内科系・外科系のイメージのお話

ネタのフリは3/20付msn産経より、

 日本泌尿器科学会が今年創立100年を迎えたのを機に、同学会理事長の本間之夫東大教授らが行ったアンケートで、市民の約半数が「泌尿器科は内科」と誤解していることが分かった。泌尿器科に関する大規模な意識調査は初めて。

これに関連する話題が某所であったのですが、泌尿器科が内科系と思われているとはチョット驚きました。小児科医にとって泌尿器科はバリバリの外科系です。とくに新生児領域の先天奇形では芸術的な外科であり、その後も尿路・性器関連の問題でコンサルトするときには正真正銘の外科として考えます。昔に小児腫瘍に少しだけ関っていましたが、CCSKとかMRTKとかの腎腫瘍系の手術になれば泌尿器科が手術の主役です。

医療関係者以外の方々が内科系のイメージがあるのは、やはり性病関係のイメージが強いからでしょうか。前立腺大関連のイメージも強いからかもしれません。まあ、それより何をやっているのかのストレートなイメージが湧き難いからかもしれません。


その関連のお話ですが、診療所の標榜のセットに「泌尿器科・皮膚科」と言うのは古典的にはよくあります。あれはもともと「皮膚泌尿器科」であったなんて話もあるそうです。伝説のようなお話ですが、大昔は泌尿器科も皮膚科も同じ医局であり、発展解消して二つに分かれたなんて説もあります。さらにさらにそれこそ明治の頃に遡る話で、日本に泌尿器科を持ち込んだのは皮膚科の医師で、これを海外で学び持ち込んだからみたいな話もあるそうです。

この辺の昔話は皮膚科とか泌尿器科の先生が詳しいかと思いますから、良ければアドバイス頂きたいところです。これも説に過ぎませんが、皮膚科と泌尿器科がある程度セットが一般的であったのはやはり性病対策のためであり、性病も梅毒対策のためであったとも書かれているものがあります。梅毒は性器にも異常が現れますが、同時に皮膚病変もともないます。

梅毒治療の観点を中心に据えると、皮膚科も泌尿器科もセットであるほうが治療として都合が良かったぐらいの感じでしょうか。真偽については確認できていませんのでその点は宜しくお願いします。


泌尿器科の話はとりあえずこれぐらいにして、話は皮膚科に飛びます。皮膚科は内科系なのか外科系なのかです。これについては私も詰まりそうになりました。これまでの勤務病院では形成外科と皮膚科がセットである、もしくは形成外科のみある(もしくは両方ない)ところでしたから、皮膚科のお仕事のイメージは内科系が私も強かったからです。ただ良く考えなくとも皮膚科も手術はあります。

手術があると言う事は外科系に分類されなければなりません。とはいえバリバリの外科系であるかと言われれば、私のイメージ的には「どうなんだろう」は正直なところあります(皮膚科の先生方ゴメンナサイ)。ここについてはある方が皮膚科の手術領域を特化させたものが形成外科のイメージではないかの説を立てられていました。

かつては皮膚科が当然の様の守備範囲としていた手術領域の多くの部分を、形成外科が分離して持って行ってしまい(イメージとしてです)、本家であるはずの皮膚科は内科領域の分野の比重が強くなったとの説です。あくまでも私の個人的な経験ですが、皮膚科と形成外科がある病院では、たまたまかもしれませんが、手術の話になると皮膚科医は形成外科に振る印象はありました。皮膚科でも出来るのだが、なんとなく形成外科にみたいな空気だったぐらいです。



内科系・外科系の分類(とくに医療者以外)は非常に大雑把には、腹をかっさばいて切った貼ったをするのが外科系であり、それをしないのが内科系ぐらいと感じられているんじゃないかと思っています。ただしこれは病院でのお話になって、診療所レベルになると外科系といえども切った貼ったの仕事は小さくなると見ています。大きな切った貼ったをするには手術室はもちろんの事、入院施設も必要になります。

私の子供の頃には外科系開業なら手術室から入院設備まで持ったスタイルはありましたが、そういうスタイルは殆んどなくなってしまったと思います。内科系でも入院施設をもった開業はあったのですが、今でもそういうスタイルが残っているのは産科ぐらいじゃないでしょうか。病床規制の問題もありますが、経営としても到底ペイしない感覚です。

ちょっと偏った見方になりますが、青壮年期の方々が診療科に対するイメージを培うのはどこだろうにつながってきます。地域柄にもよりますが、現物としては診療所での印象が大きく、他にはテレビドラマ(小説・マンガも含む)とかになりそうな気はします。私も医学部に入り医師になるまではそんな感じであったと白状しておきます。

