ツーリング日和11(第27話)二回戦へ

 他にも妥協した点は多々ある。エルが演じたのは薄幸の遊女だけど、水揚げされるぐらいだから未通女、つまりは初体験なのよ。男を知らない女が初めて男を迎え入れるコスプレが必要だったけど、

「そない言うけど、怖さと緊張でプルプル震える様子なんか処女そのもやった。まるでエルの処女を抱かせてもうてる気になってもたもんな」

 やったぁ。そう感じてもらえたんだ。だけどさ、いくらコスプレしていても、愛撫してくれているのは丈太郎さんでしょ。どうしたって感じちゃうのを止められないもの。見ず知らずの初対面の男との初体験にしては感じすぎだ。

 だってさ、肌を合わせただけで嬉しいしかないんだもの。愛撫なんて始まれば、エルはそれだけで天国に行きそうなぐらい感じだもの。そうなってしまっているのを、見せないようにするのがどれだけ大変だったか。

 でもさぁ、どれだけ頑張ってもエルのあそこを愛撫されたら限界を超えたんだよね。これは丈太郎さんに経験させてもらったけど、エルの一番感じるところを剥かれちゃうのよ。あれがどれだけ感じるか。半分以上はイッてたもの。

 それぐらい物凄いから大喜びするしかないじゃない。丈太郎さんがその気だったら完全にイカされてた。だから演出を変えざるを得なくなっちゃったのよね。とりあえず処女の水揚げなのに、無理やり感じさせられてしまった女の悲しみにしてみた。

 これも無理があるのは百も承知だ。初体験でそこまで感じる女が存在するかどうか疑問だもの。それにしても感じすぎてたと思う。あれって、押さえつけようとすると余計に感度が上がってしまうってわかったもの。

「そやったんか。エルは感じてるはずやのに、まるでそうなってしまったのを、悲しみ、ひたすら耐え忍んでいるようにしか見えんかった」

 だったら大成功ね。けどそうするのもすぐに限界が来ちゃったのよね。その次は挿入になるのだけど、本来は狒々親父に穢し尽くされた末に女にされてしまうのを演じる予定だったのよ。

 だけど丈太郎さんのが入って来たら、そんな演技なんて続けられるはずもないとわかったのよね。そこで演出を大幅に変更した。

「その通りやった。エルに最後にグッと入れた瞬間にエルの処女をついにって感じしかせんかった。昨夜も感動物やったけど、今夜は感動なんてレベルやあらへんかった」

 そこまでになってたのなら嬉しいな。だけどそれも限界だった。だってだよ、入っているのは丈太郎さんだもの。こんなものどうしろと言うのよ。元のプランなら、マグロで男が果てるのをひたすら耐え抜くだけど、机上の空案も良いとこだった。

 そこで女にされた時に、これまた奇跡が起こる設定に変更した。気が付くと自分を貫いているのが愛しの丈太郎さんに代わってしまっているだ。この演出変更も無理がテンコモリだったけど現実に合わせるにはそれしかなかった。

 演出変更はそれだけで終わらなかった。だってたまんないぐらい良いんだもの。あんなもの誰が我慢できるものか。だから初体験なのに感じてしまうだけでなくイッてしまう女にした。そういう女はエロ小説ならいるけど、現実にはまずいないと思う。でも他に演じようがないじゃない。

「そんなん言うけど、本当に処女なのに、まだ知るはずもないイクまでさせられたようにしか見えへんかったで」

 でもコスプレもここまでが限界だった。もうエルの体も心もどうしようもなかった。あれだけイッちゃうとね。あんなになってしまっているのに、何かしろと言うのが無理。

「そやけど、終わった後のすすり泣きはドキドキさせられたからな」

 あれも大変だった。今夜もフィニッシュを合わせたくて懸命だったのだけど、昨夜同様エルが先行しちゃったんだよ。いや、昨夜よりかなり先行してた。そこから合わせるのに踏ん張った。あれは限界をとっくに越えた踏ん張りだったけど、踏ん張って、踏ん張って、ついに合わせたんだ。

 正確に言うと、あれだけ踏ん張ったけど、エルの方が少しだけ早かった。悔しいけど、エルが先にイキ、続いて丈太郎さんが果てた。それはともかく、そんな状態だから他の事なんか考える余地さえなかったんだ。

 それでもなんとかほぼ同時にフィニッシュ出来た満足感に浸っていたのだけど、狂乱の熱中が少しだけ醒めた時になんとか思いだした。そこから辛うじて処女を失った女の涙を演出できた。

「あの涙ってそれだけに思えんかったけど」

 やっぱりそう見えたか。だってさ、買われて女にされてしまった悲しみだけにどうしても出来なくて、やっと結ばれた丈太郎さんへの愛になってしまったんだ。そう、愛する男に初めてを捧げることが出来た女の涙が半分ぐらい混じってる。

