整腸剤の適用と査定のお話

ビオフェルミン(及び同効薬)と言う薬剤があります。もう一つビオフェルミンR(及び同効薬)と言う薬剤があります。どう違うかですが、ただのビオフェルミンは下痢や便秘時の腸内環境の改善に用いるのに対し、ビオフェルミンRは抗生剤下痢に使います。

成人領域と小児領域の差なんですが、抗生剤服用時に起こるポピュラーな副作用に違いがあります。成人領域で多いのは胃炎を起こすです。そのため黙って胃薬が付いている処方はよく見られます。一方で小児領域では下痢です。そのため抗生剤処方の時にはビオフェルミンRを私はセットのように付けます。ここまではごくごくポピュラーなお話です。

成人領域は良く知りませんし、他府県の動向も良く知りませんが、ビオフェルミンRの適用はチトうるさい事があります。抗生剤ならなんでもOKにならないのです。一番判り安いのはFOMです。これにはビオフェルミンRの適用はありません。この辺は常識レベルのお話です。間違うと査定されても文句は言えません。

整腸剤関連の話題として付け加えておくと、周期的に妙に査定が厳しくなります。薬価的には大した金額ではなく、1個々々は査定されても経営に響くような代物ではないのですが、とくに小児科領域では浅い代わりに芋づる式に査定範囲がかなり広くなる代物です。つまりは返戻の量がテンコモリみたいなものになります。チリも積もれば山となる式でしょうか。


ここからが私の油断と言うか、勉強不足と言うか、怠慢だったのですが、ビオフェルミンRの適用にキノロンとペネムは入ってなかったのです。ビックリしたビックリしたです。能書の適用は、

下記抗生物質、化学療法剤投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善

確かにありません。では実際に投与したら査定はどうかです。TFLXについては現在のところ査定は聞いていないがメーカー筋のお話です。一方でTBPM-PIについては3割ぐらいは査定されているらしいです(これもまたメーカー筋)。最近の査定の厳格化方針はうるさいほどですから、対策をしておくにこした事はありません。こんなところで根こそぎ査定を喰らったらたまりません。

もう少し情報を集めると、TFLXはビオフェルミンでもビオフェルミンRでも下痢の予防効果は乏しいというより「無い」とメーカー筋はしています。一方でTBPM-PIについてはビオフェルミンRは効果は認めるが、ビオフェルミンでは効果が無いです。説明するまでもありませんが、TFLXもTBPM-PIも正直なところ下痢しやすい抗生剤です。そうそうFRPMも含まれますからお忘れなく。

こういう条件下で副作用対策を行い、さらに査定を免れる工夫が必要になります。


なかなか難しいパズルなんですが、もう一つピースを当てはめて考えると対策は可能そうです。泥縄式の知識ですがミヤBMを使うです。ビオフェルミン及びビオフェルミンRがとくにTFLXに無効なのは成分である乳酸菌が殺されてしまうからだです。ところがミヤBMの方がビオフェルミンRより比較的殺され難いのでまだしも有用な可能性があるです。

これはミヤBMの主成分である酪酸菌が芽胞形成菌であるためであるとされています。もっともミヤBMの説明には抗生剤使用の時は耐性乳酸菌製剤(ビオフェルミンR)の方が有用とは書いてはあります。ただビオフェルミンRの風の噂説では死菌になっても「ちゃんと効く」なんてのもあります。効能的な最終評価はともかく査定の問題も考えないといけませんから、ミヤBMをピースとして活用するのは手です。とりあえずのところ、ペネムキノロンに対してはミヤBMを使っておこうです。

ではではミヤBMを使った時の病名処理問題があります。現状的には病名無しでもほぼOKの情報もありますが、査定が厳しくなれば「病名なし」の判断が行なわれる可能性もこの先を考えるとありえます。そうなるとミヤBMに対する病名を付けておくほうが無難になります。一番無難なのは「消化不良症」ぐらいでしょうか。面倒ですが、そこまで対応しておけばまず問題は起こらないと考えます。

いっその事、すべてミヤBMに切り替えてしまう方がスッキリするとも言えますが、うちは紙カルテなので病名を書かなくて済む魅力は捨てがたいですし、ビオフェルミン製薬はあれでも神戸の地場産業ですから使っておきたいぐらいの心情です。


そうそう、査定の問題は現時点で大きな話題になっているわけではありません。転ばぬ先の杖程度の問題で、この先に懸念されそうな部分に大きな手間をかけずに予め対策しておこうぐらいのお話です。そこの点は誤解なきようにお願いします。