運命の恋
ラブ・ロマンスと言うか、ラブ・ストーリーは何度か書いていますが、今回はリサーチをかなり入れています。まず調べたのが恋愛感覚の違いが出ていないかです。そりゃ、自分の経験は四十年も前だからです。 あれこれ調べた結果として基本は変わらないで良さそ…
こんな事を思っているのは、今日が特別の日だからなんだ。マナツの記憶を全部思い出す特別の日なんだ。というか、勝手に思い出してしまう日だよ。恥しい事も、嬉しい事も、悲しい事も、とにかく全部思い出す日。そうしなくちゃいけないし、そうなってしまう…
マナツの父親、いやあのクソ親父は最低だった。クソ親父の実家はそれなりの資産家で、地方なりの旧家らしかったけど、今の世の中でありえないぐらいの男尊女卑の権化みたいな奴。モラハラ上等のDV野郎ぐらいを思えば良いと思う。 そんなところにマナツが産…
美香の葬儀には出なかったけど、後日に美樹ちゃんに呼び出された。「淳兄ちゃん、ありがとうございました」 美香は美樹ちゃんが下宿に来る前は痛みに苦しんでいたそうなんだ。さらに御両親と一緒に来た頃には意識も途切れ途切れになっていたと言うんだよ。「…
エレベーターを降りると詰め所みたいなところがあった。ナース・ステーションって書いてあるな。そこに行って名前を告げ美香との面会の希望を話すと、「伺っております。ご案内させて頂きます」 ここは病院の最上階で廊下にそって並ぶドアはホテルみたいだ。…
あれからマナは美樹ちゃんと連絡を取り合ってるみたいだった。そして、「日曜日に来られるって」 「美樹ちゃん独りじゃ危ないぞ。前の時だってラッキーみたいなものだったじゃないか」 「あれはジュンが入れてやらなっかたのが悪い」 結果的にはそうだけど、…
ボクのスマホにも着信は少なからずある。学校の友だち、歴史サークルからの連絡、サークル仲間からのもの、もちろん諏訪さんや今泉、言うまでもないけどマナからもだ。だけど、数はそれなりにあっても、限られているのは限られている。 それでも見知らぬ着信…
感動の初体験から始まったマナとの同棲生活も二年が経った。そうボクも最終学年になった。就活も順調で、後は卒論を仕上げて卒業にまっしぐらかな。マナの実家にも定期的に挨拶に行ってるけどマナのお母さんは、「もうすぐ卒業ね。卒業してすぐは難しいかも…
感動の朝だったけど、狭いお風呂で一緒にシャワーを浴びて着替えたら、マナはいつものマナに戻って行った。「マナツの記念だけど、さすがにね」 シーツを洗った。そりゃ、恥しいだろうな。手洗いまでして丹念に洗ってたよ。それが済むと手際よく朝食を整えて…
無事二年に進級、学生生活は順調だ。マナとの交際も、もちろん続いている。マナの二十歳の誕生日もしっかり祝わせてもらった。今度はボクの番だけどワクワクしてる。 そんなマナとの関係だけど、正直な話、マナが欲しくなってる。そうなんだ、まだなんだよ。…
大学は無理すれば売られてしまった家からでも通えたが、無くなってしまったものはしようがない。父親はどこの大学に合格したなんて興味も関心も無かったしな。その下宿だけど家賃と広さで選んだ。 下宿は古いマンション。そう言えばリッチに聞こえるかもしれ…
辛すぎる日々だった。それでも美香との失恋だけで自分の人生を捨て去ってしまうのも惜しい気がしてきた。こう言えば格好良さそうそうだけど、未練と思い切りの間で振り子のように心は激しく揺れ動き、段々に思い切りに傾いていったぐらいだよ。今だって狂お…
気が付くと電灯の明かりが目に入った。あの世にも電灯があるんだと感心してたら、「ジュンちゃん」 マナじゃないか、参ったな天国にもマナがいるのか。天国でもマナと組手でぶん殴られないといけないなんて。いやいや、天国じゃぶん殴られないから、ここは地…
ここは波濤館流道場の一室。集まっているのは山吹真夏、諏訪理子、今泉健太郎の三人。行方不明の氷室淳司を自宅で発見し、波濤館流道場に運び込んでいる。「山吹さん。あんなパンチを喰らわせて氷室は大丈夫なのか」 「ああやって静かにさせないと今泉君は病…
諏訪さんと今泉と話したのは木曜日だったが、翌日の金曜日に美香はまた欠席した。風邪との話だったが、昨日の話もありすごく気になった。スマホでメッセージを送ったが、返信どころか既読にすらならなかった。 不安だけが広がったが、それだけ風邪がシンドイ…
