経済財政諮問会議は内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)に基づいて設置されています。そこの「所掌事務等」にそのお仕事が定められています。
第十九条
経済財政諮問会議(以下この目において「会議」という。)は、次に掲げる事務をつかさどる。
ここは第19条1項の部分ですが、お仕事として
- 調査審議すること
- 大臣に意見を述べること
ここでは意見を述べるのほかに
-
答申を行なう
第二十一条
議長は、内閣総理大臣をもって充てる。
首相が議長を行なって、首相が賛成した答申は首相の意見と同様となり、強い影響力を持つことになります。首相の考えを助けるために、国費でもって公式に設置されたブレイン機関とでも解釈すればよいでしょうか。ただ私はどう条文を読んでも経済財政諮問会議は、首相への助言機関にすぎないと見ます。擬似的に「首相の意見 ≒ 経済諮問会議」であっても、「経済諮問会議の答申 = 閣議決定」でありません。正式にそうであれば大変な事になります。
実質は「首相の意見 ≒ 経済諮問会議」から「経済諮問会議の答申 = 閣議決定」になり巨大な影響力を揮いますが、こうであっても公式には経済諮問会議の答申を参考にした首相の意見を閣議決定しているとなっているはずです。ここで閣議決定は重いものですが、閣議決定は一度決まれば二度と変更できないものではありません。経済にしろ、財政にしろ短期間で状況は変わりますから、それに応じて必要な閣議変更は行なわれます。
閣議決定はその内閣及び首相がこれを守り通したい時には強力な根拠にはなりますが、とくにそれ以前の政権担当者が決めた閣議決定なら、必要に応じて案外簡単に変更される事があります。現在はアメリカ発の金融恐慌からの深刻な世界同時不況が世界覆いつつあるときですから、ほんの半年前に較べても状況は一変しているとしても良いかと考えます。
考えようによっては未曾有の状況ですから、これに対して日本としても打てる手を出来るだけ速やかに講じる必要があり、この講じるときに障害となるものは閣議決定であっても変更が必要なものは変更しなければなりません。それが経済諮問会議の答申を受けた首相提案の閣議決定であってもです。どんな政策を行うかの問題は今日は論じません。これだけの大問題を私如きで手軽に論じるには難しすぎるからです。
ただ経済諮問会議の答申を受けた首相提案の閣議決定の変更には経済諮問会議の了承は不要のはずです。閣議を越える権能は経済諮問会議に与えられておらず、そもそも行政として閣議を越える権能はないと存じます。つまりその時の政権担当者が必要と判断すれば、経済諮問会議の意向などお構い無しに変更できるかと存じます。
もちろん実際は与党である自民党の最有力の金主であり支持者を集めた経済諮問会議ですから、裏ではゴチャゴチャとあるのは当然でしょうが、表向きはそう見せてはならないのは常識以前のお話です。少なくとも政治家であるなら、そういう表と裏は完全に使い分けて当たり前ですし、政府与党の有力者であるならなおさらだと考えます。
ここに12/10付の神戸新聞記事があります。Web記事が見つからなかったので、手打ちで引用します。記事の内容は中川秀直元幹事長のインタビュー記事です。
内閣支持率の急落を受け、自民党内で麻生太郎首相に距離を置く動きが顕在化してきた。中川秀直元幹事長が社会保障に関する議員連盟の旗上げを表明、「ポスト麻生」の母体になるとの見方も広がる。混迷する政局にどう対応するのか。中川元幹事長に聞いた。
−麻生政権に対する評価から聞きたい。
「改革するのか、後退するのか。説明しないから玉虫色の印象を与える。首相が最初から矢面に立たず、閣僚が説明を尽くすべきだ。全党的な議論も少なすぎる。」
−財政再建を目指した経済運営の基本方針「骨太の方針」を見直そうとしている。
「骨太の方針を見直していいのかどうかの解釈権は、政府の経済財政諮問会議にある。中心メンバーの与謝野馨経済財政担当相がどこを見直すのか説明する責任がある」
−首相への提言は。
「多くの中堅、若手が参加する党国家戦略本部を動かし、大いに議論すべきだ。首相が発信した国の出先機関廃止・縮小方針も具体的に練り上げなければならない」
−内閣改造で刷新を図るべきだとの声がある。
「福田内閣の改造では支持率は戻らなかったが、もし踏み切るなら『改革派』を全面に出すべきだ。今の閣僚の取り組みは玉虫色だ」
−自民党内の「反麻生」の動きをどうみるか。
「これだけ内閣、党の支持率が落ち『何かメッセージを発信しなければいけない。黙っていられない』という思いで行動しているのだろう。倒閣運動とは思わない」
−自らの対応は。
「衆院で自民党から17人以上が造反したら(参院で否決された法案を再可決できる)三分のニ以上にならない。野党が造反を促すかもしれないが、私はそんな政局第一主義に乗る男ではない」
−離党や新党結成の可能性はあるか。
「私が党を離れるとか、離れないとかは小さな話だ」
−大規模な政界再編を想定しているか。
「与党だけで再編はできない。われわれは逆風にさらされているが、民主党にはとんでもない順風が吹いている。民主党は衆院選での民意を見てから(再編の是非を)考えようという空気ではないか。相手が動かなければ再編にならない」
−いつ判断するか。
「衆院選で出た民意を見て判断する。自民党がまったくの反改革政党になり、民意が『それでは困る』ということになれば、党内で運動を始めなければならない。相手側を含めて政界全体がひっくり返るような状況が必要になったときは、その瞬間の民意で判断する」
中川氏のインタビューでの返答は現在の政治状況を反映して、非常にきな臭いものがありますが、これも総選挙をにらんだ政治でしょう。また中川氏は小泉路線の堅持こそが政権浮揚のカギと考えているようですが、これも政治家としての姿勢ですから問題とはなりません。
非常に気になると言うか違和感のある発言は、
これ凄い発言とは思いませんか。国権の最高機関の一つである政府が方針を見直しするのに、経済財政諮問会議の許可を得なければならいとの趣旨と私は受け取ります。中川氏は「解釈権」の言葉を使っていますから、類似のものとして内閣(政府)が国会に提出する新規法案を、閣議決定に先立って現行法の見地から問題がないかを審査する内閣法制局と同等のものであると考えればよいでしょうか。中川氏といえば自民党内でも屈指の実力者と聞いています。その中川氏の発言であれば、政府与党の経済財政諮問会議に対する姿勢と言うか、位置付けが非常によく分かると考えます。内閣法制局が法案の審査を行うように、経済・財政の方針も経済財政諮問会議の『承認』がないと内閣といえども勝手に変更してはならないと考えればよいようです。経済・財政の方針が経済財政諮問会議の決定に基づいて行われ、その変更も『承認』が必要となれば、政府の経済・財政のお仕事は経済財政諮問会議の下請けに過ぎなくなります。
こういう発言がサラサラと中川氏の口から出るという事は、実質は完全にそうなっており、その実質を隠す事の必要性はもうないと認識していると判断します。そうなれば、経済・財政に対する要望は政府・与党に行なう意味合いは低くなります。経済財政諮問会議の実権を握っているのは財界人であり、財界人に直接要望することが最も効果的と言うことです。
今さら驚く事もないと言われそうですが、これまでは陰で実質的に影響力を及ぼしていたのが、表で堂々と支配力があることを示し、これを与党有力者が平然と認める政治の世界に私は素直に驚きます。これは政治の進化でしょうか、中川氏はインタビューの中で何度も「改革」の言葉を使っておられましたから、「改革」されて得られた成果が経済財政諮問会議と受け取らなければならないと言う事かもしれません。