8/22付中国新聞より、
岡林さんの医院による在宅医療は、定期訪問が基本。患者が自宅に「入院」していると見立て、症例に応じて月平均約2・5回の診療を行う。症状が急変した場合は、24時間体制で往診する。筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)などの難病患者も含め、西、佐伯区で約220人を診る。
これに関して、ssd様は、
ええと、一人月2.5回往診ですか。大変ご繁昌のようで220人ってことは月のべ550件つーか軒。
毎日20人くらいしか診なくて楽そうですネ・・・。
んなわけないだろ(wwww。その状態がつぶしがきいてる状態なのか。
直感的にssd様がそう思われるのは理解できるのですが、
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約220人を診る
在宅療養支援診療所∧院外処方 4,200点X 220人ですって。
しかも初期投資ほぼナシ。人件費もぐーんとお安くなっております。
ウ、ウハクリだぁ。
医療技術とは違う観点からみてみました。
この「4,200点X 220人」は1ヶ月の売り上げとして924万円を意味します。もちろん収支差ではありませんが、在宅特化にすれば診療所の外来機能は不要で、初期投資は非常に少なくなる(負債が少ない)のは間違いありませんし、看護師や事務員なども外来を行なうのに較べてかなり減らせます。月間924万円の売り上げなんて、保険診療で経営する診療所では最上級じゃないかと思われます。
私は在宅医療どころか、介護保険にも縁がない小児科開業医ですから実感がないのですが、前に在宅支援診療所の算数を書いた時に寄せられた情報があります。
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診療のキャパシティから60人が限度で、経営的には50人で余裕で黒字
問題はどういう形態で医療を行なっているかですが、超人として1人でやっている可能性も否定できません。なんと言ってもこの医師は、
広島大と山口大で救急医を22年間務めた
あくまでもイメージですが、22年間も救急に従事したというのは半端な経歴ではありません。その超人的な体力で限度の3.7倍を余裕でこなしているかもしれないからです。ただこの医師にとっては「まだ余裕」かもしれませんが、いかに超人的な体力があっても年齢による衰えは確実に押し寄せますから、いつまでも限度の3.7倍を維持できるとは思えません。
在宅診療は現時点ではペイすると言われています。ただ1人で診療すると超人は除いて体力の限界が訪れるとされます。そのため
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グループで業務を行なえば勤務医なんかより確実に休日が確保される
4年前に広島市内で在宅医療専門クリニックを開業
広島も大きな街ですから、グループで業務を行なっているのかもしれません。グループでなくとも、何人かの非常勤医師を雇うと言う選択もあります。たしかどこかの小説家がそんな働き方をしていました。この辺はssd様も抜かりなく、
当クリニックの理念に共鳴して頂ける医師を募集しております。
また、将来往診専門クリニックの開業を考えている医師をサポートさせて頂きます。
仕事内容 : スケジュールに従って患者様のお宅へ伺い、診療を行います。
夜勤はありません。
対 象 : 常勤医師、非常勤医師
勤務時間 : 9:00〜18:00(常勤)
※ 非常勤は1日単位での勤務が可能です。詳細はご相談下さい。
この情報だけではなんとも言えませんが、非常勤医を数人雇っている形態である可能性もあると思われます。まあ、限度の3.7倍ですから、4〜5人程度の非常勤医を抱えても余裕でペイするかもしれません。
私が取り上げると非難しているとの先入観をもたれそうなのですが、決してそんな事はありません。うちのようなツブクリからすれば遥かに立派なビジネスモデルを構築しているかと感心しています。あえて問題点を挙げれば2つで、
- 現在の在宅診療報酬体系がいつまで続くか誰にも予想できない
- 救急医のキャリアアップの終着点として魅力的なのか
それと救急医のキャリア・アップの終着点が在宅医療であるというのは、そんなに魅力的なのでしょうか。現在なら診療報酬の点では魅力的に見えますが、これの将来的な保証の乏しさは誰でも危惧するところです。診療報酬の魅力がなくなったときに、救急医の人生設計として「いつかは在宅医に」がどれほどの魅力かよく分からないところです。
もっとも現在の救急医のキャリア・アップの終着駅は無いに等しいですから、出来ただけもマシと言う考え方もあります。それでも、
「診療科を超えて緊急度や重症度を即時に判断する救急医は、在宅医療に向く」と指摘する。救急医は専門的な診療科目を持たず、年齢を重ねると体力的に厳しいため、若手医師から「つぶしが利かない」などと敬遠される。キャリアを積んだ後、在宅医療に取り組むのは、その打開策になると主張する。
あくまでも私は小児科医ですから実感が持てませんが、そんなものなのでしょうか。少々考え込むところです。