サブスペが細かくなっていますが、「外科」と名の付く診療科の「外科イメージ」はテレビドラマの影響もあり確固たるものがあると思っています。診療所で切った貼った仕事が小さくなっても揺るぎなく外科です。一方で内科は現物として一番実感がある診療科ですから、病院であろうと診療所であろうと内科イメージです。

イメージがぐらつき安いのは「外科」と書いていない外科系診療科になるような気がします。上に挙げた泌尿器科、皮膚科、さらに眼科もそうです。ひょっとしたら婦人科、耳鼻咽喉科あたりも怪しくなっている気がします。あんまりテレビドラマの素材として取り上げられる事も少ないですし、現物の診療所に受診しても「切った貼った」のイメージが湧き難いと思うからです。

たとえば眼科は白内障手術の存在が周知はされていますが、一方でレーシックを手術と見てくれるかは微妙な気がしますし、もっと広くには近視の眼鏡(コンタクト)を作るところのイメージが強い様にも感じています。言い方は悪いですが、内科系の診療科が手術もしているイメージと言えば良いでしょうか(眼科の先生方ゴメンナサイ)。



話を泌尿器科の外科イメージに戻します。泌尿器科は受診する機会はまず少ないと思います。また受診してもあんまり広言したくない診療科のイメージが未だにあるように感じています。さらにテレビドラマで取り上げられる事も殆んどなさそうな気もします。さらに診療所に実際に受診しても、外科系の「切った貼った」のイメージは高くなるとも思えません。

外科系のイメージが泌尿器科にあった方が良いか悪いかはよくわかりませんが、どうしても外科系のイメージが欲しいのなら即物的な方法として診療科に「外科」を引っ付けるです。つまり泌尿器科ではなく泌尿器外科にするです。

とは言うものの伝統ある泌尿器科の名前をイメージ作りのためだけに安易に変更したくないの意見も当然出てくると思います。そうであれば広報啓蒙になりますが、泌尿器科学会がポスターを作ったぐらいでは難しいと思います。劇的に外科系イメージを植えつけるには・・・泌尿器学会にも文才のある医師はいるはずですから、泌尿器科医がメインの医療系小説ないしマンガでベストセラーになることです。

これがさらに映画化でヒットし、テレビドラマでも大当たりになってくれれば泌尿器科のイメージは大きく変わると思います。でもこっちも難しそうです。やはり「腎移植は泌尿器科の仕事である」ぐらいを地道に啓蒙するのが良いかもしれません。

実際のところ当の泌尿器科医がどう感じているかですが、うろうろドクター様が泌尿器科は外科系です。(一応) として感想を書かれています。

泌尿器科の良いところは、腎臓から尿管、膀胱や前立腺なら、
診断から薬物治療、そして手術まで、自分の科ですべてを扱える所です。

その中で、どの分野に重点を置くかは、個々の医師や医局の方針によって異なります。
つまり、内科系泌尿器科医と、外科系泌尿器科医がいる訳です。(笑)
(透析を扱うかどうかも、大きな境目かなと…)

泌尿器科医とは腎尿路系の総合スペシャリストであり、外科でもあるが内科的要素も濃厚に含まれているとしています。そのため泌尿器科医によって外科に重心が強い者、逆に内科に重心が強い者はおり、内科系と思われても致し方ない部分もありそうとしています。それでも根本は外科系である、もしくはイメージとして外科系と思われて欲しいぐらいに解釈すれば宜しいでしょうか。



内科系・外科系のイメージなんですが、小児科はまず間違い無く内科系イメージのはずだと思っています。たぶんそうだと思っています。それでも外傷・熱傷が来ます。外傷も擦りむいた程度のものなら良いんですが、受診するぐらいなので結構パックリで、縫わないと止血しないの類です。そういうのはたぶん、開業小児科のイメージとして内科系イメージだけではなく、子供の総合科的なイメージもあるんだろうと勝手に思っています。

ではでは、これから増えるとされる本物の総合医はどんなイメージを持たれるんでしょうか。診療所レベルの受診選択は診療科のイメージで行われますから、小児科の成人版みたいな感じでしょうか。いや総合医は小児科も守備範囲のはずですから、拡大版プラス実際に外科系もある程度どころか、現在の外科系開業医クラスはできるでしょうか。

これは実際に出来るかどうかではなくイメージの問題ですが、それぐらいの期待は実際にも背負わされているような感じがします。これから本物の総合医を目指される医師はイメージに副える様に頑張ってください。