-
「ユッキーさぁ、ちょっと思うんだけどさぁ」
「どうしたのコトリ」
「これって全面戦争の総力戦やんか」
「そうよ」
「そやけど、最後は魔王を倒さんとアカンやんか。人相手の戦争とちょっと違うところがあると思うんよ」
「そうねぇ、たぶん人じゃ魔王を倒せないと思うわ。たとえ人としての魔王を倒せても神には手が出せないし」
-
「ゲラスの時に危なかったやん。あん時に仮にコトリの人の部分が突き殺されていたら、コトリはどうなったのかなぁ」
「だいじょうぶよ、コトリはすぐには殺されずに魔王の御馳走にされるから」
「絶対ヤダ。そうじゃなくて、寿命じゃなくてアクシデントで突然死んだらどうなるの」
「やったことないから知らいけど、見える範囲で移れるんじゃない。宿主の人が死んだ瞬間に同時に神が死ぬわけじゃなさそうだもの」
-
「そうなると魔王は宿主を人が殺しても、悠々と近くの誰かに移ることになるよね」
「そうなるわ」
「そうだったら、コトリかユッキーが最後はケリを付けないとアカンやんか」
「わたしはヤダ」
「コトリもヤダ」
-
「コトリ、言っとくけど、あんなエロ野郎と組み合うなんて金輪際しないからね。触れるだけでも汚らわしいわ。だいたい触れただけで、あのエロ野郎が何するかわからないじゃないの」
「コトリだってイヤよ。コトリに押し付けたら絶対ノーだからね。いくらユッキーが怖い顔してもベーだよ。だいたい考えるのも汚らわしいんだから、あのクソ魔王のエロ・ジジイめ」
「そうよそうよ、あのエロ魔王は触っただけで絶対変態プレイするに決まってるわ。頭の中はそれしかないんだよ、きっと。エロ魔王は歩くチンポコ野郎よ。指だってチンポコで出来てるに決まってる」
「指だけじゃないわ。足だって、手だって、胴体だって、口だって全身チンポコで、脳みそだってチンポコ型してるに決まってる」
「脳みそだけやないって。肺だって、心臓だって、肝臓だってチンポコ型で、切り裂いたら変態が滲み出るだけよ」
「うんにゃ、血だってエロしか流れてへんし、声だってチンポコ型やんか」
-
「あんな全身エロだらけの変態チンポコ魔王に誰が触れたりするもんか!」
-
「でもユッキー、生き残るためには魔王は倒さなアカンねん」
「じゃあコトリやってよ」
「だからイヤだって」
-
「ちょっと考えてんけど、クソ魔王に触れずに倒せる方法を使たらどうやろ」
「触れずに神と戦うって言っても、せいぜい離れて組みあうぐらいでしょ。あんなエロ魔王に離れてでも組み合ったら、エロエロパワーに触れて体が穢れまくっちゃうからヤダ。だいたいよ、アレって女神の最後の楽しみじゃない。あんな楽しいことを、薄汚い所業に変えるなんて、女の天敵、いや処刑リストのダントツよ」
「そうよ、たんなる死刑じゃ飽き足らないわ」
-
「海の藻屑に変えてやる」
-
「ユッキーさぁ、普段は殆ど使わへんけど、女神の能力ってあれこれ出来るやんか」
「そうねぇ、水ぐらいならどこでも湧かせることは出来るし、火を付けたり消したり、部屋の温度を変えるのなんて簡単だし」
「ユッキー、出来るの?」
「料理の味だって調製できるし、温かいものは温かいままに、冷たいものは冷たいままにいつまでもしておけるし、もちろん腐らないようにも出来るものね」
「そんなんやってたの?」
「人を完全にコントロールするぐらいは朝飯前だし、大きな岩だって自由自在に加工したり運べるし」
「そんなんもユッキー、出来るの?」
「気候だってやろうと思えばかなりコントロールできるし」
「そこまで出来たっけ?」
「あら、知らなかったの。部屋のお掃除だって、ホウキとチリ取りを使って座ったままで出来るからラクチンじゃない。部屋のお片づけだって、ひょいと動かしたら全部片付いちゃうじゃない」
「それはラクそうね、今度やってみよ」
-
「ユッキー、どうして今まで教えてくれなかったのよ」
「だって知ってるって思ってたもの」
「だから主女神はコトリに教えてくれなかったし、あれはユッキーからコトリに伝えて欲しいからだったに決まってるやん」
「そうは言われなかったよ」
「主女神が言わなくたって、そうに決まってるやんか。二人しかおらへんねんし」
-
「だいぶ前に機織り二人でやってたやんか」
「あれはホントに大変だったわ」
「あれも女神の力で出来たんちゃうん」
「出来たよ。でもコトリが手織りにこだわるから、女神の力を使っちゃダメかなぁって思って」
「あのね。二百年ぐらい必死こいて織っててんで。ユッキーだって泣きながら『辛い、辛い』って愚痴をいっつもこぼしてたやんか。出来るって言ってくれたら、もっとラク出来てたのに」
-
「ホンマに相性悪い」
-
「あらコトリ、知らなかったの?」