん」 「そりゃ、ないでしょ」 「どこに期待できるとこがあるねん」 ユッキー社長の馬術は上手い。でもコト…
シノブちゃんも段々とは回復しとって、部屋からも出て来たし、仕事にも行ってる。ただ表情は暗く沈んだまま。三十階でもほとんど口も利いてくれへんし、晩御飯が終わったら自分の部屋に直行って感じや。コトリもユッキーも腫物にさわるようでピリピリしてる…
「・・・そういうことで貸与馬での大障害A勝負になった」 「冗談やろ、大障害Aいうたら最高難度やんか」 コトリたちが馬に乗った後に社長室に呼ばれたんや。社長室言うても四畳半ほどの部屋で、どこから拾ってきたかわからへん、くたびれきった応接セットがあ…
乗馬クラブいうてもピンキリで色々あるんやけど、北六甲クラブの対極みたいなのが甲陵倶楽部。あそこは社交場でもあるんやけど、乗馬倶楽部も持ってるんや。ちょっとややこしんやけど、正式には甲陵倶楽部附属馬術会って言うんやけど、普通は甲陵乗馬倶楽部…
アカネさんの情報で伊集院先生の実家である伊集院製作所と、神崎愛梨の神崎工業の間でなんらかのトラブルがあったのがわかったんや。これは会社の業務に関与する事やから調査部が使えたんやけど、 「それにしてもシータ計画絡みなのにビックリした」 「エラ…
「お~い、アカネ」 「デマです」 「何がデマなんだ、今度の週末だけど」 「爪楊枝があります」 「昼飯の唐揚げが歯に挟まったか?」 あれっ、日本語が通じない。ツバサ先生も歳かな。 「用事があれば予定は変更にしろ。コトリちゃんから是非にの要望だ」 「…
「ユッキー、まさかだよね」 「わたしもビックリした」 あれだけルンルンで出かけて行ったシノブちゃんが抜け殻のように帰ってきて、部屋に籠っちゃったのよね。聞こえるのは泣き声だけ。手の付けようがあらへん。食事だけは部屋の前に置いといたら食べてく…
今日は思いっきりおめかし。ついに、ついにだよ、北六甲クラブのレストランじゃない、普通のレストランに食事に誘ってくれたんだ。それもだよ、あの店は忘れもしない、ミツルと初めてデートに行った店なんだ。まだあったのに驚いたけど。 今日こそ運命の日だ…
小林社長が勧めるから、全国乗馬倶楽部振興協会の技能認定試験を受けたんだ。これは五級から始まるんだよね。五級はおおよそで言えば常歩と速歩が出来れば合格ぐらいで、英検の五級程度ぐらいのもの。 四級はこれに駆歩が加わるぐらい。この程度は三人に取っ…
三十階に帰ると待ち受けるのは野次馬二人。 「やったの」 「馬に乗っただけです」 「えっ、最初からシノブちゃんが馬乗りでやったの!」 「やってません。乗馬体験しただけです」 そしたら、 「ほらみい、まだやったやろ」 「今度は絶対と思ったのに」 こら…
伊集院さんに連れられて行った乗馬クラブだけど、とにかく広い。屋外馬場だけで一万五千平米ぐらいあるんだって。 「ここは?」 「クラブハウスだよ」 乗馬クラブってもっとハイソなイメージがあったんだけど、なんとも手作り感の溢れたというか、庶民的とい…
『カランカラン』 期待と不安に胸を膨らませて伊集院さんを待ってる。今日はマルガリータ。フローズン・スタイルの代表的なカクテル。テキーラ・ベースなんだけど、テキーラだけを飲む時にも塩をアテにするのがポピュラーって聞いたことがあるの。 左手の甲…
次に会ったらどうするかも重要過ぎる問題だけど、富士川の合戦ムックも大事。頼朝がなぜに黄瀬川に出張って来たかの謎はわかんないのよね。吾妻鏡では平家迎撃のための主題で書かれてるけど、これはまず否定して良いよね。 だってだよ、頼朝が石橋山で敗れて…
「ただいま」 「おかえり」 三十階は酒盛りの真っ最中。シノブも飲み足りないから参戦。 「シノブちゃん、どうや」 「頼朝は黄瀬川から動いてないとこまで行って、どうしてあの時点で黄瀬川に動いたかで今日はオシマイ」 これで済ましてくれないよね。 「そ…
今日はもう五回目の歴史ムック。十日間で相模平定を終えた頼朝が、なぜに黄瀬川に急行したのがポイントだろうは意見が一致した。 「吾妻鏡は何かを編集しているのは間違いないと思うんだ。まず、単純には富士川の勝利を頼朝の手柄にしたかったのは確実にある…
なんか歴女の血が燃え盛ってる。吾妻鏡には富士川の合戦の頼朝の所在地をかなり詳しく記録してるのよね。シノブもあの辺の土地勘ないから読んでる時はフムフムぐらいだったんだけど、実際に地図にプロットすると相当なもの。 富士川の合戦に参加したのは平家…