ツーリング日和19(第38話)次の計画

「それはそうと、またツーリングに行こうよ。引っ越しとかあって、ご無沙汰じゃない。夜も楽しいけど、昼も楽しまなくっちゃ」

 それは言えてる、さてどこに行くかだけど、

「温泉、温泉♪」

 ホテルニュー淡路か?

「あそこも行ってみたいけど秘湯の旅」

 秘湯の旅は興味が湧くけど、関西に適当なのはあったかな。パッと思いついたのは龍神温泉だけど、あんなところへどうやって行くつもりだ。たしか高野山から高野龍神スカイラインを使えば行けるはずだけど、高野山があるのは和歌山県だぞ。

「十津川温泉とか、川湯温泉とか、湯の峰温泉は」

 どこも龍神温泉とドッコイ、ドッコイぐらい遠い。遠いと言うより小型バイクじゃ厳しいと言うより無理だ。モトブロガーならネタのために行くだろうけど、神戸から下道じゃ無理がテンコモリだ。南港に行ってエライ目に遭ったのを忘れたのか。

「あれ大変だったね」

 あれはチサがインテックス大阪のイベントを見に行きたいと言い出したのから始まった。素直に電車にすれば良かったのだけど、バイクで行きたいと言い出したんだよ。ついでに海遊館とUSJもと言い出したけど、それは欲張りすぎだからインテックス大阪と海遊館に絞ったツーリングをやってみた。

 神戸から行くのなら阪神高速の湾岸線を使えばわかりやすいのだけど、そこは小型バイクの悲しさで走れない。

「無料湾岸も途中までしかないなんて」

 無料湾岸とは阪神高速湾岸線の側道だけど鳴尾浜で終わりなんだ。あれが全部あれば嬉しいけど、そうなったらそうなったで、阪神高速を走るクルマが減るからあそこで切れてる気がした。本当の理由は知らないけどね。

 だからって訳じゃないけど、チサを連れて迷子もゴメンだから、素直と言うか、愚直と言うか、芸が無かったけど国道四十三号で行ったんだよ。

「それでも海遊館の前までは順調だったよね」

 国道四十三号から海遊館に行くには国道百七十二号に入れば行けるのまでは調べてた。その国道百七十二号にも無事入れて海遊館も見えてきた。だけどここからがボクの下調べの手抜かりで、

「咲洲トンネルが原付不可だった」

 インテックス大阪は海遊館の沖合の咲洲にあるのだけど、咲洲に渡るには咲洲トンネルしかない。無いことはないけど、海遊館あたりから咲洲に渡るには、

「あんなに南から回り込まないといけないなんて・・・」

 海遊館から国道四十三号に戻り、今度は府道百七十三号に入り、

「新木津川大橋を見てビビった」

 新木津川大橋を渡るには三重のループを登らないといけないのだけど、また原付通行不可じゃないかとヒヤヒヤしたもの。無事渡れて南港通から咲洲に渡りインテックス大阪には行けたのだけど、

「チサのダックスちゃんには不便なところだった」

 ボクのモンキーにもだ。咲洲の目と鼻の先に海遊館はあるけど、咲洲トンネルが通れないからまた大回りしないといけないし、

「なんちゅう道路整備かと思ったもの」

 地理的に言うと海遊館の西の沖合に南から咲洲、夢洲、舞洲って並んでるのだけど咲洲と夢洲を結ぶ夢洲トンネルも原付不可、

「舞洲からUSJに行く此花大橋もそうじゃないの」

 海遊館からUSJもそうで湾岸線は論外だから大回りしないと着かないんだよ。これも地の人とか行き慣れた人は良いだろうけど、初見で来たものだから大変だった。都市部の道にはこれがあるし、

「帰りは渋滞もあってヘバッた」

 神戸から奈良とか和歌山に行こうとすれば大阪が立ち塞がるから、いくらチサのお願いでも行きたくない。

「チサも大阪はゴメンだ。だったら信州とか飛騨とかは? あの辺なら秘湯はたくさんあるはず」

 同じだろうが! 大阪は丹波の方から行けば避けられるだろうけど、今度は京都が待ってるんだぞ。京都を越えたって滋賀があるし、関ヶ原ぐらいから岐阜に入ってもまだ美濃で、飛騨や信州はまだ先だ。あんなところに一日で行こうとするのが無謀だろうが。

「そ、そうよね。だったら北海道とか東北」

 なおさらだろうが。

「そこはフェリーを使って」

 あのな、新日本海フェリーで北海道も東北も行けるけど、北海道なら舞鶴、東北なら敦賀まで行かないと乗れないだろうが。それも出航は夜の十時ぐらいのはずだ。舞鶴や敦賀に行くだけでも遠すぎるのに夜道なんて論外だ。

「コウキのモンキーもチサのダックスも暗いものね」

 LEDだから本当はそんなに暗くはないはずなのだけど、実感として明るくないものな。あれで街灯のない夜道は走りたくない。

「だったら九州は。あれなら神戸から別府も新門司も行けるじゃない」

 それはそうなんだけど長距離フェリーなんか乗ったことないし、九州だって往復だけで二泊必要になる。温泉に一泊するためにフェリーで二泊はバランスが悪いじゃないか。それより何より、そんなにホイホイと休めないよ。

「そうよね。そんなに休んで食べられなくなったらチサが現場復帰して」

 するな、何があってもさせるものか。日帰りじゃなくお泊りツーリングにしたい気持ちはわかるし、その時にフェリーを使いたいらしいのもわかるけど、今回の旅行は週末の一泊二日ぐらいしか無理だよ。

「だったらさ、マメイチしようよ」

 マメイチって小豆島一周だよな。それ良いかもしれない。フェリーもジェノバラインと大違いでかなり本格的なものみたいじゃないか。へぇ、小豆島にも温泉があるのか。

「小豆島なら三時間ぐらいで行けるし、一泊二日で十分のはずよ」

 小豆島はボクも行ったことないし、

「チサも初めて」

 見どころもかなりありそうだし、お土産物だって、

「オリーブオイルに、素麺に、お醤油に・・・」

 色々あるんだ。マメイチというぐらいだからシーサイドロードも多いはずだから、ツーリングとしても楽しめるはず。小豆島の温泉が秘湯になるかどうかは微妙だけど、

「それは秘湯の定義の問題よ。別に行くのが大変な温泉だけが秘湯じゃないはず。あまり知られていないと言うか、チサとコウキが知らなかったら余裕で秘湯よ」

 こりゃまた大胆な秘湯の定義だけど、チサがそれで満足ならOKだ。いや、小豆島ならちょうど良いはず。