ツーリング日和7(第6話)初体験

 コウとの待望のツーリングだけど五時出発ってなによ。フェリーは九時半出航じゃない。

「出航は九時半だけど、その一時間前には乗船手続きを済ませなくちゃいけなんだよ。神戸から敦賀まで走り続けて二時間半はかかるからね」

 九時半出航なら八時半までに乗船手続きを済まさないといけないのか。これも八時半ギリギリに敦賀到着じゃ無理があるから八時ぐらいに到着したいになるよね。電車じゃないから余裕を見ると片道三時間と見て五時出発か。

 なるほど、フェリーの九時半出航ってそういうシステムなんだ。でも、そうかもしれない。出航時刻には乗客やクルマ、もちろんバイクも乗船終えてないといけないものね。だから、それこそ日の出とともに神戸を出発。

 休憩も挟みながら阪神高速、名神、北陸道を快走だ。時刻も早いから空いていて快適だよ。敦賀のフェリーターミナルに着いたら乗船手続きを済ませて、バイクが並んでいるところで待機。立派なフェリーだな。

 誘導員の指示に従ってボーディング・ブリッジを渡り船内に。へぇ、こうやってバイクは固定するのか。荷物を持って三階に上がったんだけど、内装が立派なのに驚いた。これって豪華客船みたいじゃない。乗ったことないけどね。

 フロントで部屋のカードキーをもらったんだけど、なんと三階から五階まで吹き抜けになってるんだよね。それに船なのにエレベーターまである。

「ユリはフェリーが初めてだったね」

 そうなんだよ。ツーリング・サークルで四国とか九州のツーリングがあったんだけど、あの時は例のエッセンドルフ騒動で行けてない。ひたすら感心しながら五階にエレベーターで上がって、廊下を通って部屋に行ったんだけど、カーペットまで敷いてあって完全にホテルだよ。

 部屋に入ると・・・これは広い。もう完全にホテルそのもの。ツインのベッドに、ソファがあり、専用デッキまであるじゃない。こっちはトイレとバスか。まずは荷物を片付けたんだけど、こりゃテンション上がる。

 そこからはレストランにランチに行ったり、オープンデッキで海を見たり、カフェでお茶したりして優雅な船旅を満喫と言いたいけどさすがに長いよ。だって、朝から船に乗って明日の朝まであるんだもの。

 フェリーから見える夕日を楽しんだら夕食。お昼と同じところで、そうだねファミレスぐらいの感じだけど、バイキングなのが楽しいかな。でも日が暮れ来るとドキドキしてきた。だって、だってだもの。

「ユリ、お風呂はどうする」

 部屋にもバスはあるけど、まだ恥しすぎる。フェリーの大浴場に行って、いつもより丹念に体を洗った。あるはず、今夜はあるはず。これで無い方がおかしいでしょ。そう思えば思うほど胸が高鳴るし、手だって震えてる。

 大浴場から部屋に帰る時には足まで震えてる。部屋に入って、次に出てくるときはユリは経験していることになるものね。嫌じゃないし、その相手はコウしかいないと思ってる。求められること自体は嬉しいのだけど、初めての怖さは別物だ。

 覚悟を決めて部屋に入った。コウは浴衣に着替えて待っていてくれてる。あのベッドだよね。あそこでユリは初体験をする。痛いのよね、初めては痛いってのは聞かされてる。コウは立ち上がりユリの目を見ながら、

「ユリ、愛してる」

 ユリもそう。もう後戻りは出来ないし、する気もない。コウはユリをしっかり抱きしめてくれた。そしたらますます胸の高まりは激しくなる。そんなユリに優しい口づけがあって、

「ユリ、欲しい」
「初めてなの。優しくしてね」

 コウが少し驚いてた。ユリの歳なら少し遅いかな。この歳での初体験は・・・お母ちゃんがいなくて良かった。こういう知識は誰よりも詳しすぎる。つうか聞かされた。今の平均は十九歳だとか。

