結団式と壮行会を済ませエレギオンに向かいますがとにかく遠い。飛行機を乗り継ぎ、乗り継ぎし、さらに空港からバスを乗り継ぎ、最後は先遣部隊からの迎えのクルマでやっと村に設けている支援拠点に到着。日本を出てから四十時間は越えてるはずです。小島専務はクレイエールの重役ですからビジネスクラスの利用も出来たのですが、
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『隊長が特別扱いでは示しがつかない』
それでも翌日には発掘現場に移動です。現地本部と発掘現場の往復のために二台のランクルまで用意されていて驚きました。ただ道は相当悪くて三時間ほどかかってようやく到着です。道は悪いと言うレベルじゃなく、途中から荒野を走り抜ける感じになるのですが、とにかく揺れる揺れる。踏ん張ってないと天井やドアに頭をぶつけます。小島専務は時差ボケにのたうち回りながらも、歯を食いしばって頑張られていました。というか、ウッカリ話をすれば舌を噛みそうなぐらいの凄い揺れだったのもあります。
発掘現場には現地本部が設営されています。これがなかなかのもので、テント村も出来てましたが、小さいですがプレハブまで建てられていました。さらに驚いたことに自家発電機まで設置され、電気機器の使用も可能になっています。トイレも簡易式ですがちゃんとあります。宿舎割は男連中はテントで女性はプレハブに割り当てられてます。これも小島専務が、
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『隊長が特別扱いでは示しがつかない』
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「教授、予備調査の時のことを思うと夢のような体制ですね」
「まったくだ、ここまで用意してくれているとは思いもしなかった」
小島専務は長旅とさらにトドメの支援拠点からの移動で倒れるんじゃないかと心配していましたが、現地本部に着いてから一気にパワーアップした感じです。そうそうボクや相本君は小島専務を知ってますから良かったのですが、他の隊員やテレビクルーは専務と聞いて目を丸くしていました。歓迎会後に小島専務は外に出て周囲を見渡して、
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「ついに来てしまったんだ・・・」
美しいですが荘厳な調べです。小島専務の声は大地に響き渡り、天空に舞い踊る感じがします。これは聞く者を厳粛な気持ちにさせます。隊員の誰もが頭を垂れ、中には跪く者もいます。歌い終わると何かを高らかに宣告しています。聞いた事のない言葉でしたが、
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「小島専務、今の歌は?」
「女神賛歌の一つです。祭祀の時に必ず歌われてました」
「最後に宣告されたのは?」
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「発掘するのですから、ちょっとした挨拶をしたのです。そうですねぇ、地鎮祭とか起工式の祝詞みたいなもので、安全祈願ぐらいと思って頂いたら宜しいかと」
そこから発掘計画の最終打ち合わせになりました。要はどの地点を掘るかです。どこを掘るかが発掘の成否を大きく左右するというか、それがすべてみたいなところがあります。小島専務は、
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「今回の目標は女神の神殿です。古代エレギオンは神政国家、女神が祭祀だけでなく国政の中心でした。女神の神殿こそがエレギオンの中枢部であり、心臓部になるからです」
「それはどこにあるとお考えですか」
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「ここが神殿の丘になります。ここには本神殿がありました。まずここを掘ります」
「何かあるのですか」
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「シュメールのアラッタから、このエレギオンの地に来た時に最初に建てられた神殿です。後に麓に大神殿が作られましたが、春秋の大祭の時には本神殿が中心となりました。数々の祭祀が行われましたが、もっとも注目されたのが奉納品の献上です」
「奉納品の献上?」
「そうです。大祭は神への感謝のために行われ、その時にエレギオンの職人たちは自らが最高と考える作品を提出します。これを審査して、もっとも優れた物が奉納品として選ばれます。これに選ばれると言うのはエレギオンの職人にとって最高の栄誉で、丘の上まで輿に乗せられて運ばれ、主女神がこれを受け取ります」
「その奉納品はどうなるのですか」
「次の大祭まで栄誉を称えるために展示され、その後に本神殿に収納されます」
「では、それが残っているとか」
「わかりません、それはこれから掘って確かめることになります」
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「もし全部残っていたら、どれぐらいあるのですか」
「途中で整理したり、盗まれたりもありましたが、千個は下らないかと」
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「小島専務は間違いなく女神と思う」
「私もです教授。日本に居た時に、専務はまるでエレギオンの歴史にすべて立ち会っていた様だとの話がありましたが、もう確信して良い気がします」
「財宝に関しては略奪されている可能性も高いとは思うが、神殿が見つかるだけでも大発見だよ」
「でも財宝もあればイイですね」
もちろんボクも着てますし、小島専務も着用しています。当たり前ですが相本君も着こんでいるのですが、なぜか映える気がするのです。あの何を着ても似合わない相本君が表現は悪いですが『着こなしている』と素直に感じます。これはボクだけでなく他の隊員からも、
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「相本准教授、よくお似合いです」
「あら、そう、お世辞でも嬉しいわ」
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『相本准教授、よくお似合いです』
『そうですか』
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「天城教授、ちょっと相談があるのですが」
「なにかな」
「これから発掘の途中で解説とかを随時撮らせて頂きたいのですか」
「それは構わないが」
「その時に相本准教授をメイン気味にさせて欲しいのです」
ボクだって、テレビ番組に出たいですし、こういう場合は教授であるボクがメインでなければおかしいのですが、快く了承しました。ひょっとしたら、あの相本君に春が巡って来るかもしれないのです。それぐらいは相本君のためだったら喜んで譲ります。もっともボクの出番も気を使ってくれていて、
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「その代り、天城教授には全体の解説でしっかり登場して頂きます」
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「スポンサーサイドの私が表に立ったらおかしくなる」