「今夜のエルは最初から最後までガチの処女やったとしか思えんかった。心が震えるぐらい感動した」

 コスプレであれやるのは初めてだっけど、丈太郎さんにそこまで思ってもらえたのなら嬉しいな。

「ちょっと待ちいな。エルの処女を奪ったんはわてなんか、それとも狒々親父なんか。それよりエルを追いつめたんは・・・」

 ああそれね、処女だった女を無理やり感じさせ、ついに貫いて女にさせたのが狒々親父だ。だって薄幸の遊女の水揚げの相手は醜悪な男じゃないと絵にならないじゃない。そんな男が涎を流しながら、処女を弄り、最後は女にしてしまうのが遊女の水揚げだもの。

「それやったら、なんでさっき、わてを浮気者と言うたんや」

 あんなもの許されるわけないじゃない。今夜は状況が状況だから許してあげるけど、今度やったら、ちょん切ってやる。

「そないな無茶な、不公平やんか」

 シャラップ。とにかく許せるものか。全部が全部成功した訳じゃないけど、これぐらい出来たらコスプレとしてエルは満足だ。丈太郎さんだって、あれ、丈太郎さん、どうしたの。

「いや、その・・・」

 なるほどね。男って処女が好きなんだよ。相手が処女ってだけで興奮の度合いの桁が上がるらしいのよね。男って済めば醒める時間が来るのだけど、隣には処女を奪った女がいることになる。

 これも当たり前だけど、一糸まとわぬ素っ裸。それだけじゃない、事が済んでもロストバージンの余韻が残っていて、すすり泣いてたり、足で軽くあそこを隠す程度にしかしていない。さらに言えばロストバージンの証もある。

 そんなグッタリしている姿が強い刺激になり、すぐに再点火する男は決して珍しいとは言えないそう。だから処女相手に二回戦どころか、三回戦まで挑んでくる男がいるってこと。女にしたら迷惑なだけなんだけどね。

 言うまでもないけどすべての男が再点火するわけじゃないだろうし、再点火してもすべての男が二回戦に及ぶわけじゃないとは思う。だけどエルはそういう男に、四回戦まで応じさせられたのもの。

 でもさぁ、でもさぁ、エルは処女じゃない。元カレを置いといても、丈太郎さん相手だって今夜が二度目じゃない。さっきはエルの処女演技に喜んではくれたけど、ホントのエルはバカスカやられまくっている女だよ。

「それは理屈でわかっとるけど、さっきのエルはどう見ても・・・」

 だからあれはあくまでも処女の演技だけ。

「いや、あれだけで佐渡島で掘り出された金をすべてあわせたより、よっぽど価値があるエルの処女そのものや」

 大げさだよ。実際に経験を重ねるとわかるんだけど、あれも男と女ではかなり違うはず。男がどう考えてるなんか死ぬまで最後のところはわかんないけど、女は入れられるって行為が何回やっても強烈なんだよね。

 男で入れられるって経験があるのは、それこそゲイとかの世界になるし、女になると逆立ちしたって本当の意味での入れる経験をやりようがない。これは男と女の構造の根本的な違いだもの。

 入れられる経験しか出来ないのが女だし、たしかに毎度強烈な体験にはなるけど、だからと言ってあれが嫌いなわけじゃない。馴染んでしまえば女だって欲しくなるし、欲しくなるからホストを買う女もいる。

 エルはホストを買うなんて想像すら出来ないけど、愛する男から求められるのは素直に嬉しい。やっぱりさぁ、入れて欲しいのは愛する男だけ、入れられて嬉しくて感じれるのも愛する男だけ。もう一度聞くけど本当にエルに処女を感じた?

「あれ以上の処女はこの世に存在せえへん」

 正直なところを言うと、今夜はエルも欲しいのよ。さっきのに不満があったわけじゃないよ。さっきはさっきでエルを堪能させてくれたもの。でもね、エルもコスプレで燃えすぎたのかもしれない。あれだけ感じたのに、体の奥でさらに燃えたいってのがあるのよ。

 こういうのって、女から言い難いじゃない。まあ求められたって応じたくない時もあるけど、今夜は求めて欲しいし、求められたらウエルカム状態。幸いなことにエルは処女じゃないし、二回戦ぐらいは余裕で経験がある。逆にそこがどうしても引け目になるのだけど、

「エルはどこをどう取っても最高の女や」

 ありがと。今日は素直に受け取る。昨夜にエルは丈太郎さんの女にしてもらったから、この体はすべて丈太郎さんのものだし、丈太郎さんのためだけにあるんだもの。欲しいなら二回戦もエルには喜びにしかならないの。もうたまんない・・・欲しい。

「エル・・・」

 愛する人に愛されてるって最高。エルのすべてを愛して、エルは丈太郎さんに愛してもらうために生まれてきて、ここにいるんだもの。