ここは専務室。
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「シノブちゃんどうだった」
「ざっとぐらいしかわかんなかったけど」
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「ヴァチカンとナチスの結びつきは有名だよね」
「そうみたいね。ナチスの戦犯の結構な数が南米に逃げてるものね」
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「アンブロシアーノ銀行は」
「凄いね、これこそイタリアって感じもした」
「悪い方の意味でね」
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「どこから話をしようかな。とりあえずミケーレ・シンドーナてのがいるんだけど、米軍占領下のイタリアでラッキー・ルチアーノと組んで物資の横流しで一財産築いた上でこれのマネー・ロンダリングを手がけてるの」
「へえ、ルチアーノと組んでたんだ」
「ジョバンニ・バッティスタ・モンティニ大司教とも親交を結ぶんだけど、この大司教が後のパウロ六世ってところ」
「ズブズブだね」
「さらにアメリカにルチアーノと渡ってアメリカン・マフィアや金融機関とも関係を構築するの。イタリアに舞い戻ってからはルチアーノの幹部のジョー・アドニスと組んでヘロイン密輸やマネーロンダリングを行って、マフィアの五大ファミリーのマネーロンダリング担当みたいな地位に着いてるわ」
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「それでね、シンドーナはヴァチカン銀行総裁のマルチンクス大司教とも親交を結ぶのよ」
「全部ロッジP2つながりね」
「そういうこと。ヴァチカン銀行はシンドーナの銀行であるプリバータ・フィナンツァリア銀行の大株主になり、そこでマネーロンダリングと不正融資に使ってたみたい」
シンドーナはこれで表舞台から去るのですが、アンブロシアーノ銀行のカルビィもヴァチカン銀行総裁のマルチンクス大司教も健在で、カルビィはシンドーナの代役をアンブロシアーノ銀行で展開する事になります。つまりはマフィアのマネーロンダリングと不正融資です。
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「なるほど、そういう流れでヨハネ・パウロ一世の事件に結びつくんだ」
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「マルチンスク大司教は次のヨハネ・パウロ二世に上手く取りいったみたいだね」
「そうなのよ、マルチンスクとカルビィのコンビはヨハネ・パウロ二世の庇護下で再び我が世の春ってところ」
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「それでさぁ、最後に残ったマルチンスク大司教はどうなったの」
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「ロッジP2はどうなったの」
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「シノブちゃんどっちだと思う」
「やっぱりマルチンスク大司教かな」
「コトリも基本的には賛成。P2代表のリーチオ・ジェッリも怪しそうだけど、感触として単なるコマね」
「式神使ったのかなぁ」
「たぶんね。じゃなきゃ、マフィア相手に大変でしょ」
「マフィアの中にも使ったかもね」
「適任と言えば適任だし」
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「シノブちゃんご苦労様」
「お役に立ちましたか」
「十分よ。やはりイスカリオテのユダは生きてるね」
「抱かれてみますか」
「会ってみんとわからん部分は残るけど、タイプとは言いにくいな」
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「デイオダルスとは違うと」
「コトリは陰険な男は好みじゃないの」
「でもそれだけですか」
「やっぱりバレてた」
「マグダラのマリアでもされますか」
「どうせなら、そっちじゃなけりゃワクワクしないし」
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「クソエロ魔王、デイオダレス、そしてユダ。続く時は続くものね。これを人生と言えるかどうかはわかんないけど、長過ぎる時間のヒマつぶしぐらいにはなりそう」