坑道の完成が半年に迫った報告を受けてユッキーが、
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「シャウスへの乗り込みはシャラックに担当させる」
「パリフやないの?」
「パリフは陽動作戦で忙しいでしょ」
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「シャウスの坑道の完成が近づいている。そちがシャウスへの乗り込みを担当する」
「はっ」
「甘くないぞ、シャラック」
「心してかかります」
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「コトリ、なるべく口出しせずに見守ってあげてね。第三広場を自分で攻略できなかったのがシャラックの心の傷になってると思うから」
ただなんだけど、不確定要素もあるのよね。四座の女神が必死になって計測と計算を繰り返した坑道の方向。コトリもユッキーも一緒になって検算したけど、
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「八割ぐらいね」
ほんじゃあ、シャウスの城内には入れれば成功かと言えば、これまた不安要素が一杯ないのよね。とにかくシャウスのどこに出るのか、出てみないとわからない状態なの。それこそ池の底になんか出たら大変なことになっちゃうのよ。池の底は論外としても、敵の監視所の目の前なんて可能性もあるのよね。
無事にそれなりのところに出れたとしても、シャウスの城内がどうなってるかはサッパリわからないのよね。坑道から送り込める兵力は、時間さえかければ数は増やせるけど、そうそうノンビリしてられるとは思えないのよこれが。そりゃ、アングマール軍だって対応に動き出すだろうから、少数兵力で効果的に動き回る必要があるの。
シャラックは演習場に穴を掘らせて乗り込み作戦の訓練を重ねてた。坑道からの奇襲のネックは、一遍に兵士を繰り出せない点にあるとシャラックはまず見たみたい。早くに気が付かれるとワラワラと包囲されて押し返されちゃうからね。シャラックに聞いてみたんだけど、
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「想定として旧王宮が敵の本営と考えて作戦を組み立てています」
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「第一広場・第二広場と合わせて一個軍団規模ではないかと」
「シャウスには?」
「どう考えても五千ぐらいはいるはずです」
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「何人乗り込ませる予定」
「せいぜい一戦列程度が限界です」
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「おそらく五個大隊もそろわないうちに乱戦になる可能性があります」
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「やっぱり夜襲」
「御意」
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「決め手は」
「火を考えております」
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「上手く見つかるかどうかは運次第ね」
「管理がルーズであるのを期待しております」
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「後は臨機応変、私が戦闘に立って指揮を執ります」
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「ユッキー、シャラックは頑張ってるよ」
「物音対策は」
「エルルが抜かりなく」
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「坑道作戦の損害は?」
「五百人ぐらいだよ」
「結構出たね」
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「それでも道から攻めるよりマシか」
「これで奇襲が上手く行ったらね」
「上手くいっても、ハムノン高原争奪戦になったらまた死ぬね」
「そうだね、何千人も死ぬんだろうね」
「何やってんだろうね」
「ホントに」