持ち帰った出土品の整理や分析に取りかかりたいところですが、まず取り組まされたのは番組の収録です。番組は前後編構成になっており、
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『幻のエレギオン文明の秘宝』
番組は特番で放映されましたが、ビックリするぐらいの大反響になりました。それまでウルトラ・マイナーで知る人でも殆ど知らないぐらいの分野でしたが、あれだけの発見があればエレギオンの実在の証明を越えて、エレギオン文明の全体像を一挙に解明できる期待だと思っています。
他の局からも特集番組を組みたいの話もあり、さらに講演依頼も続々って感じで押し寄せてきます。それでも、とにかく学会報告だけはしておかないといけませんから、必死になって発掘レポート程度ですが、なんとか発表に漕ぎ着けました。
学会発表もこれまでエレギオン関係の発表を行っても地味すぎて、ポスター発表とか、その他大勢の中での数こなしみたいな扱いでしたが、学会に行ったらビックリ仰天。特別講演になって大会場で一時間枠が取ってありました。これはボクのところにも責任があって、電話をかけても講演依頼で話し中が殆どで、他にもマスコミ取材がテンコモリ。とにかくボクと相本君の二人しかいない講座ですから、学会からの通知を綺麗に見落としていたのです。
会場に入るとビッシリ満員で、通路まで人が溢れていました。そのうえマスコミ取材まで入っています。いつもの三分発表のつもりで準備していたので、大わらわの状態になりましたが、とにかく出土物が物凄いので、その画像だけで満足してもらえたようです。ホント余分の画像を持って行っておいて助かりました。
学会発表に続いて校内でも発表を行ったのですが、これもまたテンコモリの大盛況。ボクは一夜にして時の人になり、エレギオン学の最高権威みたいな地位に押し上げられています。エレギオン学はクレイエールの寄付講座で、実質的に発掘プロジェクトの準備室みたいなものでしたが、エレギオンにこれだけ注目が集まると扱いが変わってきます。
とりあえず研究員の希望者が海外からも押し寄せます。これはボクにも理由はわかるところがあって、今からでも出土品の研究を始めれば余裕で博士号ぐらいは取れる成果を望めるからです。学生だって出入りする者がウナギ昇りです。とはいえ、現状は事務員を置くのも事欠く有様で相本君が頑張ってくれてるのですが、
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「教授、さすがに二人ではさばききれません」
予算は大学からのものにクレイエールのものが加わる形になったので、ようやく事務員が置け、さらに研究員も数人は雇える体制になりました。ボクは講義に、講演会に、テレビ出演に引っ張り回される状態でしたが、突如と言う感じで人気が急上昇したのが相本君です。エレギオン特番では相本君をアイドル的に扱った編集でしたが、相本君を良く知っているボクの奥さんでさえ特番を見て、
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「あの人は本当に相本さん。いや、相本さんなのは間違いないけど・・・」
この新しいスーツと髪型、さらに以前の結婚式では悲惨な結果になった化粧も良く映えて、実に素敵な女性に仕上がりました。髪型は相本君も気に入ったみたいで、ひっつめ頭からテレビの時の髪型のままでいます。スーツ姿も気にいったみたいで、ついに、ついに、あのヨレヨレのジャージ姿から変わってくれたのです。
そうやって変わってくれた相本君は愛らしくて綺麗なだけではなく、颯爽として格好の良いの要素も加わっています。それだけの魅力が加わると、講演会依頼も相本君に要請されるものが増え、講義だってボクがするより相本君がする方が人気があります。ある時にボクが代わりに講義を担当したら、教室に入った瞬間に、
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「エッ〜」
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『以前は二人っきりの講座だったんですよね』
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『エレギオン学の女神』
『港都大の女神』
そうそう小島専務にもお世話になったお礼をしないといけないのと思っているのですが、発掘プロジェクト中に溜まっていた仕事をこなすのと、新規事業の責任者に任命されたとかで大変お忙しいようで、なかなか会う機会を作ってもらえていません。そういえば解散式の時に、
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「エレギオン文明の解明に今後も御協力頂きたい」
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「それはあなた方のお仕事です。私がやると解明にはなりません。でも、どうしてもの時にはご相談ください」
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「専務、あの歌をまた聞かせて下さい」
「ええ、またあのエレギオンの地に一緒に立つことが出来れば」