天使と女神シリーズ10 浦島夜想曲

最愛の夫山本を失ったシオリは生きる気力も失い、生きがいだったカメラも置いてしまい、引き籠り状態になってしまいます。それを心配するユッキーやコトリたち。そこに浦島伝説も絡む女神の事件が発生。シオリは復活できるのか、女神の事件はどうなるのか。

浦島夜想曲:あとがき

今回は旅ものと歴史ムックのコラボレーション。旅ものは前回が豪華クルーズだったので、あれ以上の豪華な旅行は思いつきにくく、近場の温泉旅行にしてみました。クルマを使わない前提にしたのは良かったですが、とりあえず行かせた龍神温泉が拙かった。 次の…

浦島夜想曲:エピローグ

ここは三十階仮眠室。今日は加納さんも含めて五女神のそろい踏みです。 「シオリ、よく来てくれたね。今日も泊ってってね」 「そのつもりだよ」 食事の支度も整って、 『カンパ~イ』 「ところでシノブちゃん、これは、 『かめえんぎ』 こう読むのかな?」 …

浦島夜想曲:舞台裏

今回の理事会でのバトルですが、小山社長もよくこんな詐欺みたいな手法を思いつくものと感心しました。小山社長は、 「あそこの理事会の会議規定は誰が決めたか知らないけど、普通とはだいぶ違うのよ」 委任状に議決権が生じるのは、通常は事前に提示された…

浦島夜想曲:理事会バトル(2)

記者会見場に協会職員が出向き、集まっていた記者に、 「皆様、申し訳ありませんが、本日の記者会見は中止とさせて頂きます」 一斉に上がる不満の声と怒号、 「どういうことなんだ」 「事情を説明しろ」 「なにかやましいことでもあるのだろう」 「とにかく…

浦島夜想曲:理事会バトル(1)

いつも通りのシャンシャンの定例理事会と思ってたのですが、桜田理事が緊急動議を出して来ました。 「加納理事ですが、ずっと欠席されております。御高齢でもあり、解任決議案を提出させて頂きます」 マリーも知らなかったのですが、加納さんは協会の前理事…

浦島夜想曲:マリーの仕事(2)

しかし事態はまたまた思わぬ方向に展開します。まず加納さんが協力してくれるの話だけで、現場の士気は見違えるように上がりました。これも新製品開発で一度は盛り上がったものの、開発予算の乏しさと、開発期間の短さで、 『ムチャ言われても、無理なものは…

浦島夜想曲:マリーの仕事(1)

社長に小会議室に呼び出されました。本来なら社長室のはずですが、なぜか使えないので小会議室です。呼び出されたのはマリーとJJことジョナサン・ジョンストン。 「JJ、あなたのロッコールの仕事は終りよ。マリーに代わってもらう」 「えっ、もう少し時…

浦島夜想曲:バーでの密談

夢中で半年ほど過ごして、 「サトル、飲みに行くよ」 食事の後に連れて行かれたのはバー。 『カランカラン』 白髪の老マスターが 「これは加納先生、お久しぶりです」 「マスターも元気そうでなによりね」 バーなんて慣れてないもので、 「わたしはマンハッ…

浦島夜想曲:加納志織復活

加納先生が仕事を再開されたのはビッグ・ニュースとして報道されました。記者会見も開かれたのですが、 「突然の復帰の目的は」 「写真を撮るため」 「復帰の理由は」 「写真を撮るため」 「ブランクの影響は」 「あれは充電期間。これからの仕事を見てもら…

浦島夜想曲:弟子入り

熊野古道で出会った五人組の女の子のグループはこの世のものとは思えません。マジで現実に自分の身に起った出来事とは思えないのです。世の中には美人とか、美女と呼ばれる女性はいますが、そういうレベルを越えてるのです。 ボクだってカメラのプロを目指し…

浦島夜想曲:浦島はどうなった

「ビールは?」 「ヴァイツエン飲んでみようかな」 さてさて浦島伝説は奇想天外な事に、エラン人による地球人拉致事件に展開しちゃっています。でも拉致っていっても、エランに連れて行かれた地球人は人体実験の材料にされたり、見世物にされたのではなく、…

浦島夜想曲:亀比売

泊るのならということでお風呂頂きました。これがまた広々してサウナまで付いている立派なもの。 「うちので悪いけど着替えは置いてあるよ」 泊りになりお風呂になったので香坂さんとシノブちゃんは帰宅し、残った三人で話の続きを。ここで浦島伝説で気にな…

浦島夜想曲:エランの浦島

アラとはアラルガルとも呼ばれるエラン人。そうあの宇宙船団が来た惑星の人。コトリちゃんたちを信じるしかないのだけど。アラは一万年前にエラン統一政府の政権を握り、現代まで一万年にも渡り長期独裁政府を維持していたとなってる。 これも教えてもらって…

浦島夜想曲:丹後国風土記逸文

コトリちゃんの仮説部分もあるけど浦島伝説は、 丹波の国宰として派遣されていた伊預部馬養が丹後の伝承として聞いたもの 馬養は六八九年に撰善言司に選ばれた時に教訓的な説話としてまとめ上げた 馬養の浦島本は貴族の教育テキストとしてかなり広範囲に使わ…

浦島夜想曲:浦島伝説

香坂さんから連絡がありクレイエール・ビル三十階に。集まったのはエレギオンの五女神ってやつ。 「シオリちゃん、浦島太郎って知ってる」 「助けた亀に乗せられて竜宮城に行く話よね」 「そうやねんけど・・・」 コトリちゃんが言うには浦島太郎の話はかなり変…

