バイクも恋も若葉マーク(第34話)四人マスツー

 カノンたちの恋の予感だけど、

「勝負下着でキメ」

 あのねぇ。まだデートですらないでしょ。

「女と男が出かけたら、それをデートと言う」

 ツーリングに誘われたんだよね。女と男で二対二だから形式的にはデートに見えない事もないけど、

「誰がどう見たってダブルデートだ」

 勝手に舞い上がってなさい。ちなみに北星先輩は、

「小型バイク同士だから楽しめますよ」

 ハンターカブもカブエンジンだから、中型バイクとのマスツーになると苦しいんだって。殴っても蹴ってもパワーとスピードでは勝負にならないものね。今回はインカムも調整して、

「ボクが先導で南村がしんがりをします」

 カノンとミルがサンドイッチになる。

「後ろ姿で誘惑してやる」

 勝手にしろ。ルートは六甲山トンネル越え。シビアな坂道だけど付いて行けた。

「ペースを合わせてくれるなんて、走るジェントルマンそのまま」

 合わせてはくれてるとは思うけど、パワーもスピードもあんまり変わらないからだろ。そういうところでマスツー仲間に誘われたんだと思うぞ。篠山ツーリングの帰りの時のルートと同じはずで、六甲北有料道路からフラワータウンに入り、そこから三田幹線に。

「モーニング休憩にしますから、左に入ります」

 三田幹線って高速みたいな作りなんだけど、北星先輩について行くと、

「アロハカフェってなってるけど、ハワイ風のカフェって意味よね」

 これで囲炉裏があったらビックリするよ。内装もそれ風で、

「サラダにパイナップルまであるのが得点高いよ」

 パンはコメダの方が上かな。でもこっちはこっちでまた利用しても良さそうだ。モーニング終えたらイオンの角をぐるっと回って国道一七六号に。古市からデカンショ街道までは知ってるぞ。

「こっちだったんだ」

 前回の時に迷子になりかけた次のところぐらいが篠山に行く正解だったみたい。今日はそこも超えて東へ、東へ。

「この交差点を左折します」

 コンビニがあるところだけど、これってデカンショ街道から外れてるよね。それでも走って行くと、

「これが京口橋です」

 江戸時代に篠山川に唯一かかってきたまともな橋だったよね。橋の南側は河原町の商店街の続きになっていて、江戸時代には川の南側にも商店が並んでいたんだとか。今も街っぽいけど、河原町みたいに江戸時代の風情は残ってないか。

 橋を渡ってすぐに右折。篠山川の北側を東に向かって走ってるはず。こうやって走ると篠山も広いな。ずんずん進んで行くと丹波細工所の表示がある交差点を左折した。

「国道一七三号です」

 これは広くて走りやすいよ。バイクだって多そうじゃないの。

「国道一七三号は大阪から篠山とか北摂を目指すツーリングルートになります」

 大阪の池田ぐらいに繋がってるんだって。ちょっとした峠道になりトンネルを抜けたら目を疑いそうになった。だって京都府ってなってるんだもの。なんとだよモンキーは京都府にも轍を刻んだことになるじゃないの。もっとも京都と言っても丹波の山の中だけどね。だいぶ走ったところで、

「道の駅瑞穂で休憩します」

 あそこを右折だな。入ってみると、へぇ、おもしろいな。二輪車置き場ってたいていは駐車場の片隅ってところが多いじゃない。なのにここは道の駅の正面にあるじゃないの。だからかどうかはわかんないけどバイクもあんなにたくさん停まってるよ。

「ここもバイク乗りが集まるところです」

 まだ店は開いてないから休憩と生理現象の解消だ。ミルは、

「ちゃんとトイレも考えてくれてるなんて最高だ」

 そのためもあるとは思うよ。だって男だってホラーなトイレより、ちゃんと整備されてるトイレに方が良いからだと思うよ。それにどう見たって初めてじゃないから、ここで休憩を入れておかないと次が遠いからじゃないかな。

 道の駅を出て少し下ると交差点があって右折。国道九号となってるな。少し走ったところの信号で、

「ここを左折します」

 こんなとこをって思ったし、どう見たって集落の中の道だぞ。そこを抜けたら、

「合流ですから注意してください」

 突然みたいに広い道に出たからビックリした。これが国道二十七号だってさ。この国道はこのまま走って行くと舞鶴に出て、そこから海岸線沿いに敦賀まで繋がってるんだって。

「今日はそこまで行きませんけど」

 いつか走ってみたいな。

「機会があればご案内しますよ」

 えっ、それって・・・丘越えみたいなところを下ったところで、

「あそこのローソンとガソリンスタンドのある交差点を右折します」

 ここってどこら辺を走ってるんだろ。京都府なのは間違いないけどわかんないよ。でも不安はないよ。北星先輩の背中を追っかけていればだいじょうぶのはずだもの。それにしてもこの風景って、

「昔話に出て来そうな感じだよ」

 南北に山があって、真ん中に川が流れてる谷間なんだけど、川の両岸に田んぼが広がっていて、農家が点在してる感じだものね。日本の原風景ってやつよね。

「こんなに良いところに連れて来てもらったのだから・・・」

 その先に勝手に突っ走るな。ダムのところでもう一度休憩して今度はレイクサイドロードだ。この湖も綺麗だな。それはそうとウェアを真剣に考えないとね。バイクって常に風を浴びて走るから体感温度はかなり下がるはず。

「夏に信号で停まった時に照り焼きになりそうだった」

 逆もまたそうで、気温が下がって来ると寒いよ。今でもこれぐらいだから冬の装備は必要だ。バイク乗りの中には酷暑の夏と、厳寒の冬は乗らない人もいるそうだけど、

「通学は冬もあるものね」

 とはいえバイク専門店のは高いのよ。そっちの方がプロテクターとか入っていて良いのだろうけど、

「命より財布だ」

 言い切るな。命は大事だけど無い袖は振れないと言え。

「寒さの現実もシビア過ぎる」

 だからと言って徒歩通学にするのは論外だ。

「彼氏をゲットしてプレゼントしてもらおう」

 今日のインカムは先輩たちにも聞こえてるぞ。

「冬用装備一式は高いで」
「せめてグローブぐらいで許してください」

 ほら見ろ。