アングマール戦記:ホウキとチリ取り(2)

 あれこれ考えたけど、ユッキーが言ってた小技は便利そうやからちょっと使ってみようかな。とりあえずホウキとチリ取りやってみよか。力の使い方はこんなもので、えっと、えっと、あれっ、アカンて、そんなんしたら、

    『ボキッ』
 しもた、力加減が難しいなぁ。チリ取りも練習だけ、
    『グシャ』
 微妙なもんやなぁ。でもどっちも壊してもたから明日は侍女に怒られるやろなぁ。でも、なんとなくわかった気がする。もうちょっと他のもので試してみるか。
    『バキッ』
 ありゃ、また壊れてもた。じゃあ、こっちは、
    『メキメキメキ、グシャ』
    『バリバリバリ、グシャ』
 どうにも力加減が難しいわ。部屋の中がグシャグシャになってもた。こりゃ、拙い。朝になってから侍女がやってきて、
    「次座の女神様、どういうおつもりですか。部屋中の物をこんなにしてしまって。そもそも女神の生活は国民のお手本。それをわかってやってらっしゃるのですか!」
    「ゴメン、でもこれ軍事研究なの」
    「それだったら部屋でやらないで下さい。ついでにいうと庭でもやらないで下さい」
 言う通りやと思た。この調子でやってたら、家ごと潰してしまいそうやもんね。演習場に行って練習しようっと。
    「これはこれは次座の女神様、御視察ですか」
    「う、うん。他にもちょっと・・・」
なんにしようかな。とりあえずあのデッカイ岩にしよう。あれやったら壊しても文句でえへんやろ。
    『ボロッ』
 岩って脆いなぁ。というかユッキーの言っていた岩を自由に加工できるって、この延長線上のものやろな。じゃあ運んだりはどうかだけど、
    『ヒュウッ』
 うわぁ、飛んでってもた。まずい、あそこまで飛んだら演習中のまん中やんか。
    『ドッカーン』
 四座の女神が飛んで来て、
    「次座の女神様、お戯れは、ほどほどにお願いします」
    「ゴメン」
 ユッキーのやつ、なんちゅう器用やねん。どうもコトリがやると操るというより、ぶっ壊すになってまうし、運ぶというより放り投げるになってまうやんか。他もやってみたけどエライ目に遭った。水を湧かせてみたら三十メートルぐらいの噴水みたいなものになってもてずぶ濡れになったし、食事の温度調節も少し熱くしようとしたら煮えたぎり、少し醒まそうと思ったら凍ってもた。

 部屋の温度調節もそうやった。灼熱と極寒の二段調節にしかならへんのよ。火をつけるのもそうで、危うくコトリが焼け死にそうになったもの。そやから人を自在にコントロールするとか、気候にまで手を出すのは今はまだやめてる。そんなんしたら、相手を殺しかねへんし、気候かってどうなってしまうのか想像するのも怖いぐらい。