純情ラプソディ:第58話 女同士の盛り上がるお話

 今日は忘年会。いつもの通り達也が手配した店で、

「カンパ~イ」

 今日は中華だよ。ヒロコは大学に入るまで中華と言えば、焼飯とか、餃子とか、天津飯ぐらいだと思い込んでたのよね。後は御馳走として酢豚とか。言ってみれば餃子の王将の世界。豚まんもあるか、ラーメンは中華料理になるのかな。

 ところが神戸は日本の中華料理の中心地のひとつ。そりゃ三大中華街の一つがあるものね。達也に教えてもらったけど、横浜は広東料理がメインで、神戸は北京料理が中心だって言うけど違いは良くわからない。要するに餃子の王将とは違う中華があるぐらい。

 今日の店はハンター坂にあるけど、一階からずらっと並んでいるお店。一階は飲茶みたいだけど、ヒロコたちは二階に。いかにも中華風って感じの飾りつけと調度が見るからに本格的なお店。


 梅園先輩の今年を総括する挨拶があって、後は歓談と言うか雑談。さすが達也が選んだ店。盛り付けもオシャレで綺麗だし、なにより美味しい。話はやはり今年の振り返りになって、

「ヒナも強くなったよ」

 これも忘れちゃいけない。雛野先輩も完全に一皮剥けた気がする。

「そりゃ、剥けるでしょ。毎晩必ず剥かれてるし」
「もう剥かれまくりで大変」

 まったく、どこの皮を剥く話をしてるんだよ。

「あれ、ヒロコは剥かれないの?」
「早瀬君の怠慢じゃない」
「ボクはちゃんと剥いてます」

 達也も何をムキになってるのだか。そんなものエビチリの皮を剥きながらする話じゃないでしょうが。剥かれる話はともかく、雛野先輩も実力者だけど、なぜか男性選手に弱いところがあったんだよね。思わぬところで格下に取りこぼすことが多かったもの。原因は札幌杯の時にわかったけど、

「今のヒナは男に乗ったって平気だよ。むしろ好きじゃないかな」
「そっちよりバックの方がイイ」
「ヒロコもそうみたいで・・・」

 達也は余計な口を挟まない。先輩たちの話にウカウカ乗ってたら、アレの実況中継までやらされるんだから。すぐに話が脱線するから困るんだけど、男性恐怖症と言うか、男に対する引け目、負い目が無くなったからで良いと思ってる。

「ヒロコが強くなったのは」
「札幌で女になったから」

 どうしてそっちに原因を求めるのよ。

「相性はどう?」

 アレって二人の相性が重要らしいのよね。それぐらい繊細なところがあるのも最近分かってきた気がする。でもって、達也との相性は良さそうな気がする。他と較べようがないけど、最近は確実に感じてるもの。最初はアレって感じだったけど、それが段々と強くなって、ついに、ついに、

『うっ』

 あの時は本当に全身に電流が走った。いわゆる子宮から赤い矢が脳天を突き破る感じって、こうだと思ったもの。でも初体験の時並みに恥ずかしたった。どう考えたって、物凄い姿を達也に見られちゃったんだもの。

「そんなことないよ。それを男は大喜びするの」

 その通りだった。達也はヒロコがそうなるのを見て余計に興奮したものね。それでも、あの瞬間を迎える時は今でも恥しいのが残ってるかな。あの瞬間を達也に悟られないように必死になっちゃうもの。

「そんなものバレるに決まってるじゃない」
「どんな状態になってると思ってるのよ」

 たしかに。あれ以上の密着状態はやりたくてもやれないものね。

「でもどっちでも男は喜ぶよ」
「だよね。豪快に絶叫しようが、耐え抜いてこらえきれずにビクンとなるのも、喜んでくれるものね」

 そうなのか。でもホントはどっちが良いのかな。

「どっちがじゃなくて、そうなるの。ヒロコはまだ感じ方が足りないから、どっちがなんて余裕があるだけ」
「そうだよ。頭が真っ白になるほど感じたら、自分がどうなってるかなんて覚えていないよ」

 そんなに! ヒロコもそこまで行くのかな。でもヒロコだって変わって来てるんだよ。前は一回ああなったら、これ以上は無いとしか思えなかったけど、次の波が押し寄せてきて、ウソッと思ってたら信じられなかった。

「最初より次の方が良かったでしょ」
「あれがドンドン積み重なって行くのよ」

 たしかに。ちょっと前に三回目になった時にヒロコも半狂乱になりそうだったもの。あれのまだ先があるとか、

「あるに決まってるじゃない」
「女はエンドレスよ」
「ヒロコも楽しみにしています」

 そこに片岡君が、

「倉科さんも変わりましたね、梅園先輩やヒナと一歩も引けを取らなくなりました」

 しまった、乗せられた。あの二人が悪い。でもね、そういう片岡君はどうなのよ。雛野先輩と同棲してるじゃない。知ってるんだぞ。

「ヒナを誰にも渡さず守り抜くためです」
「ヒナのすべては岳のもの」

 岳って片岡君の名前だよ。誰にも渡さないためって片岡君が言うともっともらしいけど、本当の目的はもっと頑張るつもりでしょうが。知ってるんだぞ。毎晩頑張ってる片岡君のところには及びませんよ~だ。

「毎晩じゃないよ」
「ヒナは優しいから休養日も作ってくれてるもの」

 なにが休養日だ、それは単なる生理だ。それも聞いてるんだから。まったくどんだけやってることやら。でもヒロコも達也と同棲したいよな。そうすればヒロコの体だって、もっと、もっと、達也を喜ばせるように変われるはず。

 ヒロコが感じるのを達也がどれだけ喜んでくれるかはわかったもの。だったらもっと感じて達也を喜ばせたい。ヒロコも感じて嬉しいものね。二人とも嬉しいなら、もっともっと感じるべきだし、そのためにはもっと経験を増やすのが一番のはず。

 それにしても同棲したらどれだけやってるんだろう。平日は授業があるから夜だけだろうけど、休みの日には朝からとか。やるよね、やらなきゃおかしいじゃない。でもさぁ、でもさぁ、そんなに実際にやれるのかなぁ。

「そうね、男には限界があるかも。出しちゃうと、次までインターバルが必要よ」
「インターバルがあっても無限じゃないものね」
「でも、一回目より二回目の時の方が長くない?」
「あるある、だから・・・」

 先輩のところもそんな感じなのか。じゃあ、女は無限だとか。

「体力の続く限りと言いたいけど、さすがに痛くなる」
「そこはさぁ、最初の時が肝心で・・・」
「そうは言うけど一刻も早く欲しいじゃない」

 前戯も嫌いじゃないけど、入ってから感じるのを覚えちゃうと、やっぱりそうなるのか。

「ピルは考えた」
「考えてる、考えてる。やっぱりゴム無しの方がダイレクトじゃない。生理休暇もなくなるし」

 その手もあるのか。でもおカネかかるよね。ここは二人のために達也にねだってみようか。達也もきっと賛成してくれるはず。それにピルだったら、ダイレクトにヒロコの中に来てくれるのも魅力的だ。

「ヒロコもそう思うよね」
「でも産婦人科に行くのに抵抗あるのがネックだよね」

 あっ、そこもあるのか。薬局で買えたらイイのにな。そしたら突然梅園先輩が真面目腐った顔になり、

「はいはい、ちょっと真面目な話にします。すぐ猥談に走るのがカルタ会の数少ない欠点です」

 そしたら全員で梅園先輩に向かって、

「お前が言うな!」