浦島夜想曲:香坂常務

香坂常務もエレギオンの四女神の一人なのですが、他の三女神と少し色合いが違います。四女神はそれぞれに個性的なのですが、社長、副社長さらには専務もタイプとして押しが強いところがあります。 これに対して香坂専務は常識家的なところがあり、引くとは妙…

浦島夜想曲:留守番のマリー(2)

これは九年前にエレギオンに勤め始めてすぐわかりました。ルナも女王ですが、小山社長はまさに氷の女帝です。怖いのはもちろんですが、その判断力、実行力は驚異的だったのです。さらに社員はエレギオン・グループの精鋭部隊。最初はあまりの仕事のハイ・ペ…

浦島夜想曲:留守番のマリー(1)

私はマリー・アンダーウッド。アメリカのセレクション・マートの創業者の一族の娘として生まれています。まあセレブってことになるのだけど、お嬢様扱いで終るのは耐えられなかったのです。それだけの才能はマリーにあるはずだし、それだけの成績を大学でも…

浦島夜想曲:神戸へ

翌朝どうするのかと思ってたのだけど、 「シオリちゃん、もうちょっとユックリしたかってんけど、マリーが悲鳴あげててね」 「そうなのよ、倒れちゃったら可哀想だし」 そういうことで帰るようです。でもイイ旅行だった。すっかり元気を取り戻した気分。仕事…

浦島夜想曲:四日目

翌朝はまたまた宅急便の社長が荷物を受け取りに。これもおエライさんの接待になるのでしょうがご苦労様です。星野君は、 「ではまたお会いできれば光栄です」 あれっ、ユッキーもコトリちゃんも夜這いしなかったのかなぁ。ここからは宿の好意のバンで熊野川…

浦島夜想曲:三日目(2)

ここでユッキーが、 「星野君はここからどうするの」 「泊りにして、明日は大雲取越を目指します」 「さすが。じゃあ、どこ泊るの?」 「百福ですけど」 「やったぁ、今夜は一緒だ」 熊野古道にほど近いところに宿はありましたが、なんと民宿。 「こんなんも…

浦島夜想曲:三日目(1)

朝風呂に入って朝食。 「へぇ、お粥さんなんだ」 「そうや、温泉粥やで」 「これは美味しいね」 上手に炊いてあるじゃない。お粥さんってお米を柔らかく炊き上げるものだけど、ヘタクソが作ると御飯が潰れてノリみたいになっちゃうのよ。ここのはさすがで全…

浦島夜想曲:二日目(2)

そこからユッキーとコトリちゃんが街を歩いてくると言いだし、香坂さんが付いて行ってしまったのでシノブちゃんとおしゃべり。 「ユッキーやコトリちゃんって、仕事している時もあんな感じなの」 「コトリ先輩は近いところもありますが、社長は違います」 シ…

浦島夜想曲:二日目(1)

起きたらまず朝風呂。温泉旅行はこれがあるからイイんだよね。昨日は露天風呂だったけど、今日は大浴場。これが槇風呂で気持ちイイのよ。泉質も滑らかでお肌もツルツルする感じ、湯の花もプカプカと。龍神温泉は美人の湯として有名だけど、看板に偽りなしだ…

浦島夜想曲:お成りの間

風呂から部屋に戻ったんだけど、 「立派な部屋ねぇ」 なんでもこの部屋に紀州の殿さまが泊っていたからお成りの間っていうらしいし、置いてある調度も当時の物があるんだって。四人とも大はしゃぎで、 「シオリ、撮って、撮って」 床の間をバックに殿様気分…

浦島夜想曲:龍神温泉

さすがに一時間半の路線バスの旅は長かった。 「とりあえず宿に荷物を預けて観光します」 宿はバス停からほど近い上御殿。なんでも紀州藩の開祖である徳川頼宣が龍神温泉を訪れた時に建てられた御殿が始まりらしく、当時の建物も残ってるらしい。 「シックで…

浦島夜想曲:出発

当日は九時半にクレイエール・ビルの一階ロビーに集合。 「こっちよシオリちゃん」 なにやら旗を持っていますが、 『明文館高校二年三組』 校章まで入れた染め抜き。わざわざ作ったんだ。 「はい、これ」 旅の栞じゃない。これもわざわざガリ版刷りで作って…

浦島夜想曲:三十階仮眠室にて

香坂さんは常に控えめで、そのうえ若く見えるから、ホンマにエライさんかと思う事もあるけど、今日は見せてもらった。六時とはいえまだまだ仕事は続いており、香坂さんとわたしが乗り込んだエレベーターに、見るからにおエライさんて感じの人と部下らしき人…

浦島夜想曲:追憶のシオリ

香坂さんから連絡があって、旅行の件の打ち合わせをしたいからクレイエール・ビルに来てくれないかって。それにしても、打ち合わせに会社を使わなくても良さそうな。それに呼ばれた時刻も妙で、 「夕方六時に受付においで下さい。わかるように手配しておきま…

浦島夜想曲:シオリのマンションにて

ユッキー社長の命を受けたミサキは加納さんに連絡を取り自宅のマンションに伺いました。このマンションも最初に訪れた時は生死をかけるほど緊張したのも今となっては懐かしい思い出です。 『ピンポン』 加納さんを見るたびに思うのですが、ミサキもあそこま…