三年に進級したら美香と同じクラスになっていた。まさか学校まで特別の配慮をしてくれたわけじゃないだろうから偶然だよな。今泉も諏訪さんも一緒になって嬉しかったよ。やっぱりあの二人はボクに取って親友だと思うもの。 美香との交際は相変わらずだったけ…
ボクの成績は二学期に入り急上昇。付きっ切りの優秀な家庭教師がいるようなものだから、そうなって当然かもしれない。さらにボクはクラスのボッチじゃなくっていた。そりゃ美香がベッタリいるからボッチじゃないのだが、どう言えば良いか、人気者のモテ男に…
歴研にも美香は当たり前のように入会し、当たり前の様にベッタリ状態。以前は今泉と諏訪さんのベッタリ状態が羨ましかったけど、まさかボクもそんな状態になってしまうとは、今で夢見てるみたい。 歴研も今や人気同好会として学校でも知らない者はないぐらい…
まさか美香さんの運命の人がボクだなんて。でもだよ、あの時のボクは救世主みたいな格好の良いものじゃない。そりゃ、川には飛び込んだが、美香さんにしがみつかれて共倒れで溺れそうになっただけ。「いえ淳司様がいなければ、ここにわたくしは存在しません…
ボクと美香さんの奇妙なカップル誕生も話題になったが、池西の醜態の方もしっかり広がった。この辺は今泉の指摘した通り、度の超えた池西の美香さんへの執着の不評がすでに燻っており、それに一気に火を着けたぐらいだと思う。 あの事件を境に池西は大人しく…
夏休みが終わり駅に着いたら、「おはようございます」 なんと美香さんが出迎えに来てくれていた。「さあ、参りましょう」 なんとだよ。ボクの手を取って学校に向かうんだよ。夏休み中もあれこれカップル・アピールをしたけど、今朝のは全校にカップル宣言を…
ボクの返事を聞いた五十鈴さんの顔が見ものだった。だってだよ『ぱあっ』としか例えようのない満面の笑顔になったんだ。それぐらい池西の事に困っていたんだな。とはいえ偽装カップルと言われても具体的に何をするのかと思ってた。図書室で勉強ぐらいだと考…
進級すればクラス替えだ。諏訪さんも今泉も別のクラスになった。まあ、クラスが違っても歴研で会えるから同じだけどな。歴研と言えば、香取代表が卒業してどうなるかと心配してたが、今泉と諏訪さんの二枚看板の威力を思い知った。だってだよ十人も新入会員…
行きもそうだが、帰りも電車は長い。一時間は余裕でかかる代物。ただ空いていると言うか、空き過ぎていて廃線の話も出ているのも困りもの。せめて高校卒業まで残ってくれないと通学に困るよな。「理子から聞いたわよ。実はジュンちゃんにお熱だったって」 「…
諏訪さんと今泉の問題がハッピー・エンドで解決したことを報告したらマナも喜んでくれた。マナもかなり心配していたようだ。「マナツもこの問題に協力したのだから御褒美頂戴」 「タピオカ奢ったじゃないか」 でもまあ、マナがいなければ何も出来なかったか…
昼休みだった。あの日から今泉は教室を可能な限り空けないようにしていた。これは諏訪さんへの告白罰ゲームを阻止しようとしているので良いと思う。だが四時間目の授業の終わりの時に先生から、「今泉、食事が終わったら職員室に来てくれるか」 弁当を食べ終…
どうやって今泉を呼び出そうかと考えていたら、なんと今泉から呼び出された。それも二人っきりで話がしたいとのことで、校舎裏で会った。ボクが呼び出すならともかく、今泉が何の用事かと思った。顔を合わすといきなり、「氷室、確認しておきたいことがある…
「だいぶ苦労したんだから」 マナは小学校時代の二人を知る者から情報をかき集めてくれていた。だが小学校でも接点は無さそうだと言うのだ。「そりゃ六年間もあるからクラスメイトになったこともあるけど、幼恋が芽生えそうな四年から六年ぐらいはクラスは別…
今泉と諏訪さんの関係は相変わらず続いている。もう三か月になるかな。さすがにこれだけ長くなると、二人の関係を疑う噂が出始めた。舞台がいくら地味な歴研であっても今泉は目立つからどうしてもな。 二人の距離だけなら疑われてもしようがないとは言え、ど…
「ジュンちゃんの言う、彼女と勘違いさせる罰ゲームだけど、そこまで手が込んだ罰ゲームはそうはないよ」 これはわかるところがある。理由はまず時間がかかる点。お付き合い付きの告白罰ゲームも時間はかかるが期間限定。これに対し彼女と勘違いさせる方は、…