ツーリング日和19(第30話)負の連鎖

 警察が踏み込んできて突然みたいに解放されたらしいけど、

「あのね、性奴隷から解放されたって、狂わされたチサの体が元に戻るわけないじゃないの。男を求めて街に出たんだよ」

 それって、

「個人売春というか立ちん坊やってた。体を売って男に満たしてもらい、それで食ってた。だけどさぁ、女はどこまで行っても弱いのよね。料金を値切られるのはまだしも、払わないどころか強引に連れ去られてレイプも良くあったもの」

 レイプだって!

「そんなところに反応してどうするのよ。レイプ、レイプって言うけど性奴隷の時はそれが日常じゃない。問題はレイプされることじゃなくて、レイプじゃカネにならない点だったのよ。十人ぐらい相手にしながら・・・」

 十人だって! それって続けて十発にもなるじゃないか。

「ああそれ、十発じゃないよ。レイプってシチュエーションは男だって興奮しまくるから二周じゃ終わらなくて三周ぐらいは続くよ」

 三周って三十発・・・どれだけ時間がかかったんだよ。

「そんな程度で驚いてどうするの。性奴隷の時の週末のショーの後なんていつもそんな感じだったもの。それでも三十発はさすがに時間がかかるし、体力だって使うじゃない。それよりなによりお腹が空く」

 あのぉ・・・

「だからレイプされながらチサが思ってたのは、せめて一人一万円ぐらい払ってくれたらだったかな。それだけあったら、しばらくはお腹いっぱい食べられるじゃない」

 少しは慣れたけど、世間の常識を超え過ぎた世界だよな。どうにも食べるのに困ったチサは、

「ある売春組織に勧誘されたんだよ。組織売春になるとピンハネされるけど、個人売春じゃピンハネ以前の世界だと思い知らされていたから専属売春婦の契約書にサインして入ったよ」

 組織に身売りしたようなものじゃないか。

「そこで当たり前の話がやっとわかったかな。カネのやり取りには、それをさせる力が必要だって」

 そ、そうなるよな。とくにああいう世界ならなおさらのはず。警察を頼るとか、裁判所に訴えられるものじゃないからな。まさに裏社会だ。

「そしたらね、チサは組織に目を付けられたのよ」

 また酷いことを、

「酷い結果にはなったけど、そうじゃなくて、チサが性奴隷上がりで男狂いの淫乱である点に目を付けられて組織への協力を求められた」

 なんだそりゃ、

「組織は新路線を打ち出そうとしてたのよ。それが本気で感じる売春路線だった」

 それってあれか。プロの売春婦は客には本気で感じることはないってやつのアンチテーゼとか、

「売春婦がそうなってるのは毎晩の仕事だからかな。いちいち感じてたら体がもたないし、下手に感じたら客に情が湧いて商売に差し障るとか聞いたことはある。だけどね、その組織では女が本気で感じるのを新路線としたんだよね」

 売春組織も競争が激しいから新路線で集客を狙ったぐらいなのか、

「それだけじゃないのが女を食い物にする組織かな。チサは教育係になったのだけど、求められたのは本気で感じる女への教育もあったけど、女の性奴隷化も求められた。そうしておけば、ピンハネ率だって上げ放題に出来るし、女だって逃げられなくなるでしょ」

 あちゃ、ドリームクラブの再現みたいなものじゃないか。えっ、まさか、

「使ったわよ。組織だって商売だからノンビリ教育の成果を待ってられないから、とにかく促成栽培を求めたのよね」

 それでも組織なりの出世だよな。

「そうなる。専属契約の売春婦から経営者サイドに立場が変わったし、売春料金の歩合も増えたし、あれこれ手当てが増えたもの」

 妙なところは会社っぽいな。あれっ、手当はわかるけど経営者サイドになったのなら売春はもうやる必要はないはずだけど。

「そうなってもチサはやっぱり商品だし、なにより男狂いの淫乱なのよ。どうせ男に満たしてもらうなら売春やった方がカネになるじゃない」

 どうにも感覚が、

「だからとにかく忙しかった。売春の方は男を満たすために手を抜けないし、女の促成栽培の性奴隷化も手間と時間がかかるじゃない。体がもう一つか二つぐらい欲しかったもの」