「もちろんだ」

 ついにベッドに。コウは優しくユリの服を脱がせてくれた。そして始まった。恥しいけど、そうやって愛し合うのが男と女。ユリのすべてが愛されていった。これも最初は声を出すのを我慢してたけど、すぐに我慢できなくなった。こんなもの我慢できないよ。

「ユリ、ユリ」

 コウも興奮してる。コウの指が、唇がユリを興奮させる。コウがユリの足を割って覆いかぶさってくる、ついについに、コウが来る。

「あっ」

 来た。ユリの扉にコウが来た。そして進ん来る。コウの腰が動くたびにユリに進んでくる。こんなの耐えられない。でも我慢しないと、これが初体験。でも、でも、これは、あまりにも、

「痛い!」
「だいじょうぶ」

 コウは優しい。ユリが痛がるたびに待ってくれる。そしてユリが落ち着くとまた進んでくる。どこまで、ユリが受け入れたら良いの。

「行くよ」
「あっ」

 鋭い痛みが走った。ついに、ついに、ユリは受け入れた。後は無我夢中だった。コウの激しい動きに反応するしかなかった。どれだけ時間が経ったかわからないけど、コウの動きが一段と激しくなり終わった。

 ユリはもうグッタリだ。でもちゃんとコウの相手を最後まで出来た。これが男と女の究極の愛の行為。ユリは変わった。コウによって変えてもらった。変わったのは下半身の疼きでよくわかる。

「ユリ、もう離さないよ」

 ユリだって離すものか。ユリの体はコウの物、コウの体もユリの物。気が付いたら汗だく。うん、アレってこんなに運動量が必要って初めて知った。シーツもびしょ濡れ状態だったから、

「こっちのベッドで寝よう」

 さっきのベッドにはユリの初体験の証が見えた。それを隠してもう一つのベッドでコウの腕枕で眠らせてもらった。初体験は聞いてた通りに痛かったけど、それでも途轍もない満足感にも満たされてる。

 初体験はコウとの距離を一切なくした。距離どころか、完全に密着状態になっただけでなく、コウをユリのすべてで満足させることもできた。コウは逞しい。体のすべてが逞しい。

「ユリの肌は綺麗だね」

 ユリは色白。それも、どうも日焼けしにくい体質だ。でもこの肌は白人女の白さじゃない。お母ちゃん譲りの日本人の肌だ。

「ユリは、どこを取っても本当に綺麗だよ」

 嬉しい。コウがユリのすべてを気に入ってくれてる。もちろんユリもコウのすべてを受け入れても大好きだ。今日はまだ痛くて、辛かったけど、きっときっと、そうじゃなくなるはず。その見本が家でエロ本を書いている。

「死ぬまで一緒だよ」
「当たり前だ。ユリ以外を誰も愛せない」

 女になってボンヤリ考えてたのだけど、男と女も体の相性はあるそう。コウとの相性だけど、悪くない気がする。そりゃ、ロスト・ヴァージンは痛かったけど、最後の方は単に痛いだけのものじゃない、何かがあった気がする。

 だって、痛かったけど、もうゴメンだって気になれないもの。さすがに今すぐ欲しいまでは思わないけど、また求められたら受け入れる以外に考えられないよ。受け入れているうちに、ユリだってもっと感じるはず。

 そうやって感じ方が高まって行くうちに、どこかでイクかもしれない。きゃぁ、恥しい。コウに抱かれてるままでイッっちゃうの。それもその姿を見られちゃうとか。でも、そうなれたら嬉しいかも。

「愛してる」

 嬉しい。ユリの体を愛するのはコウだけだ。そう思える相手が出るまでやらなかったもの。コウこそユリの唯一の男だ。

「そうなってるよ。ユリが卒業したら婚約から結婚まで一直線だ」」

 その初夜だ。とりあえず今夜は寝よう。ユリの記念すべき夜を噛みしめよう。