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「昨夜はユッキーは何か見えたの?」
「見えかけたと思ったけど、わかんなくなっちゃった。どうも最近は見えにくいのよ」
「魔王の力の影響?」
「さすがに遠いと思うんだけど・・・」
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「そろそろアングマールは動くと思うの」
「コトリもそう思う」
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「昨日も二人であれこれ推測してたけど、どう考えてもアングマール軍の方が多いのよね」
「数では及ばない戦いになるのは間違いないと思う」
「だからもう負けられないのよ」
「負けるもんか」
「そうじゃなくて・・・」
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「これは全面戦争よ」
「わかってるよ」
「一度勝っても終んないの」
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「コトリはよく頑張ったけど、今の戦力じゃ決戦すら覚束ないじゃない」
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「でも負けられない」
「当たり前でしょ。しばらくは耐える戦いが必要だと思うわ」
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「勝つためには軍団を増やすのが必要だけど人が足りないのよ。だからパライア、レッサウ、マウサルム、ゼロン、ザラスの住民を引き取ろうと思うの」
「えっ」
「全部は無理だと思うけど最終的にはシャウスも引き取る。アングマールが動き出したら守り切れないと思うの。だったらエレギオンに引き取って兵にしてしまいたいの」
「でもどこに住んでもらうの」
「花の園」
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「あそこぐらいしか空いてるところはないし。もちろん足りなければ他のところも使う」
「いいの」
「うん、負ければ意味ないもの」
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「それとコトリにやってもらってる軍団編成だけど、四座の女神に専念してもらう」
「えっ、そんなことしたら学校が・・・」
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「目を瞑らないと仕方ないわ。もう教育じゃなく軍団兵養成施設にしないと間に合わない」
「・・・」
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「まるでアングマールね」
「真似しないと確実に負ける」
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「前に次の遠征軍をどっちが率いるかの話があったけど、やっぱりコトリに行ってもらう」
「イイよ、そのつもりだったし。今度はギタギタにしたんねん」
「そこなんだけどね」
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「言いたいことはわかるけど、具体的には」
「アングマールは都市を狙ってくるはずよ。ここで都市を守るのを戦略要素に入れると戦術的に動ける幅が狭くなるでしょ。これを最初から放棄を計算に入れて動けば、アングマール軍の隙を衝けるはず」
「そりゃ、そうだけど、ユッキーの移住計画が順調に進んでも、良くて半分、現実には三分の一か四分の一も移住したら上出来じゃない。住み慣れた故郷をそう簡単に離れられへんやろし、時間だってあんまりないし」
「そう混乱も起るし、残る住民も多いと思うけど、それも全部オトリにして戦うの」
「ちょっと、ユッキー」
「わたしも背負うものが多くなるってこと」
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「エレギオンへの移住計画は住民救助と人口増加が表向きだし、これも現実的には狙ってるけど、同時にこちらの弱点をわざと見せて誘い込む罠よ。コトリ、出来たら一個軍団ぐらいは叩き潰して欲しい。それもなるべく被害少なくね」
「そこまでするの」
「しなくてもアングマールに占領されたら同じ目に遭うわ。だったら利用する。後は任せた。魔王が来る前がチャンスと思う。来られたら苦しくなる」
コトリは第二軍団を率いてマウサルムからレッサウに進んだ。でも表向きはイルクウ将軍が率いることにして、派遣の目的もレッサウ方面からのエレギオンへの移住の警備としたの。コトリの狙いはラウレリアのアングマール軍。ここを率いる将軍はバルド。もともとは前のアングマール戦の時にイートスからラウレリアに進んだドーベル将軍の副将。ドーベル将軍はクラナリスでエレギオン駐留軍の総指揮を取ってる。
バルド将軍は猛将で残虐。ラウレリアで凄まじい虐殺をやっている。残虐なのはこのさい置いといて、どっちかと言うと猪突猛進型。こちらが中途半端に動くと引っかかってくれると読んでいた。後はどう料理するか。