ツーリング日和5(第20話)霧島ツーリング

「フェリーは何時なの」
「十七時発やから十六時やな」

 今日はお待ちかねの霧島ツーリング。まずは湧水町に出て、そこから国道二六八号を北上して、みやま霧島ロードに入るはずだけど、

「本当にこんなところを曲がるの」

 これって裏道?

「そこのとこ右に入るで」

 えっと思ったけど二車線か。なんか蛇行してるような、

「合ってるの」
「ほら見てみい、宮崎道が見えるやろ」

 なるほど側道みたいなものか。

「これ右や」

 右側に見えてるのが霧島のはずだから正解か。これがみやま霧島ロードって事だろうな。

「このまま道なりに走っていけば小林に着くわ。途中で県道四〇九号に入れたら、県道一号にぶつかるで」
「その県道四〇九号ってわかるの」
「行ってみなわからん」

 まあそうか。でも道は快調、広域農道は走り安いのよね。ずんずん走って行ったんだけど、

「ちょっとストップ」

 間違えたか。

「いや、そろそろのはずやから確認や」

 ナビ上ではそろそろだけど、そうだね次に右に曲がる道のはず。

「たぶんあれやろ」
「なんにも案内ないけど」
「曲がってみる」

 なんとなくヤバそうな道だけど、あっ、県道四〇九号ってなってるじゃない。コトリ、偉いぞ。

「ユッキーに褒められても嬉しないわ」
「じゃあ貶そうか」
「喧嘩売っとるんか!」

 またなんか狭いとこに入ったけどだいじょうぶかな。一応霧島に向かってるから方角は間違いじゃなさそうだけど、なんか二車線の道に出たけど、

「県道一号、えびのスカイラインのはずや」

 スカイラインと言うには畑の間の道だな。あっ、あった、霧島国立公園って書いてあるから大当たりだ。突然それっぽい道になったじゃない。ここを上がればえびの高原になる道だ。十四キロって出て来たよ。

 今回のロング・ツーリングで一番ツーリングっぽいじゃない。ここがえびの高原か。なんとなく高原って聞くだけでテンションが上がるじゃない。

「ユッキーはなんでもテンション上がるんやな」
「コトリは上がらないの」

 あそこの駐車場に入るみたいだけど、

「えびの高原の見どころ言うたら池巡りや」

 そうなんだ。これが不動池か。火山湖だろうけど水の色がコバルトだ。さて次は、えびのエコミュージアムセンターにバイクを置いて、

「白紫池と六観音御池に行くで」

 カケルの顔色が変わってるよ。

「歩きですか」
「ここからじゃ見えん。心配せんでも片道四十分もあったら着く」

 コトリが目指したのは二湖パノラマ展望台。この二つの池をまともに巡ったら二時間はかかるそうだから、ダイジェスト版にしたみたい。でもこれは見ておかないと絶対に損ね。戻ってきて県道一号を快走。

「ここや」

 大浪池登山口か。

「また歩きですか」
「ああ、さっきと同じぐらいや」

 なるほど! さっきの池をダイジェスト版にしたのはこっちを回るためか。こっちの道もなかなかね。溶岩石で作った歩道か。結構登るけど、へぇ、ちゃんと御手洗付きの休憩所まであるじゃない。この辺から開けてきて、登り詰めると、こ、これって、まさに、

「これを見んと、えびの高原に来た意味がない」

 その気持ちはわかる。韓国岳をバックに大浪池が見事にマッチしている。これは歩いたものに与えられるまさに御褒美。このままえびの高原を下り、霧島バードラインに。

「ツーリング動画でよくあるバードラインは、県道三十号でえびの市に行くやつやけど、さすがに全部は走られへん」

 ここでお昼。適当に見つけた蕎麦屋にしてた。そこから霧島東神社に。まず龍神伝説が残る御池を見て神社に。参道を登り詰めると小ぶりだけど立派な神社がある。お参りを済ませて、

「後は高原町に出て、都城を抜けて志布志や」

 ナビ上でだけど六十キロで一時間半ぐらいみたい。四時までに乗船だから、

「遅うなっても三時半ぐらいに着くやろ」

 無事乗船できて。

「おもしろかったね」
「ほいでもお土産はイマイチやったな」

 とりあえず薩摩黒豚と薩摩地鶏も送っといたけど、あんまり名産品って感じのものが目に付かなかったな。薩摩揚げを送るのは無理あるしな。それとえびの高原は素晴らしかったけど、

「そやな。さすが阿蘇はライダーの西の聖地やと思たわ」

 優劣を付けるものじゃないけど、どっちをもう一度走ってみたいと言われるとね。

「そやけど、こっちの方が良かったとこもあったで」
「それは間違いない」

 だってカケルを拾えたもの。

「拾いもんや」
「そうなってくれないと困るけどね」

 それは帰ってからのお楽しみ。明日からのお仕事頑張るぞ。

「いっつも思うんやが、フェリーが着いた日ぐらい休みにしようや」
「文句は言わない。休みは休み、仕事は仕事」
「へぇ~い」