 商売繁盛で目出度いとは言いにくいな。

「でもあの時にヤクの本当の怖さがわかった」

 どういうこと。

「あれってエクスタシー系だったのかな。そこら辺はよくわからないけど、チサも使われて狂わされたけど、その時は自分がどうなってるかわからないじゃない。でもさ、使われた女を見て効果にゾッとさせられた」

 この辺の薬物にはさすがに詳しくないけど・・・そこは話すなよ。

「性奴隷化は手始めに女の極限状態に追い込むの。単純には果て狂う状態よ。これはヤクがあるから簡単よ。その状態の感覚を体に叩き込むのだけど、これを午前、午後、夜って出来たら三セットぐらいしたいかな。一週間ぐらい続けたらかなり効果はあるよ」

 聞くだけで強烈そうだけど、やってることは教育係じゃなくて調教師みたいなもので良さそうだ。

「それと並行して基本テクニックを教え込むのよ」

 基本テクニックってオモチャなのか。

「使いたがる客は多いのよ。それも前だけじゃなく後ろもね。それも入ればOKじゃなくて、前はもちろんだけど後ろだけでも演技じゃなく、ちゃんと本気で果てないといけないの。ここから始めないといけない女が多かったのよね」

 前はまだしも後ろはハードル高すぎだろ。入れるだけでも相当なものなのに、それに感じて果てるまでなんて・・・えっ、基本ってレズまで含むのか。

「当たり前でしょ。女が複数で買われた時にやらされる事が多いし、そういうリクエストも多いんだから」

 チサもレズプレイは出来るのか。

「奴隷屋敷の週末のショーの定番みたいなもの。キャットファイトで負けようものなら・・・」

 その先は勘弁してくれ。ディープ過ぎる世界に頭がクラクラする。新路線は当たったみたいで繁盛はしたみたいだけど、

「これも実際に働いてみてわかったようなものだけど、ああいう商売ってとにかく競争相手が多いのよね。だから過激な新路線を取るのだけど、やってることが売春じゃない。繁盛すればチクられるぐらいで良いみたい」

 またもや警察に踏み込まれたのだけど、

「今度は解放されて終わりにならなかった。チサは従業員の単なる売春婦でなく経営者サイドの教育係になってるし、ヤクだって使ってる。でもあっさり逮捕されたのは良かったかな」

 逃げたって逮捕されるだろうけど、

「チサの教育はとにかく恨まれたのよね。だって知っているのはチサがやられた方法だけじゃない。だからさ、下手に逃げて女どもに見つけられたりしたら総出でリンチされてた」

 殴る蹴るとか、

「それもあっただろうけど、やられた事をやり返されてたはずよ。あんなものエンドレスにやられたらチサでも耐え切れるものじゃない。最後はすべてを差し出す奴隷契約書にサインよ」

 また売られるとか、

「そこはどうだろ。性奴隷の売買は裏社会でもリスクが高いのよ。だからあの世界なりの信頼と信用が無いと難しい気がする」

 その辺は良くわからないけど、だったら、

「とりあえずチサが叩き込んだレズプレイで、レズに目覚めた女もいたから飽きるまでオモチャにされてたかな。そういう時の女は本当に容赦がないからトコトンなんてレベルじゃ済まないだろうね」

 それも辛そうだけど、

「他にありそうなものなら裏ビデオへの出演。奴隷だから考えうる限りのハードな内容になるはずよ。販売されてたらコウキも見れたかも」

 そんなもの見たくないよ。

「後は定番かな」

 売春させられるとか。

「そんなチマチマした小銭稼ぎよりあの女たちも手っ取り早くカネが欲しいだろうから、良くて目いっぱいの借金背負わされて奴隷ソープに監禁で飼い殺し。そっちのルートぐらいは持ってたはず。そこ上がりの女もいたからね」

 悪くて、

「海外ルートを持ってたら日本とおさらば」

 ゾッとする世界だ。そこから今に至る。

「まあそうなんだけど・・・」

 まだあるのかよ。