パリフも苦戦してた。コトリが編み出した焼き討ち戦術も使ってたけど、アングマールもあれこれ防火対策やってたみたい。火炎弾はコトリがハマの時に導入したんだけど、今やアングマール軍も当たり前のように駆使するから、シャウスの道のような狭い所の攻防戦になると、双方とも燃やし合いの様相になってる。
火炎弾による火攻め合戦でも、エレギオン側は苦戦してる。やはり上から下に打ち下ろす方が有利なのよね。アングマールは第二広場に投石器を持ちこんだみたいで、メクラ撃ちだけど第三広場にも撃ちこんで来てる。もちろん火炎弾だけでなく石も放り込んで来るから大変。
この第二広場だけど第三広場から割と近いのよ。近いと言うのは直線距離で、道自体はクネクネ曲がって結構距離があるんだけど、直線距離が近いものだから投石器で撃ちこまれちゃうのよね。
その第二広場の入口だけど、最後のところだけど二百メートルぐらいは見渡せちゃうの。道はクネッてるから全部じゃないけどそれぐらいは見えちゃう感じ。さらに広場への入口は土塁になってるし、広場の入口までにも二ヶ所の土塁を築いてやがる。
パリフは土塁攻撃やってるけど、まさに奪ったり奪われたり状態。火炎弾がこの狭い道にバカスカ使われるから、土塁を奪っても背後に火炎弾を火の海にされて、奪い返されちゃう感じ。損害も確実に出てる。土塁を高くしたいところだけど、道幅は二メートルぐらいしかないし、左側は断崖。もちろん木柵なんか作れば火炎弾の餌食。とにかく火炎弾の応酬が激しいものだから、
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「ユッキー、油がまたいるよ」
「アングマールはどうやって調達してるのでしょうね」
「どうもラードみたいやけど」
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「パリフは根性で持って上がったわね」
「でも、お蔭で油の消費量が・・・」
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「パリフはなにを考えてる?」
「これはユッキーと相談せんとあかんねんけど」
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「敵の土塁の土も横穴の可能性はあるね」
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「次座の女神様、こちらへ」
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『ドスン、ドスン』
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「巨大投石機を持って上がるのはあきらめたの」
「あれはもう無理です」
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「巨大石弓で破壊できないの」
「なにぶん距離が」
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『ドスン、ドスン』
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「壊しても距離感はつかんでしまってるようです」
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「なんか考えてる?」
「はい、是非相談に乗ってもらいたいことが・・・」
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「坑道作戦は手間がかかりますが、直線距離にしたら五十メートルほどのはずです」
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「パリフ、掘るんだったら、シャウスまで掘っちゃおう」
「なるほど、でもそこまでになると準備がかなり必要になります」
「本国で準備を整えさせるから・・・」
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「コトリ、いきなりシャウスまで」
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「いきなりシャウスやから効果があるんよ」
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「ユッキー、第三広場から掘って行ったら完全な奇襲になると思うねん」
「なるほど。アングマールだっていきなりシャウスに乗り込まれるとは予想してないだろうしね」
「そうなんよ、敵だってシャウスの道にしか注目してないと思うねんよ。そのためには・・・」
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「でも、それだけの穴を掘るとなると大量の木材が必要になるわ」
「それやねんけど、巨大投石機の土台と城壁の上に作っている屋根を解体して調達する」
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「コトリも思い切ったね」
「どれかを見切らにゃ、しゃあないやん」
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「だから第三広場の洞窟からここまでトンネル掘るのね」
「コトリも見て来たけど、第三広場より下は、第二広場からはまず見えへんからね。これはパリフに掘らせ始めてる。そこから崖に捨てたら気づかれへんと思う」
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「穴掘りのプロを動員したいねん」
「プロって銅や鉄、石炭掘ってる坑夫のこと」
「そうやねん。軍団兵は陽動攻撃に使いたいから」
「いいわよ」
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「でも全員はダメよ」
「わかってるって。これは四座の女神とエルルに担当してもらう」
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「また高原移住者」
「他におらへんし」
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「とりあえず穴掘りなら役に立つレベルになってくれています」
そうそう、前線がシャウスの道に移ってから、世論工作はこまめに行ってる。現在の状況じゃ、高原移住者を前線に導入せざるを得ないから、彼らにいかに不満を抱かせないかも重要な仕事やねん。今回もエルルを使った理由もその一つ。
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「コトリ、エルルは工作部隊の指揮官だから次席士官に昇格ね」
「ユッキー、そこやねんけど上席士官にしてもた方がエエんちゃうやろか」
「わかるけど、ステップがいるし」
「二階級特進には理由がいるもんな」
戦列長は一戦列の十五個大隊を預かるぐらいのものやけど、弓隊や石弓隊、軽歩兵部隊、騎馬隊の指揮官も次席士官になるのよね。工作部隊の指揮官のエルルを上席士官にするか次席士官にするかは、工作部隊の格をどのあたりに位置づけるかのお話なの。
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「長期の全面戦争はキツイわ」
「でも、それに耐え抜かなきゃ、わたしもコトリも魔王の御馳走よ。下手すりゃ、エレギオンの女すべてが魔王の餌食になっちゃうんだから」