聖地には聖地の理由がある at 奈良

10/8付CB記事より、

奈良・産科医の割増賃金訴訟、県が控訴- 原告「意味理解できない」

 奈良県奈良病院の産科医2人が県を相手取り、2006、07年分の宿日直勤務(当直勤務)の時間外割増賃金などの支払いを求めた訴訟で、県は8日までに、割増賃金と付加金(制裁金)を合わせて約1930万円などの支払いを命じた奈良地裁の判決を不服として、大阪高裁に控訴した。

 9月24日に奈良地裁が下した一審判決では、当直勤務が労働基準法上の「労働時間」に当たるとして、県に割増賃金などの支払いを命じる一方、宅直勤務(オンコール)の未払い分については、医師が病院の「指揮監督下にあったとは認められない」として、原告側の主張を退けた。

 この訴訟をめぐっては、今年2月、最高裁が県の上告を不受理としたため、県に約1500万円の当直勤務の割増賃金(04、05年分)を支払うことを命じた判決が既に確定しているが、原告側は06年以降の未払い分に関する訴訟を進めている。

 原告側の代理人の弁護士はキャリアブレインの取材に対し、「最高裁で既に決着が付いている問題で、控訴する意味が理解できない」と主張。一方、県側は「継続中の案件なので、具体的なコメントは差し控えたい」としている。【敦賀陽平】

記事にある通りなのですが、2004年・2005年の時間外訴訟は奈良県最高裁まで頑張り上告不受理で確定しています。この訴訟自体が労務関係の専門家に言わせても、

    何故に訴訟にした?
    訴訟にになったとしても何故に和解しなかった?
    判決を求めるにしても何故に上告までした?
これぐらいの「やれば必敗」レベルの訴訟とされます。現実もオンコール部分で辛うじてお目こぼしを勝ち取ったものの、内容的には奈良県側はほぼボロチョンです。つうか、そうならないと大問題の訴訟であったと見ても良いと考えています。


訴訟、とくに民事は法廷の当事者同士の争いとされ、大原則は他に波及しないものと聞いた事があります。ですから奈良県が「違う訴訟」として控訴してもその点では問題ないのでしょうが、あえて指摘しなくとも

  1. 原告も被告も同じ
  2. 年度こそ違うものの争っている内容も同じ
  3. 先に決着した訴訟は不受理とは言え最高裁まで判断を仰いだもの
それと、これも言うまでもないですが、いくら大原則はそうであっても、先例は訴訟では重視されます。そりゃそうで、そのたびに判断があんまりグルグル変わられても困る部分があります。先例となる判決も、
  1. その判決内容にかなり無理がある
  2. 時代が変わって新たな判断を仰ぐ必要がある
  3. 下級審の先例では納得がいかないので上級審で判断を仰ぎたい
これぐらいならともかく、直近の判決があり、争点の構図も極めて類似しているものの新たな判断を仰ぐのは正直なところクビを傾げます。原告側代理人が、
    最高裁で既に決着が付いている問題で、控訴する意味が理解できない
こう言いたいのは良く判ります。奈良側の見解も見様によっては不思議なもので、
    継続中の案件なので、具体的なコメントは差し控えたい
これはこれで立派な理由ではありますが、控訴したのは奈良県であり、2004・2005年分の類似訴訟で上告してまで確定したものを、あえて控訴するからには重大な決意と控訴理由があるはずです。ごくごく常識的には、それでも訴訟を覆す理由構成があるからこそ控訴したと見たいところです。まさか散々失笑を買った、
  • 条例が労基法より優先する
  • 労基法など守ったら医療が出来ない
  • 震災のような非常時には働くのだから、平時の奈良でも同じように働かせて何が悪い

こういう理由が「今度こそ認めらるはずだ!」だけで訴訟を継続されるんでしょうか。私が奈良県控訴のニュースを聞いて思い浮かべているのは、
    スラップ訴訟
wikipediaのスラップ訴訟の定義を引用しておくと、

経済的に力のある団体が原告となり、対抗勢力を被告として恫喝的に行うことが多い。被告となった反対勢力は法廷準備費用・時間的拘束等の負担を強いられるため、仮に原告が敗訴しても、主目的となるいやがらせは達成されることになる。

今回の奈良県控訴がこれに当てはまるかどうかは何とも言えませんが、私の見る限り当てはまっている部分は多そうに感じます。これに連動して思い浮かんでいるフレーズがあります。語呂で合わせたので文法的に正しくないところがあるのは御容赦頂きたいのですが、

実態もそうでないことせめて願っておきます。